項目 | 内容 |
---|---|
稼働開始 | 1973年4月9日 |
運営機関 | 一般社団法人全国銀行資金決済ネットワーク |
加盟機関 | 日本国内のほぼすべての民間金融機関(日本銀行を除く) |
処理件数 | 1日平均675万件 |
処理金額 | 1日平均12.2兆円 |
特徴 | 平日日中の即時送金を実現 |
24時間送金サービス | モアタイム(2018年10月9日開始) |
文字制限 | 振込依頼人名:半角40文字、口座名義:半角30文字 |
将来展望 | 資金移動業者への参加資格拡大、フィンテックとの連携強化、国際的な連携 |
1. 全国銀行データ通信システムとは
1.1. 概要
全国銀行データ通信システム(全銀システム)とは、日本の金融機関相互の内国為替取引をコンピュータと通信回線を用いてオンライン処理を行えるようにした手形交換制度です。1973年4月9日に稼働を開始し、世界に先駆けて平日日中の即時送金を実現しました。その後、処理能力の向上と設備増強を繰り返し、2019年11月4日からは第7次全銀システムが稼働しています。
全銀システムは、銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫、農業協同組合を含めた日本国内のほぼすべての民間金融機関が加盟しています。ただし、日本銀行は加盟していません。また、郵政民営化によって2007年10月1日に発足したゆうちょ銀行は、2009年1月5日に接続を開始しました。
全銀システムは、一般社団法人全国銀行資金決済ネットワークが運営しており、維持管理などの費用は利用する金融機関が拠出しています。
稼働時期 | 内容 |
---|---|
1973年4月9日 | 稼働開始 |
2019年11月4日 | 第7次全銀システム稼働開始 |
1.2. 24時間送金サービス「モアタイム」
2018年10月9日、全銀協は、LINEなどフィンテック勢の24時間送金サービスに対する危機感などを背景に、これまで平日午前8時30分~午後3時30分までだった全銀システムの稼働時間に、午後3時30分以降も稼働する「モアタイム」と呼ぶシステムを追加しました。
これによって、小切手や手形の決済に使う当座を除く普通口座における、給与や賞与の振り込みをのぞく1億円未満の送金は、原則24時間365日可能となりました。
当初からモアタイムに対応する金融機関は計504(全銀システムを利用する金融機関は1275)でしたが、その後、みずほ銀行、みずほ信託銀行、農林中央金庫、JAバンクなどがモアタイムに対応しました。
ただし、モアタイム対応といっても、大和ネクスト銀行など限定的な対応にとどまったところもあるほか、2023年5月1日にはauじぶん銀行が、フィッシングによる不正送金被害が相次いでいるとして、モアタイム時間帯の即時振込を取り止めた事例もあります。
金融機関 | 対応開始日 |
---|---|
みずほ銀行 | 2019年5月7日 |
みずほ信託銀行 | 2019年7月16日 |
農林中央金庫 | 2019年11月11日 |
JAバンク | 2019年11月11日 |
1.3. 文字制限
全銀システムは、全銀協が定めたデータ伝送フォーマット(全銀協規定フォーマット)に従って振込情報等を取り扱うため、振込依頼人名と口座名義に使用できる文字は半角英数字片仮名のみで、文字数は振込依頼人名が半角40文字、口座名義が半角30文字までという制限があります。
法人の場合は「カブシキガイシャ(株式会社)」や「エイギョウショ(営業所)」などで文字数を消費してしまうことから、株式会社を「カ」、営業所を「エイ」などと略せる他、「株式会社」の位置が前「カ)」、中間「(カ)」、後ろ「(カ」など括弧で指示できるようになっているなど、文字数を節約できる工夫が施されています。
項目 | 文字数 |
---|---|
振込依頼人名 | 半角40文字 |
口座名義 | 半角30文字 |
1.4. まとめ
全国銀行データ通信システムは、日本の金融機関間の資金決済を円滑に行うために不可欠なシステムです。
24時間送金サービス「モアタイム」の導入や、資金移動業者への参加資格拡大など、時代の変化に対応した進化を続けています。
しかし、文字制限など、システムの仕様変更には課題も残ります。
2. 全国銀行データ通信システムの仕組み
2.1. 全体像
田中さんが鈴木さんの口座にお金を振り込むという簡単な振込行為を例に、全銀システムの仕組みを解説します。
まず、田中さんが銀行に振込依頼をします。銀行は、田中さんの口座からお金を差し引きます。
次に、銀行は全銀システムに対して「為替通知」を送信します。「為替通知」には、誰がいくらをどこの銀行のどこの会社に振り込むかという情報が含まれています。
全銀システムは、受け取った「為替通知」を鈴木銀行に送信します。
2.2. 全銀ネットの役割
全銀システムはシステムですが、全銀ネットは組織の名前です。一般社団法人全国銀行資金決済ネットワークは、全銀システムの運営を行っています。
全銀ネットは、資金清算機関としての役割も担っています。資金清算機関とは、システムの代わりに資金の支払いを担う機関です。
全銀システムは、為替通知の時点ではお金を移動させません。全銀ネットが鈴木銀行にお金を立て替え払いし、その後、全銀システムは記録から差額の計算を行い、その情報を日本銀行に通知します。
日本銀行は、各銀行の口座を持っているため、銀行間のお金の移動をさせる役割を担います。
2.3. 清算処理
全銀ネットが立て替えた金額を田中口座から回収して、それを全銀ネットに渡すことで、振込~清算までの一連の処理が完了します。
この処理は毎日繰り返され、日本の国内の口座間の移動は成り立っています。
1億円以上の取引(大口内国為替取引)は、為替通知のタイミングで即日本銀行の口座の間で決済されます。
2.4. まとめ
全銀システムは、銀行間で資金の移動を円滑に行うための重要なシステムです。
全銀ネットは、全銀システムの運営と資金清算機関としての役割を担っています。
日本銀行は、銀行間のお金の移動をさせる役割を担っています。
3. 全国銀行データ通信システムの役割
3.1. 資金決済の効率化
全銀システムは、銀行間の資金決済を効率化することに貢献しています。
従来の手形交換制度では、手形が物理的に運ばれる必要があり、決済に時間がかかっていました。
全銀システムは、オンライン処理によって、即時送金を実現し、決済時間を大幅に短縮しました。
また、手形交換制度では、手形紛失や偽造などのリスクがありましたが、全銀システムは、オンライン処理によって、これらのリスクを軽減しました。
項目 | 効果 |
---|---|
決済時間 | 短縮 |
リスク | 軽減 |
効率性 | 向上 |
3.2. 金融機関間の連携強化
全銀システムは、銀行間の連携を強化することに貢献しています。
全銀システムは、銀行間で共通のデータフォーマットを使用することで、銀行間の情報交換をスムーズに行うことを可能にしました。
これにより、銀行間の連携が強化され、金融サービスの質向上に繋がっています。
3.3. 金融システムの安定化
全銀システムは、日本の金融システムの安定化に貢献しています。
全銀システムは、大規模な災害時にも、安定的に稼働するように設計されています。
また、全銀システムは、不正アクセスやサイバー攻撃などのリスク対策も強化されています。
これにより、日本の金融システムの安定性が向上しています。
3.4. まとめ
全銀システムは、日本の金融機関間の資金決済を円滑に行うために不可欠なシステムです。
全銀システムは、資金決済の効率化、金融機関間の連携強化、金融システムの安定化に貢献しています。
4. 全国銀行データ通信システムの利点
4.1. 利便性の向上
全銀システムは、利用者にとって利便性の高いシステムです。
全銀システムは、即時送金を実現することで、資金の移動を迅速に行うことを可能にしました。
また、全銀システムは、24時間365日稼働しているため、いつでも資金の移動を行うことができます。
4.2. 安全性の向上
全銀システムは、セキュリティ対策が強化されたシステムです。
全銀システムは、不正アクセスやサイバー攻撃などのリスク対策が強化されています。
また、全銀システムは、災害時にも安定的に稼働するように設計されています。
4.3. 信頼性の向上
全銀システムは、信頼性の高いシステムです。
全銀システムは、日本の金融機関が共同で開発・運営しているシステムです。
そのため、全銀システムは、高い信頼性を確保しています。
4.4. まとめ
全銀システムは、利便性、安全性、信頼性の高いシステムです。
全銀システムは、日本の金融機関間の資金決済を円滑に行うために不可欠なシステムです。
5. 全国銀行データ通信システムとセキュリティ
5.1. セキュリティ対策
全銀システムは、セキュリティ対策が強化されたシステムです。
全銀システムは、不正アクセスやサイバー攻撃などのリスク対策が強化されています。
具体的には、アクセス制御、データ暗号化、不正アクセス検知システムなどのセキュリティ対策が導入されています。
対策 | 内容 |
---|---|
アクセス制御 | 不正なアクセスを制限 |
データ暗号化 | データを暗号化して保護 |
不正アクセス検知システム | 不正なアクセスを検知 |
バックアップシステム | システム障害発生時に備え、データを復旧 |
5.2. 災害対策
全銀システムは、災害時にも安定的に稼働するように設計されています。
全銀システムは、複数のデータセンターを分散配置し、災害発生時でもシステムが稼働できるようにしています。
また、全銀システムは、災害発生時に備えて、バックアップシステムも整備しています。
5.3. 障害発生時の対応
2023年10月10日に発生した全銀システムの障害は、システムの参加資格を拡大するなど、時代の変化に対応していく中で発生したものです。
この障害により、10金融機関から他行宛ての振り込みができなくなり、計250万件超の送金が滞りました。
全銀ネットとNTTデータは、原因を調査し、再発防止策を講じています。
5.4. まとめ
全銀システムは、セキュリティ対策と災害対策が強化されたシステムです。
しかし、2023年10月の障害発生は、システムの脆弱性を露呈させました。
全銀ネットとNTTデータは、この障害を教訓とし、更なるセキュリティ対策と災害対策の強化に取り組む必要があります。
6. 全国銀行データ通信システムの未来展望
6.1. 資金移動業者への参加資格拡大
全国銀行資金決済ネットワークは、2024年10月をめどに、全銀システムの参加資格をスマートフォン決済アプリなどを提供する資金移動業者に拡大すると発表しました。
これにより、異なる決済アプリ同士での送金のほか、銀行口座と決済アプリのアカウントの間での送金が可能になります。
全銀システムとの接続方式も簡単な方法に仕様を変更し、新規加盟のハードルを下げることで、資金移動業者の参入を促進します。
6.2. フィンテックとの連携強化
全銀システムは、フィンテック企業との連携を強化することで、より便利で革新的な金融サービスを提供していくことが期待されています。
フィンテック企業は、新しい技術を活用して、従来の金融サービスでは実現できなかったサービスを提供しています。
全銀システムは、フィンテック企業との連携を強化することで、これらの新しい技術を導入し、より便利で革新的な金融サービスを提供していくことが期待されています。
6.3. 国際的な連携
全銀システムは、国際的な連携を強化することで、グローバルな金融サービスを提供していくことが期待されています。
海外では、すでに24時間送金サービスが普及しています。
全銀システムは、海外の送金システムとの連携を強化することで、よりグローバルな金融サービスを提供していくことが期待されています。
6.4. まとめ
全銀システムは、資金移動業者への参加資格拡大、フィンテック企業との連携強化、国際的な連携など、時代の変化に対応した進化を続けていくことが期待されています。
全銀システムは、今後も日本の金融システムの中核として、重要な役割を果たしていくでしょう。
参考文献
・全国銀行データ通信システム(全銀システム) | 決済システム …
・全国銀行データ通信システム(全銀システム)とは? | 経済用語集
・全国銀行データ通信システム(全銀システム)とは|金融業務 …
・全国銀行データ通信システム(ゼンコクギンコウデータツウシン …
・全銀システムとは 1日13兆円の送金に利用 – 日本経済新聞
・全国銀行データ通信システム | 金融・証券用語解説集 | 大和証券
・全国銀行データ通信システム – 概要 – わかりやすく解説 Weblio辞書
・みんなの銀行は「銀行らしくなさ」をとことん貫くべき、3年前 …
・全国銀行データ通信システムとは?株式用語解説 – お客様 …
・全国銀行データ通信システムの障害に関する取り組みについて …
・「全銀システム障害」とは何だったのか 解明まで時間がかかっ …
・全銀システム障害、必要な領域確保できず発生…全銀ネットと …
・ついに開放される「全銀システム」、フィンテック企業への影響や課題とは? FINOLABコラム|FinTech Journal