配当可能限度額とは?経済用語について説明

配当可能限度額の計算ステップ
ステップ 内容
1. 決算日時点の剰余金の算定 資産の額 + 自己株式の帳簿価額 – 負債の額 – 資本金・準備金 – 法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額
2. 分配時点の剰余金の算定 決算日時点の剰余金 + 最終事業年度末日後の自己株式処分損益 + 最終事業年度末日後の減資差益 + 最終事業年度末日後の準備金減少差益 – 最終事業年度末日後の自己株式消却額 – 最終事業年度末日後の剰余金の配当額 – 法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額
3. 分配可能限度額の算定 分配時点の剰余金の額 – 分配時点の自己株式の帳簿価額 – 事業年度末日後に自己株式を処分した場合の処分対価 – その他法務省令で定める額

1. 配当可能限度額とは

要約

分配可能限度額の定義

分配可能限度額とは、株式会社が株主に配当できる金額の上限のことです。会社法では、「株主に対して交付する金銭等の帳簿価額の総額は、分配可能額を超えてはならない」と定められています。これは、会社が利益を無制限に株主に配当してしまうと、債権者への返済や事業の継続に必要な資金が不足する可能性があるためです。

分配可能額は、会社が債権者や株主への支払いを確保できる財産の額と捉えることができます。会社は、事業によって得た利益を株主に分配する仕組みですが、制限なく分配し続けると会社自体に利益が残らなくなってしまいます。利益が残らなければ、会社に融資をしてくれている銀行や取引先への支払いが行えません。それを防ぐために必要な制度が分配可能額です。

つまり、分配可能額は「会社に利益を残しながら株主や銀行などの債権者にお金を支払える可能額」と言えるでしょう。

分配可能額は、会社独自に確立しているものではなく「会社法」という法律のなかで定義されています。

分配可能限度額の定義
項目 説明
分配可能限度額 会社が株主に配当できる金額の上限
目的 債権者保護と会社の健全性維持

分配可能限度額の法律上の根拠

前述した定義とは別に、法律的な解釈で分配可能額は「会社法第461条第2項にしたがって計算される額」のことを指すものです。

会社法第461条第2項では、剰余金の配当等を行う場合、交付する金銭等の帳簿価額の総額は、効力発生日における分配可能額を超えてはならないと定められています。

分配可能額は法律で定められているものの、計算された額の範囲内であれば会社の取締役が、支払額を自由に決定することが可能です。そのため、「分配可能額=自分が受け取れる配当金」ではないことを理解しておきましょう。

そして、この決定された支払額に関しては株主が「もらえる額が少ないぞ!」と、意見を述べる権利を持っていないこともおさえておきましょう。多くの株式会社の場合、自社にある程度の利益と貯金を行うために株主の支払い金額を調整していることがほとんどです。

会社法における分配可能限度額
条項 内容
会社法第461条第2項 交付する金銭等の帳簿価額の総額は、効力発生日における分配可能額を超えてはならない

違法配当

基本的にはあまり起こることは少ないですが、分配可能額を超えた額を株式会社側が支払ってしまうケースが存在します。このようなケースは「違法配当」となるため注意が必要です。

例えば、分配可能額が1000万円であったにも関わらず、会社側が2000万円の分配を行ってしまった場合、受け取った株主には分配可能額からオーバーした分を返金する義務があります。

つまり、今回の例では1000万円までの分配可能額に対して実際は2000万円受け取っているため、差額の1000万円を会社側へ返金しなくてはなりません。

この義務は、たとえ株主側に落ち度がなかったとしても有効となるので、あらかじめ株式を保有している株式会社の分配可能額がどの程度か知っておく必要があります。

違法配当のリスク
状況 結果
分配可能額を超えた配当 株主は超過分を返金義務
違法配当の発覚 会社法第462条に基づくペナルティ

まとめ

分配可能額は、会社が株主に配当できる金額の上限であり、会社法で定められています。

分配可能額は、会社が債権者や株主への支払いを確保できる財産の額と捉えることができます。

分配可能額を超えて配当を行うと違法配当となり、受け取った株主は返金義務を負う可能性があります。

分配可能額は、会社が健全な経営を維持するために重要な指標です。

2. 配当可能限度額の計算方法

要約

決算日における剰余金の額の算定

まず、正規の決算を組んで、決算日において剰余金がいくらあるかを確定します。

決算日における剰余金の額は、以下の計算式で求められます。

資産の額 + 自己株式の帳簿価額の合計額 - 負債の額 - 資本金・準備金 - 法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額

しかし、つまるところ、決算日時点のその他資本剰余金の額その他利益剰余金の額の合計が剰余金となります。

決算日時点の剰余金の算定
項目 説明
資産の額 会社が所有する財産の価値
自己株式の帳簿価額 会社が保有する自社株の金額
負債の額 会社が負っている借金の金額
資本金・準備金 会社設立時に出資された金額と積み立てられた準備金
法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額 のれん等調整額、評価換算差額など

分配時点における剰余金の額の算定

次に、配当をしたい時期が決定したらそこまでの剰余金の増減を計算し、配当をしたい時期の剰余金を確定させます。

決算日以降分配時点までの剰余金の増減は、以下の項目を考慮して計算します。

①最終事業年度末日後の自己株式処分損益②最終事業年度末日後の減資差益③最終事業年度末日後の準備金減少差益④最終事業年度末日後の自己株式消却額⑤最終事業年度末日後の剰余金の配当額⑥法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額

このうち、「⑥法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額の内容」は以下となります。

分配時点の剰余金の算定
項目 説明
決算日時点の剰余金 決算日時点の剰余金の額
最終事業年度末日後の自己株式処分損益 自己株式の売却益または損失
最終事業年度末日後の減資差益 資本金の減少によって生じた差益
最終事業年度末日後の準備金減少差益 準備金の減少によって生じた差益
最終事業年度末日後の自己株式消却額 自己株式を消却した金額
最終事業年度末日後の剰余金の配当額 すでに支払われた配当金の金額
法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額 吸収型再編受入行為や特定募集に際して処分する自己株式の対価など

分配可能限度額の算定

分配可能限度額は、分配時点の剰余金の額から自己株式の帳簿残高を差し引いて算定します。

分配可能限度額 = 分配時点における剰余金の額 – 自己株式の帳簿価額 – 事業年度末日後に自己株式を処分した場合の処分対価 – その他法務省令で定める額

「決算日後」に自己株式の取得や処分をしている場合は、特に注意が必要です。

④その他法務省令で定める額 については以下です。

分配可能限度額の算定
項目 説明
分配時点の剰余金の額 分配時点における剰余金の額
分配時点の自己株式の帳簿価額 分配時点における自己株式の金額
事業年度末日後に自己株式を処分した場合の処分対価 自己株式の売却によって得られた金額
その他法務省令で定める額 のれん等調整額、評価換算差額など

まとめ

分配可能限度額の計算は、決算日時点の剰余金から、決算日以降の剰余金の増減を反映させ、さらに自己株式の帳簿価額などを差し引くことで行われます。

計算には、その他資本剰余金、その他利益剰余金、自己株式などの項目が用いられます。

分配可能限度額の計算は、会社法の規定に基づいて行う必要があります。

分配可能限度額の計算は、複雑なため、専門家のサポートを受けることが推奨されます。

3. 配当可能限度額の重要性

要約

債権者保護

分配可能限度額は、会社が債権者に対して返済義務を果たせるよう、会社の財産を守るための重要な役割を担っています。

会社が利益を無制限に株主に配当してしまうと、債権者への返済や事業の継続に必要な資金が不足する可能性があります。

分配可能限度額によって、会社は債権者への返済を優先し、健全な経営を維持することができます。

債権者は、会社が分配可能限度額を守って配当を行っていることを確認することで、安心して資金を貸し出すことができます。

債権者保護の観点
項目 説明
債権者保護 会社が債権者に対して返済義務を果たせるよう、会社の財産を守る
健全な経営維持 債権者への返済を優先し、健全な経営を維持
資金貸出の安心感 会社が分配可能限度額を守って配当を行っていることを確認することで、安心して資金を貸し出す

株主との関係

分配可能限度額は、株主との関係においても重要な役割を担っています。

株主は、会社が分配可能限度額を守って配当を行っていることを確認することで、会社の健全性を評価することができます。

また、分配可能限度額は、株主が配当を期待できる金額の上限を示すものでもあります。

分配可能限度額を理解することで、株主は会社の財務状況を把握し、投資判断を行うことができます。

株主との関係の観点
項目 説明
会社の健全性評価 会社が分配可能限度額を守って配当を行っていることを確認することで、会社の健全性を評価
配当期待値 分配可能限度額は、株主が配当を期待できる金額の上限を示す
投資判断 会社の財務状況を把握し、投資判断を行う

経営判断の指標

分配可能限度額は、会社の経営判断においても重要な指標となります。

会社は、分配可能限度額を参考に、配当政策や投資戦略を決定することができます。

例えば、分配可能限度額が低い場合は、配当を抑制し、事業の成長に資金を充てる必要があるかもしれません。

分配可能限度額を適切に管理することで、会社は長期的な安定成長を実現することができます。

経営判断の指標としての観点
項目 説明
配当政策決定 分配可能限度額を参考に、配当政策や投資戦略を決定
安定成長 分配可能限度額を適切に管理することで、長期的な安定成長を実現
財務状況把握 会社の財務状況を把握する上で重要な指標の一つ

まとめ

分配可能限度額は、債権者保護、株主との関係、経営判断の指標として、会社にとって重要な役割を担っています。

分配可能限度額を適切に管理することで、会社は健全な経営を維持し、長期的な安定成長を実現することができます。

分配可能限度額は、会社法で定められた重要な制度であり、会社関係者はその内容を理解しておく必要があります。

分配可能限度額は、会社の財務状況を把握する上で重要な指標の一つです。

4. 配当可能限度額と配当利回りの違い

要約

配当可能限度額

配当可能限度額は、会社が株主に支払うことができる配当金の最大額を示すものです。

会社法で定められており、会社の財務状況に基づいて計算されます。

配当可能限度額は、会社の健全性を維持するために重要な指標です。

配当可能限度額を超えて配当を行うことは違法となります。

配当可能限度額
項目 説明
定義 会社が株主に支払うことができる配当金の最大額
計算根拠 会社の財務状況
重要性 会社の健全性を維持するための指標
制限 配当可能限度額を超えて配当を行うことは違法

配当利回り

配当利回りとは、株価に対する配当金の割合を示すものです。

配当利回りは、投資家が株式投資を行う際に、配当収入の期待値を判断する指標として用いられます。

配当利回りは、配当金 ÷ 株価で計算されます。

配当利回りは、高いほど配当収入が多いことを意味しますが、必ずしも高い方が良いとは限りません。

配当利回り
項目 説明
定義 株価に対する配当金の割合
目的 投資家が株式投資を行う際に、配当収入の期待値を判断する指標
計算式 配当金 ÷ 株価
注意点 高いほど配当収入が多いことを意味するが、必ずしも高い方が良いとは限らない

違い

配当可能限度額は、会社が支払うことができる配当金の最大額を示すものであり、配当利回りは、株価に対する配当金の割合を示すものです。

配当可能限度額は、会社の財務状況に基づいて計算されるのに対し、配当利回りは、株価と配当金の関係を示すものです。

配当可能限度額は、会社が配当を行う際の制限を示すのに対し、配当利回りは、投資家が配当収入を期待できる割合を示すものです。

配当可能限度額は、会社法で定められており、法律的な根拠に基づいているのに対し、配当利回りは、市場の状況によって変動するものです。

配当可能限度額と配当利回りの違い
項目 配当可能限度額 配当利回り
定義 会社が支払うことができる配当金の最大額 株価に対する配当金の割合
計算根拠 会社の財務状況 株価と配当金の関係
目的 会社の健全性を維持するための制限 投資家が配当収入を期待できる割合を示す
変動性 会社法で定められており、法律的な根拠に基づいている 市場の状況によって変動する

まとめ

配当可能限度額と配当利回りは、どちらも株式投資において重要な指標ですが、それぞれ異なる意味を持っています。

配当可能限度額は、会社の財務状況に基づいて計算されるものであり、会社が配当を行う際の制限を示します。

配当利回りは、株価に対する配当金の割合を示すものであり、投資家が配当収入を期待できる割合を示します。

投資を行う際には、配当可能限度額と配当利回りの両方を理解し、総合的に判断することが重要です。

5. 配当可能限度額の影響要因

要約

会社の業績

会社の業績は、分配可能限度額に大きな影響を与えます。

利益が多い会社は、分配可能限度額も大きくなり、株主に多くの配当を支払うことができます。

逆に、利益が少ない会社は、分配可能限度額も小さくなり、株主に支払うことができる配当金も少なくなります。

会社の業績は、配当政策を決定する上で重要な要素となります。

業績の影響
業績 分配可能限度額
利益が多い 大きくなる
利益が少ない 小さくなる

会社の財務状況

会社の財務状況も、分配可能限度額に影響を与えます。

負債が多い会社は、債権者への返済義務を優先するため、分配可能限度額が小さくなる傾向があります。

逆に、負債が少ない会社は、分配可能限度額が大きくなる傾向があります。

会社の財務状況は、配当政策を決定する上で重要な要素となります。

財務状況の影響
財務状況 分配可能限度額
負債が多い 小さくなる
負債が少ない 大きくなる

会社の成長戦略

会社の成長戦略も、分配可能限度額に影響を与えます。

成長戦略として、事業拡大や新規投資を積極的に行う会社は、分配可能限度額が小さくなる傾向があります。

逆に、安定成長を目指す会社は、分配可能限度額が大きくなる傾向があります。

会社の成長戦略は、配当政策を決定する上で重要な要素となります。

成長戦略の影響
成長戦略 分配可能限度額
事業拡大や新規投資 小さくなる
安定成長 大きくなる

まとめ

分配可能限度額は、会社の業績、財務状況、成長戦略など、様々な要因によって影響を受けます。

会社は、これらの要因を考慮して、適切な配当政策を決定する必要があります。

分配可能限度額は、会社の経営戦略を反映する重要な指標の一つです。

投資家は、分配可能限度額を参考に、会社の将来性を評価することができます。

6. 配当可能限度額の具体例

要約

ケーススタディ

分配可能額を計算してみましょう。

資産       500万円 負債       50万円 資本金      200万円 準備金      50万円 その他利益剰余金 200万円※決算日の剰余金の額(その他利益剰余金)は200万円。剰余金の変動は分配時までないと仮定した場合。

【上記の場合の剰余金の分配可能額の計算】 利益剰余金200万円−(確保すべき純資産額300万円−資本金200万円−準備金50万円)  −200万円−準備金50万円)=200万円−50万円=150万円

分配可能額は150万円ということになります。

ケーススタディ
項目 金額
資産 500万円
負債 50万円
資本金 200万円
準備金 50万円
その他利益剰余金 200万円

配当可能限度額の具体例

分配可能限度額は、会社の業績、財務状況、成長戦略などによって異なります。

例えば、利益が多い会社は、分配可能限度額も大きくなり、株主に多くの配当を支払うことができます。

逆に、利益が少ない会社は、分配可能限度額も小さくなり、株主に支払うことができる配当金も少なくなります。

会社の財務状況や成長戦略によっても、分配可能限度額は変化します。

配当可能限度額の具体例
状況 分配可能限度額
利益が多い 大きくなる
利益が少ない 小さくなる
負債が多い 小さくなる
負債が少ない 大きくなる
成長戦略が積極的 小さくなる
成長戦略が安定志向 大きくなる

分配可能限度額の計算方法

分配可能限度額の計算は、会社法の規定に基づいて行われます。

計算には、その他資本剰余金、その他利益剰余金、自己株式などの項目が用いられます。

分配可能限度額の計算は、複雑なため、専門家のサポートを受けることが推奨されます。

分配可能限度額の計算は、会社の財務状況を把握する上で重要な指標の一つです。

分配可能限度額の計算方法
項目 説明
その他資本剰余金 資本剰余金のうち資本準備金以外の勘定項目
その他利益剰余金 利益剰余金のうち利益準備金以外の勘定項目
自己株式 会社が保有する自社株の金額

まとめ

分配可能限度額は、会社の財務状況や成長戦略によって変化するものです。

分配可能限度額を計算することで、会社の財務状況を把握し、投資判断を行うことができます。

分配可能限度額は、会社が健全な経営を維持するために重要な指標です。

分配可能限度額を理解することで、会社は適切な配当政策を決定することができます。

参考文献

PDF 配当等の上限額はどのように計算されるか – 大和総研

No101.【剰余金の分配可能額】配当可能限度額の計算方法を …

配当可能限度額|証券用語解説集|野村證券

剰余金の分配可能額・配当可能額の計算方法や手続きをわかり …

分配可能限度額とは?限度額を超えた配当は違法!? – ヒュープロ

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配当可能限度額とは – マネーフォワード クラウド

配当可能限度額とは?株式用語解説 – お客様サポート – Dmm 株

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