指標名 | 定義 | 計算式 | 目安 |
---|---|---|---|
ROIC | 投下資本利益率 | 税引後営業利益 ÷ 投下資本 × 100 | 7%以上 |
ROE | 自己資本利益率 | 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100 | 8%以上 |
ROA | 総資産利益率 | 当期純利益 ÷ 総資産 × 100 | 5%以上 |
WACC | 加重平均資本コスト | 株主資本コスト × 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) + 負債コスト (1 – 実効税率) × 負債 ÷ (株主資本 + 負債) | ROICより低いことが望ましい |
ROI | 投資利益率 | 利益額 ÷ 投資額 × 100 | 10%〜20%以上 |
1. ROICとは何か
ROICの定義
ROICとは、Return On Invested Capitalの略称で、日本語では投下資本利益率と呼ばれます。企業が事業活動を行うために調達した資金(投下資本)に対して、どれだけ効率的に利益を生み出しているかを表す指標です。ROICが高いほど、少ない資金で多くの利益を生み出していることを意味し、企業の収益性と資本効率を表す重要な指標と言えます。
ROICは、企業が銀行や出資者などから調達した資金(投下資本)から、どれだけ利益を出したかを表す指標です。ROICの算出方法では、投下資本に対してどの程度利益を上げられたか計算でき、約7%以上で優れた企業であると評価されます。
ROICは、企業の健全性を判断できる指標であり、経営者や株主が経営状況を分析するために使います。また、事業ごとにROICを算出し、それぞれの事業を比較することで経済的付加価値のある事業を把握可能です。
従来の日本企業では、損益計算書に記載されている売上高や営業利益の数字に着目して経営をするのが一般的でした。しかし、企業へ投資する債権者から企業のROE(自己資本利益率)の向上を求められ、利益を効率的に生み出すことを表す指標が注目されるようになったのです。また、2014年8月に経済産業省より公表された「伊藤レポート」も、ROICが注目された理由の一つです。現在は、ROEよりも簡単に経営管理を行える、ROIC経営を導入する企業が増えています。
種類 | 説明 |
---|---|
有利子負債 | 銀行などから借り入れた資金 |
株主資本 | 株主からの出資 |
投下資本の定義
投下資本とは、事業で利益を獲得するために運用する資金をいい、有利子負債(銀行をはじめとして受けた融資)と株主資本(株主からの出資)の2つが含まれます。そのため、銀行に預けている資金は当てはまりません。
投下資本は、資金調達サイドに着目すると、有利子負債と株主資本の合計で算出されます。一方、資金運用サイドに着目すると、運転資本と固定資産の合計で算出されます。
運転資本は、売上債権、棚卸資産、現金の合計から仕入債務を差し引いたもので、企業が事業を営むために使用する資金を指します。固定資産は、建物や機械など、事業で長期的に使用する資産を指します。
ROICは、投下資本に対してどれだけ稼いでいるかを税引後の利益によって測りますが、ROEでは当期純利益を用います。
計算方法 | 説明 |
---|---|
資金調達サイド | 有利子負債 + 株主資本 |
資金運用サイド | 運転資本 + 固定資産 |
ROICとROE・ROAの違い
ROICは、投下資本に対してどれだけ稼いでいるかを税引後の利益によって測りますが、ROEでは当期純利益を用います。ROE(自己資本利益率または株主資本利益率)とは、株主が投資判断をする場合に用いられる指標で、当期純利益を自己資本で割って計算します。
ROEは、株主から見た収益性指標なので、分母には株主が投下した資本を用い、分子には株主が投下した資本に対するリターンである当期純利益を用います。つまり、ROICが本業のビジネスに使用している投下資本に対してどれだけ稼いだのかを見る指標であるのに対して、ROEは株主の出資分に対してどれだけ稼いだのかを見る指標です。
ROAは、貸借対照表の左側つまりすべての運用した資金が、どれだけの利益を生み出したのかを測定する指標であり、利益(通常は経常利益)を総資産で割って計算します。ROAは、分母に総資産を、分子に経常利益を置いていますので、企業が保有するすべての資産から投資効率に注目しています。一方、ROICは企業全体を判断するために見る指標ではなく特定の事業にフォーカスするものといえます。
ROICは特定の事業にフォーカスできる一方で、ROEは株主から見た収益性指標であり、ROICは客観的な指標であるという違いがあります。
指標 | 分母 | 分子 | 特徴 |
---|---|---|---|
ROIC | 投下資本 | 税引後営業利益 | 企業全体の収益性を測る |
ROE | 自己資本 | 当期純利益 | 株主視点の収益性を測る |
ROA | 総資産 | 当期純利益 | 企業全体の資産効率を測る |
まとめ
ROICは、企業が事業活動のために投下した資金に対して、どれだけ効率的に利益を生み出しているかを表す指標です。ROICは、企業の収益性と資本効率を評価するために用いられます。高いROICは、企業が資本を効果的に運用しており、投資家にとって魅力的な投資先であることを示しています。
ROICは、投下資本に対してどの程度利益を上げられたか計算でき、約7%以上で優れた企業であると評価されます。ROICは、企業の健全性を判断できる指標であり、経営者や株主が経営状況を分析するために使います。また、事業ごとにROICを算出し、それぞれの事業を比較することで経済的付加価値のある事業を把握可能です。
ROICは、ROEやROAと比較して、企業の意図による数値の操作ができないという点で優れています。ROEは純資産を変えることによって簡単に数値を操作することができてしまい、ROAは買掛金や売掛金などの影響を受ける場合があります。
ROICは、事業や部門ごとに算出することが可能です。そのため、事業や部門ごとの目標が立てやすくなります。また、従来のLPの数字を重視する評価の仕方では、事業規模の大小によって数字が大きく異なってしまいます。しかし、投下資本に対する利益を見るROICなら、規模や特性の異なる事業を公平な条件で評価することができるのです。
2. ROICの重要性
ROICが注目されるようになった背景
近年、「ROIC経営」という言葉も聞かれるように、ROICを活用する企業は増えてきています。なぜ、ROICが注目されるようになったのでしょうか。
これまでの日本は、PL(損益計算書)に記載されている数字を重視する経営が一般的でした。しかし、企業へ投資をする投資家からのROE(自己資本利益率)向上を求める動きが高まってきたことに加えて、2014年に経済産業省が発表した「伊藤レポート」で、少なくとも達成するべき指標としてROE8パーセントが明示されました。
この流れを受けて、多くの企業でROE改善が課題となった結果、利益を効率的に生み出すことを表す指標であるROICが注目されるようになったのです。
2023年3月、東京証券取引所が「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応を通じて」を発表。その中で、企業の株価と純資産の比率を示すPBR(Price Book-value Ratio)が1倍割れしている企業に対し、改善が要請されました。これによりPBRへの関心が高まるとともに、資本コストを意識したROIC経営も注目されるようになったのです。
背景 | 説明 |
---|---|
投資家のROE向上要求 | 投資家は企業の収益性を重視するようになった |
伊藤レポート | ROE8%以上を達成すべきと提言 |
PBRへの関心の高まり | PBR1倍割れ企業への改善要請 |
ROICのメリット
ROICを経営指標の一つとすることで、ROEやROAだけを用いる場合よりも企業の収益性をより正確に分析できるようになります。
ROEは特定の投資に対する利益率を示すもので、算出には自己資本を分母に用います。自社株買いなどで自己資本を減らすと、数値が変動してしまうのがデメリットです。また、ROAは総資本を用いて算出するため、取引先への交渉力が強い場合、買掛金の支払いを遅らせることで数値が変動してしまいます。
ROICは、ROEとROAの両方の課題を解決する指標です。ROICは税引後営業利益を分母に用いるため、数値が変わりません。買掛金の影響も受けないため、収益性をより正確に導き出せるのです。
ROIC経営を導入することで、資金調達をする際に債権者への説明がしやすくなるため、さらなる資金調達が期待できるというメリットもあります。ROICを用いることで、企業が調達した資本を事業へ効率的に使っていることを示しやすくなり、投資家や金融機関からの信頼や同意を得られやすくなるためです。
メリット | 説明 |
---|---|
正確な収益性分析 | ROEやROAの問題点を克服 |
資金調達の容易化 | 投資家や金融機関からの信頼獲得 |
事業別評価 | 事業ごとの収益性を可視化 |
ROICの注意点
ROICは、ROEやROAなどと比べて計算が複雑です。計算に用いられる投下資本に含まれる資本や、ROICが何を示す指標なのかなどについて、正確に理解した上で計算しなければ、ROIC経営のメリットを得ることは難しいと考えられます。
そのため、ROIC経営を導入する際は、ROICの示す意味や計算方法などを正しく理解し、現場にも浸透させる取り組みが必要です。社内研修などの学習機会を設けて、従業員を育成しましょう。
一部の産業や企業の成長フェーズによっては、ROICの数値が参考にならない可能性がある点に注意しましょう。例えば、投下資本を用いないサービス業の場合は、ROICを活用する機会はほとんどないといえます。
また、起業したばかりのタイミングや事業の成長期は多くの投資額が必要となるため、どうしてもROICの数値は低くなってしまいます。事業の衰退期も、利益の効率性よりも財務の健全性を優先して評価すべき時期であるため、ROICは有効とはいえません。
注意点 | 説明 |
---|---|
複雑な計算式 | 理解と浸透に時間がかかる |
業界やフェーズによる限界 | すべての企業や事業に適しているわけではない |
まとめ
ROICは、企業が事業活動のために投下した資金に対して、どれだけ効率的に利益を生み出しているかを表す指標です。ROICは、企業の収益性と資本効率を評価するために用いられます。高いROICは、企業が資本を効果的に運用しており、投資家にとって魅力的な投資先であることを示しています。
ROICは、投下資本に対してどの程度利益を上げられたか計算でき、約7%以上で優れた企業であると評価されます。ROICは、企業の健全性を判断できる指標であり、経営者や株主が経営状況を分析するために使います。また、事業ごとにROICを算出し、それぞれの事業を比較することで経済的付加価値のある事業を把握可能です。
ROICは、ROEやROAと比較して、企業の意図による数値の操作ができないという点で優れています。ROEは純資産を変えることによって簡単に数値を操作することができてしまい、ROAは買掛金や売掛金などの影響を受ける場合があります。
ROICは、事業や部門ごとに算出することが可能です。そのため、事業や部門ごとの目標が立てやすくなります。また、従来のLPの数字を重視する評価の仕方では、事業規模の大小によって数字が大きく異なってしまいます。しかし、投下資本に対する利益を見るROICなら、規模や特性の異なる事業を公平な条件で評価することができるのです。
3. ROICとROIの違い
ROIの定義
ROI(Return On Investment)とは「投資利益率」のことで、投資金額に対してどれだけ利益を得られたのかを表す指標です。ROIが高ければ高いほど利益率も高いということとなるため、投資家にとっても魅力的な企業となるといえるでしょう。
ROIは、特定の投資に対して投資利益率を評価するものです。投資家の利益率が把握できるため、投資家にとってROIが高い企業は魅力的といえます。
ROIは、利益と投下資本というあくまでざっくりとした利益率を表します。
ROIは、企業の個別の投資案件を評価することに向いています。
指標 | 定義 | 計算式 |
---|---|---|
ROI | 投資利益率 | 利益額 ÷ 投資額 × 100 |
ROICとROIの違い
ROICとROIは、どちらも投資の効果を評価する指標ですが、算出方法や評価する対象が異なります。
ROICは、投下資本に対する利益を評価する指標であり、特定の投資に対する評価ではなく、企業全体の資本利益率を表します。一方で、ROIは、特定の投資に対する収益性を評価する指標であり、企業全体の収益性を示すものではありません。
ROICは、企業の利益率を表すため、ROICが高い企業は、より高い収益を目指すことができます。ROIは、投資家の利益率を表すため、ROIが高い企業は、投資家にとって魅力的な企業となります。
ROICは、企業が使う経営指標として明確に定義されているもの。ROIは、一般的に利用するザックリとした投資収益率の計算に使う指標。
指標 | 評価対象 | 特徴 |
---|---|---|
ROIC | 企業全体の投下資本 | 企業全体の収益性を測る |
ROI | 特定の投資 | 投資案件の収益性を測る |
ROICとROEの違い
ROICは、投下資本に対してどれだけ稼いでいるかを税引後の利益によって測りますが、ROEでは当期純利益を用います。ROE(自己資本利益率または株主資本利益率)とは、株主が投資判断をする場合に用いられる指標で、当期純利益を自己資本で割って計算します。
ROEは、株主から見た収益性指標なので、分母には株主が投下した資本を用い、分子には株主が投下した資本に対するリターンである当期純利益を用います。つまり、ROICが本業のビジネスに使用している投下資本に対してどれだけ稼いだのかを見る指標であるのに対して、ROEは株主の出資分に対してどれだけ稼いだのかを見る指標です。
ROICは、企業全体ではなく特定の事業にフォーカスして判断し得る指標であるのに対して、ROEは、株主から見た収益性指標であるという点を挙げることができます。
ROEについては、本業のビジネスの業績とは無関係な操作が可能である点について問題が指摘されています。ROICの重要性を語っていたカルロス・ゴーンは、「主要経営指標にROICを採用する理由」について、「ROEは一部に主観的な要素が入るのに対し、ROICは非常に客観的な指標だ」と答えています。
まとめ
ROICとROIは、どちらも投資の効果を評価するための指標であり、企業や投資家にとって重要な情報となります。ROICは、企業が投下した資本に対する利益を評価する指標であり、ROIは、投資家が投資した資金に対して得られた利益を評価する指標です。
どちらも高いほど投資の効果が高いと評価されますが、評価する対象や算出方法が異なるため、単純に比較することはできません。
ROICは、企業が使う経営指標として明確に定義されているもの。ROIは、一般的に利用するザックリとした投資収益率の計算に使う指標。
ROICは、企業全体ではなく特定の事業にフォーカスして判断し得る指標であるのに対して、ROEは、株主から見た収益性指標であるという点を挙げることができます。
4. ROICの計算方法
ROICの計算式
ROICは、税引き後営業利益を投下資本で割ることで計算します。
ROIC(%)=税引き後営業利益÷投下資本(有利子負債+株主資本)×100
税引き後営業利益とは、企業が本業で得た利益のことで、儲けた営業利益から法人税などを除いて残存した利益です。
投下資本は事業で利益を獲得するために運用する資金をいい、有利子負債(銀行をはじめとして受けた融資)と株主資本(株主からの出資)の2つが含まれます。そのため、銀行に預けている資金は当てはまりません。
指標 | 計算式 |
---|---|
ROIC | 税引後営業利益 ÷ 投下資本 × 100 |
ROICの計算例
例えば、営業利益が1億円のA社は有利子負債が5000万円で株主資本が1000万円だった場合、
【1億円×(1-30.62%)】÷(1000万円+5000万円)=11.56%
となるので、A社のROICは1.156%ということになります。
一方で、営業利益が1億円のB社は有利子負債が3000万円で株主資本が500万円だった場合、
企業 | 営業利益 | 有利子負債 | 株主資本 | ROIC |
---|---|---|---|---|
A社 | 1億円 | 5,000万円 | 1,000万円 | 11.56% |
B社 | 1億円 | 3,000万円 | 500万円 | 19.82% |
ROICの目安
ROICは、業界によって差はあるものの、一つの目安として7%以上が望ましいとされています。
ROICの数値が高ければ、少ない投下資本で多くの利益を得られることを意味します。ROICの数値が高ければ高いほど、その事業のコストパフォーマンスも高いということです。
反対に、ROICの数値が低い場合は、投下資本に対して利益率が低い、または赤字であることを意味するため、その事業を持続するにはリスクがあるということを意識しなければなりません。
ROICは、企業全体だけでなく、事業や部門ごとに算出することもできます。
目安 | 説明 |
---|---|
7%以上 | 優れた企業と評価される |
まとめ
ROICは、税引き後営業利益を投下資本で割ることで計算します。
ROIC(%)=税引き後営業利益÷投下資本(有利子負債+株主資本)×100
ROICは、業界によって差はあるものの、一つの目安として7%以上が望ましいとされています。
ROICは、企業全体だけでなく、事業や部門ごとに算出することもできます。
5. ROICの活用方法
ROIC経営とは
ROIC経営とは、ROICを経営指標として用いる経営手法です。ROICとは、Return On Invested Capitalの頭文字を取った用語で、「投下資本利益率」を指します。
これは、企業が調達した投下資本(銀行などから調達した有利子負債+株主から集めた自己資本)に対して、利益をどれだけ得られたのかを表す財務指標です。
ROICを計算することで、企業の収益性を判断することができるようになります。ROICの計算方法は、下記のとおりです。
<ROICの計算式>\nROIC=税引き後営業利益÷投下資本×100
定義 | 説明 |
---|---|
ROIC経営 | ROICを経営指標として用いる経営手法 |
ROIC経営のメリット
ROICを経営指標の一つとすることで、ROEやROAだけを用いる場合よりも企業の収益性をより正確に分析できるようになります。
ROEは特定の投資に対する利益率を示すもので、算出には自己資本を分母に用います。自社株買いなどで自己資本を減らすと、数値が変動してしまうのがデメリットです。また、ROAは総資本を用いて算出するため、取引先への交渉力が強い場合、買掛金の支払いを遅らせることで数値が変動してしまいます。
ROICは、ROEとROAの両方の課題を解決する指標です。ROICは税引後営業利益を分母に用いるため、数値が変わりません。買掛金の影響も受けないため、収益性をより正確に導き出せるのです。
ROIC経営を導入することで、資金調達をする際に債権者への説明がしやすくなるため、さらなる資金調達が期待できるというメリットもあります。ROICを用いることで、企業が調達した資本を事業へ効率的に使っていることを示しやすくなり、投資家や金融機関からの信頼や同意を得られやすくなるためです。
メリット | 説明 |
---|---|
正確な収益性分析 | ROEやROAの問題点を克服 |
資金調達の容易化 | 投資家や金融機関からの信頼獲得 |
事業別評価 | 事業ごとの収益性を可視化 |
ROIC経営の注意点
ROICは、ROEやROAなどと比べて計算が複雑です。計算に用いられる投下資本に含まれる資本や、ROICが何を示す指標なのかなどについて、正確に理解した上で計算しなければ、ROIC経営のメリットを得ることは難しいと考えられます。
そのため、ROIC経営を導入する際は、ROICの示す意味や計算方法などを正しく理解し、現場にも浸透させる取り組みが必要です。社内研修などの学習機会を設けて、従業員を育成しましょう。
一部の産業や企業の成長フェーズによっては、ROICの数値が参考にならない可能性がある点に注意しましょう。例えば、投下資本を用いないサービス業の場合は、ROICを活用する機会はほとんどないといえます。
また、起業したばかりのタイミングや事業の成長期は多くの投資額が必要となるため、どうしてもROICの数値は低くなってしまいます。事業の衰退期も、利益の効率性よりも財務の健全性を優先して評価すべき時期であるため、ROICは有効とはいえません。
注意点 | 説明 |
---|---|
複雑な計算式 | 理解と浸透に時間がかかる |
業界やフェーズによる限界 | すべての企業や事業に適しているわけではない |
まとめ
ROICは、企業が事業活動のために投下した資金に対して、どれだけ効率的に利益を生み出しているかを表す指標です。ROICは、企業の収益性と資本効率を評価するために用いられます。高いROICは、企業が資本を効果的に運用しており、投資家にとって魅力的な投資先であることを示しています。
ROICは、投下資本に対してどの程度利益を上げられたか計算でき、約7%以上で優れた企業であると評価されます。ROICは、企業の健全性を判断できる指標であり、経営者や株主が経営状況を分析するために使います。また、事業ごとにROICを算出し、それぞれの事業を比較することで経済的付加価値のある事業を把握可能です。
ROICは、ROEやROAと比較して、企業の意図による数値の操作ができないという点で優れています。ROEは純資産を変えることによって簡単に数値を操作することができてしまい、ROAは買掛金や売掛金などの影響を受ける場合があります。
ROICは、事業や部門ごとに算出することが可能です。そのため、事業や部門ごとの目標が立てやすくなります。また、従来のLPの数字を重視する評価の仕方では、事業規模の大小によって数字が大きく異なってしまいます。しかし、投下資本に対する利益を見るROICなら、規模や特性の異なる事業を公平な条件で評価することができるのです。
6. ROICが企業に及ぼす影響
ROIC経営のポイント
ROIC経営を行う場合は、ROICだけでなく、ROEやWACCなどの関連指標も活用して、分析したい内容によって使い分けるようにしましょう。前述のとおり、ROICは常に有効とは限らないためです。
複数の関連指標を正しく使い分けることで、指標ごとに異なる視点から経営力を評価できるようになります。投資家や株主の視点で自社を分析することも可能です。把握したい内容に合った指標を活用できれば、ROICだけでは見えてこなかった課題が判明する可能性もあります。
特に、ROICはWACCとの併用が欠かせません。この2つの指標を活用できれば、自社の資金の効率性がより明らかになります。
解説したように、ROICが「利益率」を表す指標であるのに対して、WACCは「企業が支払わなければならないコスト」を表します。事業では利益がコストを上回ることが望まれるため、ROICとWACCを併せて活用するにあたっては、ROICの数値がWACCを超える状態を目指して事業を展開していきましょう。
ポイント | 説明 |
---|---|
複数年の評価 | 短期的な変動に左右されない |
関連指標との併用 | 多角的な視点からの分析 |
ROIC逆ツリー展開 | 現場レベルでのROIC向上 |
システム導入 | データ管理と計算効率化 |
ROIC経営の導入による効果
ROIC経営を導入することで、企業の資金調達がしやすくなったり、持続性のある成長をしていくための細かな分析が可能となったりすることが期待できます。
ROIC経営は、企業の成長にとって重要な役割を果たします。ROICを導入するメリットとして、以下の3点が挙げられます。
ROICは、事業規模の大きさに関係なく、事業の「稼ぐ力」を表す指標です。ROICを使うことによって、自社がどれだけ効率的に利益を生み出しているのか、明確に投資家や金融機関に説明することができます。
ROICが高水準であれば、さらなる資金調達に繋げることが期待できます。
効果 | 説明 |
---|---|
資金調達の容易化 | 投資家や金融機関からの信頼獲得 |
事業の成長 | 収益性の高い事業への投資促進 |
経営の効率化 | 無駄な投資の削減 |
従業員の意識改革 | ROIC向上への意識向上 |
ROIC経営の課題
ROIC経営では、注意すべき点もいくつかあります。
ここでは、ROIC経営における注意点を2つに分けて見ていきましょう。
ROICは、ROEやROAなどと比べて計算が複雑です。計算に用いられる投下資本に含まれる資本や、ROICが何を示す指標なのかなどについて、正確に理解した上で計算しなければ、ROIC経営のメリットを得ることは難しいと考えられます。
そのため、ROIC経営を導入する際は、ROICの示す意味や計算方法などを正しく理解し、現場にも浸透させる取り組みが必要です。社内研修などの学習機会を設けて、従業員を育成しましょう。
まとめ
ROICは、企業が事業活動のために投下した資金に対して、どれだけ効率的に利益を生み出しているかを表す指標です。ROICは、企業の収益性と資本効率を評価するために用いられます。高いROICは、企業が資本を効果的に運用しており、投資家にとって魅力的な投資先であることを示しています。
ROICは、投下資本に対してどの程度利益を上げられたか計算でき、約7%以上で優れた企業であると評価されます。ROICは、企業の健全性を判断できる指標であり、経営者や株主が経営状況を分析するために使います。また、事業ごとにROICを算出し、それぞれの事業を比較することで経済的付加価値のある事業を把握可能です。
ROICは、ROEやROAと比較して、企業の意図による数値の操作ができないという点で優れています。ROEは純資産を変えることによって簡単に数値を操作することができてしまい、ROAは買掛金や売掛金などの影響を受ける場合があります。
ROICは、事業や部門ごとに算出することが可能です。そのため、事業や部門ごとの目標が立てやすくなります。また、従来のLPの数字を重視する評価の仕方では、事業規模の大小によって数字が大きく異なってしまいます。しかし、投下資本に対する利益を見るROICなら、規模や特性の異なる事業を公平な条件で評価することができるのです。
参考文献
・ROIC(ロイック)とは?メリットや計算式、業界ごとの平均を分かりやすく解説 – Scale Cloud
・Roicの意味を3つのポイントで解説! 若手のうちに知っておきたいビジネス用語 – 日本経済新聞
・Roic(投下資本利益率) | ビジネス用語集 | レイヤーズ・コンサルティング
・ROICとは? メリットやROE・ROAとの違いとは? |転職ならdoda(デューダ)
・ROIC(投下資本利益率)とは|財務・会計用語集|iFinance
・ROICとは?ROIやROEなどとの違いやROIC経営のポイントを徹底解説
・Roiとroic・Roe・Roaの違いとは?投資の収益性を測る押さえておきたい指標 | 1億人の投資術
・Roicとroiとは?投資の効果を評価する重要指標を分かりやすく解説 | the Simple
・【超重要】ROIとROICの違いを徹底解説!!|5つの組み合わせから計算方法、目安も一緒に理解しよう|なん/FX手法形成人
・ROICとは?計算式は?ROE・ROAとの違いは?|freee税理士検索
・ROIC(投下資本利益率)とは?計算式や目安・導入企業事例をわかりやすく解説|すべての投資家達へ
・Roic | 投下資本利益率の計算式・業種別の目安をわかりやすく解説
・資本コスト経営~Roicの活用と最適資本構成の実現 – Kpmgジャパン
・ROICとは?メリットやROE・ROA・WACCとの違い、ROIC経営のポイントも解説
・ROICとは?わかりやすく初心者向けに解説 – 14年以上の実績 – Shearwater Japan