項目 | 表面税率 | 実効税率 |
---|---|---|
定義 | 税法や条例で定められた税率 | 会社が実際に負担する税率 |
計算方法 | 法人税率、地方法人税率、法人住民税率、法人事業税率、特別法人事業税率を基に計算 | 表面税率から事業税の損金算入効果を考慮して計算 |
利用場面 | 申告や納税の際に用いられる | 節税効果を予測する際に用いられる |
影響 | 当期納付額を算定するために使用 | 将来を含めた税金コストの実質負担額を算定するために使用 |
特徴 | 事業税を損金算入しない | 事業税を損金算入する |
注意点 | 実際の税負担とは異なる | 正確な計算には専門知識が必要 |
1. 表面税率とは何か
表面税率の定義
表面税率とは、法人所得に対して課税される法人税や住民税、事業税などを合わせた税金の税率のことです。税法や条例で規定されている税率であり、会社の税金コストの当期納付額を表します。表面税率は、会社が実質的に負担する税割合ではなく、納付や申告の際に用いられる税負担率となります。
表面税率は、法人税・住民税・事業税を合わせた額から算出されます。しかし、その中で事業税は翌年の損金にできるため、表面税率は、会社が実質的に負担する税割合とは異なり、法人税の申告や納税額の計算の場合に使用する税率となります。
表面税率は、会計処理上、損金への算入が可能であることから、会社が実質的に負担する税割合ではなく、納付や申告の際に用いられる税負担率となります。
税金 | 説明 |
---|---|
法人税 | 法人の所得に対して課税される国税 |
地方法人税 | 地方交付税の財源のための国税 |
法人住民税 | 地域社会の構成員としての税金 |
法人事業税 | 法人が行う事業に課される税金 |
特別法人事業税 | 地域間の税源の偏在を是正するために導入された税金 |
実効税率との違い
表面税率に対して、翌年に計上できる損金を考慮にいれた税金の実質負担額を実効税率(法人実効税率)といいます。実効税率は、会社が実際に負担する税金の割合を表します。
決算の着地見込みにもとづいて納税額を予測する場合には「表面税率」を活用し、所得の圧縮等の節税効果を予測する場合には「実効税率」を利用することになります。
事業税は、支払った事業年度(翌期)の損金にされますので、当期の所得に対して最終的な税負担額を算出するには、翌期の事業税損金算入効果を考慮する必要があり、この考え方が、「実効税率」で、これが「表面税率」との相違点です。
項目 | 表面税率 | 実効税率 |
---|---|---|
損金算入 | 事業税を損金算入しない | 事業税を損金算入する |
計算式 | 法人税率×(1+地方法人税率+法人住民税率) +法人事業税率+特別法人事業税率 | 表面税率 ÷ (1 + 事業税率 + 特別法人事業税率) |
利用目的 | 申告や納税額の計算 | 税金の実質負担額の計算 |
考慮事項 | 翌年の損金算入を考慮しない | 翌年の損金算入を考慮する |
表面税率の対象となる税金
表面税率は、所得に応じて負担する税金が対象で、「法人税」「地方法人税」「法人住民税(法人税割)」「法人事業税(所得割)」「特別法人事業税」の5つとなります。
商品の販売やサービスなどの取引に課税される「消費税」、企業が所有する不動産や償却資産に課税される「固定資産税」などは含まれません。
以下では標準税率を基本とし、税率は令和5年1月1日現在のものとしますが、改正により変動することがあります。また一部の都道府県においては「超過税率」を適用するところもあります。
まとめ
表面税率は、税法や条例で定められた税率であり、会社の税金コストの当期納付額を表します。一方、実効税率は、翌年に計上できる損金を考慮した税金の実質負担額を表します。
表面税率は、申告や納税の際に用いられる税率であり、実効税率は、節税効果を予測する際に用いられる税率です。
表面税率と実効税率は、どちらも法人税・住民税・事業税を合わせた額から算出されますが、事業税の損金算入の有無によって、その値が異なります。
2. 表面税率の計算方法
表面税率の計算式
表面税率の計算式は、以下のとおりとなります。
法人税率×(1+地方法人税率+法人住民税率) +法人事業税率+特別法人事業税率
また上記計算式の括弧をはずすと以下のようになります。
表面税率=法人税率 +法人税率 × 地方法人税率 +法人税率 × 法人住民税率 +法人事業税率 +法人事業税率 × 特別法人事業税率
計算式 | 説明 |
---|---|
法人税率×(1+地方法人税率+法人住民税率) +法人事業税率+特別法人事業税率 | 基本的な計算式 |
表面税率=法人税率 +法人税率 × 地方法人税率 +法人税率 × 法人住民税率 +法人事業税率 +法人事業税率 × 特別法人事業税率 | 括弧をはずした計算式 |
表面税率の計算例
資本金が1億円以下の所得800万円以上の法人を想定して、標準税率で計算すると以下のようになります。
23.2% + (23.2% × 10.3%) + (23.2% × 1.0%) + (23.2% × 6.0%) + 7.0% + (7.0% × 37%) ≒ 表面税率36.8%
実効税率(法定実効税率)の計算式は、表面税率 ÷ (1 + 事業税率 + 特別法人事業税率)となり、上記法人例にあてはめると、3.68 ÷ (1 + 0.7 + 3.7) ≒ 2.56で、実効税率は25.6%となります。
表面税率36.8% - 実効税率25.6% = 11.2%で、これが、法人事業税を損金算入した結果の税金の軽減分となります。
項目 | 税率 | 計算結果 |
---|---|---|
法人税率 | 23.2% | – |
地方法人税率 | 10.3% | – |
法人住民税率 | 1.0% | – |
法人事業税率 | 7.0% | – |
特別法人事業税率 | 37% | – |
表面税率 | – | 36.8% |
表面税率の計算における注意点
表面税率の計算は、一見簡単そうに見えますが、実際には、税率の変更や、超過税率の適用など、さまざまな要素を考慮する必要があります。
そのため、正確な表面税率を計算するためには、最新の税法や条例を常に確認し、必要に応じて専門家に相談することが重要です。
また、表面税率は、あくまでも税法上の税率であり、実際の税負担とは異なる場合があります。
まとめ
表面税率は、法人税率、地方法人税率、法人住民税率、法人事業税率、特別法人事業税率を基に計算されます。
表面税率の計算は、税率の変更や、超過税率の適用など、さまざまな要素を考慮する必要があるため、最新の税法や条例を常に確認し、必要に応じて専門家に相談することが重要です。
表面税率は、あくまでも税法上の税率であり、実際の税負担とは異なる場合があります。
3. 表面税率の経済への影響
企業の意思決定への影響
表面税率が高い場合、企業は納税額を削減するために税負担を最小限に抑えるような戦略を取ることがあります。
これは、利益を最大化し、投資や雇用創出などに影響を与える可能性があります。
例えば、企業は、海外への投資や、税率の低い地域への移転を検討するかもしれません。
影響 | 説明 |
---|---|
投資意欲 | 高い表面税率は、企業の投資意欲を低下させる可能性がある |
海外への投資 | 企業は、税率の低い地域への移転を検討する可能性がある |
雇用創出 | 企業は、税負担を軽減するために、雇用を抑制する可能性がある |
競争力の低下
高い表面税率は、企業の価格競争力を低下させることがあります。
これは輸出産業において特に顕著であり、他国と比較して税負担が大きい場合、製品の価格が高くなり、輸出が減少する可能性があります。
また、国内市場においても、競合他社が税率の低い国に拠点を移すことで、価格競争力を高める可能性があります。
影響 | 説明 |
---|---|
価格競争力 | 高い表面税率は、企業の価格競争力を低下させる可能性がある |
輸出産業 | 他国と比較して税負担が大きい場合、製品の価格が高くなり、輸出が減少する可能性がある |
国内市場 | 競合他社が税率の低い国に拠点を移すことで、価格競争力を高める可能性がある |
投資への影響
表面税率が高いと、企業の投資意欲が低下する可能性があります。
企業は税金を支払うことになるため、その分だけ利益が削られることになるからです。
その結果、経済全体の投資が抑制され、経済成長に悪影響を及ぼす可能性があります。
まとめ
表面税率は、企業の意思決定、競争力、投資意欲に影響を与える可能性があります。
高い表面税率は、企業の海外への投資や、税率の低い地域への移転を促進し、国内市場における競争力を低下させる可能性があります。
また、投資意欲の低下につながり、経済全体の成長を阻害する可能性もあります。
4. 表面税率と国家の財政健全性
政府の収入への影響
高い表面税率は、政府の税収を増加させる可能性があります。
これにより、社会福祉や公共サービスへの投資が増える可能性がありますが、企業活動を抑制する影響も考慮する必要があります。
政府は、税収の増加と経済活動の促進という、相反する目標を達成するために、適切な税率を設定する必要があります。
影響 | 説明 |
---|---|
税収増加 | 高い表面税率は、政府の税収を増加させる可能性がある |
社会福祉 | 税収増加により、社会福祉への投資が増える可能性がある |
公共サービス | 税収増加により、公共サービスへの投資が増える可能性がある |
財政赤字の拡大
表面税率が低すぎると、政府の税収が減少し、財政赤字が拡大する可能性があります。
財政赤字が拡大すると、政府は借金をしなければならず、将来世代への負担が増加する可能性があります。
そのため、政府は、財政赤字の拡大を防ぐために、適切な税率を設定する必要があります。
影響 | 説明 |
---|---|
税収減少 | 低い表面税率は、政府の税収を減少させる可能性がある |
財政赤字拡大 | 税収減少により、財政赤字が拡大する可能性がある |
将来世代への負担 | 財政赤字拡大により、将来世代への負担が増加する可能性がある |
税制改革の必要性
表面税率が経済に与える影響を考えると、税制改革の必要性が浮き彫りになります。
企業が持つ税負担を軽減し、経済活動を促進するために、より効果的な税制が求められています。
税制改革には、税率の引き下げ、税制の簡素化、税制の公平性の向上など、さまざまな方法があります。
まとめ
表面税率は、政府の税収と財政健全性に影響を与えます。
高い表面税率は、政府の税収を増加させる可能性がありますが、企業活動を抑制する可能性もあります。
低い表面税率は、政府の税収を減少させる可能性があり、財政赤字の拡大につながる可能性があります。
5. 表面税率と市場競争力
国際競争力
日本の法人実効税率は、世界的に見て高い水準にあります。
そのため、海外企業にとって、日本は魅力的な投資先とは言えません。
日本の企業が海外企業と競争するためには、法人税率の引き下げなど、税制改革を進める必要があります。
国 | 法人実効税率 |
---|---|
日本 | 29.74% |
米国 | 27.98% |
韓国 | 22.2% |
中国 | 25.0% |
ドイツ | 29.8% |
フランス | 33.3% |
イギリス | 19.0% |
国内競争力
高い表面税率は、国内企業の競争力を低下させる可能性があります。
特に、中小企業は、大企業に比べて、税負担の影響を受けやすい傾向にあります。
そのため、中小企業の競争力を維持するためには、税制上の優遇措置など、適切な対策が必要となります。
イノベーションへの影響
高い表面税率は、企業のイノベーションへの投資意欲を低下させる可能性があります。
企業は、税金を支払うことになるため、その分だけイノベーションへの投資を減らす可能性があります。
そのため、イノベーションを促進するためには、税制上の優遇措置など、適切な対策が必要となります。
まとめ
表面税率は、日本の国際競争力、国内競争力、イノベーションへの影響を与える可能性があります。
高い表面税率は、海外企業の投資意欲を低下させ、国内企業の競争力を低下させる可能性があります。
また、イノベーションへの投資意欲を低下させる可能性もあります。
6. 表面税率の将来展望
税制改革の動向
日本の法人税率は、平成の30年間で7回の減税が行われ40%から23.2%まで低下しました。
下げ幅は16.8%で、特にアベノミクス以降加速し、その結果、表面税率、実効税率も下がり続けています。
しかしやっと実効税率が20%台になった段階で、欧米の諸外国と比べてもまだ表面税率、実効税率が高い状態は続いています。
年度 | 法人税率 |
---|---|
平成元年 | 40.0% |
平成10年 | 37.5% |
平成15年 | 30.0% |
平成20年 | 25.5% |
平成25年 | 23.4% |
平成28年 | 23.2% |
今後の課題
政府は、税負担を全体で分かち合う構造へとシフトし税収を拡大しながら、企業誘致の力となる表面税率、実効税率の引き下げを進める方針で法人税改革を進めています。
しかし、税率の引き下げだけでは、企業の投資意欲やイノベーションを促進するには不十分です。
税制の簡素化や、公平性の向上など、より抜本的な改革が必要となります。
国際的な動向
近年、世界的に、法人税率の引き下げ競争が激化しています。
日本も、国際的な競争力を維持するためには、法人税率の引き下げを検討する必要があるかもしれません。
しかし、税率の引き下げだけでは、企業の投資意欲やイノベーションを促進するには不十分です。
まとめ
日本の表面税率は、今後も、政府の税制改革の方針によって変化していく可能性があります。
税率の引き下げ、税制の簡素化、公平性の向上など、さまざまな改革が検討されるでしょう。
国際的な競争力を維持するためには、日本の税制改革は、今後も重要な課題となります。
参考文献
・正しい経営判断のために! 表面税率と法定実効税率の違いを …
・法人税の実効税率とは?表面税率との違いや計算方法も解説 …
・法人税の実効税率とは?定義や計算方法、表面税率との違い …
・表面税率(ひょうめんぜいりつ) | 証券用語集 | 東海東京証券 …
・知っておきたい!経済の表面税率について | sasa-dango
・表面税率と実効税率 | 税理士は新田会計事務所 – 税理士大阪
・法人税の実効税率とは?表面税率との違いや計算方法とあわせ …
・表面税率(ヒョウメンゼイリツ)とは? 意味や使い方 – コトバンク
・実効税率の具体的な考え方と計算方法とは?経理が押さえて …
・表面税率とは?株式用語解説 – お客様サポート – Dmm 株
・わかりやすい用語集 解説:表面税率(ひょうめんぜいりつ …
・「表面税率」の意味や使い方 わかりやすく解説 Weblio辞書