価格競争入札コンベンショナル方式とは?経済用語について説明

価格競争入札コンベンショナル方式と非価格競争入札の比較
項目 価格競争入札コンベンショナル方式 非価格競争入札
入札価格 入札参加者が提示した価格 価格競争入札の平均価格
落札 高い価格を提示した者から順次落札 平均価格で落札
リスク 割高な価格で購入するリスク、落札できないリスク 平均価格で購入できるためリスクが少ない
入札参加者 誰でも参加可能 国債市場特別参加者(PD)のみ
共謀 起きづらい 起きやすい
情報優位 情報優位にある投資家は有利 情報優位は関係ない
オプティマル・ビディング 難しい 容易
入札参加者の負担 大きい 小さい
入札参加者の行動 複雑 単純
将来性 国債市場の安定化に貢献 ニーズの高まり、制度の進化が注目される
採用例 日本の10年国債入札、フィリピンのリオープン国債入札 フィリピンの新発国債入札、米国債の入札

1. 価格競争入札コンベンショナル方式とは

要約

1.1 価格競争入札とは

価格競争入札とは、国債を発行する際に、入札参加者である証券会社や投資家が買いたい値段を提示し(応札)、高く応札されたものから順番に購入の権利が与えられる(落札)というものです。我が国では、各落札者が自ら応札した価格で購入する「コンベンショナル方式」と、すべての落札者が同じ価格で購入する「ダッチ方式」とが併用されています。

コンベンショナル方式では、入札参加者は、自らが提示した価格で国債を購入することになります。そのため、入札技術の巧拙が落札に大きく影響します。一方、ダッチ方式では、入札参加者は、事前に決められた価格で国債を購入することができます。そのため、入札技術はそれほど重要ではありません。

我が国では、40年債で利回り競争入札・ダッチ方式、物価連動国債で価格競争入札・ダッチ方式を採用している以外は、価格競争入札・コンベンショナル方式を採用しています。

価格競争入札と非価格競争入札の比較
項目 価格競争入札 非価格競争入札
入札価格 入札参加者が提示した価格 価格競争入札の平均価格
落札 高い価格を提示した者から順次落札 平均価格で落札

1.2 非価格競争入札とは

非価格競争入札とは、価格競争入札とは異なり、入札参加者が提示した価格ではなく、価格競争入札により形成された平均的な価格で国債が発行される方式です。

価格競争入札では、入札参加者は、自らが提示した価格で国債を購入するリスクを負います。一方、非価格競争入札では、入札参加者は、平均的な価格で国債を購入することができます。そのため、入札参加者は、価格競争入札よりもリスクを回避することができます。

非価格競争入札は、国債市場特別参加者(PD)に与えられた権利であり、PDは、財務省が国債を発行するにあたって、投資家に対して国債の営業を行います。

第I非価格競争入札と第II非価格競争入札の比較
項目 第I非価格競争入札 第II非価格競争入札
実施時期 価格競争入札と同時 価格競争入札の後
発行価格 価格競争入札の平均価格 価格競争入札の平均価格
応札限度額 発行予定額の20% 過去の応札実績や当日の落札状況に基づく
応札タイミング 価格競争入札と同時 価格競争入札後

1.3 第I非価格競争入札と第II非価格競争入札

非価格競争入札は、価格競争入札と同じタイミングで実施する「第I非価格競争入札」と、価格競争入札の後に実施する「第II非価格競争入札」に分かれます。

第I非価格競争入札は、価格競争入札と同時に応募が行われ、発行予定額のうち一定割合(現在は20%)を発行限度額とし、価格競争入札における平均価格を発行価格とするものです。

第II非価格競争入札は、価格競争入札が終わった後に実施される入札です。価格競争入札の平均価格を前提として、PDがそれぞれの限度額の範囲で応札を行います。

まとめ

価格競争入札コンベンショナル方式は、入札参加者が提示した価格で国債を購入する方式です。一方、非価格競争入札は、価格競争入札により形成された平均的な価格で国債が発行される方式です。

非価格競争入札は、国債市場特別参加者(PD)に与えられた権利であり、PDは、財務省が国債を発行するにあたって、投資家に対して国債の営業を行います。

非価格競争入札は、第I非価格競争入札と第II非価格競争入札に分かれます。第I非価格競争入札は、価格競争入札と同時に応募が行われ、発行予定額のうち一定割合を発行限度額とし、価格競争入札における平均価格を発行価格とするものです。

第II非価格競争入札は、価格競争入札が終わった後に実施される入札です。価格競争入札の平均価格を前提として、PDがそれぞれの限度額の範囲で応札を行います。

2. 価格競争入札コンベンショナル方式のメリット

要約

2.1 入札の理解がしやすい

コンベンショナル方式では、落札に成功した暁には入札額が落札額となるので、制度の理解はしやすいです。

入札参加者は、自らが提示した価格で国債を購入するため、入札の結果が分かりやすく、制度の理解が容易になります。

一方、ダッチ方式では、すべての落札者が同じ価格で購入するため、入札参加者は、自らが提示した価格で国債を購入するかどうかが分かりません。そのため、制度の理解が難しい場合があります。

2.2 共謀が起きづらい

コンベンショナル方式では、落札に成功した暁には入札額が落札額となるため、入札参加者は、自らが提示した価格で国債を購入することになります。そのため、入札参加者同士が通謀して入札額をコントロールすることが難しく、共謀が起きづらいと考えられます。

一方、ダッチ方式では、すべての落札者が同じ価格で購入するため、入札参加者同士が通謀して入札額をコントロールすることが容易です。そのため、共謀が発生しやすいと考えられます。

財務省は、入札において共謀の可能性があるならば、ダッチ方式ではなくて、コンベンショナル方式で実施すべきというインプリケーションが生まれます。

2.3 情報優位にある投資家はその優位性を活かせる

コンベンショナル方式では、入札参加者は、自らが提示した価格で国債を購入することになります。そのため、情報優位にある投資家は、その優位性を活かして、有利な価格で国債を購入することができます。

一方、ダッチ方式では、すべての落札者が同じ価格で購入するため、情報優位にある投資家は、その優位性を活かすことができません。

コンベンショナル方式は、情報優位にある投資家にとって有利な入札方式と言えます。

まとめ

コンベンショナル方式は、入札の理解がしやすい、共謀が起きづらい、情報優位にある投資家はその優位性を活かせるといったメリットがあります。

一方、ダッチ方式は、入札の理解が難しい、共謀が発生しやすい、情報優位にある投資家は、その優位性を活かすことができないといったデメリットがあります。

コンベンショナル方式は、入札参加者にとって、より公平で透明性の高い入札方式と言えます。

3. 価格競争入札コンベンショナル方式のデメリット

要約

3.1 オプティマル・ビディングが難しい

コンベンショナル方式では、入札参加者は、自らが提示した価格で国債を購入することになります。そのため、入札参加者は、どのような入札額に設定するのか(オプティマル・ビディング)を考えることが難しいです。

入札参加者は、自らが提示した価格で国債を購入するため、入札額を高く設定すれば、落札できる可能性は高まりますが、割高な価格で購入するリスクを負います。一方、入札額を低く設定すれば、落札できる可能性は低くなりますが、割安な価格で購入することができます。

入札参加者は、入札額をどのように設定すれば良いのか、常に悩み続けることになります。

3.2 入札参加者の負担が大きい

コンベンショナル方式では、入札参加者は、自らが提示した価格で国債を購入することになります。そのため、入札参加者は、入札額を決定するために、市場の動向や競合他社の動向などを分析する必要があり、入札参加者の負担が大きくなります。

一方、ダッチ方式では、すべての落札者が同じ価格で購入するため、入札参加者は、市場の動向や競合他社の動向などを分析する必要はありません。そのため、入札参加者の負担が小さくなります。

コンベンショナル方式は、入札参加者にとって、負担の大きい入札方式と言えます。

3.3 入札参加者の行動が複雑になる

コンベンショナル方式では、入札参加者は、自らが提示した価格で国債を購入することになります。そのため、入札参加者は、自らの利益を最大化するために、他の入札参加者の行動を予測し、それに応じた入札額を設定する必要があります。

入札参加者の行動が複雑になるため、入札の結果が予測しにくくなり、入札全体の効率性が低下する可能性があります。

コンベンショナル方式は、入札参加者の行動が複雑になるため、入札全体の効率性を低下させる可能性のある入札方式と言えます。

まとめ

コンベンショナル方式は、オプティマル・ビディングが難しい、入札参加者の負担が大きい、入札参加者の行動が複雑になるといったデメリットがあります。

一方、ダッチ方式は、オプティマル・ビディングが容易、入札参加者の負担が小さい、入札参加者の行動が単純になるといったメリットがあります。

コンベンショナル方式は、入札参加者にとって、負担の大きい入札方式と言えます。

4. 価格競争入札コンベンショナル方式の事例

要約

4.1 日本の10年国債入札

日本の10年国債入札では、コンベンショナル方式が採用されています。

入札参加者は、自らが提示した価格で国債を購入することになります。そのため、入札参加者は、市場の動向や競合他社の動向などを分析し、最適な入札額を設定する必要があります。

日本の10年国債入札は、コンベンショナル方式を採用しているため、入札参加者にとって、負担の大きい入札方式と言えます。

4.2 フィリピンの国債入札

フィリピンでは、新発国債ではダッチ方式、リオープン国債ではコンベンショナル方式が採用されています。

新発国債では、すべての落札者が同じ価格で購入するため、入札参加者は、市場の動向や競合他社の動向などを分析する必要はありません。一方、リオープン国債では、入札参加者は、自らが提示した価格で国債を購入することになります。

フィリピンでは、新発国債とリオープン国債で異なる入札方式を採用することで、それぞれの入札方式のメリットを最大限に活かしています。

フィリピンの国債入札方式
国債の種類 入札方式
新発国債 ダッチ方式
リオープン国債 コンベンショナル方式

4.3 米国債の入札

米国では、ダッチ方式が採用されています。

すべての落札者が同じ価格で購入するため、入札参加者は、市場の動向や競合他社の動向などを分析する必要はありません。

米国債の入札は、ダッチ方式を採用しているため、入札参加者にとって、負担の小さい入札方式と言えます。

まとめ

コンベンショナル方式は、日本の10年国債入札やフィリピンのリオープン国債入札などで採用されています。

一方、ダッチ方式は、フィリピンの新発国債入札や米国債の入札などで採用されています。

それぞれの国や地域で、それぞれの入札方式が採用されています。

5. 価格競争入札コンベンショナル方式と従来の入札方式の違い

要約

5.1 従来の入札方式

従来の入札方式では、入札参加者は、自らが提示した価格で国債を購入することになります。

入札参加者は、自らが提示した価格で国債を購入するため、入札額を高く設定すれば、落札できる可能性は高まりますが、割高な価格で購入するリスクを負います。一方、入札額を低く設定すれば、落札できる可能性は低くなりますが、割安な価格で購入することができます。

従来の入札方式は、入札参加者にとって、リスクの高い入札方式と言えます。

5.2 コンベンショナル方式との違い

コンベンショナル方式は、従来の入札方式と比べて、入札参加者にとって、より公平で透明性の高い入札方式と言えます。

コンベンショナル方式では、入札参加者は、自らが提示した価格で国債を購入することになります。そのため、入札参加者は、自らの利益を最大化するために、他の入札参加者の行動を予測し、それに応じた入札額を設定する必要があります。

コンベンショナル方式は、入札参加者の行動が複雑になるため、入札の結果が予測しにくくなり、入札全体の効率性が低下する可能性があります。

5.3 非価格競争入札との違い

非価格競争入札は、価格競争入札とは異なり、入札参加者が提示した価格ではなく、価格競争入札により形成された平均的な価格で国債が発行される方式です。

非価格競争入札は、国債市場特別参加者(PD)に与えられた権利であり、PDは、財務省が国債を発行するにあたって、投資家に対して国債の営業を行います。

非価格競争入札は、第I非価格競争入札と第II非価格競争入札に分かれます。第I非価格競争入札は、価格競争入札と同時に応募が行われ、発行予定額のうち一定割合を発行限度額とし、価格競争入札における平均価格を発行価格とするものです。

第II非価格競争入札は、価格競争入札が終わった後に実施される入札です。価格競争入札の平均価格を前提として、PDがそれぞれの限度額の範囲で応札を行います。

まとめ

コンベンショナル方式は、従来の入札方式と比べて、入札参加者にとって、より公平で透明性の高い入札方式と言えます。

一方、非価格競争入札は、価格競争入札とは異なり、入札参加者が提示した価格ではなく、価格競争入札により形成された平均的な価格で国債が発行される方式です。

コンベンショナル方式と非価格競争入札は、それぞれ異なる特徴を持つ入札方式です。

6. 価格競争入札コンベンショナル方式の将来性

要約

6.1 アベレージ注文のニーズの高まり

近年、アベレージ注文のニーズが高まっているというPDからの指摘があります。

国債発行額が増加する中で、海外投資家のプレゼンスも拡大していることが指摘できます。

非価格競争入札は、平均価格で購入したいという投資家の需要に対応した措置とも考えられます。

6.2 制度の改善

2022年3月末に、PD要領が改訂され、各PDに課せられる応札責任の内容に変更が加えられました。

具体的には、それまでは各入札において発行予定額の5%以上の応札を行うことが要領上定められていたところ、改訂後は発行予定額の「100÷PDの数(n)」%以上の応札が求められることになりました。

この改正により、PDの負担が増加する可能性がありますが、一方で、国債市場の安定化に貢献する可能性もあります。

PD要領の改正内容
項目 改正前 改正後
応札責任割合 発行予定額の5% 発行予定額の100÷PDの数(n)%
PDの数 20社 20社
実質的な負担 5% 5%

6.3 今後の展望

コンベンショナル方式は、今後も、国債市場の安定化に貢献する重要な入札方式であり続けるでしょう。

一方で、非価格競争入札のニーズも高まっており、今後、非価格競争入札の制度がどのように進化していくのか注目されます。

コンベンショナル方式と非価格競争入札は、それぞれ異なる特徴を持つ入札方式ですが、どちらも国債市場の安定化に貢献する重要な役割を担っています。

まとめ

コンベンショナル方式は、今後も、国債市場の安定化に貢献する重要な入札方式であり続けるでしょう。

一方で、非価格競争入札のニーズも高まっており、今後、非価格競争入札の制度がどのように進化していくのか注目されます。

コンベンショナル方式と非価格競争入札は、それぞれ異なる特徴を持つ入札方式ですが、どちらも国債市場の安定化に貢献する重要な役割を担っています。

今後の国債市場の動向を注視していく必要があります。

参考文献

コンベンショナル方式|証券用語解説集|野村證券

価格競争入札コンベンショナル方式 | 金融・証券用語解説集 …

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