概念 | 説明 |
---|---|
持ち株比率 | 特定の株主が所有する株式数を、会社の発行済み株式の総数で割った比率。企業への所有権の大きさを示す。 |
議決権比率 | 特定の株主が持つ議決権の数を、行使できる議決権の合計数で割った比率。企業への影響力を示す。 |
議決権 | 株主総会で投票を行うことができる権利。原則として1株に1つの議決権が与えられる。 |
普通決議 | 企業の日常的な運営に関わる重要な決定。例:役員の選任、報酬、配当の決定、事業計画の承認など。 |
特別決議 | 企業の基本的な経営方針や構造を大きく変えるような重大な決定。例:会社の合併、分割、解散、定款の変更など。 |
自益権 | 株主個人の利益だけに関係する権利。例:利益配当請求権、残余財産分配請求権など。 |
共益権 | 株主が会社の経営に参与するための権利。例:議決権など。 |
単独株主権 | 株式を1株でも持っていれば認められる権利。例:議決権、利益配当請求権など。 |
少数株主権 | 一定の持株比率に応じて行使できる権利。例:会計帳簿閲覧請求権、検査役の選任請求権など。 |
大株主 | 企業の株式の持ち株比率が高い株主。具体的な基準は無い。 |
主要株主 | 企業の議決権のある発行済株式の100分の10以上を保有する株主。 |
筆頭株主 | 企業の議決権のある発行済株式の最も多くを保有している株主。 |
安定株主 | 創業者の経営方針を支持し、経営権を安定させる役割を果たす株主。 |
スクイーズアウト | 株主が企業の残りの株式を保有する小株主から株式を買い取り、企業を完全に私有化できる権利。 |
プロキシファイト | 敵対する株主同士が、他の株主からより多くの支持を得て委任状を得るための争奪戦。 |
敵対的TOB | 買収目的の株式公開買い付け。企業の経営権を握るために、多くの株主から株式を買い取る。 |
1. 持ち株比率とは
持ち株比率の定義
持ち株比率とは、特定の企業の株主が所有する株式の数を、会社の発行済み株式の総数で割ったものを指します。これにより、その株主が会社全体の何パーセントの株式を所有しているのかを示す指標となります。例えば、会社Aの発行済み株式が1
持ち株比率は、株主の影響力や、企業の経営に対する権限の大小を示す重要な指標となります。特に大株主や筆頭株主の持ち株比率は、経営方針や株主総会での議決権など、企業経営に大きな影響を及ぼす可能性があるため、注目されることが多いです。
株式の仕組み
株式とは、会社が事業を行うために必要な資金を集める手段のひとつです。例えば会社が工場を建てて製品をつくる、お店を出して販売するといった場合に必要な資金を集める際に行われます。株式を発行して得た資金は、銀行借入や社債を発行して得た資金とは異なり、返済の義務はありません。出資した人(株主)はお金が返ってこない代わりに、保有株式の割合に応じた経営参加ができ、利益が出たときには保有株式数に応じて配当がもらえます。また、企業が成長し株式の価値が上がったときには、その株式を売却して利益を得ることができます。
株主は出資した金額に比例した数の株を保有し、その持ち株に応じてさまざまな権利を持つ事ができます。日本の会社法上の株式会社では、以下の権利が主とされています。
・剰余金配当請求権\n・残余財産分配請求権\n・株主総会の議決権
株主の権利の種類
株主の権利は、自益権であるか共益権であるか、単独株主権であるか少数株主権であるかによって分類されます。
自益権は株主個人の利益だけに関係する権利で、主とされる権利三つのうちの、配当を受ける「利益配当請求権」、会社が倒産した時などに残った財産の分配を受けられる「残余財産分配請求権」などがあります。
共益権は株主が会社の経営に参与するための権利で、主とされる権利3つのうちの一つで、株主総会に参加して議決に関わる「議決権」があります。その他の権利は株の保有率で異なり、株を沢山保有しているほど、会社に影響を与える権利となります。
単独株主権は1株でも持っていれば認められる権利、少数株主権は一定割合以上の株を持っていないと認められない権利です。自益権はすべて単独株主権であり、共益権は、議決権は単独株主権ですが、それ以外は、単独株主権であるものと、少数株主権であるものとがあります。
権利の種類 | 説明 |
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自益権 | 株主個人の利益だけに関係する権利 |
共益権 | 株主が会社の経営に参与するための権利 |
単独株主権 | 株式を1株でも持っていれば認められる権利 |
少数株主権 | 一定の持株比率に応じて行使できる権利 |
まとめ
持ち株比率は、株主が企業の株式をどれだけ所有しているかを表す指標であり、株主の権利や企業への影響力を示す重要な要素です。
株式は、企業が事業を行うために必要な資金を調達するための手段であり、株主は出資した金額に比例した数の株を保有し、その持ち株に応じてさまざまな権利を持つことができます。
株主の権利は、自益権、共益権、単独株主権、少数株主権の4つのカテゴリーに分類され、それぞれの権利は株主の持ち株比率によって異なります。
2. 持ち株比率の重要性
経営への影響力
株式会社における最高意思決定機関は株主総会です。この株式総会における意思決定は基本的には多数決であり、持ち株比率が多ければ多いほど重要な意思決定を行うことができます。増資を行って外部株主が増えるということは、意思決定に参加する者が増えるということであり、複数の株主の合意が必要になるケースが増えるということになります。
持ち株比率による権利の内容は多岐に渡りますが、ここでは創業者が押さえておくべき主なものを説明します。
経営権の維持
持ち株比率が2/3以上の株主(複数の株主の合計の場合を含みます。以下の項目でも同じ。)は、定款変更や取締役の解任、会社の合併や解散など、特別決議といわれる企業経営上とても重要なことを決めることができます。創業者であれば、できるだけこの2/3以上を保有すべきですが、必ずしも単独で保有する必要はなく、他の創業メンバーや信頼できる投資家などいわゆる安定株主を確保することが重要です。
株主総会は基本的には多数決で意思決定しますので、持ち株比率が全体の1/2超、つまり過半数を保有している株主であれば、ほとんどの場合で意思決定が可能です。ただし、意思決定に2/3以上の賛成が必要な特別決議は単独では可決できず、この点で絶対的な権力とはいえません。
持ち株比率が1/3以上の株主は、特別決議(定款変更や取締役の解任、合併や解散などの重要な意思決定)を単独で阻止することが可能です。経営者の立場からみると、1/3以上を保有する外部株主がいる場合、その意向を相当意識する必要があるということになります。
持ち株比率 | 行使できる権利 |
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2/3以上 | 定款変更、取締役の解任、会社の合併や解散など、特別決議を単独で可決 |
1/2超 | 株主総会の普通決議を単独で可決 |
1/3以上 | 特別決議を単独で阻止 |
3%以上 | 株主総会の招集要求、会社の帳簿閲覧請求、検査役の選任請求 |
1%以上 | 株主総会における議案提出権 |
少数株主の権利
持ち株比率が3%以上の株主は、株主総会の招集を要求したり、会社の帳簿を閲覧することを請求することが可能です。また、業務の執行を検査する検査役の選任を請求することができます。帳簿の閲覧やプロの検査役の選任というのは、日ごろの経営の実態を開示し、チェックされることになるわけですので、経営者として適切に対応することが求められます。
持ち株比率1%以上の株主は、株主総会における議案提出権を有します。企業経営に関して有意義な提案が期待できる一方で、経営手法の問題点を鋭く指摘されるなど問題提起のきっかけになる場合もあります。経営者として緊張感を持って相対することが必要です。
株式をわずかしか有しない株主に対しても、一定の権利を与える制度があります。また、議決権が拮抗するような場合には、少数の株式しか保有しない株主の動向が議決を左右することも考えられます。この意味でも、株主は、持ち株比率の多寡に関わらず重要な存在であり、信頼関係を築くことが経営者の責務です。
まとめ
持ち株比率は、企業の経営権を左右する重要な要素であり、経営者にとって、安定した経営を行うために必要な持ち株比率を理解することは不可欠です。
特に、経営権を維持するためには、2/3以上の持ち株比率を確保することが理想的です。しかし、現実的には、株式が家族や親族などに分散している場合もあり、経営権が脅かされる可能性も存在します。
持ち株比率が低い場合は、株主との信頼関係を築き、経営方針や業績を透明性を持って開示することで、安定した経営を維持することができます。
3. 持ち株比率の計算方法
計算式
持ち株比率は、以下の計算式で求めることができます。\n持ち株比率 = (保有株式数 ÷ 発行済株式数) × 100
例えば、会社の発行株式数が100株で、株主Aさんの持ち株が50株であれば、(50 ÷ 100) × 100 = 持株比率は50%、持ち株が25株であれば、(25 ÷ 100) × 100 = 25%ということになります。
例題
会社Aが1000株を発行し、そのうち200株を株主Bが持っている場合、Bさんの持株比率は200÷1000×100=20%ということになります。
A社が1株につき1つの議決権を定めていた場合、Bさんは株主総会の投票権の20%を一人で持っていることを意味します。
たとえば、全議決権数の51%以上の賛同が必要な決議があった場合、Bさん一人が賛成票を投じるだけで、可決に必要な賛同数のおよそ半分が得られる形となります。
議決権比率
議決権比率とは、特定の株主が持っている企業の議決権の割合です。この割合は、その株主が企業に対してどれだけ影響力を持っているか示しています。
議決権比率の計算式は、以下の式になります。\n議決権比率(%)= (保有する議決権の数 /行使できる議決権の合計数)× 100
ただし、すべての株式が議決権を持っているわけではありません。
例えば、企業が議決権のない株式を発行した場合、これらの株式は持株比率の計算には含まれますが、議決権比率の計算には含まれません。したがって、持株比率と議決権比率は必ずしも一致しないといえます。
まとめ
持ち株比率は、保有株式数と発行済み株式数を用いて計算され、株主が企業の株式をどれだけ所有しているかを表す指標です。
議決権比率は、保有する議決権の数と行使できる議決権の合計数を用いて計算され、株主が企業の意思決定にどれだけ影響力を持っているかを表す指標です。
議決権のない株式が存在する場合、持株比率と議決権比率は異なる値となる可能性があります。
4. 持ち株比率の影響要因
経営権の集中
持ち株比率が高い株主は、企業の経営方針や意思決定に大きな影響力を持つことができます。特に、持ち株比率が50%を超えると、株主総会での議決権を掌握し、経営を支配することが可能になります。
そのため、創業者は、経営権を維持するために、できるだけ高い持ち株比率を確保しようとします。しかし、創業者が単独で50%以上の持ち株比率を確保することが難しい場合もあります。
そのような場合は、他の創業メンバーや信頼できる投資家など、いわゆる安定株主を確保することが重要になります。安定株主は、創業者の経営方針を支持し、経営権を安定させる役割を果たします。
企業の成長戦略
持ち株比率は、企業の成長戦略にも影響を与えます。例えば、企業が新規事業に進出する場合、資金調達のために外部投資家から資金を調達する必要が生じます。
外部投資家からの資金調達には、株式の発行が伴うことが多く、株式の発行によって創業者の持ち株比率が希薄化してしまう可能性があります。
そのため、創業者は、持ち株比率の希薄化を最小限に抑えるために、資金調達の方法や時期を慎重に検討する必要があります。
株主間の関係
持ち株比率は、株主間の関係にも影響を与えます。持ち株比率が大きく異なる株主間では、経営方針や意思決定に関する意見の対立が生じることがあります。
特に、創業者が少数株主である場合、経営権を掌握している大株主の意向に左右される可能性があります。そのため、創業者は、大株主との良好な関係を築き、経営権を維持するための戦略を立てる必要があります。
また、持ち株比率が均等な場合でも、株主間の意見が一致しない場合、経営が停滞する可能性があります。そのため、創業者は、株主間の意見を調整し、共通の目標に向かって進むための仕組みを構築する必要があります。
まとめ
持ち株比率は、経営権の集中、企業の成長戦略、株主間の関係など、様々な要因に影響を与えます。
創業者は、持ち株比率がこれらの要因にどのように影響するかを理解し、適切な持ち株比率を決定する必要があります。
また、持ち株比率が変化した場合、経営権の維持や企業の成長戦略、株主との関係など、様々な課題に対処する必要があります。
5. 持ち株比率と企業経営
経営権の確保
経営者として、企業の株式の半分以上を所有していれば、株主総会における重要な決定を単独で通すことが可能です。しかし、安定した経営権を保つためには、持株比率が2/3以上であることが理想的といえます。
なぜなら、2/3以上の持株比率があると、企業の経営に関する重要な事項を自己の意志で決定することが可能になるからです。
株式を分散して所有しており、社長自身の持株比率が2/3を下回っている場合には注意が必要です。この場合、社長自身が一部の決定を下すためには、ほかの株主の合意が必要となります。
株主との関係
さらに、持株比率が2/3を下回る場合、株主との信頼関係の構築が重要となります。経営者自身の持株比率だけでなく、株主との良好な関係が企業の持続的な成長と安定した経営に寄与するからです。
信頼関係を構築するための方法はいくつかあります。定期的なコミュニケーションの確保、透明性の高い情報開示、株主の利益を最優先する経営方針の維持などが考えられます。また、企業の将来計画や戦略について株主と一緒に考え、彼らの意見を尊重することも重要です。
つまり持株比率が低くても、適切な信頼関係の構築と良好なコミュニケーションによって、経営権を守りつつ企業の成功を追求することが可能といえるでしょう。
株主の種類
企業の株主というと、すべてが同じ立場にあると思われがちですが、実際には株主の持株比率により、その役割や名称は変わります。
この持株比率は、その人が企業を所有している割合を示すものです。それぞれの持株比率によって、株主の称号や役割が変わることがあります。
以下に、一部の具体的な例を紹介します。
持株比率 | 称号 | 役割 |
---|---|---|
50%以上 | 筆頭株主 | 経営を支配する力を持つ |
10%以上 | 主要株主 | 経営に大きな影響力を持つ |
3%以上 | 大株主 | 経営に一定の影響力を持つ |
1%以上 | 一般株主 | 議決権行使など、基本的な権利を持つ |
1株以上 | 小口株主 | 議決権行使など、基本的な権利を持つ |
まとめ
持ち株比率は、企業の経営権を維持し、安定した経営を行う上で重要な要素です。
経営者は、持ち株比率が経営権に与える影響を理解し、適切な持ち株比率を確保することが重要です。
また、株主との信頼関係を構築し、良好なコミュニケーションを図ることで、経営権を維持し、企業の成功を追求することができます。
6. 持ち株比率のポートフォリオへの影響
ポートフォリオの分散
持ち株比率は、投資家のポートフォリオにも影響を与えます。投資家は、複数の企業の株式を保有することで、リスクを分散することができます。
しかし、特定の企業の持ち株比率が高すぎると、その企業の業績が悪化した場合、ポートフォリオ全体の価値が大きく下がるリスクがあります。
そのため、投資家は、ポートフォリオの分散を意識し、特定の企業の持ち株比率が高くなりすぎないように注意する必要があります。
投資戦略
持ち株比率は、投資戦略にも影響を与えます。例えば、成長性の高い企業に投資する場合、高い持ち株比率にすることで、その企業の成長から大きな利益を得ることが期待できます。
一方、安定収益を得たい場合は、安定した企業に投資し、低い持ち株比率にすることで、リスクを抑制することができます。
投資家は、自身の投資目標やリスク許容度に合わせて、適切な持ち株比率を決定する必要があります。
市場の動向
持ち株比率は、市場の動向にも影響を与えます。例えば、市場が上昇傾向にある場合、投資家は、持ち株比率を高めることで、市場の上昇から大きな利益を得ることが期待できます。
一方、市場が下降傾向にある場合、投資家は、持ち株比率を下げることで、損失を抑制することができます。
投資家は、市場の動向を注視し、適切なタイミングで持ち株比率を調整する必要があります。
まとめ
持ち株比率は、投資家のポートフォリオの分散、投資戦略、市場の動向など、様々な要因に影響を与えます。
投資家は、持ち株比率がこれらの要因にどのように影響するかを理解し、適切な持ち株比率を決定する必要があります。
また、市場の動向や自身の投資目標に合わせて、持ち株比率を柔軟に調整することで、投資のリスクを管理し、収益を最大化することができます。
参考文献
・理想的な持株比率とは?おさえておきたい「比率ごとの権利 …
・持株比率とは?意味をわかりやすく解説します – やさしい株の …
・会社設立時の持ち株比率と権利について解説| 松原税理士・社会 …
・持株比率(出資比率)の計算方法と株主権利(支配権)|経営 …
・持株比率(モチカブヒリツ)とは? 意味や使い方 – コトバンク
・株式会社の「株式」の仕組みと持ち株比率について解説 | 資金 …
・持株比率と議決権比率の違い|会社経営に必要な割合について …
・持株比率とは?比率ごとに異なる株主権利と創業時に注意する …
・持ち株比率と株主権利の関係 | 経営権を守るために必要な比率 …
・個人持株比率 | 初心者でもわかりやすい金融用語集 | マネクリ …
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