事業報告書とは?経済用語について説明

事業報告書に関する項目
項目 内容
定義 会社法で定められた、会社が1年間の事業活動の状況を株主や関係者に報告するために作成する書類
作成義務 すべての株式会社が作成する義務あり
会社区分 公開会社と公開会社でない会社に分けられる
作成方法 会社法施行規則に基づいて作成、具体的な様式や文章は各会社の任意
目的 株主や投資家への情報提供、ステークホルダーとの信頼関係構築、企業の社会的責任の表明
種類 すべての会社に共通する記載事項と個別に判断が必要な記載事項がある
作成プロセス 目的を明確にする、項目を洗い出す、情報を収集する、文章を作成する、チェックを行う
重要性 企業の透明性と信頼性の向上、ステークホルダーとのコミュニケーション促進、企業価値の向上
今後の展望 一体的開示の推進、ESG情報開示の強化、デジタル化の活用

1. 事業報告書とは

要約

事業報告書の定義

事業報告書とは、会社法で定められた、会社が1年間の事業活動の状況を株主や関係者に報告するために作成する書類です。決算時に開示する書類の一つであり、会社の事業内容、従業員に関する情報、役員に関する情報などを明らかにし、会社の現状と将来の展望を示す役割を担います。

事業報告書は、会社法上の会社区分によって取り扱いが異なります。会社法での会社区分には、「公開会社」と「公開会社でない会社」に分けられます。公開会社とは、その会社の株式を一部でも自由に売買できる会社のことです。反対に、自由に売買できない譲渡制限株式しか発行していない会社は、公開会社でない会社になります。

さらに、公開会社でない場合でも支配関係がある場合(親会社や子会社がいるなど)には事業報告書の記載内容が変わります。記載内容と会社の関係をまとめると、以下のどちらにも該当しない会社は、事業報告書の記載内容を大幅に省略することができます。

事業報告書の作成がなぜ義務付けられているのかというと、そもそも会社は決算情報を株主に開示しなければいけないためです。実際、株主総会の招集通知には、計算書類と事業報告書を添付しています。

事業報告書の定義
項目 内容
定義 会社法で定められた、会社が1年間の事業活動の状況を株主や関係者に報告するために作成する書類
作成義務 すべての株式会社が作成する義務あり
会社区分 公開会社と公開会社でない会社に分けられる
作成方法 会社法施行規則に基づいて作成、具体的な様式や文章は各会社の任意

事業報告書の作成義務

事業報告書の作成義務の根拠は、会社法で定められています。会社法435条2項では、すべての株式会社が事業報告書を作成することを定めています。

株式会社は、法務省令で定めるところにより、各事業年度に係る計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければならない。\n会社法435条2項より

この条文では「株式会社」と定められているため、公開会社、公開会社でない会社を問わず、すべての株式会社が事業報告書を作成することを定めています。

上記会社法435条2項の補足になりますが、会社法435条3項には電磁的記録で作成できる旨の規定があります。\n計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書は、電磁的記録をもって作成することができる。\n会社法435条3項より

事業報告書の作成義務
条文 内容
会社法435条2項 すべての株式会社は事業報告書を作成する義務あり
会社法435条3項 電磁的記録で作成可能

中小企業における事業報告書

中小企業では、不特定多数の株主を招待して株主総会を開催することはないため、事業報告書の必要性が高くないように思えるかもしれません。しかし、すべての株式会社には事業報告書の作成義務があります。

そこで会社法施行規則では117条から126条まで、会社区分による事業報告書の記載内容を定めています(事業報告書の附属明細書は同128条)。

会社法施行規則は、会社を細かく区分し該当する場合、事業報告書に記載するよう求めています。反対に、該当しない場合は記載を省略することが可能です。つまり、この区分によって、中小企業は事業報告書の記載内容を大幅に省略できるのです。

以上をまとめると、すべての株式会社に事業報告書の作成義務があり、中小企業でも免除されません。ただし、事業報告書の記載内容は大幅に省略することが可能です。

中小企業における事業報告書
項目 内容
作成義務 すべての株式会社は作成義務あり
記載内容 会社区分によって異なり、中小企業は大幅に省略可能

まとめ

事業報告書は、会社法で定められた、会社が1年間の事業活動の状況を株主や関係者に報告するために作成する書類です。

すべての株式会社は、事業報告書を作成する義務があり、中小企業でも免除されません。ただし、事業報告書の記載内容は会社区分によって異なり、中小企業は大幅に省略することが可能です。

事業報告書は、会社の現状と将来の展望を示す重要な書類であり、株主や関係者との信頼関係を築くために欠かせません。

事業報告書の作成は、会社法施行規則に基づいて行われ、具体的な様式や文章は各会社の任意となります。ただし、経団連や全国株懇連合会が公表するひな形などを参考に作成することが一般的です。

2. 事業報告書の目的

要約

株主や投資家への情報提供

事業報告書の主な目的は、企業の透明性と信頼性を高め、株主や投資家に情報を提供することです。

事業報告書には、財務諸表(収益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書)の他にも、経営の透明性を高めるための経営者による解説や将来の展望、事業のリスクに関する情報などが含まれています。

事業報告書は公開されるため、企業のイメージや信頼度向上にも大きく寄与します。

また、法律や規制に基づく開示義務があり、株式上場企業や一部非上場企業にとっては必須の文書となっています。

ステークホルダーとの信頼関係構築

事業報告書は、単なる数字の羅列ではなく、企業のストーリーやビジョンを伝える文書でもあります。

そのため、文章のわかりやすさや、情報の正確性、適切な文書構成など、記載内容だけでなく表現方法にも配慮することが重要です。

事業報告書は企業の公式な文書であり、その内容は精緻に作成されています。

読者は、企業の健全性や展望を正確に把握するために、この報告書を重要視しています。企業側も、ステークホルダーの期待に応えるために、十分な配慮と情報開示が求められます。

企業の社会的責任の表明

事業報告書は、企業がその業績や状況を報告し、将来の展望を示す重要な文書です。

事業報告書は、企業の透明性を高めるために重要な役割を果たします。

透明性が高まることで、株主や投資家は企業に対する信頼を持つことができます。

また、正確な情報開示が行われることで、金融市場の公正な運営をサポートし、投資家の意思決定に役立ちます。さらに、企業の社会的責任や持続可能な経営についても報告が求められ、その実践が事業報告書を通じて示されます。

まとめ

事業報告書は、企業の業績や経営状況を株主や投資家に報告し、顧客や取引先、従業員など、企業と関わりのあるステークホルダーに対しても企業の現状や今後の展望を正確に伝えることを目的としています。

事業報告書は、企業の透明性を高め、株主や投資家からの信頼を得るために重要な役割を果たします。

また、金融市場の公正な運営をサポートし、投資家の意思決定に役立ちます。

さらに、企業の社会的責任や持続可能な経営についても報告が求められ、その実践が事業報告書を通じて示されます。

3. 事業報告書の種類

要約

事業報告書の種類

事業報告書は、会社法施行規則によって記載内容が定められていますが、具体的な様式や文章は各会社の任意となります。

ただし、実務的には「日本経済団体連合会」(以下、経団連)または「全国株懇連合会」が公表する事業報告書のひな形、地方公共団体が公表するひな形などを参考にしながら作成することが一般的です。

会社分類と事業報告の記載事項の関係は以下の表の通りです。条文の各項目は後述します。

事業報告書の記載事項は大きく2つに分かれ、「すべての会社に共通する記載事項」(118条)と「個別に判断が必要な記載事項」(124条~126条)があります。例外としては「公開会社の特則」(119条)があり、この特則を補足するように120条から123条があります。

会社分類と事業報告の記載事項
会社区分 記載事項
すべての会社 すべての会社に共通する記載事項(118条)
公開会社 公開会社の特則(119条)
公開会社でない会社 個別に判断が必要な記載事項(124条~126条)

すべての会社に共通する記載事項

すべての会社に共通する記載事項は以下のとおりです。すべての株式会社が対象となっています。

中小企業の場合(親・子会社がない、かつ公開会社でない場合)は基本的に上記(同規則118条)の1と2(※)を事業報告書に記載することになります。

3・4・5については該当する場合に記載が求められます。

※2については、体制がない、または決定等を行っていない場合、記載を省略することができます。なお、取締役会がある「大会社」は記載を省略することができません。

すべての会社に共通する記載事項
項目 内容
1 株式会社の状況に関する重要な事項
2 会社の支配に関する基本方針
3 社外役員に関する事項
4 会計参与に関する事項
5 会計監査人に関する事項

個別に判断が必要な記載事項

公開会社か公開会社でない会社に関係なく、以下のそれぞれに該当する場合は事業報告書の記載が求められます。

まず、社外役員がいる場合は社外役員に関する事項を事業報告書に記載しなければいけません。補足として「社外役員」とは、社外取締役または社外監査役を指します。

次に、会計参与を設置し責任限定契約をしている場合は、その契約の内容を事業報告書に記載しなければいけません。「会計参与」とは、会計の専門家(税理士または公認会計士)として役員と共同して計算書類・帳簿などを作成する立場の人です。

最後に、会計監査人を設置している場合は、事業報告書に会計監査人に関する事項を記載しなければいけません。「会計監査人を設置している場合」とは、公認会計士または監査法人の監査を受けている場合のことです。

個別に判断が必要な記載事項
項目 内容
社外役員 社外役員に関する事項
会計参与 会計参与の責任限定契約の内容
会計監査人 会計監査人に関する事項

まとめ

事業報告書は、会社法施行規則によって記載内容が定められていますが、具体的な様式や文章は各会社の任意となります。

事業報告書の記載事項は大きく2つに分かれ、「すべての会社に共通する記載事項」と「個別に判断が必要な記載事項」があります。

中小企業は、会社法施行規則118条の記載事項を基本として大幅に省略することが可能です。

事業報告書を作成する際には、経団連や全国株懇連合会が公表するひな形などを参考に作成することが一般的です。

4. 事業報告書の作成プロセス

要約

事業報告書の作成手順

事業報告書の作成は、以下の手順で行うのが一般的です。

まず、事業報告書の目的を明確にし、対象となる事業年度を決定します。

次に、会社法施行規則に基づいて、事業報告書に記載すべき項目を洗い出します。

項目ごとに必要な情報を収集し、文章を作成します。

事業報告書の作成手順
手順 内容
1 事業報告書の目的を明確にする
2 対象となる事業年度を決定する
3 会社法施行規則に基づいて、事業報告書に記載すべき項目を洗い出す
4 項目ごとに必要な情報を収集する
5 文章を作成する
6 チェックを行う

事業報告書の作成ポイント

事業報告書を作成する際には、以下のポイントに注意しましょう。

正確で明瞭な記載を心がける。

専門用語は避け、平易な言葉で説明する。

図表やグラフを活用し、視覚的にわかりやすく伝える。

事業報告書の作成ポイント
ポイント 内容
1 正確で明瞭な記載を心がける
2 専門用語は避け、平易な言葉で説明する
3 図表やグラフを活用し、視覚的にわかりやすく伝える
4 前年度との比較や分析を加え、経営状況の変化を示す

事業報告書のチェック

作成した事業報告書は、以下の点をチェックしましょう。

誤字脱字がないか。

情報が正確か。

文章がわかりやすいか。

事業報告書のチェックポイント
チェックポイント 内容
1 誤字脱字がないか
2 情報が正確か
3 文章がわかりやすいか

まとめ

事業報告書の作成は、目的を明確にし、会社法施行規則に基づいて必要な項目を洗い出し、正確でわかりやすい文章を作成することが重要です。

作成した事業報告書は、誤字脱字や情報の正確性、文章のわかりやすさなどをチェックしましょう。

事業報告書は、会社の現状と将来の展望を示す重要な書類であり、作成には十分な時間と労力をかける必要があります。

必要に応じて、専門家のサポートを受けることも検討しましょう。

5. 事業報告書の重要性

要約

企業の透明性と信頼性の向上

事業報告書は、企業の透明性を高め、株主や投資家からの信頼を得るために重要な役割を果たします。

事業報告書を通じて、企業は自社の経営状況や将来の展望を明確に示すことができます。

これにより、株主や投資家は企業に対する理解を深め、投資判断を行うための重要な情報を得ることができます。

また、事業報告書は、企業の社会的責任や持続可能な経営に対する取り組みを明らかにする場としても活用されます。

ステークホルダーとのコミュニケーション促進

事業報告書は、企業とステークホルダーとのコミュニケーションを促進する重要なツールです。

事業報告書を通じて、企業は株主、投資家、顧客、従業員、取引先など、様々なステークホルダーに対して、自社の活動状況や将来の方向性を伝えることができます。

これにより、ステークホルダーとの信頼関係を構築し、企業の持続的な成長を促進することができます。

事業報告書は、企業が社会の一員としての責任を果たすための重要な手段の一つです。

企業価値の向上

事業報告書は、企業の価値向上にも貢献します。

事業報告書を通じて、企業は自社の強みや成長戦略を明確に示すことができます。

これにより、投資家からの評価を高め、企業の資金調達を円滑に進めることができます。

また、事業報告書は、企業のブランドイメージ向上にも役立ちます。

まとめ

事業報告書は、企業の透明性と信頼性を高め、ステークホルダーとのコミュニケーションを促進し、企業価値を向上させるために重要な役割を果たします。

事業報告書は、企業が社会の一員としての責任を果たすための重要な手段の一つであり、企業の持続的な成長を促進する上で欠かせないものです。

企業は、事業報告書を通じて、自社の活動を積極的に開示し、ステークホルダーとの信頼関係を構築していく必要があります。

事業報告書は、企業にとって非常に重要な文書であり、その作成には十分な時間と労力をかける必要があります。

6. 事業報告書の今後の展望

要約

一体的開示の推進

近年、事業報告書と有価証券報告書を一体化して開示する「一体的開示」が注目されています。

一体的開示は、開示書類の作成の効率化や合理化を図り、投資家にとってより分かりやすい情報提供を実現することを目指しています。

関係省庁は、一体的開示を促進するための環境整備を進めており、今後、一体的開示を行う企業が増加していくことが予想されます。

一体的開示は、企業にとって開示業務の負担軽減につながるとともに、投資家にとってより質の高い情報提供を実現する可能性を秘めています。

ESG情報開示の強化

近年、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の3つの要素を指す「ESG」への関心が高まっています。

ESG投資は、企業のESGパフォーマンスを重視した投資であり、ESG情報開示の重要性が高まっています。

事業報告書においても、ESGに関する情報を積極的に開示することが求められています。

企業は、ESG情報を積極的に開示することで、投資家からの評価を高め、資金調達を円滑に進めることができます。

デジタル化の活用

事業報告書のデジタル化が進んでいます。

デジタル化により、事業報告書の作成や配信が効率化され、より多くのステークホルダーに情報を提供することが可能になります。

また、デジタル化された事業報告書は、データ分析や可視化にも活用することができます。

企業は、デジタル化を活用することで、より効果的な事業報告書を作成し、ステークホルダーとのコミュニケーションを強化することができます。

まとめ

事業報告書は、企業の透明性と信頼性を高め、ステークホルダーとのコミュニケーションを促進し、企業価値を向上させるために重要な役割を果たします。

今後、一体的開示の推進、ESG情報開示の強化、デジタル化の活用など、事業報告書を取り巻く環境は大きく変化していくことが予想されます。

企業は、これらの変化に対応し、より効果的な事業報告書を作成していく必要があります。

事業報告書は、企業にとって非常に重要な文書であり、その作成には十分な時間と労力をかける必要があります。

参考文献

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事業報告書の書き方・事業概要や会社概要の記載に必要な項目 …

事業報告書の書き方とポイント | sasa-dango

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