ペルシャ庭園とは？世界遺産についての解説

ペルシャ庭園の構成要素
要素	説明
チャハル・バーグ	庭園を4つの区画に分割する構造
水路	灌漑と鑑賞の役割を担う
噴水	涼しさと活力を与える
パビリオン	休息や集会のための場所
植栽	美観向上と日差しを遮る役割
カナート	地下水路で水を供給
バードギール	風採り塔で涼しい風を作り出す
植物	バランスを保ち、象徴的な意味を持つ

1. ペルシャ庭園の歴史と起源

アケメネス朝ペルシャとパラダイス

ペルシャ庭園の歴史は古く、紀元前6世紀のアケメネス朝ペルシャの初代皇帝キュロス2世の時代にまで遡ります。アケメネス朝は、現在のイランを中心とした広大な地域を支配し、その文化は周辺地域に大きな影響を与えました。ペルシャ庭園は、乾燥地帯であるイランの厳しい自然環境の中で、その土地に適応し発展させてきたペルシャ人の多様性と技術力の高さを示すものです。庭園内には水路が張り巡らされ、猛暑や砂嵐を忘れさせる、理想的で快適な場所を造ることを目指して造園されています。このような庭園を古代ペルシャ語では「パイリダエーザ」と言い、これが「パラダイス」の語源とも言われています。厳しい自然、風土にも関わらず、豊かな水が潤す庭園の風景は、まさに「パラダイス」と言えるでしょう。

ペルシャ庭園は、古代オリエント、あるいはメソポタミア地域で発達した庭園設計が起源と考えられています。ササン朝ペルシアの時代にゾロアスター教（拝火教）が信仰され、対する”水”を意識した庭園造りに進化していったそうです。さらにイスラムの文化が入ってくると、幾何学的な考え方が加わり、水路によって四分割された４つの四角形の庭園（チャハル・バーグ）が、基本的な設計になっていきます。この設計は創世記に登場する”エデンの楽園”を模したものとされ、またエデンの楽園はチグリスとユーフラテス、つまりメソポタミア地域にあったとされる説もあるそうです。創世記のエデンの楽園が実在するのか、それがペルシャ庭園の起源なのか、史実は不明ですが、今現在、イラン各地に点在する９つの庭園はこれらの設計を基本とし、世界に広がっていた点から世界遺産に登録されました。

イランにおける9つの庭園は、紀元前６世紀のアケメネス朝ペルシア、キュロス王時代を起源とした原理を保ちつつ、さまざまな気象条件に合わせて発展、適応させた多様なペルシャ庭園様式の代表例です。庭園は、灌漑と鑑賞の両方の役割を持つ水路によって、常に4区画に分割され、ゾロアスター教の天･地･水・植物の4元素を象徴するよう構想されたそうです。

こうした庭園設計術は、東はインド、世界遺産では「タージマハル」の目前に広がる庭園、西はスペイン「グラナダのヘネラリフェ」中庭、さらにはフランスの「ヴェルサイユ宮殿」の庭園等にまで影響を与えました。

ペルシャ庭園の起源
時代	特徴
アケメネス朝	パイリダエーザ（パラダイス）の概念
ササン朝	水重視の庭園造り
イスラム文化	幾何学的なチャハル・バーグ

世界遺産登録された9つの庭園

イランに幅広く点在する9つの庭園は、ユネスコのサイトに載っていて、庭だけでなく、含まれる建築物など、コアエリアとバッファーゾーンまで詳細に定義されています。

①Bagh-e Eram（エラムの庭園）

②Bagh-e Chehel Sotun（チェヘル・ソトゥーンの庭園）

③Bagh-e Dolat Abad（ドーラト・アバッドの庭園）

世界遺産登録された9つの庭園
名称	場所
エラム庭園	シーラーズ
チェヘル・ソトゥーン庭園	エスファハーン
ドーラト・アバッド庭園	ヤズド
パサルガダエ庭園	ファールス州
フィーン庭園	カーシャーン
アッバース・アーバード庭園	ベフシャフル
シャーザデー庭園	マーハーン
パフラヴァンプール庭園	メフリーズ
アクバリーエ庭園	ビールジャンド

パサルガダエ庭園

イラン・ファールス州にあるパサルガダエ庭園は、2004年に世界文化遺産に登録された「パサルガダエ」の庭園です。紀元前6世紀ハカーマニシュ朝時代に造営された庭園は、「ペルシャ式庭園」の中で最古の庭園といわれています。

パサルガダエは「ペルシャ人の本営」という意味で、現在のイラン南西部のファールス州に築かれた都でした。アケメネス朝ペルシャの最初の首都となった場所でもあり、その王朝を開いたのがキュロス2世。かつての宮殿と庭園は現在も区画だけは残っています。庭園を四分割するという「チャハルバーグ（四分庭園）」がこの頃から見られるというのも特徴です。

パサルガダエ庭園は、王宮の玉座の間に面して長方形の庭園が設けられていたとされています。

パサルガダエ庭園は、ペルシャ式庭園の起源をたどる上で重要な場所であり、世界遺産に登録された9つの庭園の中でも特に注目すべき存在です。

パサルガダエ庭園の特徴
特徴	説明
最古の庭園	紀元前6世紀に造営
チャハル・バーグ	庭園を四分割
水源	ポルヴァー川から水を引いていた
構造	王宮の玉座の間に面した長方形

まとめ

ペルシャ庭園は、アケメネス朝ペルシアの時代に起源を持ち、その後、ササン朝ペルシア、イスラム文化の影響を受けながら発展してきました。

イラン各地に点在する9つの庭園は、それぞれ異なる特徴を持ちながらも、共通して「チャハル・バーグ」と呼ばれる四分割された庭園構造を採用しています。

これらの庭園は、ゾロアスター教の4元素やエデンの楽園といった思想を反映しており、イランの文化や歴史を深く理解する上で重要な役割を果たしています。

ペルシャ庭園は、その美しさだけでなく、イランの文化や歴史を伝える重要な遺産として、世界遺産に登録されました。

2. ペルシャ庭園の特徴と構造

チャハル・バーグ

ペルシャ庭園の特徴として、庭園内に水路が張り巡らされていることがあげられます。これは、猛暑や砂嵐などを忘れさせる、理想的で快適な場所を造ることを目指して造園されているためです。

ペルシャ庭園は、灌漑と鑑賞の両方の役割を持つ水路によって、常に4区画に分割され、ゾロアスター教の天･地･水・植物の4元素を象徴するよう構想されたそうです。

この四分割された庭園構造は「チャハル・バーグ」と呼ばれ、当時の人々が考えていた「エデンの楽園」を模倣したものです。

チャハル・バーグは、4つの川と4つに分割された円が世界を意味するという考え方で、庭園の中心で交差する軸となる小道でレイアウトされた4つの部分からなる庭園です。

チャハル・バーグ
要素	説明
4つの区画	水路で分割
象徴	ゾロアスター教の4元素
デザイン	中心で交差する小道
意味	4つの川と4つの円が世界を表す

水路と噴水

ペルシャ庭園では、水路は単なる装飾的な要素ではなく、庭園全体に潤いを与える重要な役割を担っています。

水路は、庭園の中央を流れ、四隅に配置された噴水へとつながっています。噴水は、水の音と水しぶきによって、涼しさと活力を与え、庭園に生命感をもたらします。

水路と噴水は、庭園の美観を向上させるだけでなく、乾燥した気候の中で植物を育てるための重要な役割も担っています。

ペルシャ庭園の水路と噴水は、自然と人工の要素を融合させた、洗練された庭園設計の象徴と言えるでしょう。

水路と噴水
要素	役割
水路	灌漑と鑑賞
噴水	涼しさと活力を与える
機能	植物を育てる
象徴	生命の源である水を表す

パビリオンと植栽

ペルシャ庭園には、水路や噴水に加えて、パビリオンや植栽も重要な要素です。

パビリオンは、庭園の中心に位置し、休息や集会のための場所として利用されました。

植栽は、庭園の美観を向上させるだけでなく、日差しを遮り、涼しい空間を作り出す役割も担っています。

ペルシャ庭園では、バラ、ユリ、チューリップなど、様々な花が植えられており、四季折々の美しい景色を楽しむことができます。

パビリオンと植栽
要素	役割
パビリオン	休息や集会
植栽	美観向上と日差しを遮る
種類	バラ、ユリ、チューリップなど
目的	快適な空間を作り出す

まとめ

ペルシャ庭園は、チャハル・バーグと呼ばれる四分割された庭園構造、水路と噴水、パビリオンと植栽など、様々な要素が組み合わさって構成されています。

これらの要素は、単に美しい景色を作り出すだけでなく、乾燥した気候の中で快適な空間を作り出し、植物を育てるための機能的な役割も担っています。

ペルシャ庭園は、自然と人工の要素を融合させた、洗練された庭園設計の傑作と言えるでしょう。

世界遺産に登録された9つの庭園は、それぞれ異なる特徴を持ちながらも、ペルシャ庭園の基本的な構造と美しさを備えています。

3. ペルシャ庭園とイランの文化

ゾロアスター教の影響

ペルシャ庭園は、イランの文化や歴史と深く結びついています。

特に、ゾロアスター教の影響は大きく、庭園の設計思想や象徴的な要素に反映されています。

ゾロアスター教では、天･地･水・植物の4元素が重視され、ペルシャ庭園はこれらの元素を象徴的に表現していると考えられています。

例えば、チャハル・バーグは、4つの元素を象徴し、庭園の中央にある水路は、生命の源である水を表しています。

ゾロアスター教の影響
要素	説明
4元素	天･地･水・植物
象徴	チャハル・バーグで表現
水路	生命の源である水を表す

イスラム文化の影響

イスラム文化の影響も、ペルシャ庭園に色濃く反映されています。

イスラム文化では、幾何学模様やアラベスク模様が重視され、ペルシャ庭園にもこれらの模様が取り入れられています。

また、イスラム文化では、庭園は休息や瞑想の場所として重要視され、ペルシャ庭園も、人々が心を落ち着かせ、リラックスできる空間として設計されています。

ペルシャ庭園は、イランの文化や歴史、宗教が融合した、独特の美しさを持ち合わせています。

イスラム文化の影響
要素	説明
幾何学模様	庭園のデザインに取り入れられる
アラベスク模様	庭園のデザインに取り入れられる
庭園の役割	休息と瞑想の場所

詩歌と庭園

ペルシャ庭園は、イランの詩歌にも頻繁に登場します。

特に、14世紀の有名な詩人・ハーフェズは、エラム庭園の美しさについて詩歌で歌っています。

ペルシャの詩歌では、庭園は、美しさ、豊かさ、楽園といった象徴的な意味を持つことが多いです。

ペルシャ庭園は、イランの人々の美的感覚や精神世界を反映した、重要な文化遺産と言えるでしょう。

詩歌と庭園
詩人	作品
ハーフェズ	エラム庭園の美しさを歌った
庭園の象徴	美しさ、豊かさ、楽園

まとめ

ペルシャ庭園は、ゾロアスター教やイスラム文化の影響を受け、イランの文化や歴史を深く反映した庭園です。

庭園の設計思想や象徴的な要素は、イランの人々の精神世界や美的感覚を表しています。

ペルシャ庭園は、単なる美しい庭園ではなく、イランの文化や歴史を理解するための重要な鍵と言えるでしょう。

イランを訪れる際には、ぜひペルシャ庭園を訪れて、その美しさだけでなく、そこに込められた文化や歴史を感じてみてください。

4. ペルシャ庭園の世界遺産登録

世界遺産登録の基準

ペルシャ庭園は、2011年に世界遺産に登録されました。

登録されたのは、イラン国内の9つの庭園で、世界遺産条約履行のための作業指針で示される登録基準のうち、以下の基準に該当します。

(i) – 人間の創造的才能を表す傑作である。

(ii) – 建築、科学技術、記念碑、都市計画、景観設計の発展に重要な影響を与えた、ある期間にわたる価値観の交流又はある文化圏内での価値観の交流を示すものである。

世界遺産登録基準
基準	説明
(i)	人間の創造的才能を表す傑作
(ii)	建築などの発展に重要な影響
(iii)	文化的伝統を伝承する物証
(iv)	歴史上の重要な段階を物語る
(vi)	普遍的価値を有する出来事と関連

世界遺産登録の意義

ペルシャ庭園の世界遺産登録は、その芸術的価値と文化的な重要性を世界的に認められたことを意味します。

登録によって、ペルシャ庭園は、世界中の人々に知られるようになり、その保護と保存が促進されます。

また、ペルシャ庭園は、イランの文化や歴史を伝える重要な遺産として、世界遺産に登録されました。

ペルシャ庭園は、世界遺産登録によって、その価値がさらに高まりました。

世界遺産登録の意義
意義	説明
芸術的価値	世界的に認められた
文化的な重要性	世界的に認められた
保護と保存	促進される
イランの文化	世界に伝える

世界遺産登録された9つの庭園

イラン国内の9つの庭園は、それぞれ異なる特徴を持ちながらも、共通して「チャハル・バーグ」と呼ばれる四分割された庭園構造を採用しています。

世界遺産に登録された9つの庭園は、以下の通りです。

①Bagh-e Eram（エラムの庭園） ②Bagh-e Chehel Sotun（チェヘル・ソトゥーンの庭園） ③Bagh-e Dolat Abad（ドーラト・アバッドの庭園） ④Ancient Garden of Pasargadae ⑤Bagh-e Fin ⑥Bagh-e Abas Abad ⑦Bagh-e Shahzadeh ⑧Bagh-e Pahlavanpur ⑨Bagh-e Akbariyeh

世界遺産登録された9つの庭園
名称	場所
エラム庭園	シーラーズ
チェヘル・ソトゥーン庭園	エスファハーン
ドーラト・アバッド庭園	ヤズド
パサルガダエ庭園	ファールス州
フィーン庭園	カーシャーン
アッバース・アーバード庭園	ベフシャフル
シャーザデー庭園	マーハーン
パフラヴァンプール庭園	メフリーズ
アクバリーエ庭園	ビールジャンド

まとめ

ペルシャ庭園は、その芸術的価値と文化的な重要性から、世界遺産に登録されました。

世界遺産登録によって、ペルシャ庭園は、世界中の人々に知られるようになり、その保護と保存が促進されます。

ペルシャ庭園は、イランの文化や歴史を伝える重要な遺産であり、世界遺産登録によって、その価値がさらに高まりました。

イランを訪れる際には、ぜひペルシャ庭園を訪れて、その美しさだけでなく、そこに込められた文化や歴史を感じてみてください。

5. ペルシャ庭園と水の利用

水の重要性

ペルシャ庭園は、乾燥した気候のイランにおいて、水は生命の源であり、庭園の設計において重要な役割を担っています。

庭園は、灌漑と鑑賞の両方の役割を持つ水路によって、常に4区画に分割され、ゾロアスター教の天･地･水・植物の4元素を象徴するよう構想されたそうです。

水路と噴水は、庭園の美観を向上させるだけでなく、乾燥した気候の中で植物を育てるための重要な役割も担っています。

水の重要性
要素	役割
水	生命の源
水路	灌漑と鑑賞
噴水	涼しさと活力を与える
機能	植物を育てる

カナート

イランでは、古くから地下水路「カナート」が利用されてきました。

カナートは、斜めに掘られた地下水路で、山岳地帯の地下水を、乾燥した平野部まで運びます。

ペルシャ庭園では、カナートから水を引いて、庭園に水を供給していました。

カナートは、イランの人々の知恵と技術力の結晶であり、ペルシャ庭園の維持に重要な役割を果たしています。

カナート
要素	説明
地下水路	山岳地帯の地下水を運ぶ
役割	ペルシャ庭園に水を供給
技術	イランの人々の知恵と技術力

バードギール

バードギールは、風採り塔とも呼ばれ、イランの伝統的な建築様式の一つです。

バードギールは、高い塔で、風を集めて、地下のカナートに送り込みます。

バードギールは、風を集めて、地下のカナートに送り込み、気化熱を奪うことで、涼しい風を作り出します。

ペルシャ庭園では、バードギールが設置されている場合があり、庭園の涼しさを保つために役立っています。

バードギール
要素	説明
風採り塔	高い塔で風を集める
機能	涼しい風を作り出す
役割	庭園の涼しさを保つ

まとめ

ペルシャ庭園は、乾燥した気候のイランにおいて、水は生命の源であり、庭園の設計において重要な役割を担っています。

イランの人々は、古くからカナートやバードギールといった技術を用いて、水を有効活用してきました。

これらの技術は、ペルシャ庭園の維持に不可欠であり、イランの人々の知恵と技術力の高さを示しています。

ペルシャ庭園は、水と人々の知恵によって生まれた、乾燥した気候に適応した庭園と言えるでしょう。

6. ペルシャ庭園と植物の配置

植物の配置

ペルシャ庭園では、植物は単に装飾的な要素としてではなく、庭園全体のバランスを保つ重要な役割を担っています。

植物は、庭園の中央に配置されたパビリオンを中心に、放射状に配置されています。

庭園の周囲には、高い木が植えられ、日差しを遮り、涼しい空間を作り出しています。

庭園の中央には、花壇が設けられ、様々な花が植えられています。

植物の配置
要素	説明
パビリオン	中心に配置
植物	放射状に配置
高い木	周囲に植えられ日差しを遮る
花壇	中央に設けられ様々な花が植えられる

植物の種類

ペルシャ庭園では、バラ、ユリ、チューリップなど、様々な花が植えられています。

また、ヤシの木、ヒノキ、ザクロなど、乾燥した気候に適した木も植えられています。

植物の種類は、庭園の場所や気候によって異なります。

ペルシャ庭園は、様々な植物が調和して、美しい景色を作り出しています。

植物の種類
種類	説明
バラ	美しさ、愛、情熱を象徴
ユリ	純粋さ、高貴さを象徴
ヤシの木	乾燥した気候に適した木
ヒノキ	乾燥した気候に適した木
ザクロ	乾燥した気候に適した木