項目 | 説明 |
---|---|
裁定買いとは | 異なる市場間の価格差を利用した売買で利益を得る手法 |
裁定買いの仕組み | 先物市場と現物市場の価格差を利用する |
裁定買いのメリット | リスクを抑えながら利益を狙える |
裁定買いのデメリット | 利益率が低く、利益を得る機会が限られる |
裁定買いの具体的な手法 | 相関性の高い銘柄を見つけ、価格差が拡大したタイミングで売買する |
裁定買いの成功事例 | 日経225先物と日経平均株価、原油先物と原油現物価格の価格差を利用した事例 |
裁定買いの注意点 | リスクを伴う取引手法であり、利益率が低く、利益を得る機会が限られる |
裁定買いの今後の展望 | 市場の効率性が高まっている一方で、市場の変動が大きくなっているため、今後も一定の需要があると考えられる |
1. 裁定買いとは
裁定買いとは何か?
裁定買いとは、異なる市場間での価格差や金利差を利用して売買しマージンを稼ぐ取引のことです。利鞘を取るのでサヤ取り(鞘取り)とも呼ばれます。例えば、日本などの水資源が豊富な地域では水は希少性が乏しいため、極めて安価です。しかし、この水を砂漠のような水の希少性が高い地域に運んでいけば、高値で売ることができるでしょう。金融の世界でも同様な取引があり、金利の低いところで金を借り、金利の高いところで貸し出せば、元手が少なくても多額の利益を手にすることが出来ます。
裁定取引が行われた結果、価格(金利)の低い市場では需要増大で価格(金利)が上がり、価格(金利)の高い市場では供給増大で価格(金利)が下がり、次第に価格差や金利差が収斂していく。価格が収斂していくこの過程を一物一価の法則という。
同じ品質(財の同質性)の2つの商品に異なる価格が成立していることが知られている(完全情報)場合、両者の価格差は裁定取引の対象となります。裁定取引の対象となるまでは、分断された別々の市場として別の価格がついていても、対象となれば価格が収斂していくので、裁定取引には市場の接続、あるいは拡張の効果があることになる。こうすることで、より必要な所へ必要な物資が供給され経済の資源配分が効率的になります。
不確実性のない市場では裁定取引を行う機会がないため、裁定取引非存在条件が成り立つ。
商品 | 現物価格 | 先物価格 | 3か月後の現物価格 | 利益 |
---|---|---|---|---|
A | 100円 | 120円 | 140円 | 20円 |
A | 100円 | 120円 | 80円 | 20円 |
裁定取引の例
A という商品の現物取引と先物取引を用いた裁定取引の例を紹介します。\nある時点で商品 A の現物価格が100円、3か月先の先物価格が120円だったとします。\n裁定取引では安いほうを買って高いほうを売るから、この場合は現物を買って先物を売ることになります。
先物価格は、3か月後の清算日には現物価格と一致する。\n3か月後に商品 A が140円になっていたら、\n-----------------\n合計 20円の儲け\n一方、3か月後に商品 A が80円になっていても、\n-----------------\n合計 20円の儲け\nのように儲けの額は同じである。
まとめ
裁定買いとは、異なる市場間での価格差や金利差を利用して売買し、その価格差が縮小したときに決済することで利ざやを稼ぐ取引手法です。
裁定取引は、市場の効率性を高める役割も果たしており、価格の不均衡を解消することで市場間の価格差を縮小させます。
ただし、裁定取引は市場の変動や取引コストなどのリスクを伴うため、慎重な分析と迅速な実行が求められます。
2. 裁定買いの仕組み
裁定取引の仕組み
裁定取引は、先物市場と現物市場の価格差を利用して利益を得る取引手法です。先物市場では、先物価格と現物価格の間に一時的な価格差が生じることがあります。この価格差を利用して、割高な先物を売って、割安な現物を買うことで利益を得ます。
例えば、日経225先物と日経平均株価を例に挙げます。日経225先物の理論価格は、日経平均株価から算出されます。しかし、市場の状況によっては、先物価格が理論価格よりも高くなることがあります。
この場合、裁定買いと呼ばれる取引が行われます。裁定買いでは、割高な先物を売って、割安な現物株を買います。その後、先物価格が理論価格に近づくと、先物を買い戻し、現物株を売却することで利益を得ます。
逆に、先物価格が理論価格よりも安くなっている場合は、裁定売りと呼ばれる取引が行われます。裁定売りでは、割安な先物を買って、割高な現物株を売ります。その後、先物価格が理論価格に近づくと、先物を売却し、現物株を買い戻すことで利益を得ます。
種類 | 先物価格 | 現物価格 | 取引内容 |
---|---|---|---|
裁定買い | 割高 | 割安 | 先物を売って現物を買う |
裁定売り | 割安 | 割高 | 先物を買って現物を売る |
裁定取引の例
例えば、日経225先物の理論価格が20
日経平均株価から求めた日経225先物の理論価格が20
相場解説などでよく言われる「先物主導で日経平均株価が上昇」というのは、この裁定買いによるものです。相場の先高感が強いと裁定買いが入りやすく、現物株が押し上げられるのです。
しかし、先物もいつまでも理論価格よりも高い状態ではありません。決済日(SQ)には日経225先物と日経平均株価は同じ値段で決済されます。どんなに上下に動いても先物は理論価格に近づいていきますし、市場が落ちつけば適正水準に戻ります。
まとめ
裁定取引は、先物市場と現物市場の価格差を利用して利益を得る取引手法です。
先物価格が理論価格よりも高くなっている場合は、裁定買いが行われ、先物価格が理論価格よりも安くなっている場合は、裁定売りが行われます。
裁定取引は、市場の効率性を高める役割を果たしており、先物価格と現物価格の価格差を縮小させる効果があります。
3. 裁定買いのメリットとデメリット
裁定買いのメリット
裁定買いの最大のメリットは、リスクを抑えながら利益を狙えることです。裁定取引は、先物と現物を同時に売買することで、価格変動によるリスクをヘッジすることができます。
例えば、先物価格が下落した場合、現物価格も下落する可能性が高いです。しかし、裁定買いでは、先物を売って現物を買っているので、先物価格の下落による損失は、現物価格の上昇による利益で相殺されます。
このように、裁定取引は、価格変動のリスクを最小限に抑えながら、安定した利益を得ることが期待できます。
メリット | 説明 |
---|---|
リスクヘッジ | 先物と現物を同時に売買することで、価格変動によるリスクをヘッジできる |
安定した利益 | 価格変動のリスクを最小限に抑えながら、安定した利益を得ることが期待できる |
裁定買いのデメリット
裁定買いのデメリットは、利益率が低いことです。裁定取引は、価格差が小さい場合に行われるため、利益率が低くなる傾向があります。
また、裁定取引は、市場の効率性が高まっているため、価格差が短時間で解消されることが多く、利益を得る機会が限られています。
さらに、裁定取引は、取引コストがかかることもデメリットです。裁定取引は、先物と現物を同時に売買するため、取引手数料やスプレッドなどのコストが発生します。
デメリット | 説明 |
---|---|
利益率が低い | 価格差が小さい場合に行われるため、利益率が低くなる傾向がある |
利益を得る機会が限られる | 市場の効率性が高まっているため、価格差が短時間で解消されることが多く、利益を得る機会が限られている |
取引コストがかかる | 先物と現物を同時に売買するため、取引手数料やスプレッドなどのコストが発生する |
まとめ
裁定買いのメリットは、リスクを抑えながら利益を狙えることです。
裁定買いのデメリットは、利益率が低く、利益を得る機会が限られていることです。
裁定取引は、市場の効率性が高まっているため、近年では、利益率が低く、利益を得る機会が限られていることから、個人投資家にとって魅力的な取引手法とは言えません。
4. 裁定買いの具体的な手法
裁定取引の手法
裁定取引を行うには、まず、相関性の高い2つの銘柄を見つける必要があります。相関性の高い銘柄とは、価格が似たような動きをする銘柄のことです。
相関性の高い銘柄を見つけるには、相関係数という統計指標を用いることができます。相関係数は、2つの銘柄の価格の類似性を数値化した指標です。相関係数が1に近いほど、2つの銘柄の価格の類似性が高いと言えます。
相関性の高い銘柄を見つけたら、価格差が拡大したタイミングで、割安な銘柄を買い、割高な銘柄を売る注文を出します。
その後、価格差が縮小したタイミングで、反対売買を行い、利益を得ます。
相関係数 | 類似性 |
---|---|
1 | 完全に同じ動き |
0.9 | 非常に高い類似性 |
0.7 | 高い類似性 |
0 | 無相関 |
-1 | 完全に逆の動き |
ヒストグラムを用いた裁定取引
裁定取引では、ヒストグラムという統計グラフを用いることで、価格差のデータのばらつき具合を確認し、どのくらいの価格差で仕掛ければ良いのかを判断することができます。
ヒストグラムは、価格差の分布状況を視覚的に表すグラフです。ヒストグラムから、価格差がどの範囲に集中しているのか、どの範囲に偏っているのかを把握することができます。
裁定取引では、ヒストグラムを用いて、価格差が拡大したタイミングと、価格差が縮小したタイミングを判断します。
階級 | 度数 | 相対度数 | 累積相対度数 | 正規分布 |
---|---|---|---|---|
350~379 | 5 | 0.02 | 0.02 | 0.01 |
380~409 | 10 | 0.04 | 0.06 | 0.02 |
410~439 | 20 | 0.08 | 0.14 | 0.04 |
440~469 | 40 | 0.16 | 0.30 | 0.08 |
470~499 | 75 | 0.31 | 0.61 | 0.16 |
500~529 | 60 | 0.24 | 0.85 | 0.24 |
530~559 | 30 | 0.12 | 0.97 | 0.31 |
560~589 | 10 | 0.04 | 1.01 | 0.38 |
590~619 | 5 | 0.02 | 1.03 | 0.44 |
まとめ
裁定取引を行うには、相関性の高い2つの銘柄を見つけ、価格差が拡大したタイミングで、割安な銘柄を買い、割高な銘柄を売る注文を出します。
その後、価格差が縮小したタイミングで、反対売買を行い、利益を得ます。
裁定取引では、ヒストグラムを用いることで、価格差のデータのばらつき具合を確認し、どのくらいの価格差で仕掛ければ良いのかを判断することができます。
5. 裁定買いの成功事例
成功事例1
2019年9月、日経225先物と日経平均株価の間に価格差が生じました。日経225先物は、日経平均株価よりも割高な状態でした。
この時、ある投資家は、日経225先物を売り、日経平均株価を買いました。その後、日経225先物と日経平均株価の価格差が縮小し、投資家は利益を得ることができました。
時期 | 先物価格 | 現物価格 | 取引内容 | 利益 |
---|---|---|---|---|
2019年9月 | 割高 | 割安 | 先物を売って現物を買う | 価格差が縮小したことで利益を得た |
成功事例2
2020年3月、原油価格が急落しました。原油先物と原油現物価格の間に価格差が生じました。原油先物は、原油現物価格よりも割安な状態でした。
この時、ある投資家は、原油先物を買い、原油現物を売りました。その後、原油先物と原油現物価格の価格差が縮小し、投資家は利益を得ることができました。
時期 | 先物価格 | 現物価格 | 取引内容 | 利益 |
---|---|---|---|---|
2020年3月 | 割安 | 割高 | 先物を買って現物を売る | 価格差が縮小したことで利益を得た |
まとめ
裁定取引は、市場の価格差を利用して利益を得る取引手法です。
成功事例では、日経225先物と日経平均株価、原油先物と原油現物価格の間に価格差が生じた際に、裁定取引を行い、利益を得ることができました。
裁定取引は、市場の効率性を高める役割を果たしており、価格差を縮小させる効果があります。
6. 裁定買いの注意点と今後の展望
裁定買いの注意点
裁定取引は、リスクを伴う取引手法です。価格差が縮小する前に、市場の状況が変化し、損失が発生する可能性があります。
また、裁定取引は、取引コストがかかることも注意点です。裁定取引は、先物と現物を同時に売買するため、取引手数料やスプレッドなどのコストが発生します。
さらに、裁定取引は、市場の効率性が高まっているため、価格差が短時間で解消されることが多く、利益を得る機会が限られています。
注意点 | 説明 |
---|---|
リスク | 価格差が縮小する前に、市場の状況が変化し、損失が発生する可能性がある |
取引コスト | 先物と現物を同時に売買するため、取引手数料やスプレッドなどのコストが発生する |
利益を得る機会が限られる | 市場の効率性が高まっているため、価格差が短時間で解消されることが多く、利益を得る機会が限られている |
裁定買いの今後の展望
裁定取引は、市場の効率性が高まっているため、近年では、利益率が低く、利益を得る機会が限られていることから、個人投資家にとって魅力的な取引手法とは言えません。
しかし、市場の効率性が高まっている一方で、市場の変動が大きくなっていることも事実です。そのため、裁定取引は、今後も一定の需要があると考えられます。
特に、市場の変動が大きい時期には、裁定取引の需要が高まる可能性があります。
展望 | 説明 |
---|---|
需要 | 市場の効率性が高まっている一方で、市場の変動が大きくなっているため、今後も一定の需要があると考えられる |
市場の変動 | 特に、市場の変動が大きい時期には、裁定取引の需要が高まる可能性がある |
まとめ
裁定取引は、リスクを伴う取引手法であり、利益率が低く、利益を得る機会が限られていることから、個人投資家にとって魅力的な取引手法とは言えません。
しかし、市場の効率性が高まっている一方で、市場の変動が大きくなっていることから、裁定取引は、今後も一定の需要があると考えられます。
特に、市場の変動が大きい時期には、裁定取引の需要が高まる可能性があります。
参考文献
・アービトラージ(裁定取引)とは|意味や具体例・よくある …
・裁定買いとは?株式用語解説 – お客様サポート – Dmm 株
・わかりやすい用語集 解説:裁定買い(さいていがい) | 三井 …
・裁定買い(さいていかい) | 証券用語集 | 東海東京証券株式会社
・裁定取引 | 初心者でもわかりやすい金融用語集 | マネクリ …
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