項目 | 内容 |
---|---|
IFRSの概要 | 国際会計基準審議会(IASB)が設定する会計基準の総称。国際的に活用されることを目指して策定された。 |
IFRSの普及状況 | EU域内の上場企業では強制適用。世界で140法域以上で採用されている。 |
IFRSと日本会計基準の違い | IFRSは原則主義、日本会計基準は細則主義。IFRSは資産負債アプローチ、日本会計基準は収益費用アプローチ。IFRSは経済的単一体説、日本会計基準は親会社説。 |
IFRS導入のメリット | 海外投資家への理解促進、資金調達の幅拡大、海外子会社との連携強化 |
IFRS導入のデメリット | システム変更、業務プロセス増加、専門人材確保の必要性 |
IFRS導入のポイント | 影響範囲の把握、早めの着手、全社への教育 |
IFRSの歴史と背景 | 資本市場のグローバル化に伴い、国際的な会計基準の必要性が高まった。IASCからIASBへ移行し、IFRSの改訂が進められた。 |
日本のIFRS導入の経緯 | 2010年3月期より上場企業の連結財務諸表においてIFRSの任意適用が認められた。2013年にはIFRSを日本向けに修正した「JMIS」が導入された。 |
IFRSの将来展望と課題 | IFRSは世界共通の会計基準として、ますます重要性を増していくと考えられる。日本でもIFRSの導入は着実に進んでおり、今後、IFRSの適用範囲はさらに拡大していく可能性がある。IFRS導入には、多くの課題も存在するが、企業は、IFRSのメリットと課題を理解した上で、適切な対応を進めていく必要があります。 |
1. 国際財務報告基準(IFRS)とは
IFRSの概要
国際財務報告基準(IFRS)とは、国際会計基準審議会(IASB)によって設定される会計基準の総称です。従来の会計基準が、それぞれの国や地域の事情を反映させたものであるのに対し、IFRSは、国際的に活用されることを目指して策定された会計基準であることに大きな特徴があります。経済のグローバル化によって国境を越えた資本移動が活発化するにつれ、国ごとに異なる会計基準で作成された財務諸表では、比較可能性を確保できないという弊害が生じました。これを受け、国を超えた会計基準の統一が提唱され、その中心となるのがIFRSなのです。(IFRSの読み方は「アイファース」「イファース」「アイ・エフ・アール・エス」と様々です。)IASBの前身である国際会計基準委員会(IASC)の策定したIAS(International Accounting Standards)も含まれます。
IFRSの基準書は、1年に1回、IASBが発行しています。PartA、PartB、PartCの3冊で構成されています。
PartAにはIFRS基準(IAS®基準、IFRIC®解釈指針及びSIC®解釈指針を含む)及び財務報告に関する概念フレームワークが収録されています。
PartBには基準に付属する文書(設例及び適用ガイダンス)がIFRS®実務記述書とともに収録されています。PartCには結論の根拠(基準、財務報告に関する概念フレームワーク及びIFRS®実務記述書に付属)が収録されています。
Part | 内容 |
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PartA | IFRS基準(IAS®基準、IFRIC®解釈指針及びSIC®解釈指針を含む)及び財務報告に関する概念フレームワーク |
PartB | 基準に付属する文書(設例及び適用ガイダンス)がIFRS®実務記述書とともに収録 |
PartC | 結論の根拠(基準、財務報告に関する概念フレームワーク及びIFRS®実務記述書に付属) |
IFRSの普及状況
2005年に、EU域内の上場企業の連結財務諸表に対しての強制適用を契機に、また、2008年のG20による「単一で高品質な国際基準を策定する」ことが目標に掲げられてから、IFRSは世界で急速に普及しました。現在140法域以上でIFRSが採用されています。採用の方法は、強制適用、任意適用、自国会計基準とIFRSとの差異をなくすコンバージェンス(収斂)、自国会計基準策定の際にIFRSを取り込んでいくなどさまざまです。世界の会計制度は、IFRSの影響を強く受けて運用されています。
1973年、日本を含む9カ国の職業会計士団体は、IFRS の前身となる国際会計基準(IAS: International Accounting Standards)の策定を開始しました。2001年に、基準の名称が、国際財務報告基準(IFRS: International Financial Reporting Standards)に変わり、これまでにIASで始まる番号の基準書は41号まで、IFRSで始まる基準書は17号まで発行されています(一部廃止となった基準もあります)。2005年にはEU域内の上場企業の連結財務諸表に、オーストラリアでは全ての企業にIFRS強制適用が開始され、世界に広がりました。
IFRS財団によると、2018年時点で144法域(Jurisdiction)にてIFRSが強制適用され、新たにアフリカでも2019年から17カ国がIFRSの適用を決定しました。日本でIFRS適用の動きが加速したのは、2013年にIFRS策定プロセスにおける監督機関、モニタリングボードのメンバー要件に「IFRSを顕著に使用していること」という新要件が追加されてからです。IFRS策定において、今後も日本の意見を表明するために、日本国内でのIFRS任意適用企業の拡大が急務となりました。金融庁、自民党、経団連が、「IFRS任意適用企業拡大」の施策をすすめていきました。
2019年6月時点、2005年欧州IFRS強制適用の流れを受け、2010年3月期の決算より日本でも上場企業の連結財務諸表においてIFRSの任意適用が認められるようになりました。企業内で、IFRS対応チームやIFRS対応プロジェクトが次々と発足し、民間でのIFRS研究が活発化しました。2023年現在、日本国内でIFRS適用済み、適用決定した会社総数は250社を超えています。東証上場企業でIFRS適用済会社・IFRS適用決定会社・IFRS適用予定会社の時価総額は東証上場会社の時価総額に占める割合は47.3%です(東証、会計基準の選択に関する基本的な考え方の開示内容の分析より)。グローバル企業による「連結決算の簡易化」「グループとしての連帯感強化」などIFRS適用によるメリットがあげられています。IFRS関連業務は年々増えており、経理財務以外にも、システムや内部統制など様々な職種でIFRS知識をもった人材の需要が増えています。
方法 | 説明 |
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強制適用 | 法律でIFRSの適用が義務付けられる |
任意適用 | 企業が自由にIFRSを適用するかを選択できる |
コンバージェンス | 自国会計基準をIFRSに近づけていく |
IFRSの取り込み | 自国会計基準策定の際にIFRSを取り込んでいく |
IFRSと日本会計基準の違い
経理実務を念頭においた日本の会計教育では、日々の取引の積み上げの結果、財務諸表が完成するという考え方がベースとなります。そのため、「仕訳」や「勘定」のしくみを理解した上で、日々の会計処理を正確に行えるようになることが第一の目標ラインとなります。一方、欧米型の会計教育では、「財務諸表」の利用者の視点で会計を学習することに重点が置かれています。つまり、財務諸表の内容を理解し、分析するために必要な知識として、会計ルールや会計処理を取り上げることとなり、結果、会計基準の理解を重視することとなります。
IFRSは日本基準と何が違うのでしょうか?違いとしてよく言われるのは原則主義です。原理・原則に則れば、その運用や解釈企業側に委ねられます。日本基準の場合では、より詳細で具体的な数値基準を設けて運用されます。これを細則主義・条文主義と言います。
他にも多く違いがあり、詳細は各会計事務所がまとめています。
KPMG https://home.kpmg/jp/ja/home/insights/2019/04/ifrs-compared-to-japan-gaap.html EY https://www.ey.com/ja_jp/ifrs/ifrs-insights/2021/ifrs-others-other-ifrs-jgaap-comparison-v7 Deloitte https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/finance/articles/ifrs/ifrs-kaisetsu-3.html
年 | 出来事 |
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1973年 | 国際会計基準(IAS)の策定開始 |
2001年 | 国際会計基準審議会(IASB)設立、IFRSへの名称変更 |
2005年 | EU域内の上場企業の連結財務諸表にIFRS強制適用開始 |
2010年 | 日本でも上場企業の連結財務諸表においてIFRSの任意適用開始 |
2013年 | 日本版IFRSであるJ-IFRS(JMIS)導入 |
2018年 | 収益認識に関する包括的な会計基準(新収益認識基準)公表 |
2021年 | 対象企業はIFRS第15号を取り入れた「収益認識に関する会計基準」の強制適用開始 |
まとめ
IFRSは、国際的に共通の会計基準として、世界中の企業が採用する動きが広がっています。日本でも、2010年3月期より上場企業の連結財務諸表においてIFRSの任意適用が認められるようになり、2021年4月以降の事業年度からは、対象企業はIFRS第15号を取り入れた「収益認識に関する会計基準」(新収益認識基準)の適用が必須となります。
IFRSは、原則主義、資産負債アプローチ、経済的単一体説といった考え方で運用されており、日本会計基準とは異なる点が多くあります。
IFRSを導入することで、海外の投資家も理解しやすい財務諸表となり、他国の企業と比較しやすくなります。つまり、財務状況の透明性が上がるとともに、資金調達の可能性も広がるのです。さらに海外子会社の経営状況も把握しやすくなります。
このように大きなメリットも得られる一方、会計方針の変更による企業への影響や負担も大きいものです。IFRS導入を検討している企業は早めに着手し、社員にも無理のないスケジュールで進めていきましょう。
2. IFRSの歴史と背景
IFRSの誕生背景
国際的な会計基準の必要性が高まったのは、1980年代以降の資本市場のグローバル化が進むにつれて、他国の企業と比較がしづらく、世界統一の基準が必要な時代になったからです。国際会計基準審議会によって統一基準が固められていったのが90年代前半。国際会計基準として世界的に広まったのは2005年からでした。
2005年、EU加盟国の上場企業にIFRSの適用が義務化されます。それを受けて、2006年以降には他国の企業も追随し、今では100ヵ国以上の上場企業に強制適用されていますが、日本とアメリカは強制適用を行っていません。
日本でも2015年より強制適用する動きはあったのですが、実現には至りませんでした。とはいえ、2018年8月の時点でIFRSを適用している企業は178社。IFRSを適用することを決定した企業は19社。これは年々増加しています。
IFRSが世界のすべての企業に適用されれば、世界中の企業の財務状況を比較検討することが容易になり、投資判断もスムーズに行うことができます。海外の投資家も日本市場に対して投資しやすくなるため、日本でも全面的に強制適用となる日はそう遠くはないでしょう。
IFRSの策定プロセス
前項でも説明したとおり、市場のグローバル化が進み、投資を比較検討したい企業がそれぞれ異なる国の企業だった場合、会計基準が異なっていると比較が困難である、ということが起きるようになりました。時代の流れに合わせて国際的な会計基準が必要になってきた、というのが、IFRSが策定されることになった背景です。
IASB(国際会計基準審議会)の前身である IASCは1978年、国際会計基準「IAS(International Accounting Standards)」の作成に着手しました。この改定作業は1993年にすべて完了しています。2001年にIASCはIASBとなり、国際財務報告基準であるIFRSの改訂が進められることとなりました。
IASBは、経済環境の変化や利害関係者からのフィードバックに基づいて、IFRSを定期的に改訂・更新しています。これによって、IFRSは現代のビジネス環境に適した、効果的な財務報告基準であり続けています。
こうしたプロセスを通じて、IFRSは現在、世界中で広く受け入れられている財務報告基準の一つとなり、国際的なビジネスの透明性と投資の流動性を向上させる役割を果たしています。なお、日本でも、2010年年3月31日以後終了する連結会計年度から、任意にIFRSを適用できるようになっています。
日本のIFRS導入の経緯
日本がIFRSの導入を認めた理由は以下のような点からです。
日本の会計基準とIFRSでは、会計基準の作成に対する考えからに異なる点があるため、日本企業がIFRSを導入した場合には、大きな変化があります。
2007年8月8日、企業会計基準委員会はIASBと会計基準のコンバージェンスに合意し、2011年6月までに日本基準と国際会計基準の違いを解消することを合意したことを正式発表した(東京合意)。
2009年6月、日本の金融庁企業会計審議会は「我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報告)」を取りまとめ、一定の要件を満たす企業に対し2010年3月期の年度から国際会計基準による連結財務諸表の作成を容認する方針を示した。これを踏まえ、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」の公布が2009年内に実施される。
年 | 出来事 |
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2007年 | 企業会計基準委員会がIASBと会計基準のコンバージェンスに合意 |
2009年 | 金融庁企業会計審議会が「我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報告)」を公表。一定の要件を満たす企業に対し2010年3月期の年度から国際会計基準による連結財務諸表の作成を容認 |
2011年 | 東日本大震災発生により、IFRS強制適用は見送りに |
2013年 | IFRSの任意適用の要件が大幅に緩和。資本金20億円以上の海外子会社を有しない企業、新規株式上場企業もIFRSを適用可能に |
2018年 | 収益認識に関する包括的な会計基準として、収益認識に関する会計基準を公表 |
2021年 | 対象企業はIFRS第15号を取り入れた「収益認識に関する会計基準」の強制適用開始 |
まとめ
IFRSは、世界共通の会計基準を目指して、1970年代から策定が進められてきました。2005年にEUで強制適用されたことをきっかけに、世界中で急速に普及が進み、現在では100カ国以上で採用されています。
日本でも、2010年3月期より上場企業の連結財務諸表においてIFRSの任意適用が認められるようになり、2013年にはIFRSを日本向けに修正した「JMIS」が導入されました。
2021年4月以降の事業年度からは、対象企業はIFRS第15号を取り入れた「収益認識に関する会計基準」の適用が必須となります。
IFRSは、世界経済のグローバル化に伴い、ますます重要性を増していくと考えられます。
3. IFRSの特徴とメリット
IFRSの特徴
IFRSは、世界中で広く採用されているため、IFRSを導入することにより、企業は海外の競合他社との財務情報の比較が容易になります。これは、市場分析や競争力分析をより精緻に行い、適切な戦略を立てるための重要な基盤となります。
IFRSは公正価値計測や包括的な情報開示が求められるため、将来キャッシュフローを考慮した数値を貸借対照表に計上することが可能になります。これにより、企業の経営者やステイクホルダーは、企業の実態に即した状況把握が可能になり、より効果的な経営判断を行うことができます。
IFRSは国際的に広く認知されている基準であり、IFRSに準拠した財務報告を行うことによって、企業はグローバルな資本市場での信用を高めることができます。これにより、海外からの投資を受けやすくなったり、外国の金融機関からの融資や投資を受けたりすることが可能になります。
IFRSは、原則ベースの基準であり、特定の取引や事象に対する具体的なルールよりも、一般的な原則とガイダンスを重視します。これにより、企業は会計基準の適用に際して、より多くの判断が必要となります。日本の会計基準は従来、詳細なルールが設けられている傾向がありました。日本企業がIFRSを導入すると、会計処理の判断の基準が大きく変わり、経営者や監査人が新しい基準に基づく判断を行う必要が出てくるでしょう。
特徴 | 説明 |
---|---|
原則主義 | 詳細な規定や数値基準があまり示されていない。解釈や運用は企業に任される。 |
貸借対照表重視 | 資産と負債の評価と、その差額である純資産を重要視する「資産負債アプローチ」を採用。 |
グローバル基準 | 国際的に使われる基準のため、国ごとの事情や独自性を考慮しない。言語の違いにも影響されないよう、英語で議論や定義が行われている。 |
IFRS導入のメリット
IFRSは世界中で広く採用されているため、IFRSを導入することにより、企業は海外の競合他社との財務情報の比較が容易になります。これは、市場分析や競争力分析をより精緻に行い、適切な戦略を立てるための重要な基盤となります。
IFRSは公正価値計測や包括的な情報開示が求められるため、将来キャッシュフローを考慮した数値を貸借対照表に計上することが可能になります。これにより、企業の経営者やステイクホルダーは、企業の実態に即した状況把握が可能になり、より効果的な経営判断を行うことができます。
IFRSは国際的に広く認知されている基準であり、IFRSに準拠した財務報告を行うことによって、企業はグローバルな資本市場での信用を高めることができます。これにより、海外からの投資を受けやすくなったり、外国の金融機関からの融資や投資を受けたりすることが可能になります。
IFRSは、世界中で広く採用されているため、IFRSを導入することにより、企業は海外の競合他社との財務情報の比較が容易になります。これは、市場分析や競争力分析をより精緻に行い、適切な戦略を立てるための重要な基盤となります。
メリット | 説明 |
---|---|
海外投資家への理解促進 | 世界共通の基準であるため、海外の投資家やアナリストにも理解しやすい財務諸表となる。 |
資金調達の幅拡大 | 海外の投資家が財務状況や企業価値を理解できるようになるため、日本企業に対してより投資しやすい環境になると考えられる。 |
海外子会社との連携強化 | 同じ会計基準を採用すれば、勘定科目の階層やシステム方針がグループ内で統一に向かうため、管理が容易になる。 |
IFRS導入のデメリット
IFRSの導入は、会計基準が従来のものから大幅に変更されるため、企業の財務部門に大きな実務の負担をもたらします。これには、新しい基準に対するスタッフの教育と研修、会計システムの変更、そして定期的な情報開示の増加などが含まれます。
IFRSを導入するには、初期の導入コストがかかります。これには、会計システムの変更費用、関連するスタッフの教育・研修費用、専門家(たとえば、外部コンサルタント)による支援費用などが含まれます。これらのコストは、とくに中小企業にとっては大きな負担となる場合があります。
IFRSは内容が高度で複雑である場合が多く、とくに公正価値計測などの基準は、専門的な知識と経験が求められます。このため、企業によっては、IFRSの適用が難しく、正確な財務報告を維持するために専門の人材を確保しなければならない場合もあります。
IFRSの導入は、会計基準が従来のものから大幅に変更されるため、企業の財務部門に大きな実務の負担をもたらします。これには、新しい基準に対するスタッフの教育と研修、会計システムの変更、そして定期的な情報開示の増加などが含まれます。
まとめ
IFRSは、世界共通の会計基準として、多くのメリットをもたらします。特に、海外展開を行う企業にとって、IFRS導入は大きなメリットがあると考えられます。
しかし、IFRS導入には、実務上の負担の増加、初期コストの発生、適用の難しさといったデメリットも存在します。
IFRS導入を検討する際には、メリットとデメリットを比較検討し、自社の状況に合わせて判断することが重要です。
IFRS導入は、企業にとって大きな変化をもたらすため、慎重な検討が必要です。
4. IFRSの適用範囲と普及度
IFRSの適用範囲
IFRSは、世界中で広く採用されているため、IFRSを導入することにより、企業は海外の競合他社との財務情報の比較が容易になります。これは、市場分析や競争力分析をより精緻に行い、適切な戦略を立てるための重要な基盤となります。
IFRSは公正価値計測や包括的な情報開示が求められるため、将来キャッシュフローを考慮した数値を貸借対照表に計上することが可能になります。これにより、企業の経営者やステイクホルダーは、企業の実態に即した状況把握が可能になり、より効果的な経営判断を行うことができます。
IFRSは国際的に広く認知されている基準であり、IFRSに準拠した財務報告を行うことによって、企業はグローバルな資本市場での信用を高めることができます。これにより、海外からの投資を受けやすくなったり、外国の金融機関からの融資や投資を受けたりすることが可能になります。
IFRSは、世界中で広く採用されているため、IFRSを導入することにより、企業は海外の競合他社との財務情報の比較が容易になります。これは、市場分析や競争力分析をより精緻に行い、適切な戦略を立てるための重要な基盤となります。
IFRSの普及状況
2005年に、EU域内の上場企業の連結財務諸表に対しての強制適用を契機に、また、2008年のG20による「単一で高品質な国際基準を策定する」ことが目標に掲げられてから、IFRSは世界で急速に普及しました。現在140法域以上でIFRSが採用されています。採用の方法は、強制適用、任意適用、自国会計基準とIFRSとの差異をなくすコンバージェンス(収斂)、自国会計基準策定の際にIFRSを取り込んでいくなどさまざまです。世界の会計制度は、IFRSの影響を強く受けて運用されています。
1973年、日本を含む9カ国の職業会計士団体は、IFRS の前身となる国際会計基準(IAS: International Accounting Standards)の策定を開始しました。2001年に、基準の名称が、国際財務報告基準(IFRS: International Financial Reporting Standards)に変わり、これまでにIASで始まる番号の基準書は41号まで、IFRSで始まる基準書は17号まで発行されています(一部廃止となった基準もあります)。2005年にはEU域内の上場企業の連結財務諸表に、オーストラリアでは全ての企業にIFRS強制適用が開始され、世界に広がりました。
IFRS財団によると、2018年時点で144法域(Jurisdiction)にてIFRSが強制適用され、新たにアフリカでも2019年から17カ国がIFRSの適用を決定しました。日本でIFRS適用の動きが加速したのは、2013年にIFRS策定プロセスにおける監督機関、モニタリングボードのメンバー要件に「IFRSを顕著に使用していること」という新要件が追加されてからです。IFRS策定において、今後も日本の意見を表明するために、日本国内でのIFRS任意適用企業の拡大が急務となりました。金融庁、自民党、経団連が、「IFRS任意適用企業拡大」の施策をすすめていきました。
2019年6月時点、2005年欧州IFRS強制適用の流れを受け、2010年3月期の決算より日本でも上場企業の連結財務諸表においてIFRSの任意適用が認められるようになりました。企業内で、IFRS対応チームやIFRS対応プロジェクトが次々と発足し、民間でのIFRS研究が活発化しました。2023年現在、日本国内でIFRS適用済み、適用決定した会社総数は250社を超えています。東証上場企業でIFRS適用済会社・IFRS適用決定会社・IFRS適用予定会社の時価総額は東証上場会社の時価総額に占める割合は47.3%です(東証、会計基準の選択に関する基本的な考え方の開示内容の分析より)。グローバル企業による「連結決算の簡易化」「グループとしての連帯感強化」などIFRS適用によるメリットがあげられています。IFRS関連業務は年々増えており、経理財務以外にも、システムや内部統制など様々な職種でIFRS知識をもった人材の需要が増えています。
日本のIFRS導入状況
2009年に金融庁が発表した日本版IFRSロードマップが公表されました。一定の要件を満たす企業に対してのIFRSの任意適用が2010年3月期の決算から認められ、2012年を目処としてIFRS強制適用の検討が開始されたのですが、その翌年である2011年、東日本大震災が発生し、IFRS強制適用は事実上見送りに。
2013年10月には任意適用の要件が大幅に緩和。資本金20億円以上の海外子会社を有しない企業、新規株式上場企業もIFRSを適用可能となりました。
IFRSは任意適用企業拡大が事実上の国策となっており、強制適用についてはまだ結論が出ていないのが現状です。
2019年6月時点、2005年欧州IFRS強制適用の流れを受け、2010年3月期の決算より日本でも上場企業の連結財務諸表においてIFRSの任意適用が認められるようになりました。企業内で、IFRS対応チームやIFRS対応プロジェクトが次々と発足し、民間でのIFRS研究が活発化しました。2023年現在、日本国内でIFRS適用済み、適用決定した会社総数は250社を超えています。東証上場企業でIFRS適用済会社・IFRS適用決定会社・IFRS適用予定会社の時価総額は東証上場会社の時価総額に占める割合は47.3%です(東証、会計基準の選択に関する基本的な考え方の開示内容の分析より)。グローバル企業による「連結決算の簡易化」「グループとしての連帯感強化」などIFRS適用によるメリットがあげられています。IFRS関連業務は年々増えており、経理財務以外にも、システムや内部統制など様々な職種でIFRS知識をもった人材の需要が増えています。
まとめ
IFRSは、世界中で広く採用されており、その普及度は年々高まっています。特に、EUではIFRSの適用が義務付けられており、世界経済に大きな影響を与えています。
日本でも、2010年3月期より上場企業の連結財務諸表においてIFRSの任意適用が認められるようになり、2021年4月以降の事業年度からは、対象企業はIFRS第15号を取り入れた「収益認識に関する会計基準」(新収益認識基準)の適用が必須となります。
IFRSは、世界共通の会計基準として、ますます重要性を増していくと考えられます。
日本企業も、IFRSへの対応を強化していく必要がありそうです。
5. IFRSと国内財務報告基準の比較
IFRSと日本会計基準の主な違い
IFRSは、世界中で広く採用されているため、IFRSを導入することにより、企業は海外の競合他社との財務情報の比較が容易になります。これは、市場分析や競争力分析をより精緻に行い、適切な戦略を立てるための重要な基盤となります。
IFRSは公正価値計測や包括的な情報開示が求められるため、将来キャッシュフローを考慮した数値を貸借対照表に計上することが可能になります。これにより、企業の経営者やステイクホルダーは、企業の実態に即した状況把握が可能になり、より効果的な経営判断を行うことができます。
IFRSは国際的に広く認知されている基準であり、IFRSに準拠した財務報告を行うことによって、企業はグローバルな資本市場での信用を高めることができます。これにより、海外からの投資を受けやすくなったり、外国の金融機関からの融資や投資を受けたりすることが可能になります。
IFRSは、世界中で広く採用されているため、IFRSを導入することにより、企業は海外の競合他社との財務情報の比較が容易になります。これは、市場分析や競争力分析をより精緻に行い、適切な戦略を立てるための重要な基盤となります。
項目 | IFRS | 日本会計基準 |
---|---|---|
会計基準の考え方 | 原則主義 | 細則主義 |
利益の考え方 | 資産負債アプローチ | 収益費用アプローチ |
連結財務諸表の考え方 | 経済的単一体説 | 親会社説 |
売上計上基準 | 重要なリスク及び経済価値が買手に移転している場合に計上 | 収益が実現した時点で計上 |
固定資産の減価償却 | 企業自ら耐用年数を設定して償却 | 法人税法で定められた耐用年数で償却 |
IFRS導入による影響
IFRSを導入する場合、日本会計基準と異なる原則やルールで財務諸表を作成しなければならず、会計方針の変更が必要になります。大きな変更点は、売上計上基準と固定資産会計です。
IFRSでは「重要なリスク及び経済価値が買手に移転している」場合に売上計上となります。そのため、これまで出荷基準で売上計上していたものが、従来通りの基準で売上計上できなくなる場合があります。また固定資産については、従来、法人税法で定められた減価償却計算を行なっていました。しかしIFRSでは、企業自ら耐用年数を設定して償却計算を行わなければなりません。
会計方針が変更になれば、これまでと異なる財務諸表作成のプロセスが必要です。個別財務諸表はIFRSが適用できないため、日本会計基準に則って作成しなければなりません。つまり、業務プロセスが従来より増えることとなります。決算対応を行う場合には といった複数の方法が考えられます。固定資産の減価償却も、法人税法とIFRSとで二通りの計算を行うこととなる点にも注意が必要です。
売上計上や固定資産の減価償却計算など、システムで自動的に行われていたものがそのまま利用できなくなるため、対応が必要になります。対応としては、会計システムもIFRSに対応したものに変更すること、単体会計システムから連結会計システムへ連携する際に、ETL=(Extract(抽出)Transform(変換)Load(格納))などを使い、抽出する方法が考えられます。自社に合った方法でIFRSに対応していきましょう。
IFRS導入のポイント
IFRSを導入するのであれば、自社における影響範囲を把握した上で、早めに着手することがポイントです。
IFRSを導入すると、会計方針そのものが変わってしまいます。義務である制度会計はもちろん、任意ながら重要な管理会計、ひいては会社の経営管理に大きな影響を及ぼします。会社の利害関係者に対し、会計情報を提供する制度会計においては、上述の通りこれまでと異なる財務諸表作成が必要になります。原則主義であるため、企業独自の運用ルールや解釈についての注記を検討することになるでしょう。
一方で、意思決定目的の管理会計においては、既存KPIのままではPDCAを回す経営管理が機能しなくなる可能性があります。見たいKPIの項目が変更される場合、既存システムの要件変更が余儀なくされるなど影響範囲が膨大になることも考えられます。実務では、過年度売上と適用後売上は収益認識基準が異なるため、収益認識単位や認識タイミングのルールが同じでなく、純粋な対比ができません。また、次年度の予算作成も新収益認識基準での作成が必要です。このように経営管理全域に影響が及びます。
また、新収益認識基準は文字通り、売上に関わる会計基準であるため、経理部門だけでなくフロントオフィスの従業員への教育も必要でしょう。実際のIFRS適用では、数年にまたがる大プロジェクトとなるため、専門家のコンサルティングや基幹業務システムの刷新・改修、会計方針の作成などを行い、全社への教育もあわせて実施しなければなりません。金銭的にも人的にも大きな負担がかかります。加えて、IFRS導入初年度は、比較のために2期分の財務諸表を開示しなければならず、その準備も行わなくてはなりません。必要な費用の準備や実務担当者への教育も含めて、早めの対応をおすすめします。
まとめ
IFRSは、世界共通の会計基準として、多くのメリットをもたらします。特に、海外展開を行う企業にとって、IFRS導入は大きなメリットがあると考えられます。
しかし、IFRS導入には、実務上の負担の増加、初期コストの発生、適用の難しさといったデメリットも存在します。
IFRS導入を検討する際には、メリットとデメリットを比較検討し、自社の状況に合わせて判断することが重要です。
IFRS導入は、企業にとって大きな変化をもたらすため、慎重な検討が必要です。
6. IFRSの将来展望と課題
IFRSの将来展望
IFRSは、世界共通の会計基準として、多くのメリットをもたらします。特に、海外展開を行う企業にとって、IFRS導入は大きなメリットがあると考えられます。
しかし、IFRS導入には、実務上の負担の増加、初期コストの発生、適用の難しさといったデメリットも存在します。
IFRS導入を検討する際には、メリットとデメリットを比較検討し、自社の状況に合わせて判断することが重要です。
IFRS導入は、企業にとって大きな変化をもたらすため、慎重な検討が必要です。
IFRS導入における課題
IFRSは、世界共通の会計基準として、多くのメリットをもたらします。特に、海外展開を行う企業にとって、IFRS導入は大きなメリットがあると考えられます。
しかし、IFRS導入には、実務上の負担の増加、初期コストの発生、適用の難しさといったデメリットも存在します。
IFRS導入を検討する際には、メリットとデメリットを比較検討し、自社の状況に合わせて判断することが重要です。
IFRS導入は、企業にとって大きな変化をもたらすため、慎重な検討が必要です。
IFRS導入に向けた今後の展望
IFRSは、世界共通の会計基準として、多くのメリットをもたらします。特に、海外展開を行う企業にとって、IFRS導入は大きなメリットがあると考えられます。
しかし、IFRS導入には、実務上の負担の増加、初期コストの発生、適用の難しさといったデメリットも存在します。
IFRS導入を検討する際には、メリットとデメリットを比較検討し、自社の状況に合わせて判断することが重要です。
IFRS導入は、企業にとって大きな変化をもたらすため、慎重な検討が必要です。
まとめ
IFRSは、世界共通の会計基準として、ますます重要性を増していくと考えられます。
日本でも、IFRSの導入は着実に進んでおり、今後、IFRSの適用範囲はさらに拡大していく可能性があります。
IFRS導入には、多くの課題も存在しますが、企業は、IFRSのメリットと課題を理解した上で、適切な対応を進めていく必要があります。
IFRSは、企業の財務情報の透明性と信頼性を高め、グローバルな資本市場の発展に貢献する重要な役割を担っています。
参考文献
・Ifrs®会計基準(国際財務報告基準・国際会計基準) – Kpmgジャパン
・IFRS/IAS(International Financial Reporting Standards )国際財務報告基準/国際会計基準
・Ifrs(国際会計基準・国際財務報告基準)とは?導入のポイントとメリット・デメリットを解説! | 経理・会計業務を効率化「経理プラス」
・【会計の基礎知識】国際財務報告基準IFRSとは | 経営者から担当者にまで役立つバックオフィス基礎知識 | クラウド会計ソフト freee
・国際財務報告基準(Ifrs)とは?導入するメリット・デメリットや影響 – 簿記・経理のコラム
・国際財務報告基準・国際財務基準「IFRS」とは:日本基準との違い、メリット、動向を解説 | クラウドERP ProActive-SCSK
・Ifrs(国際財務報告基準 / 国際会計基準)の基礎知識 | 日本基準との違い・Ifrs導入のメリット&デメリット
・Ifrs(国際会計基準)とは?導入方法やメリットなどを解説 – 経理お役立ち情報 – 弥生株式会社【公式】
・IFRSとは | IFRS(国際会計基準)を学ぶならアビタス/Abitus
・国際会計基準(Ifrs)とは?日本の会計基準との違いや導入メリット | クラウド会計ソフト マネーフォワード
・IFRS基準別の解説 |サービス:IFRS|デロイト トーマツ グループ|Deloitte
・IFRSと日本基準の違いとは-財務諸表、損益計算書の相違点 Vol.3【事例で解説】 | GLOBIS学び放題×知見録
・日本基準と国際財務報告基準(IFRS)の比較 | IFRSインサイト | EY Japan
・Ifrs(国際会計基準)とは?必要になる前に、知っておきたい基礎知識|Zac Blog|企業の生産性向上を応援するブログ|株式会社オロ