用語 | 定義 | 親会社との資本関係 | 特徴 |
---|---|---|---|
スピンアウト | 会社の一部事業を分離し、新たな会社を設立すること | なし | 完全な独立、親会社のブランドや資産は利用不可 |
スピンオフ | 会社の一部事業を分離し、子会社を設立すること | あり | 親会社からの出資やサポートを受け、関連会社としてつながる |
カーブアウト | 事業の一部を切り出し、親会社からの出資や外部組織からの投資を受けながら、新会社として独立させる | あり | 親会社からの支援を受けながら独立、新事業の成長を加速させる |
社内ベンチャー | 企業内で新規事業を行うための組織を設立すること | あり | 企業内でのイノベーション促進、事業の分離は行わない |
1. スピンアウトの定義とは何か?
スピンアウトの定義
スピンアウトとは、企業が保有する特定の事業や子会社を、新たな会社として独立させる組織再編方法を指します。スピンアウトによって生まれた企業は元の会社との資本関係はなく、完全に独立した状態になります。近年では、スピンアウトによって生まれるスタートアップの数が増加傾向にあり、大企業を中心に今後もスピンアウト・スタートアップの輩出に前向きに取り組むことが予想されます。
スピンアウトは、親会社が不採算事業を売却したい場合や、従業員のアイデアを形にするために独立を支援する場合などに用いられます。特に近年では、優秀な若手社員が大手企業からスピンアウトするケースが増加しています。
スピンアウトは、親会社との資本関係を解消することで、新会社は独立性を確保し、経営の自由度を高めることができます。一方で、親会社のブランド力や販路、顧客ネットワークなどを活用することができなくなるというデメリットもあります。
スピンアウトは、親会社と新会社の双方にとってメリットとデメリットがあるため、慎重に検討する必要があります。
用語 | 定義 | 親会社との資本関係 | 特徴 |
---|---|---|---|
スピンアウト | 会社の一部事業を分離し、新たな会社を設立すること | なし | 完全な独立、親会社のブランドや資産は利用不可 |
スピンオフ | 会社の一部事業を分離し、子会社を設立すること | あり | 親会社からの出資やサポートを受け、関連会社としてつながる |
カーブアウト | 事業の一部を切り出し、親会社からの出資や外部組織からの投資を受けながら、新会社として独立させる | あり | 親会社からの支援を受けながら独立、新事業の成長を加速させる |
社内ベンチャー | 企業内で新規事業を行うための組織を設立すること | あり | 企業内でのイノベーション促進、事業の分離は行わない |
スピンアウトと類似する用語との違い
スピンアウトと混同されやすい用語として、スピンオフ、カーブアウト、社内ベンチャーがあります。これらの用語は、それぞれ異なる意味合いを持つため、正しく理解することが重要です。
スピンオフは、特定の事業や部門を独立させた後も親会社との資本関係が継続する組織再編手法です。スピンアウトと違い、親会社からの出資を受けながら事業成長を進めていくことができます。
カーブアウトは、独立後も親会社との資本関係が継続する組織再編手法です。スピンアウトと違い、親会社以外からの出資も受けられる点が特徴です。
社内ベンチャーは、企業内で新規の事業部門や組織を立ち上げること、または立ち上げた組織自体を指します。スピンアウトと違い、親会社に在籍している状態にあります。
スピンアウトの手法
スピンアウトには、会社分割と事業譲渡の2つのM&A手法が用いられます。
会社分割は、親会社が保有する特定の事業を既存の会社、または新設する会社に移転するM&A手法です。事業の移転に伴い、当該事業にかかる人材の雇用契約や取引先との売買契約などの各種契約や財産も包括的に承継会社へと引き継ぐことができます。
事業譲渡は、特定事業を他の会社へと売却するM&A手法の1つです。会社分割と違い、引き継ぎたいものを1つ1つ選択し、各契約を1つ1つ巻き直す必要があります。
会社分割と事業譲渡は、それぞれメリットとデメリットがあるため、企業の状況に合わせて適切な手法を選択する必要があります。
手法 | 説明 |
---|---|
会社分割 | 事業や資産を包括的に新会社に移転する |
事業譲渡 | 必要な資産や負債を選択的に新会社に移転する |
まとめ
スピンアウトは、企業が特定の事業や子会社を独立させる組織再編方法です。スピンアウトによって生まれた企業は、元の会社との資本関係がなく、完全に独立した状態になります。
スピンアウトは、親会社が不採算事業を売却したい場合や、従業員のアイデアを形にするために独立を支援する場合などに用いられます。
スピンアウトには、スピンオフ、カーブアウト、社内ベンチャーなど、類似する用語がありますが、それぞれ異なる意味合いを持つため、正しく理解することが重要です。
スピンアウトには、会社分割と事業譲渡の2つのM&A手法があり、それぞれメリットとデメリットがあるため、企業の状況に合わせて適切な手法を選択する必要があります。
2. スピンアウトのメリットとは?
親会社にとってのメリット
スピンアウトにより事業を切り離すことで、親会社はコア事業に集中できるようになります。
不採算事業を抱えている場合、その事業をスピンアウトすることによって限られた経営資源を収益性が高いコア事業に投入でき、集中してコア事業の成長に取り組むことができるようになります。
スピンアウトによって、親会社は経営資源を効率的に活用し、企業価値の向上を図ることができます。
また、スピンアウトによって、親会社は新たなビジネスチャンスを創出することもできます。
メリット | 説明 |
---|---|
コア事業への集中 | 経営資源を効率的に活用し、収益性の高い事業に注力できる |
企業価値の向上 | 不採算事業の整理や新たなビジネスチャンスの創出により、企業価値を高められる |
人材育成 | スピンアウトした新会社で、人材育成を進めることができる |
新会社にとってのメリット
親会社から独立した新会社にとってのメリットとして、以下の3つが考えられます。
スピンアウトでは、独立した後の新会社と親会社との間に資本関係が継続しないため、新会社は独立性を確保することができ、経営の自由度が高まります。
親会社が新会社の経営に干渉してこないことで、新会社では新しい体制で様々な経営判断を迅速に下すことができることから、スピード感を持って事業拡大や会社の成長を進めていくことができるでしょう。
スピンアウトによって親会社との資本関係が解消され、自由度の高い経営が実現すると、イノベーションを促進する社内環境を構築しやすくなります。
メリット | 説明 |
---|---|
経営の自由度向上 | 親会社からの干渉を受けずに、独自の経営戦略を実行できる |
イノベーション促進 | 柔軟な意思決定と迅速な行動により、革新的な事業展開が可能になる |
資金調達の容易化 | 独立した企業として、投資家からの資金調達を行いやすくなる |
投資家にとってのメリット
特定の事業に特化した会社は将来の見通しが立てやすいことから、投資対象としても高評価につながります。
また親会社が負債を抱えていたり、業績不振に陥っていたりする場合、スピンアウトで独立することで親会社のリスクを背負わなくなる点も、投資家からプラス評価が得られるポイントとなります。
投資家の評価が高まることで、資金調達が行いやすくなるという効果にもつながることから、親会社との資本関係が絶たれた中でも事業資金を確保することができるでしょう。
スピンアウトは、投資家にとって魅力的な投資機会となる可能性があります。
メリット | 説明 |
---|---|
成長性の高い事業への投資 | 将来性のある事業に投資することで、高いリターンが期待できる |
リスク分散 | 親会社の負債や業績不振の影響を受けずに、独立した事業に投資できる |
まとめ
スピンアウトは、親会社、新会社、投資家のそれぞれにとってメリットがあります。
親会社は、経営資源を効率的に活用し、企業価値の向上を図ることができます。
新会社は、独立性を確保し、経営の自由度を高めることで、スピード感を持って事業拡大や会社の成長を進めていくことができます。
投資家は、将来性のある事業に投資することで、高いリターンを得る可能性があります。
3. スピンアウトのデメリットとは?
親会社にとってのデメリット
スピンアウトを行うことによって親会社は企業価値が下がる可能性があるというデメリットも忘れてはいけません。
スピンアウトした事業が、これから成長が見込める事業であった場合、将来的な収益を手放し、残った事業で会社を存続していくことを市場が不安視してしまい、結果的に親会社の評価が低下する可能性があります。
そうした事態を回避するためには、親会社が既存事業の成長シナリオをきちんと示すことが重要です。
また、スピンアウトによって、親会社は人材流出のリスクも抱える可能性があります。
デメリット | 説明 |
---|---|
企業価値の低下 | 成長性の高い事業を手放すことで、市場からの評価が下がる可能性がある |
人材流出 | 優秀な人材が新会社に移籍し、人材不足に陥る可能性がある |
新会社にとってのデメリット
スピンアウトで独立することにより、新会社には2つのデメリットが考えられます。
スピンアウトによって親会社から新会社へと転籍した人材がいる場合、独立後彼らのモチベーションの低下が発生する可能性があります。
親会社からの独立によって働く環境や仕事の内容に生じた変化が、従業員にとって望ましいものでなければ、仕事や会社に対して不満を抱くようになってしまうでしょう。
従業員のモチベーションの低下や不満の蓄積は、人材の流出につながるため、新会社における従業員エンゲージメントの変動には注意が必要です。
デメリット | 説明 |
---|---|
従業員のモチベーション低下 | 独立による環境変化に適応できず、従業員のモチベーションが下がる可能性がある |
経営資源の不足 | 親会社のブランド力や販路、顧客ネットワークなどが利用できなくなるため、事業展開が困難になる可能性がある |
その他デメリット
スピンアウトでは親会社との資本関係が解消されるため、それまで事業に活用することができた親会社のブランド力や販路、顧客ネットワークなどを継続して活用することはできません。
また、独立する事業に関係する優秀な人材が親会社に残ってしまうと、新会社でこれまでのように事業を円滑に進めることができなくなってしまうかもしれません。
このようにスピンアウトでは、お金以外の経営資源に関しても親会社からの恩恵を享受することができなくなるため、新会社においては独立時にしっかりと経営資源を確保し、その状態を維持することが重要な課題となってきます。
十分な経営資源を確保できない場合、その後の事業展開や会社経営に対し様々な支障をきたす恐れがあります。
まとめ
スピンアウトは、親会社と新会社の双方にとって、メリットだけでなくデメリットも存在します。
親会社は、企業価値の低下や人材流出のリスクを抱える可能性があります。
新会社は、従業員のモチベーション低下や経営資源の不足に直面する可能性があります。
スピンアウトを検討する際には、メリットとデメリットを比較検討し、慎重に判断する必要があります。
4. スピンアウトの成功事例を紹介
株式会社資生堂
株式会社資生堂は2021年に、整髪料や洗顔料などを扱うパーソナルケア事業を会社分割によってスピンアウトし、新たに設立した株式会社ファイントゥデイ資生堂(現、株式会社ファイントゥデイ)へと承継しています。
本スピンアウトは、事業の切り離しと新会社設立に投資ファンドが深く関わっている点が特徴で、分割対価としての株式は全て、大手投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズ社(以下、CVC)が取得しています。
国内外に散らばった対象事業に関連する製造拠点や子会社を集約させ、パーソナルケア事業に特化した新会社を設立することで、市場における競争力強化を図ることを目指し、そのための合併事業化と体制構築をCVCが主導するといった様相です。
資生堂社は本スピンアウトによって、パーソナルケア事業にかかる持株会社の株式を取得し、株主として新会社の運営に参画しています。
項目 | 内容 |
---|---|
スピンアウト対象 | パーソナルケア事業 |
スピンアウト方法 | 会社分割 |
新会社 | 株式会社ファイントゥデイ |
特徴 | 投資ファンドが深く関与、分割対価としての株式は全て投資ファンドが取得 |
富士ゼロックス株式会社(現、富士フイルムビジネスイノベーション株式会社)
富士ゼロックス株式会社(現、富士フイルムビジネスイノベーション株式会社)は2020年に脳波を計測するイヤホン型機器を中核とする事業をスピンアウトし、株式会社CyberneX(サイバネックス)を設立しています。
このイヤホン型脳波測定器はエンジニアが生み出した革新的なアイデアだったものの、当時の富士ゼロックス社内の既存事業との親和性が低かったことから、社外での事業展開に至ったという経緯があります。
CyberneX社は、知的財産権の権利譲渡という形でスピンアウトされており、富士ゼロックスで培った技術力を新会社でも実質的に活用できるようになっています。
スピンアウトでは、独立後親会社の経営資源が活用できなくなることが一般的ですが、本件は出向起業支援制度を利用していることもあり、親会社との関係が一部維持した状態での事業の切り出しとなっています。
項目 | 内容 |
---|---|
スピンアウト対象 | 脳波計測機器事業 |
スピンアウト方法 | 知的財産権の権利譲渡 |
新会社 | 株式会社CyberneX |
特徴 | 出向起業支援制度を利用、親会社との関係が一部維持 |
日本マイクロソフト株式会社
日本マイクロソフト株式会社は2020年に、AI「りんな」を含むチャットボットAI事業をスピンアウトし、rinna株式会社を設立しています。
それまで日本マイクロソフト社が行っていたAIに関する研究開発やサービス運営をrinna社が引き継ぎ、人とAIのインタラクティブなコミュニケーションツールやエンターテイメントコンテンツの開発により成長を続けています。
特に、法人向け製品「Rinnna Character Platform」は、りんなの技術を活用して、より自然な会話や音声表現に加え、それぞれの企業キャラクターごとに個性を持たせたAIチャットボットを開発できる製品として多くの企業で導入されています。
本スピンアウトは、自然言語や音声変換などの領域でグローバルリーダーとなっているマイクロソフトのメリットを土台にスピンアウトすることで、よりローカルマーケットのニーズに合った高品質な製品開発が可能となり、事業成長へとつながった成功事例です。
項目 | 内容 |
---|---|
スピンアウト対象 | AI「りんな」を含むチャットボットAI事業 |
スピンアウト方法 | 事業譲渡 |
新会社 | rinna株式会社 |
特徴 | マイクロソフトの技術力を活用、ローカルマーケットに特化した事業展開 |
まとめ
スピンアウトは、親会社と新会社の双方にとって、成功する可能性を秘めた戦略です。
紹介した事例のように、スピンアウトは、不採算事業の整理、新規事業の創出、人材育成など、様々な目的で活用されています。
スピンアウトを成功させるためには、綿密な計画と準備が不可欠です。
スピンアウトを検討する際には、成功事例を参考にしながら、自社の状況に合わせて適切な戦略を立案することが重要です。
5. スピンアウトに関連する最新動向
スピンアウトの増加
近年、スピンアウトは増加傾向にあります。
これは、企業が事業の多角化や不採算事業の整理、新規事業の創出、人材育成など、様々な目的でスピンアウトを活用しているためです。
特に、テクノロジー分野では、革新的な技術やアイデアを持つスタートアップ企業が続々と誕生しており、スピンアウトは重要な事業展開方法となっています。
スピンアウトは、企業の成長戦略においてますます重要な役割を果たしていくと考えられます。
スピンアウト税制の活用
日本では、2017年にスピンアウト税制が導入されました。
この税制は、スピンアウトによって生じる課税を軽減することで、企業のスピンアウトを促進することを目的としています。
スピンアウト税制の導入により、企業はスピンアウトをより積極的に検討できるようになり、スピンアウトの増加につながっています。
スピンアウト税制は、企業の事業再編を促進し、経済活性化に貢献する政策として期待されています。
項目 | 内容 |
---|---|
目的 | スピンアウトを促進し、経済活性化に貢献 |
内容 | スピンアウトによって生じる課税を軽減 |
効果 | 企業のスピンアウトを促進、新規事業の創出を支援 |
グローバルなスピンアウト
スピンアウトは、日本だけでなく、世界中で注目されています。
特に、米国では、スピンアウトは企業の成長戦略として広く受け入れられており、多くの成功事例があります。
グローバルな視点でスピンアウトを検討することで、新たなビジネスチャンスを創出することができます。
海外企業との連携や海外市場への進出など、グローバルな展開を視野に入れたスピンアウトも増加しています。
まとめ
スピンアウトは、近年増加傾向にあり、企業の成長戦略において重要な役割を果たしています。
スピンアウト税制の導入やグローバルなスピンアウトの増加など、スピンアウトを取り巻く環境は変化しています。
今後、スピンアウトは、企業のイノベーションや経済活性化にますます貢献していくと考えられます。
スピンアウトは、企業にとって新たな可能性を拓く戦略として、注目されています。
6. スピンアウトを考える際のポイント
目的を明確にする
スピンアウトを行う目的を明確にすることは、成功への第一歩です。
スピンアウトによって何を達成したいのか、具体的な目標を設定しましょう。
目的が明確であれば、適切な戦略を立て、実行することができます。
目的を明確にすることで、スピンアウトの成功確率を高めることができます。
計画を綿密に立てる
スピンアウトは、企業にとって大きな決断です。
そのため、綿密な計画を立て、リスクを最小限に抑えることが重要です。
資金調達、人材確保、事業計画など、様々な要素を考慮した計画を立てましょう。
計画をしっかりと立てることで、スピンアウトをスムーズに進めることができます。
項目 | 内容 |
---|---|
資金調達 | 投資ファンドからの資金調達、銀行融資など |
人材確保 | 親会社からの転籍、外部からの採用など |
事業計画 | 市場調査、競合分析、収益計画など |
関係者との連携を強化する
スピンアウトは、親会社、新会社、従業員など、多くの関係者が関わるプロジェクトです。
関係者との連携を強化し、相互理解を深めることが重要です。
コミュニケーションを密にすることで、スムーズな連携を実現し、スピンアウトを成功させることができます。
関係者との連携は、スピンアウトの成功に不可欠です。
まとめ
スピンアウトは、企業にとって大きな挑戦です。
成功させるためには、目的を明確にし、綿密な計画を立て、関係者との連携を強化することが重要です。
スピンアウトは、企業の成長戦略において重要な役割を果たす可能性を秘めています。
スピンアウトを検討する際には、これらのポイントを踏まえ、慎重に判断する必要があります。
参考文献
・スピンアウトとは?成功事例やスピンオフ、カーブアウトとの …
・スピンアウトとは?スピンオフとの違いやメリット・注意点 …
・スピンアウトとは? スピンオフの違いやメリット・デメリット …
・スピンオフとスピンアウトの違いとは?国内外の事例や税制に …
・スピンオフとは スピンアウトとの違いや方法、税制措置、事例 …
・スピンアウトとは? 新事業で「独立」を果たした企業:日経 …
・スピンアウトの目的、注意点を解説 – 税理士法人チェスター
・「スピンアウト」と「スピンオフ」の違いとは?分かりやすく …
・スピンアウトとスピンオフの違いについて教えていただけます …