項目 | 内容 |
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定義 | 債務を株式に変えること。企業は借入金を資本金に変え、債権者は債権を株式に変える |
英語表記 | Debt Equity Swap(デット・エクイティ・スワップ) |
略称 | DES |
実施目的 | 借入金の返済が困難になった企業の経営再建 |
種類 | 現物出資 |
手続き | 株主総会と取締役会の決議、債権者との契約 |
評価方法 | 時価評価、券面額説 |
適用法 | 会社法 |
規制 | 独占禁止法、銀行法 |
メリット | 負債削減、財務体質改善、倒産リスク低減、経営安定化 |
デメリット | 既存株主の利益低下、株価下落、株主の利害調整、経営への干渉 |
成功事例 | 長谷工コーポレーション、ダイエー |
教訓 | 企業の状況や経営戦略によって効果が異なるため、慎重に検討する必要がある |
1. 債務の株式化とは何か
債務の株式化とは何か?
債務の株式化とは、文字通り債務を株式に変えることであり、企業側から見ると借入金などの債務を資本金(あるいは資本金と資本準備金)に変えること、債権者側から見ると債権を株式に変えることです。英語では「Debt Equity Swap(デット・エクイティ・スワップ)」と言い、実務ではよく略して「DES」と呼ばれます。この債務の株式化は、通常、借入金などの債務の弁済が困難になった企業において行われます。
企業への出資は、通常、「金銭出資」です。金銭出資とは、企業に対して金銭を提供して、その企業の株式を取得することです。それに対して、現物出資では、企業に対して、金銭ではなく現物、すなわち金銭以外の財産を提供して、その企業の株式を取得します。
債務の株式化とは、例えば、企業に対して貸付金を有している銀行が、その貸付金という財産を提供することによって株式を取得するというものです。その場合、企業にとっては、結果として借入金が資本金等に変わることになります。
現物出資を行う場合、企業に提供される財産の価額について、裁判所が選任する検査役による調査を受けなければならないのですが(会社法207条1項)、債務の株式化の場合は、これが原則不要とされます(会社法207条9項5号)。
用語 | 説明 |
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債務の株式化 | 債務を株式に変えること。企業は借入金を資本金に変え、債権者は債権を株式に変える |
現物出資 | 金銭以外の財産を提供して株式を取得すること |
検査役 | 裁判所が選任する、現物出資の財産の価額を調査する役職 |
債務の株式化はなぜ必要なのか?
債務の株式化は、シャープのような大企業に限らず、中小企業においても広く行われています。一般的には金融機関等による企業に対する支援と捉えられています。しかし、借入金を返さなくてもよくなるのだから、ありがたい方法だなどと安易に捉えない方がよいでしょう。債務の株式化は、債務の免除とは異なるのです。
債権者が今度は株主となり、経営に口を出してくるようになる。これは非常に厄介なことだということを認識しておかなければならないでしょう。
企業が過度に負債を利用してしまう「何らかの理由」とはいったどのような理由であろうか?一般に考えられるのが、経営の悪化です。売上が次第に減少するなどの理由で業績が悪化した企業では事業活動を継続するうえで必要な資金が不足します。
この資金不足を補うために外部資金を調達する必要性に迫られ、負債による資金調達を繰り返し、その結果として高負債比率の状態となります。通常、資金調達の手段としては株式発行も考えられますが、業績の悪化した企業は株価も低く、公募増資による資金調達を十分に実施することができない、あるいは実質的に実施することが困難となります。
状況 | 説明 |
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経営悪化 | 売上の減少などにより、事業に必要な資金が不足する |
高負債比率 | 資金不足を補うために負債による資金調達を繰り返すことで、負債比率が高くなる |
債務不履行の可能性 | 負債比率が高くなると、債務不履行のリスクが高まる |
資金調達コストの上昇 | 債務不履行のリスクが高い企業は、資金提供者から高いコストを要求される |
債務の株式化は誰にとってメリットがあるのか?
債務の株式化は、債務者である企業と債権者である銀行などの双方にとってメリットがあります。企業側から見ると、利息をつけて返済をしなければならない借入金が株主資本に切り替わるため、企業の有利子負債を圧縮できます。
一方の銀行は、経営再建に成功するという条件つきながらも、将来、融資を回収する以上の利益を受け取ることが可能になります。
債務の株式化は、銀行など債権者に向けた企業の経営再建の手法として使われることが多いです。
ただし、株式の新規発行によって、既存の株主にとっては1株の価値が下がるというデメリットも発生します。
利害関係者 | メリット | デメリット |
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企業 | 負債削減、財務体質改善 | 既存株主の利益低下、株価下落 |
債権者 | 将来の利益獲得の可能性 | 株式の価値が低い場合がある |
既存株主 | 経営の安定化 | 持株比率の希薄化 |
まとめ
債務の株式化は、企業が借入金などの債務を資本金に変えることで、財務体質を改善する手法です。債務の株式化は、債務の免除とは異なり、債権者は株主となり、経営に口出しをする可能性があります。
債務の株式化は、経営不振に陥った企業が、銀行などの債権者から債務の免除と引き換えに株式を発行することで、負債を減らし、資本を増やすことを目的として行われます。
債務の株式化は、企業にとってメリットとデメリットがあるため、慎重に検討する必要があります。
債務の株式化は、企業の経営再建において重要な役割を果たす可能性を秘めていますが、安易に利用すべきではありません。
2. 債務の株式化のメリットとデメリット
債務の株式化のメリット
債務の株式化は、企業にとって様々なメリットがあります。まず、負債の削減によって、財務体質が改善されます。借入金が減ることで、利息の支払い義務からも解放され、経営の自由度が高まります。
また、財務状況の改善により、新たな借入を行うという選択肢も生まれます。これは、企業の信用力向上に繋がり、より有利な条件で資金調達ができる可能性があります。
さらに、倒産リスクの低減も期待できます。債務超過が解消され、財務状況が安定することで、投資家や金融機関からの信頼度が高まり、倒産のリスクを軽減することができます。
債務の株式化は、経営の安定化にも貢献します。債務の返済負担が減ることで、経営者は事業に集中することができ、長期的な安定成長を図りやすくなります。
メリット | 説明 |
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負債削減 | 借入金が減り、利息の支払い義務が軽減される |
財務体質改善 | 自己資本比率が向上し、企業の財務の安定性が向上する |
倒産リスク低減 | 財務状況が安定することで、投資家や金融機関からの信頼度が高まり、倒産のリスクが軽減される |
経営安定化 | 債務の返済負担が減ることで、経営者は事業に集中することができ、長期的な安定成長を図りやすくなる |
債務の株式化のデメリット
債務の株式化には、いくつかのデメリットも存在します。まず、既存の株主の利益が相対的に低下する可能性があります。債務の株式化によって、新たな株式が発行され、既存の株主の持株比率が希薄化するためです。
また、株価の低下を招く可能性もあります。債務の株式化によって、企業の収益力が低下したり、経営の透明性が損なわれたりすると、投資家の間で企業への信頼度が下がり、株価が下落する可能性があります。
さらに、新たな株式発行による株主の利害の調整が必要になることもあります。債務の株式化によって、新たな株主が誕生し、経営への影響力を持つようになるため、既存の株主との利害調整が複雑になる可能性があります。
債務の株式化は、経営への干渉を招く可能性もあります。債権者が株主となることで、経営への関与度が高まり、経営方針や戦略に影響を与える可能性があります。
デメリット | 説明 |
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既存株主の利益低下 | 新たな株式が発行され、既存の株主の持株比率が希薄化するため、1株あたりの価値が下がる |
株価下落 | 企業の収益力が低下したり、経営の透明性が損なわれたりすると、投資家の間で企業への信頼度が下がり、株価が下落する可能性がある |
株主の利害調整 | 新たな株主が誕生し、経営への影響力を持つようになるため、既存の株主との利害調整が複雑になる可能性がある |
経営への干渉 | 債権者が株主となることで、経営への関与度が高まり、経営方針や戦略に影響を与える可能性がある |
債務の株式化は誰にとって有効なのか?
債務の株式化は、財務状況さえ改善できれば収益を得ることが可能となるような可能性のある会社が債務超過に陥っている場合に特に有効な方法といえます。
具体的には、経営不振や債務超過に陥っている企業、新たな事業展開のための資金調達が必要な企業、財務体質の改善を急務とする企業などが挙げられます。
ただし、債務の株式化は、企業の状況や経営戦略によって効果が大きく異なるため、慎重に検討する必要があります。
特に、経営陣の交代や減資を伴わずに債務の株式化を行う場合には、公平性がないという反応や、フレッシュな体制で経営革新ができるのかという疑問が、内外で起こるおそれがあります。
企業 | 説明 |
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経営不振や債務超過に陥っている企業 | 財務体質の改善を急務とする企業 |
新たな事業展開のための資金調達が必要な企業 | 事業拡大のための資金調達を必要とする企業 |
財務体質の改善を急務とする企業 | 負債比率が高く、財務の安定性を高める必要がある企業 |
まとめ
債務の株式化は、企業にとってメリットとデメリットの両方があるため、慎重に検討する必要があります。
債務の株式化は、企業の財務体質を改善し、経営を安定させる効果が期待できますが、同時に、既存の株主の利益を低下させたり、株価を下落させたりするリスクも伴います。
債務の株式化は、企業の状況や経営戦略によって効果が大きく異なるため、適切なタイミングで実施することが重要です。
債務の株式化を行う際には、経営陣の交代や減資などの対策を検討し、既存の株主との利害調整を図ることが重要です。
3. 債務の株式化の仕組みと手法
債務の株式化の手続き
債務の株式化は、会社法の規定に基づいて行われます。会社法において債務を資本金に変える手続が直接定められているわけではなく、債務の株式化は「現物出資」の一種です。
現物出資とは、企業に対して金銭ではなく、金銭以外の財産を提供して、その企業の株式を取得することです。債務の株式化では、企業に対して、貸付金などの債権を現物出資として提供することで、株式を取得します。
現物出資を行う場合、企業に提供される財産の価額について、裁判所が選任する検査役による調査を受けなければならないのですが(会社法207条1項)、債務の株式化の場合は、これが原則不要とされます(会社法207条9項5号)。
ただし、500万円を超える額を現物出資する場合は、総勘定元帳などの会計帳簿を添付しなければなりません。
手順 | 説明 |
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株主総会の決議 | 債務の株式化を行うことを決議する |
取締役会の決議 | 株主総会の決議に基づき、取締役会で債務の株式化の詳細を決定する |
債権者との契約 | 債権者と債務の株式化に関する契約を締結する |
登記手続き | 法務局へ増資手続きに必要な書類を提出する |
債務の株式化の手順
債務の株式化を行うには、以下の手順を踏む必要があります。
1. 株主総会の決議: 債務の株式化を行うことを決議します。
2. 取締役会の決議: 株主総会の決議に基づき、取締役会で債務の株式化の詳細を決定します。
3. 債権者との契約: 債権者と債務の株式化に関する契約を締結します。
書類 | 説明 |
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株主総会議事録 | 債務の株式化を行うことを決議した内容を記載する |
取締役会議事録 | 取締役会で債務の株式化の詳細を決定した内容を記載する |
出資者からの申込書 | 債権者が株式を引き受けることを表明する書類 |
会社の証明書 | 債権が資本金に計上されたことを証明する書類 |
債務の株式化の評価方法
債務の株式化を行う際に、債権の評価方法として、時価評価と券面額説の二つがあります。
時価評価とは、債権の現在の市場価値を評価する方法です。一方、券面額説とは、債権の額面金額を評価する方法です。
2000年に東京地方裁判所が額面での評価、すなわち券面額説を採用することを明らかにしたことで、債務の株式化を行う条件が整備されました。
ただし、券面額説は、債権の価値を正確に反映していない可能性があるため、債権者と債務者の双方にとって必ずしも公平な方法ではありません。
評価方法 | 説明 |
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時価評価 | 債権の現在の市場価値を評価する方法 |
券面額説 | 債権の額面金額を評価する方法 |
まとめ
債務の株式化は、会社法に基づいた「現物出資」の一種であり、債権者を引受先とする第三者割当増資によって行われます。
債務の株式化を行う際には、債権の評価方法として、時価評価と券面額説のどちらを採用するかを決定する必要があります。
2000年に東京地方裁判所が券面額説を採用したことで、債務の株式化の手続きが簡素化されました。
ただし、債務の株式化は、企業の状況や経営戦略によって効果が大きく異なるため、慎重に検討する必要があります。
4. 債務の株式化が企業に与える影響
財務状況への影響
債務の株式化は、企業の財務状況に大きな影響を与えます。まず、負債の減少によって、財務体質が改善されます。借入金が減ることで、利息の支払い義務からも解放され、経営の自由度が高まります。
また、自己資本比率の向上も期待できます。自己資本比率とは、自己資本を総資本で割ったもので、企業の財務の安定性を示す指標です。債務の株式化によって、自己資本が増加し、自己資本比率が向上することで、企業の財務の安定性が向上します。
さらに、信用力向上にも繋がります。財務体質が改善することで、銀行などの金融機関からの信頼度が高まり、より有利な条件で資金調達ができる可能性があります。
ただし、債務の株式化は、既存の株主の利益を低下させる可能性もあります。債務の株式化によって、新たな株式が発行され、既存の株主の持株比率が希薄化するためです。
影響 | 説明 |
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負債削減 | 借入金が減り、利息の支払い義務が軽減される |
自己資本比率の向上 | 自己資本が増加し、企業の財務の安定性が向上する |
信用力向上 | 財務体質が改善することで、銀行などの金融機関からの信頼度が高まり、より有利な条件で資金調達ができる可能性がある |
既存株主の利益低下 | 新たな株式が発行され、既存の株主の持株比率が希薄化するため、1株あたりの価値が下がる |
経営への影響
債務の株式化は、企業の経営にも影響を与えます。まず、経営の安定化が期待できます。債務の返済負担が減ることで、経営者は事業に集中することができ、長期的な安定成長を図りやすくなります。
また、経営の自由度向上にも繋がります。債務の返済負担が減ることで、経営者は新たな事業への投資や、既存事業の拡大など、より積極的な経営戦略を立てることができます。
さらに、経営者のモラルハザード抑制にも効果が期待できます。債権者が株主となることで、経営者の行動を監視する力が強まり、モラルハザードを抑制することができます。
ただし、債務の株式化は、経営への干渉を招く可能性もあります。債権者が株主となることで、経営への関与度が高まり、経営方針や戦略に影響を与える可能性があります。
影響 | 説明 |
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経営安定化 | 債務の返済負担が減ることで、経営者は事業に集中することができ、長期的な安定成長を図りやすくなる |
経営の自由度向上 | 債務の返済負担が減ることで、経営者は新たな事業への投資や、既存事業の拡大など、より積極的な経営戦略を立てることができる |
経営者のモラルハザード抑制 | 債権者が株主となることで、経営者の行動を監視する力が強まり、モラルハザードを抑制することができます |
経営への干渉 | 債権者が株主となることで、経営への関与度が高まり、経営方針や戦略に影響を与える可能性がある |
株主への影響
債務の株式化は、株主にも影響を与えます。まず、既存の株主の持株比率が希薄化する可能性があります。債務の株式化によって、新たな株式が発行され、既存の株主の持株比率が低下するためです。
また、株価の低下を招く可能性もあります。債務の株式化によって、企業の収益力が低下したり、経営の透明性が損なわれたりすると、投資家の間で企業への信頼度が下がり、株価が下落する可能性があります。
さらに、配当金の減少の可能性もあります。債務の株式化によって、企業の利益が減少したり、新たな投資に資金を回す必要が生じたりすると、配当金が減少する可能性があります。
ただし、債務の株式化によって、企業の経営が改善され、将来的な収益増加が見込まれる場合は、株価が上昇する可能性もあります。
影響 | 説明 |
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持株比率の希薄化 | 新たな株式が発行され、既存の株主の持株比率が低下する |
株価下落 | 企業の収益力が低下したり、経営の透明性が損なわれたりすると、投資家の間で企業への信頼度が下がり、株価が下落する可能性がある |
配当金の減少 | 債務の株式化によって、企業の利益が減少したり、新たな投資に資金を回す必要が生じたりすると、配当金が減少する可能性がある |
株価上昇 | 企業の経営が改善され、将来的な収益増加が見込まれる場合は、株価が上昇する可能性がある |
まとめ
債務の株式化は、企業の財務状況、経営、株主のそれぞれに影響を与えます。
財務状況に関しては、負債の削減、自己資本比率の向上、信用力向上などが期待できますが、同時に、既存の株主の利益を低下させる可能性もあります。
経営に関しては、経営の安定化、経営の自由度向上、経営者のモラルハザード抑制などが期待できますが、同時に、経営への干渉を招く可能性もあります。
株主に関しては、持株比率の希薄化、株価の低下、配当金の減少などが懸念されますが、同時に、企業の経営が改善され、将来的な収益増加が見込まれる場合は、株価が上昇する可能性もあります。
5. 債務の株式化とはどのように進化してきたか
債務の株式化の導入背景
日本では、1990年代後半から債務の株式化が注目されるようになりました。これは、バブル崩壊後の企業の過剰債務問題や、不良債権問題が深刻化したことが背景にあります。
1999年に設立された産業競争力会議では、過剰債務の状態にある企業を対象とした債務の株式化が提唱されました。
その後、産業再生法が制定され、債務の株式化を行う際の優遇措置が導入されました。
しかし、産業再生法は、債務の株式化の促進に実際に与えた影響は限定的でした。
時期 | 出来事 | 説明 |
---|---|---|
1990年代後半 | バブル崩壊 | 企業の過剰債務問題や不良債権問題が深刻化 |
1999年 | 産業競争力会議 | 過剰債務企業を対象とした債務の株式化が提唱 |
1999年 | 産業再生法 | 債務の株式化を行う際の優遇措置が導入 |
2000年 | 民事再生法 | 株式会社である再生債務者が、裁判所の許可を得て、再建計画に基づき減資することが認められる |
債務の株式化の法的整備
2000年に施行された民事再生法では、株式会社である再生債務者が、裁判所の許可を得て、再建計画に基づき減資することが認められました。
この手続が認められたことにより、旧株主に対しても債権者同様、損失負担を求めることができると同時に、減資後に債権者に新規の株式を発行することにより、デット・エクイティ・スワップが容易となりました。
また、2001年には、独占禁止法と銀行法が改正され、金融機関の株式所有に関する規制が緩和されました。
これらの法改正により、金融機関が債務の株式化によって取得する株式の所有比率が5%を超える場合でも、規制に抵触しにくくなりました。
時期 | 法改正 | 説明 |
---|---|---|
2001年 | 独占禁止法改正 | 金融機関の株式所有に関する規制が緩和 |
2001年 | 銀行法改正 | 金融機関の株式所有に関する規制が緩和 |
2000年 | 民事再生法 | 株式会社である再生債務者が、裁判所の許可を得て、再建計画に基づき減資することが認められる |
債務の株式化の活用拡大
2002年以降、ダイエーや長谷工コーポレーションなど、多くの企業が債務の株式化を実施しました。
特に、ダイエーの再建計画では、約99%の減資と融資債務2
これらの事例をきっかけに、債務の株式化は、企業の再建手法として広く認知されるようになりました。
しかし、債務の株式化は、企業の状況や経営戦略によって効果が大きく異なるため、慎重に検討する必要があります。
時期 | 企業 | 説明 |
---|---|---|
2002年以降 | ダイエー、長谷工コーポレーションなど | 多くの企業が債務の株式化を実施 |
2002年 | ダイエー | 約99%の減資と融資債務2,300億円を優先株2,200億円、普通株100億円に転換する案を発表 |
まとめ
債務の株式化は、1990年代後半から注目されるようになり、産業再生法や民事再生法などの法整備が進められてきました。
2000年代に入ってからは、ダイエーや長谷工コーポレーションなど、多くの企業が債務の株式化を実施し、その活用が拡大しています。
債務の株式化は、企業の財務体質を改善し、経営を安定させる効果が期待できますが、同時に、既存の株主の利益を低下させたり、株価を下落させたりするリスクも伴います。
債務の株式化は、企業の状況や経営戦略によって効果が大きく異なるため、適切なタイミングで実施することが重要です。
6. 債務の株式化の成功事例とその教訓
長谷工コーポレーションの事例
長谷工コーポレーションは、バブル期に不動産事業に本格的に参入し、規模を急速に拡大させました。しかし、バブル崩壊後に地価が下落したことにより、保有不動産の資産価値が下落し、収益の悪化が顕在化しました。
さらに、バブル期以降の高水準の負債比率による利子負担の増大が同社の収益を一層悪化させる一因となりました。
これに対し、長谷工は保有不動産の売却と有利子負債の削減を中心とするリストラクチャリングを実施しました。
2002年に実施された債務の株式化により、同社は前年に生じた債務超過の状態から脱することができました。
時期 | 内容 | 結果 |
---|---|---|
2002年 | 債務の株式化を実施 | 債務超過から脱却、利子負担軽減 |
2000年前後 | マンション関連事業への経営資源集中 | 業績改善、株価上昇 |
ダイエーの事例
ダイエーは、2000年代初頭に経営不振に陥り、債務超過に陥りました。
ダイエーは、2002年に約99%の減資と融資債務2
この債務の株式化は、ダイエーの経営再建に大きく貢献しました。
しかし、ダイエーのケースでは、債務の株式化によって既存の株主の利益が大きく低下し、株価も下落しました。
時期 | 内容 | 結果 |
---|---|---|
2002年 | 約99%の減資と融資債務2,300億円を優先株2,200億円、普通株100億円に転換 | 既存株主の利益低下、株価下落 |
2000年代初頭 | 経営不振 | 債務超過に陥る |
債務の株式化の教訓
債務の株式化は、企業の財務体質を改善し、経営を安定させる効果が期待できますが、同時に、既存の株主の利益を低下させたり、株価を下落させたりするリスクも伴います。
債務の株式化は、企業の状況や経営戦略によって効果が大きく異なるため、慎重に検討する必要があります。
債務の株式化を行う際には、経営陣の交代や減資などの対策を検討し、既存の株主との利害調整を図ることが重要です。
また、債務の株式化は、企業の経営を改善するための手段の一つであり、万能薬ではありません。
教訓 | 説明 |
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慎重な検討 | 企業の状況や経営戦略によって効果が異なるため、慎重に検討する必要がある |
対策の検討 | 経営陣の交代や減資などの対策を検討し、既存の株主との利害調整を図る |
万能薬ではない | 債務の株式化は、企業の経営を改善するための手段の一つであり、万能薬ではありません |
まとめ
債務の株式化は、企業の経営再建において重要な役割を果たす可能性を秘めていますが、安易に利用すべきではありません。
債務の株式化を行う際には、企業の状況や経営戦略を慎重に検討し、適切なタイミングで実施することが重要です。
また、既存の株主との利害調整を図り、経営への影響を最小限に抑えるための対策を検討する必要があります。
債務の株式化は、企業の経営再建のための手段の一つであり、万能薬ではありません。
参考文献
・債務の株式化(サイムノカブシキカ)とは? 意味や使い方 – コト …
・債務の株式化とは?経済の分野で注目されるそのメリットと …
・わかりやすい用語集 解説:債務の株式化(さいむのかぶしきか …
・デット・エクイティ・スワップ(Des、債務の株式化)とは …
・現代金融用語の基礎知識 【第18回】「債務の株式化(デット …
・「債務の株式化」の意味や使い方 わかりやすく解説 Weblio辞書
・債務株式化とは?株式用語解説 – お客様サポート – Dmm 株
・債務の株式化(Des) | 目からウロコの経済用語「一語千金 …
・Desとは?Des(債務の株式化:デット・エクイティ・スワップ …
・PDF 債務の株式化 : 長谷工コーポレーションの成功事例
・デット・エクイティ・スワップ(債務の株式化)とは|株式 …