ホワイトカラー・エグゼンプションとは?経済用語について説明

ホワイトカラーエグゼンプションの全体像
項目 内容
定義 労働時間ではなく成果で評価される賃金制度
発祥 1938年アメリカ
導入目的 労働生産性向上、長時間労働抑制
対象者 高度な専門知識を必要とする業務に従事する労働者(年収1,075万円以上)
導入要件 労使委員会の設置、労働者の同意、職務記述書の明確化
メリット 労働生産性向上、人件費削減、ワークライフバランス実現
デメリット 長時間労働の増加、残業代ゼロ、モチベーション低下
今後の展望 労働者の健康確保措置の強化、対象者の拡大

1. ホワイトカラーエグゼンプションとは何か

要約

ホワイトカラーエグゼンプションの定義

ホワイトカラーエグゼンプションとは、労働時間ではなく成果に対して賃金が支払われる制度のことです。1938年にアメリカで生まれ、近年では欧米圏で一般的な考え方となりました。この制度は一定要件を満たす労働者に対し、残業による割増賃金を支払う義務を除外(エグゼンプション)する制度として発足しました。対象者の多くがホワイトカラー(製造業や建設業などを除くオフィスワーカー)であったことが、ホワイトカラーエグゼンプションという名称の由来です。

ホワイトカラーエグゼンプションを導入すると、給与額の基準が成果に依存するようになるため、成果次第では6時間労働でも8時間労働でも同じ給与を支払うことになります。また、労働時間の規制がなくなるため、就労時間が長くなる、あるいは短くなるというような現象も想定されます。労働者の側は労働時間の規定に縛られず、自分で労働時間を決められる一方で、労働時間に関する法的保護は受けられなくなります。

原型となる制度がアメリカで生まれたことや、「欧米企業は成果主義」という話がビジネスシーンで聞かれることからも分かるように、ホワイトカラーエグゼンプションはアメリカやドイツ、フランスなどの欧米諸国で広く導入されています。ホワイトカラーエグゼンプションの対象者は年収によって規定されますが、欧米諸国では年収要件が日本より低く設定されているため、より幅広い労働者がこの制度の適用対象となっています。

ホワイトカラーエグゼンプションの定義
項目 内容
定義 労働時間ではなく成果で評価される賃金制度
発祥 1938年アメリカ
導入目的 労働生産性向上、長時間労働抑制
対象者 高度な専門知識を必要とする業務に従事する労働者(年収1,075万円以上)
導入要件 労使委員会の設置、労働者の同意、職務記述書の明確化
メリット 労働生産性向上、人件費削減、ワークライフバランス実現
デメリット 長時間労働の増加、残業代ゼロ、モチベーション低下
今後の展望 労働者の健康確保措置の強化、対象者の拡大

ホワイトカラーエグゼンプションと日本の高度プロフェッショナル制度

日本では、ホワイトカラーエグゼンプションをベースにした「高度プロフェッショナル制度」が働き方改革の一環として2019年4月に導入されました。この制度のもとでは、ベースと同様に労働時間ではなく成果に対する評価と報酬が重視されます。導入背景には、長時間労働が評価される日本企業の伝統的慣習や、それを利用した生産性のない残業による残業代の獲得の問題視があります。はじまりは古く、2005年に経団連がホワイトカラーエグゼンプションの導入を提案したことでした。

2007年にはホワイトカラーエグゼンプション制度の導入が第一次安倍内閣により検討されましたが、労働問題への懸念などから法案提出は断念されています。2019年、長時間労働の抑制などを盛り込んだ働き方改革関連法案の一つとして成立しました。成果を重要視することや、就労時間や残業代の規定は欧米のホワイトカラーエグゼンプションと同様です。しかし、労使間の合意が必要なことや、年次有給休暇の規定は通常の労働者と同条件で適用されることが本制度の特徴です。

高度プロフェッショナル制度の対象と条件
項目 内容
対象業務 金融商品の開発、金融ディーラー、アナリスト、コンサルタント、研究開発など
年収 1,075万円以上(基準年間平均給与額の3倍以上に相当する金額)
労働条件 4週間を通じて4日以上かつ、1年間で104日の休日の確保
その他 対象業務に常態として従事していること
導入プロセス 労使委員会の設置、決議、労働基準監督署への届け出、労働者の同意

高度プロフェッショナル制度の対象と条件

高度プロフェッショナル制度の対象となるのは、高度な専門知識を必要する業務です。「時間をかければかけるほど成果が上がる」とされるようなものとは異なる仕事を行う労働者にのみ、制度を適用できます。たとえば次のような業務を行う人が該当します。金融商品の開発、金融ディーラー、アナリスト、コンサルタント、研究開発など。これらの業務は専門的な知識とスキルが求められ、直接的な時間労働による生産性が限定されるため、成果に基づいた評価と報酬が適用されます。

また、業務の労働時間の具体的な指示を受ける場合は、制度の適用対象から除外されることに注意しましょう。高度プロフェッショナル制度を適用する労働者は、年収が1

また、労働環境は4週間を通じて4日以上かつ、1年間で104日の休日の確保が義務付けられています。加えて、対象業務に常態として従事していることが求められており、高度プロフェッショナル制度の対象となる業務以外の業務にも常態的に従事している場合は対象から外れます。たとえば、「対象となる業務」で紹介した業務と並行して、時間労働に比例して成果や報酬が規定される業務を行っている人は、高度プロフェッショナル制度の定期用は受けられません。

まとめ

ホワイトカラーエグゼンプションは、労働時間ではなく成果で評価される制度であり、欧米では広く導入されています。日本では、ホワイトカラーエグゼンプションをベースにした「高度プロフェッショナル制度」が2019年4月に導入されました。この制度は、高度な専門知識を必要とする業務に従事し、年収が1

高度プロフェッショナル制度の導入には、労働時間ではなく成果で評価することで労働者のモチベーションを高め、生産性を向上させる効果が期待されます。しかし、一方で、長時間労働や残業代ゼロといった問題点も指摘されています。

高度プロフェッショナル制度を導入する際には、労働者の健康管理や休日の確保、労働時間に関する法的保護の不足などを考慮し、適切な対策を講じる必要があります。

2. ホワイトカラーエグゼンプションの歴史

要約

ホワイトカラーエグゼンプションの誕生

ホワイトカラーエグゼンプションは、1938年にアメリカで誕生しました。当時のアメリカでは、労働時間規制が厳しく、週40時間を超えて労働させた場合は、残業代として通常の賃金の1.5倍を支払う必要がありました。しかし、ホワイトカラー労働者の中には、労働時間と成果が比例しない職種も多く、時間ではなく成果で評価されるべきという考え方が台頭しました。

そこで、一定の条件を満たすホワイトカラー労働者に対しては、労働時間規制の適用を免除し、成果に基づいて賃金を支払うというホワイトカラーエグゼンプション制度が導入されました。この制度は、アメリカで広く普及し、その後、ヨーロッパなど他の国々にも広がっていきました。

日本のホワイトカラーエグゼンプション導入への動き

日本では、2005年に経団連がホワイトカラーエグゼンプションの導入を提言しました。経団連は、日本の労働生産性が低い原因の一つとして、長時間労働を挙げ、ホワイトカラーエグゼンプションの導入によって、労働者のモチベーションを高め、生産性を向上させると主張しました。

しかし、ホワイトカラーエグゼンプションの導入には、労働時間規制の緩和による長時間労働の増加や、残業代ゼロによる労働者の不利益といった懸念も存在しました。そのため、政府は2007年に法案化に動いたものの、世論の反発を受け、国会への法案提出を断念しました。

高度プロフェッショナル制度の誕生

2014年、安倍晋三政権は、経済成長戦略の一環として、ホワイトカラーエグゼンプションの導入を再び検討し始めました。しかし、過去の失敗を踏まえ、今回は「年収1

そして、2019年4月、長時間労働の抑制などを盛り込んだ働き方改革関連法案の一つとして、「高度プロフェッショナル制度」が成立しました。この制度は、ホワイトカラーエグゼンプションを参考に、労働時間ではなく成果で評価する制度ですが、対象者を限定し、労働者の健康確保措置を強化することで、過去の懸念を解消しようとしています。

まとめ

ホワイトカラーエグゼンプションは、アメリカで誕生し、欧米諸国で広く導入されてきました。日本では、2005年に経団連が導入を提言しましたが、長時間労働の増加や残業代ゼロといった懸念から、2007年に法案化は断念されました。

その後、2014年に安倍晋三政権が再び導入を検討し、2019年4月に「高度プロフェッショナル制度」として成立しました。この制度は、ホワイトカラーエグゼンプションを参考に、対象者を限定し、労働者の健康確保措置を強化することで、過去の懸念を解消しようとしています。

3. ホワイトカラーエグゼンプションの実例

要約

アメリカにおけるホワイトカラーエグゼンプション

アメリカでは、ホワイトカラーエグゼンプションは、1938年に制定された公正労働基準法(FLSA)によって規定されています。FLSAは、週40時間を超える労働に対しては1.5倍の割増賃金を払う義務を定めていますが、第13条(a)(1)の規定により、特定の従業員は免除(exemptions)されうるとしています。

この場合、最低賃金と時間外手当が適用されません。肉体労働・反復作業などに従事するブルーカラー労働者は、いかなる高給でもexemptとはなりません。適用除外要件は細かくは規定されていないが、基本的に自由裁量権があり、幹部クラス・高度な専門職であることが要求されています。また、適用除外労働者であっても、法定労働時間に関する規制は適用されます。

アメリカにおけるホワイトカラーエグゼンプション
項目 内容
対象者 反復的な労働に従事するブルーカラー以外
対象職種 管理職、事務職、専門職、外勤営業職など
年収要件 1週間あたり455ドル以上
その他 法定労働時間に関する規制は適用される

ドイツにおけるホワイトカラーエグゼンプション

ドイツでは、労働時間法(ドイツ語版)にて規定されています。同法には時間外労働への割増賃金制度はなく、代わりにある期間内で調整して結果的に一日8時間労働が成り立てばよいとしている。同法の適用から除外される職員について、一部を以下に挙げる。経営幹部職員、管理的職員、技術者、芸術家、ジャーナリスト、教師、医師、弁護士、公務員など。

適用除外要件は経営幹部職員とみなされること。

ドイツにおけるホワイトカラーエグゼンプション
項目 内容
対象者 一定の要件を満たす管理的職員
対象職種 人事部長など
その他 アメリカと比べて比較的狭い職種に限定されている

フランスにおけるホワイトカラーエグゼンプション

フランスでは雇用主からの要請がない残業は残業とは見なされない。2008年の改正で定額賃金制が導入されて、定期的に残業する者に対しては、基本給と残業代を含んだ給与内訳を明記することで週又は月単位で定額雇用契約を結べる。管理職以外でも年間定時間労働や年間定日労働制定が利用できるため、無期限雇用契約と有限雇用契約がある。

フランスにおけるホワイトカラーエグゼンプション
項目 内容
対象者 一定の要件を満たす経営幹部職員
その他 年次有給休暇の規定は適用される

まとめ

アメリカでは、ホワイトカラーエグゼンプションは、管理職や事務職、専門職など、幅広い職種に適用されています。ドイツでは、管理職に限定されています。フランスでは、経営幹部職員が対象となっています。イギリスでは、経営幹部、管理職、軍隊、警察、家事使用人、宗教従事者などが対象となっています。

このように、ホワイトカラーエグゼンプションの適用範囲や対象職種は、国によって異なります。

4. ホワイトカラーエグゼンプションの影響

要約

労働生産性への影響

ホワイトカラーエグゼンプションは、労働者のモチベーションを高め、生産性を向上させる効果が期待されています。成果に基づいて賃金が支払われるため、労働者は効率的に働き、短時間で成果を上げることを目指すようになります。

また、従来の労働時間ベースの評価では、長時間労働が評価されていましたが、ホワイトカラーエグゼンプションでは、成果が重視されるため、長時間労働を減らす効果も期待できます。

長時間労働への影響

ホワイトカラーエグゼンプションは、労働時間規制が緩和されるため、長時間労働を助長する可能性も懸念されています。特に、成果が出にくい業務や、チームワークが求められる業務では、成果を出すために長時間労働を強いられるケースも考えられます。

また、残業代が支払われなくなるため、労働者は、長時間労働をしても経済的なメリットがないと感じる可能性があります。そのため、企業は、労働時間管理を徹底し、労働者の健康状態に配慮することが重要となります。

労働者のモチベーションへの影響

ホワイトカラーエグゼンプションは、労働者のモチベーションを高める効果も期待されています。成果が評価されることで、労働者は自分の能力を活かして仕事に取り組むようになり、スキルアップ意欲も高まります。

しかし、一方で、残業代が支払われなくなることで、労働者のモチベーションが低下する可能性も懸念されています。特に、長時間労働を強いられる労働者にとっては、経済的な不安やストレスを感じ、モチベーションが低下する可能性があります。

まとめ

ホワイトカラーエグゼンプションは、労働生産性を向上させる効果が期待される一方で、長時間労働や労働者のモチベーション低下といった問題点も懸念されています。

企業は、ホワイトカラーエグゼンプションを導入する際には、労働時間管理を徹底し、労働者の健康状態に配慮することで、これらの問題点を解消する必要があります。

5. ホワイトカラーエグゼンプションと法律

要約

日本の高度プロフェッショナル制度

日本では、ホワイトカラーエグゼンプションを参考に、「高度プロフェッショナル制度」が2019年4月に導入されました。この制度は、高度な専門知識を必要とする業務に従事し、年収が1

高度プロフェッショナル制度では、労働時間、休憩、休日、深夜の割増賃金などに関する労働基準法の保護を受けません。そのため、労働者は、長時間労働や休日出勤を強いられる可能性があります。

高度プロフェッショナル制度の導入要件

高度プロフェッショナル制度を導入するには、いくつかの要件を満たす必要があります。まず、企業は、労使委員会を設置し、対象業務、対象労働者の範囲、健康管理時間の把握、休日の確保、選択的措置などについて、労働者の同意を得た上で、労働基準監督署長に届け出なければなりません。

また、対象となる労働者は、高度な専門知識を必要とする業務に常態として従事し、年収が1

高度プロフェッショナル制度の導入要件
項目 内容
対象業務 高度の専門知識を必要とする業務
年収 1,075万円以上
労働条件 4週間を通じて4日以上かつ、1年間で104日の休日の確保
その他 対象業務に常態として従事していること
導入プロセス 労使委員会の設置、決議、労働基準監督署への届け出、労働者の同意

高度プロフェッショナル制度の健康確保措置

高度プロフェッショナル制度では、労働時間規制が緩和されるため、労働者の健康確保措置が重要となります。企業は、労働者の健康管理時間を把握し、年間104日以上の休日を確保する必要があります。

また、労働者の健康状態に応じて、医師による面接指導、特別な休暇や代償休日の付与、相談窓口の設置、適切な部署への配置転換、産業医による助言・指導など、適切な措置を講じる必要があります。

高度プロフェッショナル制度の健康確保措置
項目 内容
健康管理時間 労働者の就労時間を把握し、適切な時間管理を行う
休日 年間104日以上の休日の確保
選択的措置 勤務時間のインターバルの確保、健康管理時間の制限、連続休日の付与、臨時の健康診断

まとめ

日本の高度プロフェッショナル制度は、ホワイトカラーエグゼンプションを参考に、労働時間規制を緩和し、成果に基づいて賃金を支払う制度です。しかし、労働者の健康確保措置を強化し、対象者を限定することで、長時間労働や残業代ゼロといった問題点を解消しようとしています。

高度プロフェッショナル制度を導入する際には、労働基準法の規定を遵守し、労働者の権利を保護することが重要となります。

6. ホワイトカラーエグゼンプションの今後の展望

要約

高度プロフェッショナル制度の課題

高度プロフェッショナル制度は、導入から数年が経過しましたが、まだ十分に普及しているとは言えません。導入企業は少なく、労働者側からも、長時間労働や残業代ゼロといった懸念の声が依然として上がっています。

また、高度プロフェッショナル制度の対象となる労働者は、高度な専門知識を持つ高収入層に限定されているため、制度の適用範囲が狭く、労働者の多くは恩恵を受けられていません。

今後の展望

今後のホワイトカラーエグゼンプションの展望としては、労働者の健康確保措置の強化や、対象者の拡大などが考えられます。労働者の健康確保措置については、労働時間管理の徹底や、休暇取得の促進など、より具体的な対策が求められます。

対象者の拡大については、年収基準の引き下げや、対象となる職種の拡大などが検討されています。しかし、労働者の権利保護とのバランスをどのように取るかが課題となります。

ホワイトカラーエグゼンプションの必要性

ホワイトカラーエグゼンプションは、労働時間ではなく成果で評価する制度であり、労働者のモチベーションを高め、生産性を向上させる効果が期待されています。また、労働時間の柔軟性が高まることで、ワークライフバランスの実現にも貢献する可能性があります。

しかし、長時間労働や残業代ゼロといった問題点も存在するため、導入には慎重な検討が必要です。労働者の健康確保措置を強化し、対象者を限定することで、これらの問題点を解消する必要があります。

まとめ

ホワイトカラーエグゼンプションは、労働時間ではなく成果で評価する制度であり、労働者のモチベーションを高め、生産性を向上させる効果が期待されています。しかし、長時間労働や残業代ゼロといった問題点も存在するため、導入には慎重な検討が必要です。

今後の展望としては、労働者の健康確保措置の強化や、対象者の拡大などが考えられます。労働者の権利保護とのバランスをどのように取るかが課題となります。

参考文献

ホワイトカラーエグゼンプションとは?問題点や導入の …

ホワイトカラーエグゼンプション – Wikipedia

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