グリーンファイナンスとは?経済用語について説明

グリーンファイナンスの概念と種類
項目	説明
グリーンファイナンス	環境問題の解決に資する投資へのファイナンス
グリーンボンド	グリーンプロジェクトの資金調達のために発行される債券
サステナビリティ・リンク・ボンド	サステナビリティ目標の達成度合いに応じて金利が変動する債券
グリーンローン	グリーンプロジェクトの資金調達のために金融機関から融資を受けること
サステナビリティ・リンク・ローン	サステナビリティ目標の達成度合いに応じて金利が変動するローン
トランジション・ファイナンス	脱炭素社会に向け、移行段階にある分野の技術導入に対する資金供給
ソーシャルボンド	教育・貧困等解決に向けた債権

1. グリーンファイナンスとは
2. グリーンファイナンスのメリット
3. グリーンファイナンスのデメリット
4. グリーンボンドとは
5. グリーンローンの仕組み
6. グリーンファイナンスの将来性

1. グリーンファイナンスとは

グリーンファイナンスの背景

グリーンファイナンスは、地球温暖化対策や再生可能エネルギーの活用など、環境分野への取り組みに特化した資金調達方法です。近年、気候変動問題が深刻化する中、環境問題の解決には莫大な資金が必要となるため、グリーンファイナンスは注目されています。

1972年の国連人間環境会議（ストックホルム会議）以降、環境問題が国際政治の主要課題となりました。経済成長優先の開発が公害問題を引き起こした反省から、環境と開発の調和が課題となり、同年、国連環境計画が設立されました。

1987年には、国連に設置された「環境と開発に関する世界委員会」が報告書『地球の未来を守るために』を公表し、将来世代のニーズを満たす能力を損なうことなく現在世代のニーズを満たす「持続可能な開発」という概念を打ち出しました。

2015年には、国連は2030年に向けた「持続可能な開発目標」(SDGs)を策定しました。国連貿易開発会議（UNCTAD）では、この目標達成のためには、2030年まで年間5兆～7兆ドルの資金が必要になると試算しています。

グリーンファイナンスが注目される背景
時期	出来事
1972年	国連人間環境会議（ストックホルム会議）
1987年	ブルントラント委員会、報告書『地球の未来を守るために』発表
1992年	国連環境開発会議（リオ・サミット）
2002年	持続可能な開発に関する世界首脳会議（ヨハネスブルグ・サミット）
2012年	国連持続可能な開発会議（リオ+20）
2015年	国連持続可能な開発サミット
2016～2030年	持続可能な開発目標(SDGs)採択

グリーンファイナンスの定義

グリーンファイナンスは、環境的に持続可能な開発に向けて、環境に良い効果を与える投資へのファイナンスのことです。環境的便益の例としては、空気や水・土の汚染除去、温室効果ガス排出量削減、エネルギー効率改善、自然資源の活用、気候変動の緩和と適応など多岐にわたります。

グリーンファイナンスは、環境に良い投資を増やし、環境に悪い投資を減らすために、環境リスクなどの情報を投融資などの判断プロセスに統合することも含まれています。

環境問題解決に必要な資金額は膨大で、各国の財政の制約があり、公的資金のみでは不足していくと考えられています。グリーンファイナンスには公的資金も民間資金もありますが、特に民間資金をいかに動員するかが注目されています。

2016年のG20杭州サミットでは、グリーンファイナンスの拡大が必要であることが確認され、グリーンファイナンスは国際的な課題として注目されています。

G20 杭州サミット首脳コミュニケ（第21 項）のポイント
ポイント	説明
グリーンファイナンスの拡大が必要	環境的に持続可能な成長を支えるためには、グリーンファイナンスの拡大が必要
官民連携による対応	グリーンファイナンスの課題の多くは、官民連携により対応可能
GFSG レポートの歓迎	GFSG が提出した「G20 グリーンファイナンス統合レポート」を歓迎
努力すべき事項	戦略的な政策シグナル・枠組みの提供、グリーンファイナンスについてのボランタリーな原則を促進、キャパシティビルディングのため学習ネットワークを拡大、地域のグリーンボンド市場の発展を支持、グリーンボンドへの国境を越えた投資を円滑化する国際協調を促進、環境及び金融のリスクの知識の共有の促進、グリーンファイナンスの活動及び影響の測定方法の改善

グリーンファイナンスの具体例

グリーンファイナンスには、銀行システムの「グリーン化」、債券市場の「グリーン化」、機関投資家の「グリーン化」など、様々な取り組みがあります。

「グリーン化」とは、事業会社や金融機関の体制や活動（資金調達含む）を環境に配慮したものへと変えていくことを意味します。

グリーンファイナンスの主なアクターは、環境に良い（グリーンな）事業を行う「借入主体・発行体」、それらに投資をする「投資家」、そしてこの両者を仲介する「金融機関」です。

借入主体・発行体は、グリーンな事業を行うための資金を、銀行からの借入や、資本市場における株式発行や債券発行などによって調達しています。

グリーンファイナンスの対象セクター例
セクター	例
クリーンエネルギー	風力、太陽光、地熱、小水力、バイオマス、海洋エネルギー
効率改善	産業のエネルギー効率改善、グリーンビルディング、照明、先進素材
交通	地下鉄、バス高速輸送機関、非ディーゼル列車、電気自動車、代替燃料車
汚染・廃棄物・水	汚染防止、リサイクル、廃水処理、廃棄物処理、植林、再植林
土地	エネルギー・水の効率利用、有機農業
低炭素インフラ	送電線の統合、蓄電、スマートグリッド、送電線の効率改善

まとめ

グリーンファイナンスは、環境問題の解決に資する投資へのファイナンスであり、気候変動問題など、地球規模で深刻化する環境問題への対応において重要な役割を担っています。

グリーンファイナンスは、環境問題の解決に必要な莫大な資金を調達するために、公的資金だけでなく、民間資金の活用が不可欠です。

グリーンファイナンスは、環境に良い投資を増やし、環境に悪い投資を減らすために、環境リスクなどの情報を投融資などの判断プロセスに統合していくことも含まれています。

グリーンファイナンスは、世界的に注目されている重要な経済用語であり、今後もその重要性はますます高まっていくと考えられます。

2. グリーンファイナンスのメリット

サステナビリティ経営の向上

グリーンファイナンスを活用することで、企業はサステナビリティ経営を向上させることができます。

サステナビリティ・リンク・ローンやサステナビリティ・リンク・ボンドを活用する場合、企業は野心的なサステナビリティ目標を設定することが義務付けられます。

企業は目標達成に動機付けられ、サステナビリティ経営を向上させることができます。

サステナビリティ経営を高めることは、自社のブランドイメージを向上させることにもつながります。

企業価値の向上

グリーンファイナンスを活用することで、企業は投資家や金融機関から信頼を獲得することができます。

グリーンファイナンスを活用している企業であると社会から認識されることで、新たな貸し手と関係を構築するチャンスも生まれます。

グリーンファイナンスは、企業の環境への取り組みを積極的にアピールする手段となり、社会的な支持の獲得、企業価値の向上へとつながるプラス要素になります。

グリーンファイナンスは、資金を貸す側・借りる側、そして地球環境にとって三方よしの制度だといえます。

資金調達の安定化

グリーンファイナンスは、環境問題への取り組みを積極的に行う企業に対して、投資家や金融機関からの資金調達を促進します。

グリーンファイナンスは、企業が環境問題への取り組みを加速させるための資金調達手段として、経営基盤の安定化に貢献します。

グリーンファイナンスは、企業が長期的に環境問題に取り組める良い循環を生み出す可能性があります。

グリーンファイナンスは、企業が環境問題への取り組みを加速させるための資金調達手段として、経営基盤の安定化に貢献します。

まとめ

グリーンファイナンスは、企業にとってサステナビリティ経営の向上、企業価値の向上、資金調達の安定化など、多くのメリットをもたらします。

グリーンファイナンスは、企業が環境問題への取り組みを加速させるための有効な手段であり、持続可能な社会の実現に貢献する役割を担っています。

3. グリーンファイナンスのデメリット

グリーンウォッシュ

グリーンウォッシュとは、環境改善効果がないにもかかわらず、環境問題に取り組んでいると見せかける行為や情報発信を行うことを言います。

グリーンファイナンスにおいては、投資先の事業が調達資金をグリーンウォッシングに流用しているかのチェック体制が十分でないことが懸念されています。

グリーンウォッシュを防ぐため、ICMAなどの機関がガイドラインを設定し、グリーンファイナンスの投融資にあたってはレポーティングやモニタリングなどで定量的な効果や使われた資金の額などを随時開示するよう求めています。

グリーンウォッシュは、グリーンファイナンスの信頼性を損なう可能性があり、グリーンファイナンスの普及を阻害する要因となる可能性があります。

情報開示の課題

グリーンファイナンスの投資判断においては、企業の気候変動対応への戦略や情報開示が重要な判断材料となります。

しかし、気候変動やその対応が企業に与えるファイナンシャル・インパクトの情報が投資家に適切に提供されているとは限りません。

企業は、排出権取引（ETS）や炭素税による企業の負担、規制の強化による既存の機械設備の減損処理など、気候変動対応によって生じるファイナンシャル・リスクを投資家に開示する必要があります。

気候変動関連情報の開示は、国際的に統一された基準が必要であり、企業は国際的な基準に準拠した情報開示を行う必要があります。

ダイベストメントとエンゲージメント

化石燃料を使いCO2排出の多い企業に対して投資家は、保有する株式・社債を売却して投資を引き揚げること（ダイベストメント）や、エンゲージメント（働きかけ）を通じて気候変動対応を促すという選択肢があります。

ダイベストメントは、化石燃料企業の株価を下げ資金調達を難しくしますが、その企業が既に資金を確保していればインパクトが少ない可能性があります。

エンゲージメントは、企業価値の向上・投資リターンの上昇をめざす有効な手段ですが、変化の遅い企業にいつまでもエンゲージしていると損失ばかりが膨らんでいく可能性があります。

ダイベストメントとエンゲージメントは、どちらも一長一短であり、投資家はそれぞれの状況に合わせて適切な判断を行う必要があります。

まとめ

グリーンファイナンスは、グリーンウォッシュや情報開示の課題、ダイベストメントとエンゲージメントなど、様々な課題を抱えています。

グリーンファイナンスは、信頼性を高め、普及を促進するために、これらの課題を克服していく必要があります。

4. グリーンボンドとは

グリーンボンドの概要

グリーンボンドとは、企業がグリーンプロジェクト（地球温暖化対策などの環境課題の解決に取り組む事業）にかかる資金を調達するために発行する債券です。

グリーンボンドは、調達した資金が確実にグリーンプロジェクトに利用されるよう、厳格なルールが設けられています。

グリーンボンドは、投資家にとって環境に配慮した投資を行う手段となり、企業にとっても環境問題への取り組みをアピールする手段となります。

グリーンボンドは、環境問題への取り組みを促進し、持続可能な社会の実現に貢献する役割を担っています。

グリーンボンドの種類

グリーンボンドは、償還原資等の違いにより4種類に分類されます。

プロジェクトボンド：特定のグリーンプロジェクトの資金調達のために発行される債券。

セクターボンド：特定のグリーンセクター（再生可能エネルギーなど）の資金調達のために発行される債券。

テーマボンド：特定のグリーンテーマ（気候変動対策など）の資金調達のために発行される債券。

グリーンボンドの種類
種類	説明
プロジェクトボンド	特定のグリーンプロジェクトの資金調達のために発行される債券
セクターボンド	特定のグリーンセクター（再生可能エネルギーなど）の資金調達のために発行される債券
テーマボンド	特定のグリーンテーマ（気候変動対策など）の資金調達のために発行される債券
その他	上記以外のグリーンボンド

グリーンボンドの発行事例

自然電力株式会社は、2019年にグリーンボンドを発行し、太陽光発電事業の開発費用を調達しました。

三井不動産株式会社は、2023年に500億円のグリーンボンドを発行し、東京都に持つ「日本橋室町三井タワー」「日本橋三井タワー」のリファイナンス（借り換え）資金として調達しました。

東京都は、2017年に全国の自治体で初となる「東京グリーンボンド」を発行しました。

株式会社日本郵船は、2018年に海運業界で世界初のグリーンボンドを発行しました。

まとめ

グリーンボンドは、企業が環境問題への取り組みを加速させるための資金調達手段として、近年注目されています。

グリーンボンドは、投資家にとって環境に配慮した投資を行う手段となり、企業にとっても環境問題への取り組みをアピールする手段となります。

グリーンボンドは、環境問題への取り組みを促進し、持続可能な社会の実現に貢献する役割を担っています。

5. グリーンローンの仕組み

グリーンローンの概要

グリーンローンとは、グリーンプロジェクトで必要となる資金について、金融機関から融資を受けることです。

グリーンローンは、用途がグリーンプロジェクトに限定される点や、レポーティングが義務付けられるといった特徴はグリーンボンドと共通しています。

グリーンローンは、金融機関からの融資のため、安定的なキャッシュフローを得られるのがポイントです。

環境改善効果については認証機関などによる外部レビューを受ける必要がありますが、正しく活用すれば自社の信頼性を高めることにもつながります。

グリーンローンの種類

グリーンローンは、償還原資等の違いにより2種類に分類されます。

プロジェクトローン：特定のグリーンプロジェクトの資金調達のために提供されるローン。

セクターローン：特定のグリーンセクター（再生可能エネルギーなど）の資金調達のために提供されるローン。

グリーンローンは、企業が環境問題への取り組みを加速させるための資金調達手段として、近年注目されています。

グリーンローンの種類
種類	説明
プロジェクトローン	特定のグリーンプロジェクトの資金調達のために提供されるローン
セクターローン	特定のグリーンセクター（再生可能エネルギーなど）の資金調達のために提供されるローン