1. 支払手形の定義と特徴
支払手形の定義
支払手形とは、将来の一定期日に一定の場所で、一定の金額を支払うことを約束した証券のことです。手形は、決済の手段として商品代金や掛け代金の支払いのため、現金の代わりに用いられることがあります。商品や製品の販売やサービス提供の対価として取引先が振り出した手形を受け取った時には「受取手形」という勘定科目で処理をし、取引先に手形を振り出した時には「支払手形」という勘定科目で処理をします。
手形は、現金と同様に扱われる決済手段であり、信用が重要な企業間取引で特に多く利用されています。企業間取引で手形が使われるシーンは、商品の受け取りを先に行い、商品代金の支払いが後払いになるときです。このような掛取引では、定められた期日までに規定の代金を支払うことが重要だからこそ、手形を作成するのです。
手形は、専用の用紙に必要事項を記入して相手方に渡すことを「振出(ふりだし)」と呼びます。手形を作成した時点で、振出人から受取人への支払義務が生じる点が特徴です。
手形と小切手の違い
手形と同じく現金に代わる決済手段に「小切手」があります。両者の違いは、受取人が現金化できるタイミングなどです。2つの違いを比較してみましょう。
小切手は多額の現金を持ち歩くリスクや不便さの解消のために用いられます。その性質上、現金に変えるタイミングは受け取った直後からとなります。また、額面記載の金額は口座残高をもとに支払われる点も大きな違いです。
手形は期日までの支払いを約束するためのものなので、期日を迎えるまでは現金化できません。また、預金口座の残高がなくても発行が可能な点も大きな特徴でしょう。残高がなくても発行できることから、手形を振り出せる企業は信用性が高いといえます。
項目 | 手形 | 小切手 |
---|---|---|
現金化 | 期日までに現金化 | すぐに現金化 |
残高 | 残高がなくても発行可能 | 残高がないと発行できない |
信用力 | 信用力が高い | 信用力が高い |
用途 | 資金繰り | 現金の持ち運びの代替 |
法的拘束力 | 法的拘束力あり | 法的拘束力あり |
発行 | 銀行との当座勘定取引契約が必要 | 銀行との当座勘定取引契約が必要 |
手形取引の減少傾向
手形取引はいまだに実行されている決済手段ですが、近年の取引数は減少傾向にあります。財務省の財務総合政策研究所による「財務省法人企業統計調査」では、どれほど手形取引が実施されているのかを確認できます。
企業統計調査の結果から、1995年度末から2013年度末にかけて手形取引された金額が71%減少していることがわかっています。手形は即座に現金化できない特徴があるので、手形以外の取引方法がさまざまある中で手形を選択する企業は減っています。
年度 | 手形取引金額 |
---|---|
1995年度末 | 100% |
2013年度末 | 29% |
まとめ
支払手形は、将来の支払いを約束する有価証券であり、企業間取引において現金の代わりに用いられます。手形は、現金と同様に扱われますが、小切手とは異なり、すぐに現金化することはできません。
近年では、手形取引は減少傾向にあり、2026年を目途に紙の手形が廃止される動きがあります。これは、手形取引が受取人の負担が大きく、資金繰りの悪化につながるリスクがあるためです。
手形取引は、企業の信用力を示す手段として、依然として重要な役割を担っています。しかし、手形取引は、不渡りのリスクや印紙税などのコストが発生するなど、デメリットも存在します。
企業は、手形取引を行う際には、メリットとデメリットを理解した上で、慎重に判断する必要があります。
2. 支払手形の種類と流れ
約束手形
約束手形は、将来の一定期日に代金を支払うことを約束した有価証券です。振出人が受取人に振り出すことで代金決済が完了します。
約束手形は、振出人(支払う側)と受取人(受け取る側)の2者の関係で成り立ちます。取引の流れは以下をご覧ください。
振出人は手形を渡すだけ、受取人は手形を金融機関に渡すだけで、代金の受け渡しが可能です。
為替手形
為替手形とは、三者間の取引における支払方法に用いられる手形のことです。振出人と受取人に加え、手形の券面金額を指定の日付に支払う支払人が関わり、支払いを実現します。
三者が関わりますが、手続きは複雑ではありません。ただし、受取人は支払人に手形を渡すという行為だけでなく、金融機関に出向いて代金を受け取るという手間がかかります。
手形取引の流れ
手形取引は、振出人が手形を発行し、受取人が手形を受け取るという流れで行われます。手形には、支払期日、支払金額、支払場所などが記載されます。
受取人は、支払期日までに手形を銀行に持ち込むことで、現金化することができます。振出人は、支払期日までに手形に記載された金額を銀行口座に入金しておく必要があります。
手形取引には、手形割引や裏書譲渡などの方法もあります。手形割引は、支払期日前に手形を銀行などに買い取ってもらうことで、現金化することができます。裏書譲渡は、手形を他の企業に譲渡することで、支払いに充てることができます。
段階 | 内容 |
---|---|
1 | 振出人が銀行で当座預金口座を開設し、手形帳を交付してもらう |
2 | 振出人が受取人に手形を振り出す |
3 | 受取人が支払期日に銀行に手形を提示 |
4 | 銀行が振出人の口座から受取人に支払う |
まとめ
支払手形には、約束手形と為替手形の2種類があります。約束手形は、振出人と受取人の2者間で行われる取引で、為替手形は、振出人、受取人、支払人の3者間で行われる取引です。
手形取引は、振出人が手形を発行し、受取人が手形を受け取るという流れで行われます。受取人は、支払期日までに手形を銀行に持ち込むことで、現金化することができます。
手形取引には、手形割引や裏書譲渡などの方法もあります。手形割引は、支払期日前に手形を銀行などに買い取ってもらうことで、現金化することができます。裏書譲渡は、手形を他の企業に譲渡することで、支払いに充てることができます。
3. 支払手形の利点と欠点
支払手形の利点
手形取引は、現金が手元に入るまでの期間が長引くことから、受取人の負担が大きい支払方法です。受取人の負担を軽減するためにも、現金か振込、難しいときは電子手形(電子記録債権)で支払うことがすすめられています。
手形取引は、受取人の負担が大きく、受取人の資金繰りが悪化するリスクもはらんでいます。また、振出人にとっても印紙税の負担が発生するため、負担に感じることもあるかもしれません。取引相手との良好な関係を築くためにも、一度、支払方法を見直してみましょう。
利点 | 説明 |
---|---|
資金繰りの改善 | 支払期日をコントロールできるため、資金繰りが円滑になる |
利息が発生しない | 銀行からの借入金と異なり、利息が発生しない |
信用力のアピール | 銀行の審査を通過しているため、社会的信用度が高いことを示せる |
支払手形の欠点
手形は、記載されている金額を期日までに支払うことを約束する手形です。しかし、書き方に誤りがあったり、口座に残高がなかったりすると、その効力を発揮できなくなります。また、貸借対照表に記載する際も、複数回にわたって処理する必要があります。支払手形を扱う際は書き方や取引の流れをきちんと理解し、不備がないようにしましょう。
欠点 | 説明 |
---|---|
印紙税の負担 | 手形を発行する際に、金額に応じて印紙税が発生する |
不渡りのリスク | 支払期日までに口座に入金ができない場合、不渡りとなるリスクがある |
財務指標への影響 | 手形を発行すると、負債が増加するため、自己資本比率が低下する |
手形取引の注意点
手形取引は、受取人の負担が大きく、受取人の資金繰りが悪化するリスクもはらんでいます。また、振出人にとっても印紙税の負担が発生するため、負担に感じることもあるかもしれません。取引相手との良好な関係を築くためにも、一度、支払方法を見直してみましょう。
まとめ
支払手形は、現金が手元に入るまでの期間が長引くことから、受取人の負担が大きい支払方法です。受取人の負担を軽減するためにも、現金か振込、難しいときは電子手形(電子記録債権)で支払うことがすすめられています。
手形取引は、受取人の負担が大きく、受取人の資金繰りが悪化するリスクもはらんでいます。また、振出人にとっても印紙税の負担が発生するため、負担に感じることもあるかもしれません。取引相手との良好な関係を築くためにも、一度、支払方法を見直してみましょう。
4. 支払手形の法的な取り扱い
手形法
手形は、手形法という法律によって、その発行や取引に関するルールが定められています。手形法は、手形の法的効力、振出人や受取人の義務、不渡り手形などの取り扱いについて規定しています。
手形法では、手形に記載すべき事項が定められており、これらの事項が不足している場合は、手形は無効となります。また、手形は、銀行で発行される統一手形用紙を使い、取引銀行で決済することがルールとなっています。
印紙税
手形は、印紙税の対象となる文書です。手形を発行する際には、金額に応じて収入印紙を貼付する必要があります。印紙税の金額は、手形に記載された金額によって異なります。
印紙税は、手形を発行した時点で発生します。手形を発行する際には、印紙税の金額を計算し、適切な収入印紙を貼付するようにしましょう。
金額 | 印紙税 |
---|---|
10万円以下 | 非課税 |
10万円超~100万円以下 | 200円 |
100万円超~200万円以下 | 400円 |
200万円超~300万円以下 | 600円 |
300万円超~500万円以下 | 1,000円 |
500万円超~1,000万円以下 | 2,000円 |
不渡り手形
手形を振り出したものの、支払期日までに手形金を支払えない状況となり、そのままにしておくと不渡りとなってしまいます。
1度不渡りを出してしまうと不渡り処分を受け、2年間銀行と取引をすることができなくなります。銀行取引停止処分を受けるということは事実上の倒産を意味しますから、手形金の支払いは優先して対応すべきです。
不渡りの原因 | 説明 |
---|---|
資金不足 | 振出人の口座に手形金額分の残高がない |
記載事項の誤り | 手形に記載された事項に誤りがある |
盗難のおそれ | 手形が盗難された可能性がある |
まとめ
手形は、手形法という法律によって、その発行や取引に関するルールが定められています。手形法は、手形の法的効力、振出人や受取人の義務、不渡り手形などの取り扱いについて規定しています。
手形は、印紙税の対象となる文書です。手形を発行する際には、金額に応じて収入印紙を貼付する必要があります。
手形が不渡りになると、振出人は銀行取引停止処分を受ける可能性があり、事業継続が困難になる可能性があります。
5. 支払手形の実務における注意点
手形の書き方
手形は、紙面に記載された金額が根拠となるため、改ざんされるとその金額を支払う義務が発生します。電子手形なども検討し、改ざんされにくいように対策を実施することが必要です。
振出人は、手形に記載した支払日までに口座に入金することが大切です。不渡りを出すと、取引先からだけでなく金融機関からも信用を失くすことになります。
項目 | 注意点 |
---|---|
金額 | 改ざんされないようにチェックライターで印字するか、漢数字で手書きする |
振出日 | 支払期日よりも前の日付であることを確認する |
振出人 | 会社の住所と法人格、会社名を記入する。代表者の肩書と氏名も記入する。銀行印を押印する |
収入印紙 | 金額に応じて必要な金額の収入印紙を貼付する |
手形の保管
手形は換金性があるため、その取扱いには注意が必要です。受取人の立場では、受け取った手形を紛失すると、最悪の場合、商品代金を回収できなくなります。資金繰りに悪影響を及ぼす可能性があるでしょう。
振出人の立場では、手形帳を紛失すると、悪意の第三者に悪用されるリスクもあります。また、どちらの立場でも、手形を紛失するとそれに伴う様々な事務処理が発生するため非常に面倒です。手形は、普段から金庫に保管しておき、所在を明らかにするように努めてください。
保管場所 | 注意点 |
---|---|
金庫 | 普段から金庫に保管し、所在を明らかにする |
手形帳 | 紛失しないように注意する |
手形 | 紛失しないように注意する |
手形取引の廃止
政府主導で、2026年を目処に手形取引を廃止しようとする動きがあります。
手形取引は、現金が手元に入るまでの期間が長引くことから、受取人の負担が大きい支払方法です。受取人の負担を軽減するためにも、現金か振込、難しいときは電子手形(電子記録債権)で支払うことがすすめられています。
時期 | 内容 |
---|---|
2026年 | 紙の約束手形廃止 |
2022年11月 | 手形交換所の廃止 |
今後 | 電子記録債権「でんさい」への移行 |
まとめ
手形は、金額の改ざんに注意し、正確に記載することが重要です。また、手形は換金性が高いため、紛失や盗難に注意し、適切に保管する必要があります。
政府は、2026年を目処に紙の手形を廃止する方針を決定しています。今後は、電子記録債権「でんさい」への移行が進められています。
6. 支払手形の経済への影響と今後の展望
経済への影響
手形は、企業間取引において、現金の代わりに用いられる決済手段として、長年利用されてきました。手形は、企業が資金繰りを円滑に行うために重要な役割を果たしてきました。
しかし、近年では、手形取引は減少傾向にあります。これは、手形取引が受取人の負担が大きく、資金繰りの悪化につながるリスクがあるためです。また、電子決済の普及により、手形取引の必要性が低下していることも要因の一つです。
影響 | 説明 |
---|---|
資金繰り | 企業の資金繰りを円滑にする役割を果たしてきた |
取引 | 近年では取引数が減少している |
決済手段 | 電子決済の普及により、手形取引の必要性が低下している |
今後の展望
政府は、2026年を目処に紙の手形を廃止する方針を決定しています。今後は、電子記録債権「でんさい」への移行が進められています。
「でんさい」は、紙の手形と比較して、コストが節約でき、紛失や盗難のリスクがない点がメリットです。また、電子化により、手形取引の手続きが簡素化され、効率性も向上すると期待されています。
項目 | 内容 |
---|---|
紙の手形 | 2026年を目処に廃止 |
電子記録債権 | 普及が進むと予想される |
決済手段 | 多様化が進むと予想される |
電子記録債権
電子記録債権「でんさい」は、紙の手形と同様に、将来の支払いを約束する有価証券です。しかし、「でんさい」は、電子データとして管理されるため、紙の手形と比較して、多くのメリットがあります。
「でんさい」は、紙の手形と比較して、コストが節約でき、紛失や盗難のリスクがない点がメリットです。また、電子化により、手形取引の手続きが簡素化され、効率性も向上すると期待されています。
メリット | 説明 |
---|---|
コスト削減 | 紙の手形と比較して、コストが削減できる |
紛失・盗難リスクの軽減 | 電子データとして管理されるため、紛失や盗難のリスクがない |
手続きの簡素化 | 電子化により、手形取引の手続きが簡素化される |
効率性向上 | 電子化により、手形取引の効率性が向上する |
まとめ
手形取引は、企業の資金繰りや決済手段として、長年利用されてきました。しかし、近年では、手形取引は減少傾向にあり、2026年を目処に紙の手形が廃止される方針です。
今後は、電子記録債権「でんさい」が主流になると予想されます。「でんさい」は、紙の手形と比較して、コストが節約でき、紛失や盗難のリスクがないなど、多くのメリットがあります。
手形取引は、企業の資金繰りや決済手段として、重要な役割を果たしてきました。しかし、時代とともに、より効率的で安全な決済手段が求められています。
企業は、今後の変化に対応し、より効率的な決済手段を導入していく必要があります。
参考文献
・支払手形とは? 仕訳例、取引の流れや注意点を解説|会計処理 …
・支払手形とは? 勘定科目や具体的な仕訳例、振り出すときの …
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