職業:不動産鑑定士について説明

1. 不動産鑑定士とは

要約

不動産鑑定士の仕事内容

不動産鑑定士は、土地や建物などの不動産を鑑定し、適正な価格を決める仕事です。\”不動産の鑑定評価に関する法律\”に基づいて定められた国家資格で、不動産の鑑定評価は不動産鑑定士の独占業務となっており、無資格者が行うと罰せられます。専門的な知識と能力を身に着け、国家試験合格によってそれが証明された人のみが行うことのできる、専門性の高い職業といえます。不動産鑑定士の仕事は土地などの適切な価格形成にも影響するため、社会的な責任も非常に重いものです。

土地を売る、貸す、譲るといったときにはその土地の価値を正確に鑑定し、適正な価格を決める必要があるため、取引に当たって依頼人は不動産鑑定士に鑑定評価を依頼することになります。その際、土地の有効活用について相談するというケースも多く、不動産鑑定士にはコンサルタントとしての側面もあるのが実際のところです。

不動産を貸すことによって得られる利益の運用や、不動産に関する様々な法律相談にも対応するなど、不動産鑑定士の仕事は金融・法律を含め幅広い知識を必要とします。

不動産鑑定士の主な業務内容
業務内容 説明
鑑定評価 土地や建物の経済価値を判断し、金額で表す
コンサルティング 不動産の有効活用や開発計画に関するアドバイスを行う

不動産鑑定士の業務内容

不動産鑑定士の仕事内容は、大きく分けて以下の二つです。

不動産の鑑定評価は、その名称からもわかる通り不動産鑑定士の主たる仕事といえます。土地・建物の経済価値、すなわち金額は、立地などの地理的条件や法律・市場経済との関連など様々な条件によって決まるものです。

不動産鑑定士はこれらすべての条件を鑑みたうえで、適切な鑑定評価額を導き出し、「不動産鑑定評価書」というレポートを作成、提出します。この「不動産鑑定評価書」を作成できるのは、国家資格を持つ不動産鑑定士だけです。

不動産鑑定士が鑑定を行うのは民間企業や個人が所有する不動産だけでなく、相続税課税のための路線価の評価など公的機関から依頼されるものも含みます。

不動産鑑定士が鑑定を行う主な場面
場面 説明
売買 適正な売買価格を判断
賃貸 適正な賃料を算定
相続 相続税の算定や遺産分割の際に、不動産の価値を評価
担保 融資の担保となる不動産の価値を評価
投資 不動産投資の判断材料となる情報を提供
税務 固定資産税や相続税などの税務に関するアドバイスを行う

不動産鑑定士のコンサルティング業務

不動産鑑定士は、不動産鑑定の経験や専門知識を生かして企業や個人に対するコンサルティング業務を行うことも多いです。

不動産の有効活用や税金対策、市街地再開発に伴う権利関係の調整、それに不動産の資産管理、いわゆるプロパティマネジメントなど、不動産の鑑定評価に基づいたアドバイスが必要な場面では、不動産鑑定士の能力が大いに役立ちます。

また、単に相談に乗るだけではなく、新たなビジネスモデルを構築するなどクリエイティブな面もあるのがこの仕事の特徴です。扱う不動産の種類は多岐にわたり、また海外向けのビジネスを展開することもできるなど、大きな可能性を持った分野といえます。

まとめ

不動産鑑定士は、不動産の価値を評価する専門家であり、その業務は鑑定評価とコンサルティングに大別されます。

鑑定評価では、不動産の経済価値を判断し、その結果を価額に表示します。

コンサルティングでは、不動産の有効活用や開発計画に関するアドバイスなど、幅広いニーズに対応します。

不動産鑑定士は、不動産の専門知識と高いスキルを活かして、社会に貢献する重要な役割を担っています。

2. 不動産鑑定士の資格取得方法とは

要約

不動産鑑定士試験の概要

不動産鑑定士になるには、難易度の高い国家試験に合格した後1~2年の実務修習を受ける必要があります。

不動産鑑定士試験は短答式試験と論文式試験の2段階になっていて、短答式試験は毎年5月、論文式試験は毎年8月に行われています。受験資格は特になく、年齢・学歴・経験を問わず受験することが可能です。

短答式試験で合格ラインに達した人だけが論文式試験に進むことができ、論文式試験に通れば合格となります。ただし合格率は短答式試験が30%台前半、論文式試験が14%程度と、いずれもかなりの難関です。短答式試験では行政法規や鑑定理論について、論文式試験では民法、会計学、経済学や鑑定理論について問われます。

なお、短答式試験合格後に論文式試験で不合格となった場合、2年間は短答式試験免除で論文式試験のみの再チャレンジが可能です。

不動産鑑定士試験の概要
試験 内容 合格率
短答式試験 行政法規、鑑定理論 約32%
論文式試験 民法、経済学、会計学、鑑定理論 約14%

不動産鑑定士試験の内容

不動産鑑定士試験は、短答式試験と論文式試験の2段階選抜方式で行われ、2つの試験を合格した人だけが不動産鑑定士の資格取得の権利を得ることができます。

また、受験資格に条件はなく誰でも受験できるので勉強さえすれば気軽に受けられるのが特徴です。そんな不動産鑑定士の試験について以下で詳しく解説しているので確認してみてください。

短答式試験は『行政法規』と『鑑定理論』に関する試験が1日で実施されます。

基本5択問題なので参考書を一通り進めた後に過去問で勉強を進めれば、ある程度の点数は取れるかもしれません。しかし、短答式試験を合格したとしてもすぐに論文式試験が待ち構えているので『選択肢から選んで答えられる』という段階で止まっていては論文式試験で十分な点数を取ることはできないでしょう。つまり、短答式試験の対策をする際は論文式試験も見据えて勉強を進めて対策をする必要があるので、内容の理解度も含めてアウトプット(論述)できるような段階まで知識を落とし込む意識をして勉強をするようにするのが重要です。

不動産鑑定士試験の科目
科目 内容
行政法規 土地基本法、都市計画法、不動産登記法など
鑑定理論 不動産鑑定評価基準、運用上の留意事項
民法 生活の規律を目的とした法律
経済学 ミクロ経済学、マクロ経済学
会計学 財務諸表の作成ルール

不動産鑑定士試験の合格率

行政法規とは不動産鑑定士の業務において必要となる38の法令から出題されます。主な法令として以下のようなものがあります。

法律に関する内容は範囲が広いだけでなく、初めて聞く言葉も自然と多くなるので抵抗感を減らすためにも最初から完璧にしようと意気込まずに、まずは参考書を流し読みして少しずつ法律に慣れていくのが、ファーストステップですね。

また、行政法規において全ての範囲を学習するのはかなりの時間を要するので、ある程度優先順位をつけて勉強するのがオススメです。本記事としては、上記で並べた法律の順番が出やすい傾向にあるようなので、勉強の参考にしてみてください。

鑑定理論とは不動産鑑定士が実際に業務で鑑定評価を行うときに規範とするべき理論のことを言います。この科目では、国土交通省が制定した『不動産鑑定評価基準』と『運用上の留意事項』に基づいて、不動産鑑定士がどのような理論・手順で鑑定評価を行うかの知識を問われます。鑑定理論は不動産鑑定士の試験において最も重要な科目とされており、論文式試験でも出題される上に配点が高いので一番学習すべき範囲と言えるでしょう。対策方法としては、短答式試験に重点を置くというよりは論文式試験に重点を置いて、鑑定理論に関する内容をアウトプットできるような状態まで勉強をする意識を持つのがコツです。

まとめ

不動産鑑定士試験は、短答式試験と論文式試験の2段階で構成され、どちらも難易度が高い試験です。

短答式試験は、行政法規と鑑定理論に関する知識を問われます。

論文式試験は、民法、経済学、会計学、不動産の鑑定評価に関する理論、不動産の鑑定評価に関する理論(演習)の5科目から出題されます。

合格するためには、体系的な学習計画を立て、効率的に学習を進めることが重要です。

3. 不動産鑑定士の仕事の流れ

要約

不動産鑑定士の仕事内容

不動産鑑定士の主な業務は、不動産の鑑定評価とコンサルティングです。

不動産鑑定評価では、不動産の経済価値を判断し、その結果を価額に表示します。

コンサルティングでは、不動産の有効活用や開発計画に関するアドバイスなど、幅広いニーズに対応します。

不動産鑑定評価の流れ

不動産鑑定士は、依頼を受けた不動産の価値を評価するために、以下の流れで業務を進めます。

まず、依頼内容をヒアリングし、鑑定の目的や対象となる不動産について詳しく確認します。

次に、役所や法務局で不動産に関する情報を収集し、現地調査を実施して、不動産の状況を詳しく調べます。

最後に、調査結果に基づいて、不動産の価値を算定し、不動産鑑定評価書を作成します。

不動産鑑定士の仕事の流れ
ステップ 内容
依頼内容のヒアリング 鑑定の目的や対象となる不動産について確認
情報収集 役所や法務局で不動産に関する情報を収集
現地調査 不動産の状況を詳しく調査
鑑定評価 調査結果に基づいて不動産の価値を算定
不動産鑑定評価書の作成 鑑定評価の結果をまとめた書類を作成

不動産鑑定評価書の作成

不動産鑑定評価書は、不動産鑑定士が鑑定評価を行った結果をまとめた書類です。

評価額だけでなく、評価方法や根拠、評価対象物件の詳細などが記載されます。

不動産鑑定評価書は、不動産取引や投資の際に重要な資料として利用されます。

まとめ

不動産鑑定士の仕事は、依頼内容をヒアリングし、情報収集、現地調査、鑑定評価、不動産鑑定評価書の作成という一連の流れで行われます。

不動産鑑定士は、専門知識と経験に基づいて、正確な評価を行い、信頼性の高い不動産鑑定評価書を作成します。

不動産鑑定評価書は、不動産取引や投資において重要な役割を果たします。

4. 不動産鑑定士が必要とされる場面

要約

不動産の売買

不動産の売買では、売主と買主が納得できる価格で取引を行うことが重要です。

不動産鑑定士は、不動産の価値を客観的に評価することで、適正な売買価格を判断する役割を担います。

不動産鑑定士による評価は、売買価格の交渉や、売買契約の締結において、重要な参考資料となります。

不動産鑑定士が必要とされる場面
場面 説明
売買 適正な売買価格を判断
賃貸 適正な賃料を算定
相続 相続税の算定や遺産分割の際に、不動産の価値を評価
担保 融資の担保となる不動産の価値を評価
投資 不動産投資の判断材料となる情報を提供

不動産の賃貸

賃貸物件の賃料は、物件の価値や市場動向などを考慮して決定されます。

不動産鑑定士は、賃貸物件の価値を評価し、適正な賃料を算定することができます。

賃料の改定や、賃貸借契約の更新の際に、不動産鑑定士の評価が役立ちます。

相続

相続では、不動産を相続する際に、その価値を正確に評価することが重要です。

不動産鑑定士は、相続税の算定や、遺産分割の際に、不動産の価値を評価します。

相続税の申告や、遺産分割協議において、不動産鑑定士の評価は重要な役割を果たします。

まとめ

不動産鑑定士は、不動産の売買、賃貸、相続など、さまざまな場面で必要とされます。

不動産鑑定士は、不動産の価値を客観的に評価することで、公正な取引や相続、税務処理をサポートします。

不動産に関するトラブルを回避するためにも、不動産鑑定士の専門知識は非常に役立ちます。

5. 不動産鑑定士と他の不動産関連職業との違い

要約

宅地建物取引士(宅建士)

宅地建物取引士(宅建士)は、不動産の売買や賃貸などの仲介業務を行う専門家です。

不動産鑑定士は、不動産の価値を評価する専門家であり、宅建士は不動産の取引を仲介する専門家です。

宅建士は、不動産の売買や賃貸の契約手続き、物件の案内、重要事項の説明などを行います。

不動産鑑定士は、宅建士が扱う物件の価値を評価したり、取引に関するアドバイスを行ったりする場合があります。

不動産鑑定士と宅建士の違い
職業 主な業務
不動産鑑定士 不動産の価値を評価
宅建士 不動産の売買や賃貸の仲介

土地家屋調査士

土地家屋調査士は、土地の境界や面積を調査し、測量図を作成する専門家です。

不動産鑑定士は、土地の価値を評価する専門家であり、土地家屋調査士は土地の境界や面積を調査する専門家です。

土地家屋調査士は、不動産の登記や、不動産の売買や賃貸の際に必要な書類を作成します。

不動産鑑定士は、土地家屋調査士が作成した測量図や登記情報を参考に、不動産の価値を評価する場合があります。

不動産鑑定士と土地家屋調査士の違い
職業 主な業務
不動産鑑定士 不動産の価値を評価
土地家屋調査士 土地の境界や面積を調査、測量図を作成

不動産コンサルタント

不動産コンサルタントは、不動産に関する幅広い知識と経験を活かして、不動産の投資や活用に関するアドバイスを行う専門家です。

不動産鑑定士は、不動産の価値を評価する専門家であり、不動産コンサルタントは不動産の投資や活用に関するアドバイスを行う専門家です。

不動産コンサルタントは、不動産投資戦略の立案、不動産の有効活用方法の提案、不動産に関するリスク管理などを行います。

不動産鑑定士は、不動産コンサルタントが扱う不動産の価値を評価したり、投資判断の根拠となる情報を提供したりする場合があります。

不動産鑑定士と不動産コンサルタントの違い
職業 主な業務
不動産鑑定士 不動産の価値を評価
不動産コンサルタント 不動産の投資や活用に関するアドバイス

まとめ

不動産鑑定士は、不動産の価値を評価する専門家であり、宅地建物取引士、土地家屋調査士、不動産コンサルタントなど、他の不動産関連職業と連携して業務を行うことがあります。

それぞれの専門分野を活かし、協力することで、より質の高いサービスを提供することができます。

不動産鑑定士は、不動産取引において重要な役割を担い、他の不動産関連職業と連携することで、よりスムーズで安全な取引を実現します。

6. 不動産鑑定士の将来性と展望

要約

不動産市場の縮小

不動産鑑定士の将来性に関しては多くの専門家が言及しており、全体として仕事が減っている点はよく指摘されます。

事実、日本国内では長引く不況で、2000年代に入ってから不動産の取引が減少傾向にあり、それに伴って、不動産鑑定士の関わる案件も減っている状況です。

不動産鑑定士は1950年代半ばから1970年代初めの高度成長期に誕生した資格で、当時は人口の増加とともに不動産取引の数も増えていました。

不動産鑑定士も多くの案件を抱えていましたが、近年はすでに「家余り」と呼ばれる状態にもあり、今後はさらに少子高齢化が進み、住宅ニーズも減少し続けるでしょう。市場規模の縮小が進んでいるため、不動産鑑定士の将来を危ぶむ声は少なくありません。

不動産鑑定士の将来性に関する懸念
懸念 説明
市場規模の縮小 不動産取引の減少により、鑑定士の仕事も減少傾向
資格試験の難易度 難関な試験のため、受験者数が減少
収入面 資格取得に見合うだけの収入が得られない場合もある

不動産鑑定士の資格試験の難易度

市場規模自体が縮小傾向にあるのに加えて、不動産鑑定士の資格試験はとりわけ難易度が高いといわれており、受験者数が減少傾向にあります。

結果として、不動産鑑定士になる人も減っている状況です。

近年の受験者数はおよそ1

さらに、試験の難易度が原因で受験を断念する人が多いのに加えて、上記のように業界全体で仕事が減っているので、将来性を疑問視して受験を取りやめる人もいます。

不動産鑑定士の将来性に関する期待
期待 説明
相続案件の増加 少子高齢化により、相続に関する案件が増加する見込み
コンサルティング業務の拡大 不動産の活用方法や投資に関する相談が増加
AIの活用 AIを活用することで、業務効率化や生産性向上を図ることができる

不動産鑑定士の収入

難易度の高い資格試験を突破し、晴れて不動産鑑定士として働けるようになったとしても、さほど高収入は期待できず、資格取得に要する手間や時間と収入が見合わないといった声も目立ちます。

不動産鑑定士の収入は人によって大きく異なるため、参考とするデータによって結果に大きな差が出ます。しかし全体としてみれば約580万円が平均年収とされており、同じ国家資格である弁護士や公認会計士、税理士などと比較しても、それほど高い水準にはありません。

一方、日本人全体の平均給与は年間で約497万円です。不動産鑑定士の試験全体を通じての合格率が4~5%程度である点を考えれば、数年かけて勉強して資格を取得する労力に対して、十分なリターンがあるのか疑問を抱く人がいるのも不思議ではないでしょう。

まとめ

不動産鑑定士は、市場規模の縮小や収入面などから、将来性がないと考える人もいるのは事実です。

しかし、今後は相続に関する案件が増える見込みであるのに加えて、コンサルティング業務の領域も広がっているため、工夫次第で安定した収入を得ることも可能です。

自分なりに将来性を見据えた上で、資格試験に臨むべきか判断しましょう。

参考文献

不動産鑑定士の仕事とは?業務内容・なり方などを解説 | 弁護 …

不動産鑑定士の仕事とは? わかりやすく仕事内容を紹介 …

不動産鑑定士とは?仕事内容や求められる資質、試験の概要 …

不動産鑑定士とは何をする仕事?仕事内容や独占業務について …

不動産鑑定士とは?仕事内容やキャリアパス、資格の取り方を …

不動産鑑定士とは?│不動産鑑定士|資格の学校TAC[タック]

不動産鑑定士について、仕事内容、年収、やりがいなどを解説 …

日本不動産鑑定士協会連合会

不動産鑑定士とはどんな職業?仕事内容や魅力などを解説

不動産鑑定士 – Wikipedia

不動産鑑定士の仕事内容とは?やりがいや魅力について解説 …

土地・不動産・建設業:不動産鑑定士の魅力と仕事 – 国土交通省

不動産鑑定士とは?仕事内容・難易度・年収・将来性も解説 …

不動産鑑定士とは?業務内容や依頼のメリット、鑑定と査定の …

不動産鑑定士の仕事内容や平均年収、向いている人の特徴など …

不動産鑑定士とは|年収や将来性、試験の難易度について徹底 …

不動産鑑定士の将来性は?現状や今後の動向、仕事内容につい …

不動産鑑定士とは何か?学べることや就職、強みなどとともに …

タイトルとURLをコピーしました