ソルテアとは？世界遺産についての解説

ソルテアの世界遺産登録基準
登録基準	説明
(ii)	19世紀に設立された工業都市の中でも保存状態の良く、各地の工業都市の計画に大いに影響を与えたという点。
(iv)	ソルテアの建築物は、19世紀半ばのパターナリズムを体現したものであり、繊維産業の発展の過程が見られるということ。

1. ソルテアの成り立ち

ソルテアの誕生

1853年、イギリスのウェスト・ヨークシャー州にあるソルテアは、開明的な資本家サー・タイタス・ソルトによって建設されました。ソルテアという名前は、ソルト氏とエア川を組み合わせたものです。ソルト氏は、ブラッドフォードで5つの工場を経営していましたが、工場による大気汚染やスラム街での伝染病の蔓延といった劣悪な住環境の問題を受けて、工場の機能を全て運河沿いの地に移転・集約し、新たに労働者の処遇を向上させるために上質かつ小綺麗な石造家屋を新設しました。

ソルト氏は、ブラッドフォードのスラムよりもずっと上質で小綺麗な石造家屋を労働者たちのために建て、水道のある洗濯所、学校、教会、集会所などの生活にかかせない施設はもちろん、書館や読書室、コンサートホール、ビリヤード場、科学的な研究室、スポーツジムなどを備えた娯楽・教育施設も建て、施設救貧院、村民向けの菜園、公園、ボートハウスなども整備しました。

ソルト氏の目的は、労働者たちの処遇を向上させることや、運河や鉄道による地の利を活かして巨大な繊維工場を作ることでした。彼は建築業者として、ブラッドフォードのロックウッド・モーソン社を雇いました。

ソルト氏は、労働者の福祉を考え、良好な生活環境と働きやすい職場環境を提供しました。彼の人道主義的なビジョンは、労働者の住宅、学校、病院、教会などの公共施設を提供することで具体化され、これがソルテアの特異性として評価されています。

ソルテアの建設目的
目的	内容
労働者の処遇向上	ブラッドフォードのスラムよりも上質な住居を提供
巨大な繊維工場の建設	運河や鉄道による地の利を活かす
環境問題の解決	工場による大気汚染や伝染病の蔓延を解消

岩倉使節団の訪問

1872年から1873年にかけて欧米諸国を歴訪した岩倉使節団は、1872年10月25日にソルテアを訪問しています。

当時、日本は明治維新を終えて近代化へと突き進もうとしており、岩倉使節団は、欧米の先進的な技術や制度を学ぶために派遣されました。

ソルテアは、当時世界的に注目されていたモデル・ヴィレッジであり、岩倉使節団は、そこで労働者の生活環境や工場の運営方法などを視察しました。

岩倉使節団は、ソルテアで見たものを日本に持ち帰り、日本の近代化に役立てました。

岩倉使節団の視察内容
視察内容	内容
労働者の生活環境	住居、学校、病院などの施設
工場の運営方法	生産性向上のための取り組み
都市計画	街全体の設計と管理

ソルテアのその後

タイタス・ソルトは1876年に亡くなり、会衆派教会に付設された霊廟に葬られました。さらにソルトの息子も亡くなると、村はパートナーシップに引き継がれました。

そのパートナーシップには、ハワース出身で12歳から村の工場で働いていたジェイムズ・ロバーツも含まれていました。彼は毎年ロシアに行き、ロシア語に堪能でした。

彼はソルテアを保有することになりましたが、ロシアに過剰に投資していたため、ロシア革命で損害を蒙りました。また、彼はリーズ大学にロシア講座を寄贈しました。

彼はT・S・エリオットの詩『荒地』でも言及されており、没後、イーストサセックス州のフェアライトに埋葬されました。

ソルテアの所有者
所有者	期間
サー・タイタス・ソルト	1853年～1876年
タイタス・ソルトの息子	1876年～不明
パートナーシップ	不明～現在

まとめ

ソルテアは、19世紀の産業革命時代に、労働者の福祉を重視したモデル・ヴィレッジとして建設されました。

タイタス・ソルトは、労働者の生活環境を改善することで、工場の生産性向上を目指しました。

ソルテアは、当時の先進的な都市計画のモデルとして、世界的に注目を集め、岩倉使節団も視察に訪れました。

現在でも、ソルテアは当時の姿を保っており、世界遺産として多くの人々に訪れられています。

2. ソルテアの地理的特徴

位置とアクセス

ソルテアは、イギリスのウェスト・ヨークシャー州シティ・オブ・ブラッドフォードにあります。

イギリス北部ウェスト・ヨークシャー州ブラッドフォードにあるソルテアは、大きな街ではありませんがアクセスは便利です。

空港（リーズ・ブラッドフォード空港）があり観光客の多く訪れる都市であるリーズからは車で30〜40ほど、電車ではリーズ駅からソルテア駅まで15分ほどで到着します。

駅名標に「ソルテア、世界遺産」と書かれた無人の小さな駅を降りると、そこはもうソルテアの村の中。昔の工場や建物が見えてきます。リーズから40〜50分と少し時間はかかりますが、バスを利用することも可能です。

ソルテアへのアクセス
交通手段	所要時間
リーズ駅から電車	約15分
リーズからバス	約40～50分
リーズ・ブラッドフォード空港から車	約30～40分

地形と水系

ソルテアは、エア川とリーズ・リヴァプール運河の流域にあります。

この地は、運河と川に挟まれており、新工場建設には適していました。

また、鉄道網が発展し、繊維産業に必用な充分な水を汲めるエア川が流れているなど、理想的な条件が揃っていました。

さらに、鉄道や火力に必要な石炭も、当時リーズ近郊の炭鉱で豊富に採掘されていたそうです。

ソルテアの地理的条件
条件	内容
運河	リーズ・リヴァプール運河
川	エア川
石炭	リーズ近郊の炭鉱で豊富に採掘
水資源	繊維産業に必要な水量を確保

街並み

ソルテアは、碁盤の目に区切られた街並みで、850軒の労働者の住宅に加え病院や公園などが建設されました。

町は清潔と安全性が何よりも重視され、当時の姿を現在でも保っています。

街の中心には、ソルツ・ミルと呼ばれる巨大な繊維工場があり、その周囲に労働者の住宅や公共施設が配置されています。

ソルテアは、当時の先進的な都市計画のモデルとして、世界的に注目を集めています。

ソルテアの街並み
特徴	内容
区画	碁盤の目
建物	石造りの住宅、病院、学校、教会など
環境	清潔で安全な環境
設計	当時の先進的な都市計画のモデル

まとめ

ソルテアは、イギリスのウェスト・ヨークシャー州にある、アクセスしやすい世界遺産の村です。

エア川とリーズ・リヴァプール運河の流域に位置し、交通の便が良く、水資源にも恵まれていました。

碁盤の目に区切られた街並みは、清潔で安全な環境を重視した当時の都市計画のモデルとなっています。

ソルテアは、当時の産業革命時代の技術革新と都市計画の融合によって生まれた、理想的なモデル・ヴィレッジと言えるでしょう。

3. ソルテアの生態系

自然環境

ソルテアは、エア川とリーズ・リヴァプール運河の流域に位置し、豊かな自然環境に恵まれています。

エア川は、ソルテアにとって重要な水資源であり、工場の操業や住民の生活に欠かせないものでした。

また、リーズ・リヴァプール運河は、ソルテアとリヴァプールの港を結ぶ重要な交通路であり、物資の輸送に役立っていました。

ソルテアは、自然環境と産業が調和した、理想的なモデル・ヴィレッジとして建設されました。

ソルテアの自然環境
要素	内容
エア川	水資源、工場の操業、住民の生活
リーズ・リヴァプール運河	交通路、物資の輸送
緑地	様々な種類の植物
生物	魚、鳥類など

生物多様性

ソルテアには、様々な種類の植物や動物が生息しています。

エア川には、魚や鳥類が生息し、周辺の緑地には、様々な種類の植物が生えています。

ソルテアは、都市化が進んだ地域でありながら、豊かな自然環境が残されていることが特徴です。

ソルテアは、生物多様性を保全するための取り組みが行われています。

環境問題

ソルテアは、かつては繊維工場による大気汚染や水質汚染などの環境問題を抱えていました。

しかし、近年では、環境保護への意識が高まり、様々な対策がとられています。

ソルテアは、環境問題と持続可能な開発のバランスをどのように取るのか、重要な課題を抱えています。

ソルテアは、環境問題への取り組みを通じて、持続可能な社会の実現を目指しています。

ソルテアの環境問題
問題	内容
大気汚染	工場による排煙
水質汚染	工場排水による汚染
廃棄物処理	工場廃棄物の処理問題

まとめ

ソルテアは、豊かな自然環境に恵まれた地域であり、様々な種類の植物や動物が生息しています。

しかし、かつては環境問題を抱えていましたが、近年では環境保護への意識が高まり、様々な対策がとられています。

ソルテアは、自然環境と産業の調和、そして持続可能な開発の重要性を示す、重要な場所となっています。

ソルテアは、環境問題への取り組みを通じて、未来の世代に豊かな自然環境を引き継ぐための努力を続けています。

4. ソルテアの観光名所

ソルツ・ミル

ソルテアの中心に位置する大規模な繊維工場、ソルツ・ミルは、ソルテアを象徴する存在です。

現在はショッピングセンターやアートギャラリーとして利用され、デビッド・ホックニーの作品展示も行われています。

工場内部は見事に保存されており、19世紀の産業革命時代の雰囲気を感じられます。

ソルツ・ミルは、ソルテアの産業遺産を伝える重要な場所であり、観光客に人気のスポットです。

ソルツ・ミルの施設
施設	内容
アート・ギャラリー	デイヴィッド・ホックニーの作品展示
ショッピングセンター	様々なショップ
カフェ	食事
オフィス	企業のオフィス
住居	居住スペース

ロバーツ・パーク

ロバーツ・パークは、リバーエアのほとりに位置する美しい公園です。

春には花々が咲き乱れ、夏にはピクニックに最適な場所となります。

パーク内には野球場やスケートパークもあり、さまざまなレクリエーションを楽しむことができます。

ロバーツ・パークは、ソルテアの住民にとって憩いの場であり、観光客にとっても魅力的な場所です。

ロバーツ・パークの施設
施設	内容
野球場	野球を楽しむ
スケートパーク	スケートボードを楽しむ
ピクニックエリア	お弁当などを食べる
遊歩道	散歩を楽しむ

労働者の家

ソルテアの労働者のために建てられた家々は、19世紀の労働者階級の生活を反映しています。

これらの住宅は今でも使われており、見学することで当時の生活環境を垣間見ることができます。

労働者の家は、ソルテアの社会構造や労働者の生活を知る上で重要な場所です。

労働者の家は、当時の労働者の暮らしを想像し、歴史を学ぶことができる貴重な場所です。

労働者の家の特徴
特徴	内容
構造	レンガ造りのテラス・ハウス
設備	病院、学校、図書館、教会、浴場、洗濯場など
生活	当時の労働者階級の生活を反映

まとめ

ソルテアには、ソルツ・ミル、ロバーツ・パーク、労働者の家など、魅力的な観光スポットが数多くあります。

これらの観光スポットは、ソルテアの産業遺産、自然環境、社会構造を伝える重要な場所です。

ソルテアを訪れることで、19世紀の産業革命時代の歴史と文化に触れることができます。

ソルテアは、歴史と文化、そして自然が調和した、魅力的な観光地です。

5. ソルテアの周辺施設

ヴィクトリア・ホール

1867年から1871年の間に建設され、1872年11月に正式にオープンしたヴィクトリア・ホールは、ソルテアの村に住む人たちのための娯楽や休養のため、または文化や学びの施設として使用されてきました。

現在ではイベント会場や結婚式場として、またピラティスやカラテなどのクラスにも使われています。

世界遺産の村にある重要な建築物で結婚式なんて、とても素敵ですね。

ヴィクトリア・ホールの目の前には緑豊かな庭が広がり、左右対称の美しい形の建物を引き立てます。ロンドンの彫刻家によって作られたライオンの彫刻やホールを守っているゴーガイル（怪物などをかたどった彫刻）やギリシャ神の彫刻も必見です！

ヴィクトリア・ホールの用途
用途	内容
イベント会場	コンサート、結婚式など
学習施設	ピラティス、カラテなどのクラス
その他	会議室、レストランなど

ソルテア駅

ソルテア駅は、ソルテアの村の中心部から数分の場所にあり、鉄道愛好家にとっては見逃せないスポットです。

ここから列車に乗れば、周辺の町や都市を探索することができます。

駅舎は、ヴィクトリア朝時代の建築様式で建てられており、歴史を感じることができます。

ソルテア駅は、ソルテアへのアクセス拠点であり、観光客にとって便利な場所です。

周辺の観光地

ソルテアは、リーズやブラッドフォードなどの都市からアクセスしやすい場所に位置しています。

周辺には、ハワース、ヨーク、マンチェスターユナイテッドミュージアムなど、魅力的な観光地が数多くあります。

ソルテアを拠点に、周辺の観光地を巡るのもおすすめです。

周辺の観光地には、歴史、文化、自然など、様々な魅力があります。

周辺の観光地
観光地	内容
ハワース	ブロンテ姉妹の故郷
ヨーク	歴史的な街並み
マンチェスターユナイテッドミュージアム	サッカーチームの博物館
ストーク・オン・トレント	陶磁器の街
ウインダミア	湖水地方の街
チェスター	ローマ時代の遺跡
グラスミア	湖水地方の街
シャーウッドの森とノッティンガム城	伝説のロビン・フッドの舞台
湖水地方	美しい自然

まとめ

ソルテアには、ヴィクトリア・ホールやソルテア駅など、魅力的な周辺施設があります。

また、ソルテアは、リーズやブラッドフォードなどの都市からアクセスしやすい場所に位置し、周辺には魅力的な観光地が数多くあります。

ソルテアを拠点に、周辺の観光地を巡ることで、イギリスの歴史と文化を満喫することができます。

ソルテアは、イギリス北部を代表する観光地であり、多くの観光客に愛されています。

6. ソルテアの保護と持続可能性

世界遺産登録

2001年12月にソルテアはユネスコの世界遺産に登録されました。

これは政府がソルテアの保全の義務を負ったということを意味します。

村はかつての姿を十全に保ってはいるが、エア川の渓谷は東西交通の要路であることから、交通量の多さによって傷んでいる部分が散見されます。

また、蛮行によって荒らされた公園の修復が必要な状態でもあります。

保全活動

村の建造物群は個別にイギリス指定建造物に登録されており、特に会衆派教会の教会堂は保護レベルが最高（グレード1）になっています。

ソルテア自体も当然、保全地域です。

ソルテアは、世界遺産としての価値を保全するために、様々な取り組みが行われています。

ソルテアは、歴史的な遺産を未来の世代に引き継ぐために、保全活動が続けられています。

ソルテアの保全活動
活動	内容
イギリス指定建造物	村の建造物群の保護
保全地域	ソルテア全体の保護
環境保護	観光客の増加による環境負荷の軽減
地域住民との共存	観光と住民生活の調和