日本銀行とは?経済用語について説明

日本銀行の役割・歴史・政策・経済への影響
項目 内容
役割 物価の安定、金融システムの安定
歴史 明治15年設立、戦後改組、近年は独立性と透明性を重視
政策 金融政策決定会合で決定、政策金利、量的緩和、イールドカーブ・コントロールなど
国内経済への影響 経済成長、物価、雇用などに影響
海外経済への影響 国際会議への参加、国際金融に関するルール作り、国際金融危機への対応

1. 日本銀行の役割

要約

日本銀行の目的

日本銀行は、日本銀行法により設立された認可法人であり、民間の金融機関のような株式会社ではなく、国内唯一の中央銀行です。中央銀行とは、一国の金融機関の中核となる銀行のことを言い、お札(日本銀行券)の発行や物価の安定、金融システムの安定化を図るために運営されています。

具体的に日本銀行は、お札を発行する「発券銀行」としての役割や、他の金融機関から預金を預かり、金融機関に貸し出しを行う「銀行の銀行」としての役割、国のお金の出し入れを行う「政府の銀行」としての役割を担っています。

これらの業務を遂行することを目的としている点が、民間の金融機関と大きく異なります。日本銀行の設置目的は、「日本銀行法第1条第1項、第2条」に規定されています。具体的には、「物価の安定」を図ることと、「金融システムの安定」に貢献するという2点です。

日本銀行の目的
目的 内容
物価の安定 消費者物価指数などを用いて目標設定
金融システムの安定 金融市場や金融機関の安定維持

物価の安定

まず、日本銀行が行う金融政策の目的としては、物価の安定を図ることにあります。物価とは、様々な商品やサービスの価格を集計した価格のことを言います。物価は個々の商品やサービスの価格とは区別されています。物価は、それらの価格を全体的に捉えた価格であるため、経済の実態を把握したい場合などに使われます。

物価の安定は、経済が安定的かつ持続的成長を遂げていくうえで不可欠な基盤です。そこで日本銀行は、消費者が消費する商品やサービスの価格全体を捉えた消費者物価指数などによって目標を設定し、後述するような物価の安定化に向けた様々な施策を行っています。

金融システムの安定

物価の安定のほか、金融システムの安定に貢献することも、日本銀行の重要な目的です。金融システムとは、お金の受け払いや貸し借りを行う仕組みのことで、様々な金融市場や金融機関から成り立っています。金融システムが正常に機能し、利用者が安心して使用できる状態を維持することで物価の安定にもつながるため、金融システムの安定は日本銀行の重要な目的の一つとなっています。

まとめ

日本銀行は、「物価の安定」「金融システムの安定」という2つの大きな目的達成に向けて、目標を設定し、様々な施策に取り組んでいます。

2. 日本銀行の歴史

要約

日本銀行の設立

日本銀行の歴史は明治時代まで遡ります。明治10年(1877年)2月に勃発した西南戦争の影響で、大量の不換政府紙幣、不換国立銀行紙幣が発行されたことから、激しいインフレーションが発生しました。

これを受けて、明治14年(1881年)大蔵卿(現在の財務大臣)に就任した松方正義(まつかた まさよし)氏は、不換紙幣の整理をはかるため、正貨兌換の銀行券を発行する中央銀行の創立を提案しました。

松方氏は通貨価値の安定を図るとともに、中央銀行を中核とした銀行制度を整備し、近代的信用制度を確立することが不可欠であるとしています。翌年の明治15年(1882年)6月、日本銀行条例が制定され、同年10月10日に日本銀行が業務を開始しました。

日本銀行の設立
出来事
1882年 日本銀行条例制定、日本銀行設立
1881年 松方正義が不換紙幣整理と中央銀行設立を提言

日本銀行の改組

日本銀行には、最高意思決定機関として政策委員会が置かれています。政策委員会は、通貨や金融の調節に関する方針を決定するほか、その他業務を執行するにおいて必要な基本方針を定め、役員(監事・参与を除く)の職務の執行を監督する権限も持っています。

役員としては、総裁、副総裁(2名)、審議委員(6名)、監事(3名以内)、理事(6名以内)、参与(若干名)が置かれています。このうち、総裁・副総裁・審議委員が政策委員会を構成します。

現在の総裁は黒田東彦(くろだ はるひこ)氏(77)で、2022年10月現在、任期は残り約半年となっています。黒田総裁は就任以来9年半にわたって景気を支える大規模な金融緩和を続けてきましたが、物価上昇率を2%で安定させ、それに見合う賃金増も実現する目標の達成は見通せていません。交代が確実視されており、道半ばでの退任となる見込みです。

日本銀行の改組
出来事
1942年 日本銀行法制定、改組
1949年 日本銀行法改正、政策委員会設置
1998年 日本銀行法全面改正、独立性と透明性を強化

日本銀行の組織

「短観」は、正式名称を「全国企業短期経済観測調査」と言います。「日銀短観」は統計法に基づいて日本銀行が行う統計調査で、全国の企業動向を的確に把握し、金融政策の適切な運営に資することを目的としています。

四半期ごとに全国の約1万社の企業を対象に調査をしています。日銀が2021年6月30日に公表した資料『日本銀行の役職員の報酬、給与等について』によると、2020年度の日銀の常勤職員は3

総裁は2020年度の役員棒給が2

まとめ

日本銀行は、明治時代から続く歴史を持つ機関であり、その目的や役割は時代とともに変化してきました。近年では、金融政策の独立性透明性が重視され、政府からの独立性を保ちながら、国民経済の安定と発展に貢献する役割を担っています。

3. 日本銀行法とは

要約

日本銀行法の目的

日本銀行法は、日本銀行の設立、組織、業務、権限などを定めた法律です。1942年に制定された旧日本銀行法は、戦時色の強い内容でしたが、戦後数次にわたって改正され、1998年に全面的に改正された現在の日本銀行法が施行されました。

現在の日本銀行法では、日本銀行の目的として「物価の安定」「金融システムの安定」の2つが明確に示されています。

日本銀行法の目的
目的 内容
物価の安定 経済の安定的な成長に不可欠
金融システムの安定 信用秩序の維持に貢献

日本銀行の独立性

日本銀行法では、「日本銀行の業務運営における自主性は、十分配慮されなければならない」と定められています。これは、日本銀行が政府の意向に左右されることなく、独立した立場から金融政策を決定・実行することを意味しています。

しかし、一方で「日本銀行の業務運営は、政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない」とも定められています。

つまり、日本銀行は政府から独立した立場を保ちながらも、政府との連携を密にすることで、経済政策との整合性を図る必要があるということです。

日本銀行の独立性
項目 内容
自主性 政府の意向に左右されない
政府との連携 経済政策との整合性を図る

日本銀行の透明性

日本銀行法では、「日本銀行は、通貨及び金融の調節に関する意思決定の内容及び過程を国民に明らかにするよう努めなければならない」と明記されています。

金融政策が日本の金融・経済情勢に大きな影響を与えることから、その内容や決定プロセスを国民に公開することで、政策に対する理解を深め、信頼性を高めることが重要と考えられています。

具体的には、金融政策決定会合直後に経済物価情勢や金融市場調節方針などを示した「公表文」の発表、総裁による記者会見、金融政策決定会合での議論に関する「主な意見」の発表、議事要旨の発表、10年経過後の議事録の公表などが定められています。

日本銀行の透明性
項目 内容
情報公開 金融政策決定の内容と過程を国民に明らかに
説明責任 国会への報告書提出や質疑応答

まとめ

日本銀行法は、日本銀行の独立性透明性を重視した法律です。政府からの独立性を保ちながら、国民経済の安定と発展に貢献する役割を担う日本銀行の行動指針となっています。

4. 日本銀行の政策

要約

金融政策の目的

日本銀行は、「物価の安定」を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することを目的としています。物価が安定することで、企業は将来の収益を予測しやすくなり、投資や雇用を拡大しやすくなります。また、消費者も物価の変動を気にせずに消費活動を行いやすくなります。

物価が安定しない状況では、企業は将来の収益を予測することが難しくなり、投資や雇用を抑制する可能性があります。また、消費者も物価の変動によって生活費が不安定になり、消費を抑制する可能性があります。

そのため、日本銀行は、物価の安定を図ることで、経済全体の安定と発展に貢献することを目指しています。

金融政策の手段

日本銀行は、物価の安定を達成するために、金融政策と呼ばれる様々な手段を用いています。金融政策とは、市場に出回るお金の量や金利を調整することで、経済活動をコントロールする政策です。

主な金融政策には、政策金利の引き下げ量的緩和イールドカーブ・コントロールなどがあります。

政策金利の引き下げは、金融機関が日本銀行から資金を借りやすくすることで、市場に出回るお金の量を増やし、経済活動を活性化させる効果があります。量的緩和は、日本銀行が国債などを買い取ることで、市場に出回るお金の量を増やし、金利を低下させる効果があります。

イールドカーブ・コントロールは、長期金利を一定の範囲内に抑えることで、経済活動を安定させる効果があります。

金融政策の手段
手段 内容
政策金利の引き下げ 金融機関の資金調達コストを低下
量的緩和 国債などを買い入れて市場に出回るお金を増やす
イールドカーブ・コントロール 長期金利を一定の範囲内に抑える

金融政策決定会合

金融政策の決定は、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の会合で行われます。政策委員会は、総裁、副総裁、審議委員の9名で構成され、年に8回開催されます。

会合では、金融経済情勢の分析、金融政策の目標設定、金融政策手段の選択などが議論され、投票によって決定されます。

金融政策決定会合の結果は、日本銀行のホームページで公表されます。また、総裁は記者会見を行い、決定内容について説明を行います。

金融政策決定会合
項目 内容
開催頻度 年に8回
参加者 総裁、副総裁、審議委員の9名
決定内容 金融経済情勢の分析、金融政策の目標設定、金融政策手段の選択

まとめ

日本銀行は、金融政策を通じて、物価の安定を図り、国民経済の健全な発展に貢献しています。金融政策は、政策金利の引き下げ量的緩和イールドカーブ・コントロールなど、様々な手段を用いて行われます。

金融政策の決定は、政策委員会の会合で行われ、その結果は日本銀行のホームページで公表されます。

5. 日本銀行と国内経済

要約

金融政策と経済成長

日本銀行の金融政策は、国内経済に大きな影響を与えます。金融政策によって、企業の投資意欲や消費者の消費意欲が変化し、経済全体の成長に影響を与えます。

例えば、金融緩和によって金利が低下すると、企業は借入コストが低くなり、設備投資や事業拡大を積極的に行うようになります。また、消費者も住宅ローンなどの金利が低くなるため、住宅購入や消費支出を増やす可能性があります。

このように、金融政策は、経済活動を活性化させ、経済成長を促進する効果があります。

金融政策と物価

金融政策は、物価にも影響を与えます。金融緩和によって市場に出回るお金の量が増えると、需要が増加し、物価が上昇する可能性があります。逆に、金融引き締めによって市場に出回るお金の量が減ると、需要が減少して、物価が下落する可能性があります。

日本銀行は、物価安定を目標として金融政策を行っています。そのため、物価が上昇しすぎたり、下がりすぎたりしないように、金融政策を調整しています。

金融政策と雇用

金融政策は、雇用にも影響を与えます。金融緩和によって経済活動が活性化すると、企業は従業員を増やす必要が生じ、雇用が増加する可能性があります。逆に、金融引き締めによって経済活動が鈍化すると、企業は従業員を減らす必要が生じ、雇用が減少する可能性があります。

日本銀行は、金融政策を通じて、雇用の安定にも貢献しています。

まとめ

日本銀行の金融政策は、経済成長物価雇用など、国内経済の様々な側面に影響を与えます。日本銀行は、金融政策を通じて、経済の安定発展に貢献しています。

6. 日本銀行と海外経済

要約

国際会議への参加

日本銀行は、G20・G7 の財務大臣・中央銀行総裁会議をはじめ各種国際会議への参画などにより,国際金融の安定に貢献しています。また,外国の中央銀行等や国際機関との間で様々な取引を行っています。

G20 財務大臣・中央銀行総裁会議には,日本銀行からは総裁が出席して,世界の経済・金融情勢や国際通貨制度,金融規制・監督などについて,意見の交換を行っています。

国際金融に関するルール作り

日本銀行は、金融安定理事会(FSB)、バーゼル銀行監督委員会(BCBS)、グローバル金融システム委員会(CGFS)、支払・決済システム委員会(CPSS)、市場委員会(MC)などの場において、国際金融に関するルール作りや金融市場の現状評価などにも寄与しています。

これらの国際機関を通じて、国際金融市場の安定と効率性を高めるための取り組みを行っています。

日本銀行が参加する主な国際会議
会議名 内容
G20 財務大臣・中央銀行総裁会議 世界の経済・金融情勢や国際通貨制度、金融規制・監督などについて意見交換
G7 財務大臣・中央銀行総裁会議 世界の経済・金融情勢や国際通貨制度、金融規制・監督などについて意見交換
BIS 中央銀行総裁会議 各国の経済・金融の状況や金融政策、国際金融市場の状況などについて意見交換
金融安定理事会(FSB) 金融システムの脆弱性への対応や金融システム安定に向けた当局間の協調の促進
東アジア・オセアニア中央銀行役員会議(EMEAP) 域内のマクロ経済情勢、決済システム、銀行監督制度・手法、金融為替市場動向、情報技術(IT)などに関する意見交換

国際金融危機への対応

国際的な金融危機に際しては,各国の中央銀行と緊密に連携して,国際金融市場の安定確保のための施策を実施しています。

2007 年夏以降の世界的な金融危機の局面を例にとると,日本銀行は,ドル短期金融市場における流動性低下に対処し国内でドル資金を供給するため,海外主要中央銀行とともに米国連邦準備制度と通貨スワップ協定を締結してドル資金を調達し,米ドル資金供給オペを時限措置として実施して市場にドル資金を供給するなどの対応を行った。

まとめ

日本銀行は、国際会議への参加、国際金融に関するルール作り、国際金融危機への対応などを通じて、国際金融の安定に貢献しています。

国際的な連携を強化することで、世界経済の安定と発展に貢献しています。

参考文献

日本銀行の概要 : 日本銀行 Bank of Japan

「日本銀行」と「中央銀行」の違いとは?分かりやすく解釈 …

日本銀行(日銀)とは|日本経済用語集|iFinance

日本銀行の役割や歴史、総裁や任期についてわかりやすく解説 …

日本銀行 – Wikipedia

日本銀行とは? 中央銀行としての役割と新たな取り組みを紹介 …

日銀が業務を行う目的とは?役割と政策をざっくり解説 | 知る …

日本銀行(ニッポンギンコウ)とは? 意味や使い方 – コトバンク

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PDF 8 第 8章 国際業務 – Bank of Japan

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