仕事内容 | 知的財産権の取得サポート | 知的財産権の紛争解決 | 知的財産に関するコンサルティング |
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資格取得 | 弁理士試験合格 | 実務修習修了 | 日本弁理士会への登録 |
主な勤務先 | 特許事務所 | 企業内弁理士 | 独立開業 |
年収 | 平均700~1,000万円 | 経験や勤務先によって異なる | 独立開業で高収入も可能 |
1. 弁理士の役割とは
1-1. 知的財産の保護と権利化
弁理士は、特許や商標、意匠、実用新案といった知的財産権全般を取り扱う法律のスペシャリストです。主な仕事は、法人企業や個人事業者から依頼を受けて、新たに発明された知的財産権を特許庁に申請することと、特許権の侵害など、既存の知的財産権に関わる争いを解決することです。知的財産権は、新しい技術や製品の独自性を認める「特許」、モノのデザインや外観に関する「意匠」、ロゴマークなどの「商標」、モノの形状や構造に関する「実用新案」など、複数の種類があります。それら知的財産を権利化するための手続きは、きわめて複雑です。出願から権利取得に至るまでには、多くの手間と時間、そして高度な専門知識が必要になります。この背景には、新たに発明された知的財産が、本当に画期的かつ独創的であり「権利」として認めるにふさわしいかどうかを客観的に証明するのが難しいことがあります。そこで、知的財産の専門家である弁理士は、クライアントから依頼を受けて書類作成や問題解決などのすべての手続きを代行し、少しでも発明者側に有利な権利が取得できるよう、全面的にサポートします。
弁理士は、知的財産を権利化したり、知的財産をめぐる紛争を解決したりすることで、発明者の利益を保護します。新しい技術や商品は日々生み出されていきますが、それらの研究開発には莫大な費用がかけられており、企業や個人が営むビジネスの根幹を成していることも珍しくありません。もしもそれらの権利が法律で守られなければ、簡単に第三者に盗用されることになり、大きな経済的損失を被るばかりでなく、最悪の場合、事業自体が立ち行かなくなることもあります。それぞれの知的財産を守ることで、弁理士は産業活動の健全化に貢献しているといえるでしょう。
また、知的財産に関する豊富な知識を生かして、クライアントの競合他社を分析したり、市場調査や技術調査を行ったりして、事業戦略をアドバイスすることも弁理士の重要な役割です。近年は、出願件数自体が減少傾向にある影響もあって、単なる知的財産権の申請代行に留まらず、コンサルティング業務まで手掛ける弁理士が増えています。
種類 | 内容 |
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特許 | 新しい技術や製品の独自性を認める権利 |
意匠 | モノのデザインや外観に関する権利 |
商標 | ロゴマークなどの権利 |
実用新案 | モノの形状や構造に関する権利 |
1-2. 弁理士の独占業務
特許庁に対して特許などの知的財産権を申請できるのは弁理士だけであり、このような業務は一般的に「独占業務」と呼ばれます。弁理士は、知的財産権の取得を希望する企業や個人から依頼を受け、特許庁への申請書類の作成や提出、特許庁からの審査結果に対する対応などを代行します。
特許や商標などを登録しているにもかかわらず、権利者に無断で使用するというケースは決して少なくありません。また反対に、個々の権利の範囲は複雑であるため、自分でも気づかないうちに他人の知的財産権を侵害してしまっているというケースもあります。そのような知的財産をめぐるトラブルが発生した場合、弁理士はクライアントの代理人となって、紛争解決業務を行います。
事態を収拾する方法はさまざまです。裁判所に対して訴訟手続きを申請することもあれば、「ADR」と呼ばれる裁判外紛争解決手続を行うこともあり、あるいは当事者間の交渉で片が付くこともあります。昨今は海外企業との争いも増加傾向にあるため、外国語での交渉を得意とする「国際弁理士」も増えつつあります。
業務 | 内容 |
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特許庁への申請 | 特許などの知的財産権の申請を代行 |
紛争解決 | 知的財産をめぐるトラブルの解決を代行 |
1-3. 弁理士の活躍分野
弁理士の勤務先として代表的なのは特許事務所ですが、業務内容は事業規模によって違いがあります。事業規模の大きい事務所では、特許や商標登録、意匠など、幅広い分野の知的財産を手掛ける一方、中小規模の事務所では、いくつかの分野に取り扱いを絞っていることが一般的です。クライアントの種類も、大きな事務所ほど上場クラスの法人企業が多くなり、小規模の事務所ほど中小企業や個人が多くなる傾向にあります。
また、一般企業に就職して「企業内弁理士」として活躍している人も少なくありません。その場合の勤務先は、多数の技術や権利を自社で保有する大規模メーカーが多く、知的財産部門に所属する会社員として、知的財産の管理運営を行ったり、製品開発や事業戦略立案に関わったりします。
そのほか、大学や研究所などに勤務して技術の産業移転を手掛ける人や、知的財産活用専門のコンサルティング会社に勤める人もいます。
勤務先 | 特徴 |
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特許事務所 | 事業規模によって業務内容が異なる |
企業内弁理士 | 知的財産部門に所属し、管理運営や戦略立案を行う |
大学・研究所 | 技術の産業移転を手掛ける |
コンサルティング会社 | 知的財産活用専門のコンサルティングを行う |
1-4. まとめ
弁理士は、知的財産権の取得や紛争解決をサポートすることで、発明者や企業の利益を守り、産業の発展に貢献する重要な役割を担っています。近年は、知的財産に関するコンサルティング業務も増加しており、弁理士の活躍の場はますます広がっています。
2. 弁理士に必要な資格とは
2-1. 弁理士試験
弁理士になるためには、毎年1回行われる弁理士試験に合格し、弁理士登録をする必要があります。受験資格に制限はありません。弁理士試験は5月に1次試験の短答式、7月に2次試験の論文式、10月に3次試験の口述式が行われ、論文式試験は短答式試験に合格した者、口述試験は論文式試験に合格した者に行われます。平成13年には、大卒者以外は受験が必要だった予備試験が廃止され、「選択科目」は41科目から3科目を選択する形から、7科目のうち1科目を選択する形になるという大幅な改正がなされました。
なお、改正弁理士法により、平成20年10月1日以降に弁理士試験を合格した方または以下に記載する「弁理士になれる人」の(2)または(3)のいずれかに該当するに至った方は、経済産業大臣から指定を受けた機関が実施する実務修習を修了することが弁理士登録の条件となりました。
弁理士試験に関する詳細については、特許庁ホームページにてご確認ください。
試験内容 | 内容 |
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短答式試験 | 法律知識を問うマークシート方式の試験 |
論文式試験 | 法律知識の応用力を問う記述式試験 |
口述試験 | 口頭での応答能力を問う面接形式の試験 |
2-2. 弁理士になれる人
次の(1)~(3)のいずれかに該当する者は、該当後に実務修習を修了することで、弁理士となる資格を得ることができます(弁理士法第7条)。
(1)弁理士試験に合格した者
(2)弁護士となる資格を有する者
(3)特許庁において審判官又は審査官として審判又は審査の事務に従事した期間が通算して7年以上になる者
資格 | 内容 |
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弁理士試験合格者 | 弁理士試験に合格した者 |
弁護士 | 弁護士となる資格を有する者 |
特許庁審判官・審査官 | 特許庁において審判官又は審査官として審判又は審査の事務に従事した期間が通算して7年以上になる者 |
2-3. 弁理士になれない人
次に該当する者は、たとえ上記(1)~(3)に該当し、また実務修習を修了していても、弁理士となる資格を有しません(弁理士法第8条)。
(1)破産者で復権を得ていない者
(2)禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで、またはその刑の執行を受けることがなくなるまでの人
(3)成年被後見人、被保佐人または被補助人
資格 | 内容 |
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破産者 | 破産者で復権を得ていない者 |
禁錮以上の刑に処せられた者 | 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで、またはその刑の執行を受けることがなくなるまでの人 |
成年被後見人等 | 成年被後見人、被保佐人または被補助人 |
2-4. まとめ
弁理士になるには、弁理士試験に合格し、実務修習を修了した後、日本弁理士会に登録する必要があります。弁理士試験は難易度が高く、合格率は近年7%前後と低くなっています。しかし、弁護士や特許庁の審判官・審査官といった資格を持っている場合は、弁理士試験が免除される場合があります。
3. 弁理士の仕事の流れ
3-1. 特許出願の手続き
特許出願は、自分で行うにしても、弁理士(または弁護士)に依頼するにしても、基本的に同じ様式の書類を用意します。特許庁への提出方法には、郵送か窓口で提出する紙の書類の提出と、インターネット出願とがあります。インターネット出願には、専用ソフトのインストール、電子証明書の準備、手数料の納付の準備などが必要です。特許事務所や、自社で出願をする企業の利用が多いでしょう。インターネット出願については、下記サイトを参考にしましょう。
特許出願をして1年半たつと内容が公開されるため、特許庁のサイトで検索してどのような出願があるか、検索をしてみた人もいるでしょう。特許調査は弁理士に依頼することも普通ですが、新しい製品や技術を開発している途中で、自分でそのつど、他社の技術を調べてみることにも意味があります。同じものがあったら、設計変更する必要があるかもしれません。他社との差別化をするための、思わぬヒントが得られることもあります。
特許調査をするには、特許庁の下記サイトで検索をするのが便利です。
書類 | 内容 |
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特許願 | 権利取得を請求する書類 |
特許請求の範囲 | 権利の内容を記載する書類 |
明細書 | 発明の内容を詳しく説明する書類 |
図面 | 発明の内容を視覚的に説明する書類 |
要約書 | 発明の内容を簡潔にまとめた書類 |
3-2. 特許出願に必要な書類
特許出願に必要な書類は、特許願と、これに添付する特許請求の範囲、明細書、図面、要約書です。それぞれの役割と注意点について説明します。書類の書式を知ることは、権利を取得するための方法やノウハウを知ることとは別です。なお、書式や記載方法などの細かい点は、弁理士に依頼するのであれば知る必要はありません。自分で作成するなど、必要があるときは、特許庁のガイドラインにある「特許出願手続ガイドライン」なども参照しましょう。
特許願は、願書ともいいます。特許出願をして権利の取得を請求する意味と、出願人などを明確にする意味のある書類です。他の書類は願書に添付され、紙の書面では全部をまとめて左綴じします。特許印紙を貼り、出願人が押印するのもこの書類です。「特許出願人」は、権利を取得することになる、手続きの名義人です。個人でも法人でも、また2名以上の共同出願も可能です。「発明者」は、権利の主体とはなりません。名誉的な記載でしかないため、会社の従業員などは、会社から報奨金をもらう等の取り決めをしておく必要があります。特許事務所に依頼するときは、「弁理士」の欄があり、手続きを代理人として任せることになります。このため、特許出願人の押印はいりません。
「特許請求の範囲」は、権利の内容を記載します。技術を文章で記載するため、堅苦しい表現となりますが、特許が成立し権利化されたときには、権利の範囲を確定する大切な部分です。請求項1、請求項2、・・・のように、それぞれの請求項が権利を請求する内容で、関連する複数の内容を一つの出願で記載できるようになっています。たとえば、権利を広く記載した請求項、それが権利化できない場合に備えてより限定した請求項、同じ発明を別の角度から記載した請求項など、出願後の特許庁の審査にあらかじめ備えた記載が必要です。
明細書は、特許請求の範囲に記載した発明の内容を、より詳しく、具体的に、これを読んで発明を実施できる程度に説明する書類です。必要に応じ、図面を参照したり、ときには化学式や数式、表なども挿入して、発明の内容を記述していきます。最初に、【発明の名称】を記載します。名称をどう書くかによって権利の内容は左右されません。わかりやすく簡潔に名称を決めましょう。ところで、明細書には、【0001】のように、番号があちこちに連番で並んで記載されます。これは、出願の内容を後で補正する手続きの際に、連番の段落ごと、修正後の内容に置き換えられるようにしたものです。【技術分野】、【背景技術】は、これまでにあった従来の技術を記載します。類似分野のこれまでの技術を、特許文献などの先行技術文献を明らかにして、今回出願する発明の優位性を示すことが大切です。【発明の概要】では、【発明が解決しようとする課題】で、従来技術になかった点を説明し、【課題を解決するための手段】、、【発明の効果】、【発明を実施するための形態】、【実施例】、【産業上の利用可能性】では、それぞれの項目に合わせて出願する発明の内容を記載します。【図面の簡単な説明】は、後述する図面のぞれぞれを簡潔に説明するものです。【符号の説明】は、明細書中の用語と、その用語が図面の中の特定箇所とのそれぞれに、同じ番号などの符号を割りあてて、その対応関係を説明するものです。
3-3. 特許出願の流れ
紙の書面の提出でも、インターネット出願でも、特許出願をすると出願番号が付与されます。書類はまず、方式審査に回されます。必要な特許出願料が納付されているか、書類の形式が整っているかなどがチェックされます。これまでに説明したすべての書類は、準備するだけでも大変です。自分で作成しようとしたら、「特許出願書類の書き方ガイド」などを参照しても、膨大な時間と労力がかかるとおわかりでしょう。
方式審査が終わって、発明の内容の審査(実体審査)に進むには、出願から3年以内に、出願審査請求をする必要があります。審査請求後、特許庁の審査官によって内容が審査され、問題なく特許になるときには登録査定が来ます。ここで特許料を納付すれば、特許権の設定登録がされます。しかし、たいていの場合には、審査の途中で拒絶理由通知書が来ると思っておいた方がよいでしょう。
ここで、意見書を書いて拒絶理由に反論したり、手続補正書で特許請求の範囲や明細書、図面などの補正をすることができます。反論の機会なく、いきなり拒絶査定になることはありません。出願審査請求書、意見書、手続補正書の書式も、前述した知的財産相談・支援ポータルサイト(独立行政法人工業所有権情報・研修館)からダウンロードできます。
段階 | 内容 |
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出願 | 特許庁に書類を提出 |
方式審査 | 書類の形式などがチェックされる |
実体審査 | 発明の内容が審査される |
拒絶理由通知 | 特許にできないと判断された場合に通知される |
意見書・補正書 | 拒絶理由に対する反論や修正を行う |
登録査定 | 特許として認められた場合に通知される |
登録 | 特許料を納付し、特許権を取得 |
3-4. まとめ
特許出願は、特許願、特許請求の範囲、明細書、図面、要約書といった書類を準備し、特許庁に提出する必要があります。特許出願は、自分で行うこともできますが、専門知識が必要なため、弁理士に依頼するのが一般的です。弁理士に依頼する場合は、事前に発明の内容や権利化したいポイントなどを整理しておくと、スムーズに手続きを進めることができます。
4. 弁理士と弁護士の違い
4-1. 仕事内容の違い
弁理士は、特許や商標などの知的財産権の保護を専門とし、技術や知識を活かしてクライアントを支援します。一方、弁護士は、法律問題全般に対応し、裁判や交渉などを通じてクライアントの権利を守ります。弁理士が技術やブランド、デザインといった知的財産の権利関係を争うのに対し、弁護士は人と人、企業と企業の間で発生した問題解決を請け負うという点が異なります。
ただし、他者に対して知的財産の使用を認める「ライセンス契約」の締結業務など、両者の資格保有者が協同で働く案件もあります。
職業 | 仕事内容 |
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弁理士 | 特許や商標などの知的財産権の保護を専門とする |
弁護士 | 法律問題全般に対応し、裁判や交渉などを行う |
4-2. 資格取得方法の違い
弁理士になるためには、弁理士試験に合格する必要があります。弁理士試験は、短答式試験、論文式試験、口述試験の3段階で構成されています。一方、弁護士になるには、司法試験に合格する必要があります。司法試験は、予備試験と法科大学院修了による2つのルートがあります。
弁理士試験は、法律知識に加えて、技術的な知識も必要とされるため、理系出身者が多く、合格率も低くなっています。弁護士試験は、法律知識を幅広く問われるため、文系出身者も多いですが、合格率は同様に低くなっています。
職業 | 資格取得方法 |
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弁理士 | 弁理士試験に合格する |
弁護士 | 司法試験に合格する |
4-3. 年収の違い
弁理士の年収は、勤務先や経験によって異なりますが、平均で700~1
職業 | 平均年収 |
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弁理士 | 700~1,000万円 |
弁護士 | 1,000万円以上 |
4-4. まとめ
弁理士と弁護士は、どちらも法律の専門家ですが、扱う分野や必要な知識、資格取得方法、年収などが異なります。弁理士は、知的財産権の保護を専門とし、技術的な知識も必要とされます。弁護士は、法律問題全般に対応し、裁判や交渉などを行います。どちらの職業を目指すかによって、適した資格取得の道や就業環境が異なるため、将来のキャリアプランを考える上で重要なポイントとなります。
5. 弁理士の未来性と市場動向
5-1. 弁理士の需要増加
弁理士は、知的財産に関する専門家として、今後も需要が高まると予想されています。科学技術の進歩と地球規模で進むグローバル化により、特許などをめぐる競争が激しくなっているからです。IT関連だけでなく、医療分野でも技術開発は盛んです。世界各地の医療関係者が、同じ病状について類似の治療法を研究している例も少なくありません。お互い、少しでも早く有効な治療法を開発し、特許権を取得しようと努めています。
ITや医療分野以外にも、さまざまな分野でグローバル化が進み、多くの業種において同じような状況が生まれ始めました。日本の企業は世界を相手にしなければならず、海外で特許権を取得する「国際出願」も必要になっています。「国際出願」は、今後さらに増加すると予想されており、目が離せません。
国内の特許出願数などは減少傾向ですが、特許事務所が海外へと活動範囲を広げれば、弁理士の将来性も高まることが期待できます。
要因 | 内容 |
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科学技術の進歩 | 特許などをめぐる競争が激化 |
グローバル化 | 海外進出する企業が増加し、国際出願の需要が高まっている |
知的財産戦略の重要性 | 企業が知的財産を戦略的に活用する動きが加速 |
5-2. 政府の知的財産戦略
「知的財産立国」を目指す日本。知財の保護強化と人的基盤の充実が重要視されるなか、弁理士の持つ知識と実務スキルにも注目が集まります。政府による知財戦略の方向性と具体的施策をまとめたのが、「知的財産推進計画」です。同計画は、内閣に設置された機関「知的財産戦略本部」が決定する行動計画で、知的財産の創造・保護・活用を目指してさまざまな取り組みを行うというもの。同計画は2003年の策定以来、時代ニーズに即した内容となるよう年に1度のペースで改訂が重ねられています。
『知的財産推進計画2019』では、これまでの知財戦略を振り返りつつ、2030年を見据えた知的財産戦略ビジョンを打ち立てています。そのビジョンとは、“価値デザイン社会の実現”。つまり、「自由な発想と多様な個性、日本らしい知的資産」をデザインする社会の実現です。そのため具体的な施策として、「地方・中小の知財戦略強化支援」「知的創造保護基盤の強化」「オープンイノベーションの促進」「データ・AI等の適切な利活用促進に向けた制度・ルール作り」「国内外の撮影環境改善等を通じた映像作品支援」「クールジャパン戦略の持続的強化」などを掲げています。
施策 | 内容 |
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地方・中小の知財戦略強化支援 | 地方や中小企業の知的財産活用を支援 |
知的創造保護基盤の強化 | 知的財産の創造と保護を促進するための基盤を強化 |
オープンイノベーションの促進 | 企業間連携によるイノベーションを促進 |
データ・AI等の適切な利活用促進 | データやAIの活用を促進するための制度・ルール作り |
映像作品支援 | 映像作品の制作を支援 |
クールジャパン戦略の持続的強化 | 日本の文化やコンテンツを海外に発信するための戦略を強化 |
5-3. AI時代における弁理士の役割
近い将来、AI技術の躍進によって多くの職業がAIに取って代わられるのではないか?とささやかれています。弁理士の業務も「AIに代替可能」との研究結果が示されたことがあり、物議をかもしました。AIが得意とするのは、いわゆる単純作業・定型業務と呼ばれるものです。たしかに弁理士の業務のなかにも、フォーマットさえ整えれば対応できるような単純な書類作成の仕事もあるでしょう。
しかし、弁理士の業務のなかでも重要なのは、知財コンサルティングやライセンス交渉、審決取消訴訟、侵害訴訟など、人間を直接相手とする類のものです。そこでは人間の感情や機微、間合いなどをくみ取った繊細な仕事が求められます。数学の公式のようには計算通りに動かないのが人間です。「人間を相手にする仕事は、人間に任せるのが最適解」というのが主流の考えではないでしょうか。
技術の発明者やデザインの発案者からヒアリングし、その意図を反映させた法的・技術的サービスを提供するには、AIでは補えない部分が大きいでしょう。人間の知識とセンスをメインに据えつつ、足りない部分をAIで補完する「人間とAIの協業」なら、弁理士業界でも実現の可能性は大いにあります。しかし、「すべての仕事をAIに奪われる」という極端な見方は、非現実的といえるでしょう。
AI | 弁理士の役割 |
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AIが得意とする単純作業 | 書類作成などの単純作業はAIに代替される可能性がある |
AIが苦手とする複雑な業務 | クライアントとのコミュニケーションや交渉、訴訟など、人間を相手にする業務はAIでは代替できない |
5-4. まとめ
弁理士は、知的財産に関する専門知識と、クライアントとのコミュニケーション能力を駆使して、知的財産権の取得や紛争解決をサポートする重要な役割を担っています。AI技術の発展によって一部の業務は自動化される可能性がありますが、弁理士の仕事全体がAIに取って代わられることは考えにくいです。むしろ、AIを活用することで、より高度な業務に集中できるようになるでしょう。
6. 弁理士業界の求人状況
6-1. 弁理士の求人状況
弁理士の求人状況は、近年では増加傾向にあります。特に、海外進出や知的財産戦略の重要性が高まっていることから、企業内弁理士の需要が高まっています。また、特許事務所においても、専門性の高い弁理士や、国際的な業務に対応できる弁理士の需要が高まっています。
弁理士の求人情報は、特許事務所のホームページや転職サイトなどで確認することができます。転職エージェントを利用することも有効です。転職エージェントは、弁理士の専門知識や経験、スキルなどを理解した上で、最適な求人情報を紹介してくれます。
求人状況 | 内容 |
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増加傾向 | 海外進出や知的財産戦略の重要性が高まっているため、企業内弁理士の需要が高まっている |
専門性の高い弁理士の需要 | 特許事務所においても、専門性の高い弁理士や、国際的な業務に対応できる弁理士の需要が高まっている |
6-2. 弁理士の転職事情
弁理士は、特許事務所や企業の知的財産部門など、さまざまな場所で活躍することができます。転職を考える弁理士は多く、転職理由としては、年収アップ、キャリアアップ、働き方改革などが挙げられます。弁理士は、専門性の高い資格であるため、転職市場では有利な立場にあります。特に、近年では、企業内弁理士の需要が高まっているため、一般企業への転職も選択肢として考えられます。
弁理士の転職活動では、専門知識や経験、スキルに加えて、コミュニケーション能力や英語力なども評価されます。転職エージェントを利用することで、自分の強みを理解し、最適な求人情報を見つけることができます。
転職理由 | 内容 |
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年収アップ | より高い年収を目指して転職 |
キャリアアップ | より専門性の高い業務や管理職を目指して転職 |
働き方改革 | ワークライフバランスを重視して転職 |
6-3. 弁理士の独立開業
弁理士は、独立開業することも可能です。独立開業することで、自分のペースで仕事ができ、高収入を得ることもできます。しかし、独立開業には、顧客獲得や事務所運営など、多くの課題があります。そのため、独立開業を検討する場合は、事前にしっかりと準備しておく必要があります。
独立開業するメリットとしては、自分の裁量で仕事を進められること、高収入を得られる可能性があることなどが挙げられます。一方、デメリットとしては、顧客獲得や事務所運営など、多くの課題があること、リスクが高いことなどが挙げられます。
メリット | 内容 |
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自分のペースで仕事ができる | 労働時間の調整がしやすい |
高収入を得られる可能性 | 努力次第で高収入を得られる |
自分の裁量で仕事を進められる | 経営方針を自由に決められる |
6-4. まとめ
弁理士の求人状況は、近年では増加傾向にあります。特に、海外進出や知的財産戦略の重要性が高まっていることから、企業内弁理士の需要が高まっています。弁理士は、専門性の高い資格であるため、転職市場では有利な立場にあります。転職を考える場合は、自分の強みを理解し、最適な求人情報を見つけることが大切です。
独立開業も選択肢の一つですが、顧客獲得や事務所運営など、多くの課題があることを理解しておく必要があります。
参考文献
・弁理士の仕事とは? わかりやすく仕事内容を紹介 | 弁理士の …
・弁理士とは? 弁理士の仕事内容を徹底解説! | 資格の学校tac
・弁理士とは?仕事内容・年収・なり方などを解説|向いている …
・弁理士とは?(試験情報・仕事内容) – Lec東京リーガルマインド
・特許出願(申請)の必要書類と書き方!弁理士が徹底解説し …
・出願手続きにおける弁理士の必要性|ベリーベスト国際特許事務所
・「弁護士」と「弁理士」の違いって? 両資格を持つ先生に聞い …
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