保有要件 | 行使できる株主の権利 | 権利の内容 |
---|---|---|
総議決権の1/10以上 | 募集株式発行における株主総会請求権 (公開会社) |
支配株主が変わることになる募集株式を発行するときに、株主総会での決議を要求することができる。 |
総議決権の1/10以上 | 募集新株予約権発行における株主総会請求権 (公開会社) |
募集新株予約権に係る対象株式が交付されたときに、支配株主が変わることになる募集新株予約権を発行するときに、株主総会での決議を要求することができる。 |
総議決権の3/100以上 | 株主総会招集請求権 | 株主総会の招集を請求することができる。 |
総議決権の1/100以上または300個以上の議決権 | 株主提案権 (取締役会設置会社) |
一定の事項を株主総会の目的とすることを請求することができる。 |
総議決権の1/100以上または300個以上の議決権 | 議案通知請求権 (取締役会設置会社) |
株主が提出しようとする議案の要領を株主に通知することを請求することができる。 |
総議決権の1/100以上 | 株主総会の検査役選任請求権 | 株主総会の手続を調査させるため、検査役の選任の申立てをすることができる。 |
総議決権または発行済株式の3/100以上 | 業務執行に関する検査役の選任請求権 | 業務の執行について不正が疑われるときに、その調査のため、検査役の選任の申立てをすることができる。 |
総議決権の3/100以上 | 役員等の責任軽減への異議申立権 | 取締役会の決議によって役員の責任免除をするときに、それを阻止することができる。 |
総議決権または発行済株式の3/100以上 | 会計帳簿閲覧請求権 | 会計帳簿またはこれに関する資料の閲覧・謄写を請求することができる。 |
定足数のときに特別決議を否決することのできる議決権以上 | 簡易合併等に対する反対権 | 簡易合併等の際に反対することにより株主総会決議を省略できなくすることができる。 |
議決権または発行済株式の1/10以上 | 解散請求権 | やむを得ない事由があるときは、訴えをもって株式会社の解散を請求することができる。 |
最終完全親会社等の総議決権または発行済株式の100分の1以上 | 多重代表訴訟提起権 | 当該会社(子会社)特定責任に係る責任追及等の訴えの提起を請求することができる。 |
総議決権または発行済株式の3/100以上 | 役員解任請求権 | 一定の要件の下、当該役員解任の訴えを裁判所に提起できる。 |
1. 少数株主権とは何か
少数株主権とは何か
少数株主権とは、株式会社の株主が有する権利の1つであり、一定割合または一定数以上の株式を保有する株主のみが行使できる権利をいいます。1株(1単元株)を有する株主であっても行使可能な権利をいう単独株主権と対になる表現です。また、株式の保有については、一定期間以上の保有を要求する場合があります。
ここでいう少数とは単独では会社の経営権を握れないという程度の意味で、むしろ一定以上の株式を有する比較的大株主が経営陣と対立したときに行使されることが多い権利です。少数株主権を有する株主を指して、少数株主と呼ぶことがあります(少数派株主の意でも用いられることがあります)。
日本法下ではいわゆる共益権のうち、議決権以外のもの(監督・是正に関するもの)について少数株主権が存在します。
単独株主権と少数株主権
株式会社の株主が有する権利は単独株主権と少数株主権に分けることができます。
単独株主権とは1 株でも株式を保有する株主であれば行使できる権利をいい、会社法上、剰余金分配請求権(105 条1 項1 号)、残余財産分配請求権(105 条1 項2 号)、議決権(105 条1 項3 号)、株主代表訴訟の提起権(847 条)などが定められています。
少数株主権とは行使のために総株主の一定数以上の議決権や一定割合以上の議決権あるいは発行済株式総数の一定割合以上の株式を有することが必要とされる権利をいいます。
少数株主権の議決権数や株式数の要件は、一人の株主のみで充足する必要はなく、複数の株主の有する議決権数や株式数を合計した場合に要件を充足するときは、当該複数の株主が連名で少数株主権を行使することができます。
会社法上の少数株主権
会社法上、少数株主権として会計帳簿閲覧等請求権(433 条1 項)や、役員解任の訴えの提起権(854 条)、株主総会招集請求権(297 条1 項)、解散の訴え提起権(833 条1 項)などが定められています。
権利 | 行使に必要な要件 |
---|---|
会計帳簿閲覧等請求権 | 総株主の議決権の100分の3以上を有する株主または発行済株式の100分の3以上の数の株式を有する株主 |
役員解任の訴えの提起権 | 総株主の議決権の100分の3以上の議決権を6ヶ月前から引き続き有する株主または発行済株式の100分の3以上の数の株式を6ヶ月前から引き続き有する株主 |
株主総会招集請求権 | 総株主の議決権の100分の3以上を有する株主 |
解散の訴え提起権 | 総株主の議決権の10分の1以上の議決権を有する株主又は発行済株式の10分の1以上の数の株式を有する株主 |
まとめ
少数株主権は、株式会社の株主が有する権利の1つであり、一定割合以上の株式を保有する株主のみが行使できる権利です。
単独株主権とは異なり、少数株主権は、一定割合以上の株式を保有することが必要とされます。
会社法では、会計帳簿閲覧等請求権、役員解任の訴えの提起権、株主総会招集請求権、解散の訴え提起権など、様々な少数株主権が定められています。
2. 少数株主権の重要性と影響
少数株主権の目的
少数株主権は、多数派株主の専横を制し、少数株主の利益を保護するために認められています。
少数株主は、単独では会社の経営方針を決定したり、経営を監視したりすることが難しい立場にあります。
そこで、少数株主権は、少数株主が会社経営に一定の影響力を持つことを可能にすることで、会社全体の健全な運営を確保することを目的としています。
少数株主権の具体的な影響
少数株主権は、会社経営に様々な影響を与えます。
例えば、会計帳簿閲覧請求権は、会社経営の透明性を高め、不正行為の抑止に役立ちます。
また、役員解任請求権は、経営陣の責任を問う手段となり、経営の効率化や不正行為の防止に貢献します。
さらに、株主総会招集請求権は、少数株主が経営方針に影響を与える機会を提供し、会社経営への参加を促進します。
少数株主権の行使とリスク
少数株主権は、会社経営に影響を与える強力な手段ですが、行使にはリスクも伴います。
例えば、会計帳簿閲覧請求権を行使することで、会社との関係が悪化し、将来的な投資機会を失う可能性があります。
また、役員解任請求権を行使することで、会社経営が不安定化し、企業価値が下落する可能性もあります。
さらに、株主総会招集請求権を行使することで、会社経営に混乱が生じ、事業の遂行が遅延する可能性もあります。
まとめ
少数株主権は、少数株主の利益保護と会社全体の健全な運営を確保するために重要な役割を果たします。
しかし、少数株主権を行使するには、リスクを理解し、慎重に判断する必要があります。
少数株主は、会社経営への影響力とリスクを天秤にかけて、適切な判断を行うことが重要です。
3. 少数株主権の例外と制限
少数株主権の例外
少数株主権は、原則として一定割合以上の株式を保有する株主のみが行使できますが、例外的に、1株でも保有していれば行使できる権利もあります。
例えば、株主総会における議決権は、1株でも保有していれば行使できます。
また、株主代表訴訟の提起権も、1株でも保有していれば行使できます。
これらの権利は、単独株主権と呼ばれ、少数株主権とは区別されます。
少数株主権の制限
少数株主権は、その行使が濫用されることを防ぐために、いくつかの制限が設けられています。
例えば、株主提案権は、1回の株主総会で提出できる議案の数が制限されています。
また、株主総会招集請求権は、客観的にみて総会を招集することに実益がないばかりか有害であることが明らかであり、かつ、申立人に害意がある場合には、却下されることがあります。
これらの制限は、少数株主権の乱用を防ぎ、会社経営の安定を図るために必要です。
少数株主権の行使と定款
少数株主権の行使に必要な株式数や議決権数は、会社法で定められていますが、定款でその要件を緩和することができる場合があります。
例えば、定款で、株主提案権の行使に必要な議決権数を、会社法で定められている割合よりも低く設定することができます。
このように、定款によって、少数株主権の行使要件が変更されることがあります。
まとめ
少数株主権は、原則として一定割合以上の株式を保有する株主のみが行使できますが、例外的に、1株でも保有していれば行使できる権利もあります。
また、少数株主権の行使は、濫用を防ぐために、いくつかの制限が設けられています。
さらに、定款によって、少数株主権の行使要件が変更されることがあります。
少数株主権は、会社法で定められたルールに従って行使される必要があります。
4. 少数株主権と企業価値向上
少数株主権と企業ガバナンス
少数株主権は、企業ガバナンスの強化に貢献します。
企業ガバナンスとは、企業が健全かつ効率的に運営されるように、経営の透明性や説明責任を高め、株主や顧客などの利害関係者の利益を保護するための仕組みです。
少数株主権は、経営陣の不正行為や専断的な行動を監視し、経営の透明性を高めることで、企業ガバナンスの強化に役立ちます。
少数株主権と企業価値
企業価値とは、会社の事業や資産などの価値を総合的に評価したものです。
少数株主権は、企業価値の向上に貢献します。
なぜなら、少数株主権は、経営の透明性や説明責任を高め、不正行為を抑制することで、投資家の信頼を高め、企業価値の向上につながるからです。
少数株主権と投資家の行動
少数株主権の存在は、投資家の行動にも影響を与えます。
投資家は、少数株主権がしっかり機能している会社であれば、経営の透明性や説明責任が高いと判断し、安心して投資することができます。
結果として、企業価値が向上し、資金調達も円滑に行われるようになります。
まとめ
少数株主権は、企業ガバナンスの強化と企業価値の向上に貢献します。
少数株主権は、経営の透明性や説明責任を高め、不正行為を抑制することで、投資家の信頼を高め、資金調達を円滑にし、ひいては企業価値の向上につながります。
少数株主権は、会社にとって重要な制度であり、その適切な運用が求められます。
5. 少数株主権の議論と課題
少数株主権の議論
少数株主権は、会社経営の健全化に貢献する一方で、その行使には様々な議論があります。
例えば、少数株主権の行使が、経営の安定性を損なう可能性があるという指摘があります。
また、少数株主権の行使が、経営陣の行動を萎縮させ、企業の成長を阻害する可能性があるという指摘もあります。
少数株主権の課題
少数株主権の行使には、いくつかの課題があります。
1つは、少数株主権の行使に必要な株式数の割合が高く、実際に行使されるケースが少ないことです。
もう1つは、少数株主権の行使には、時間や費用がかかり、中小企業にとっては負担が大きいことです。
少数株主権の今後の展望
少数株主権は、会社経営の健全化に貢献する重要な制度ですが、その行使には課題も存在します。
今後、少数株主権の行使を促進するための制度設計や、中小企業でも負担なく行使できるような仕組みの構築が求められます。
また、少数株主権の行使に関する情報提供や教育の充実も重要です。
まとめ
少数株主権は、会社経営の健全化に貢献する一方で、その行使には様々な議論と課題があります。
少数株主権の行使を促進し、その効果を最大限に発揮するためには、制度設計や情報提供の改善、そして、企業文化の変革など、様々な取り組みが必要となります。
少数株主権は、会社経営の透明性と説明責任を高め、企業価値の向上に貢献する重要な制度です。
6. 少数株主権と株主総会の関係
株主総会における少数株主権の行使
少数株主権は、株主総会において重要な役割を果たします。
株主総会は、株式会社の最高意思決定機関であり、経営方針の決定や役員の選任など、重要な議決事項を審議する場です。
少数株主は、株主総会において、少数株主権を行使することで、経営陣に意見を表明したり、経営方針に影響を与えたりすることができます。
株主総会招集請求権と株主総会
株主総会招集請求権は、少数株主が株主総会を招集する権利です。
この権利は、取締役が株主総会を招集しない場合や、招集が遅延している場合に、少数株主が経営に直接関与することを可能にするものです。
株主総会招集請求権は、少数株主が経営方針に影響を与えるための重要な手段です。
株主提案権と株主総会
株主提案権は、少数株主が株主総会に議案を提出する権利です。
この権利は、少数株主が経営方針に影響を与えるための重要な手段です。
株主提案権は、会社経営の改善や、新しい事業への参入など、様々な目的で利用されます。
まとめ
少数株主権は、株主総会において、少数株主が経営に影響を与えるための重要な手段です。
株主総会招集請求権や株主提案権など、様々な少数株主権が、株主総会における少数株主の権利行使を支えています。
少数株主は、これらの権利を適切に活用することで、会社経営に積極的に関与することができます。
参考文献
・少数株主権(ショウスウカブヌシケン)とは? 意味や使い方 …
・少数株主権とは?権限と運用方法を解説 | 独立・起業・M&Aまる …
・少数株主問題とは?少数株主問題への対処方法 – 中堅~大手 …
・少数株主とは?少数株主が知っておくべき権利と保有リスク …
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