哺乳類:スナメリについて説明

1. スナメリの分類と生息地

1-1. スナメリの分類

スナメリ (Neophocaena phocaenoides) は、ネズミイルカ科スナメリ属に属する小型のイルカです。漢字では砂滑と表記されます。現生するスナメリ属 (Neophocaena) には3つの亜種が認められており、それぞれが異なる地域に生息しています。

Neophocaena phocaenoides phocaenoides:インド洋から太平洋にかけて広く分布する、スナメリの基準亜種です。

Neophocaena phocaenoides sunameri:中国の長江に生息する淡水性の亜種で、絶滅危惧種に指定されています。

Neophocaena phocaenoides asiaeorientalis:東シナ海、黄海、日本海に生息する亜種で、日本ではスナメリとして知られています。

スナメリはネズミイルカ科の中でも比較的早期に分岐した群と考えられています。そのため、他のネズミイルカ類とは異なる特徴を持つことも少なくありません。例えば、背びれがほとんどなく、背面正中線上の皮膚が盛り上がった隆起が尾びれ間際まで続く点が特徴的です。

1-2. スナメリの生息地

スナメリは中東からアジアの沿岸海域に広く分布し、特にインド、中国、インドネシア、韓国、日本の沿岸に多く生息しています。生息域は海岸に近い水深50m以内の浅い海域で、海底が滑らか、もしくは砂地になっている場所を好みます。

日本国内では、仙台湾から銚子市沖や東京湾、伊勢湾・三河湾、瀬戸内海、長崎県沿岸(大村湾、有明海、橘湾等)などでの生息が確認されています。大都市近郊では個体数は少ないですが、大阪湾の関西国際空港周辺では20頭以上の群れや体長1mの子供を含むスナメリが確認されており、子育て海域となっている可能性も示唆されています。

スナメリは、河口や海岸近くに留まる性質を持つため、魚網などによる混獲の被害を受けやすく、生息数は減少傾向にあります。特に、中国の長江流域では、水質汚染やダム建設などによる生息環境の悪化が深刻化しており、絶滅が危惧されています。

1-3. スナメリと環境指標

スナメリは、水質や環境変化に敏感な種であり、その生息状況は、海の健康状態を表す指標として注目されています。特に、閉鎖的な海域や沿岸域では、スナメリの生息状況は、その海域の環境保全の重要性を示す指標となります。

例えば、東京湾や周防灘、大村湾など閉鎖的海域では、スナメリの生息状況が、その海域の環境再生の目安とされています。また、大阪湾においては、南東部、関西国際空港周辺でのスナメリの生息が確認されたことで、環境再生に向けた取り組みが期待されています。

1-4. まとめ

スナメリは、日本を含む東アジアの沿岸域に生息する小型のイルカです。背びれがなく、頭部が柔軟に動くなど、他のイルカ類とは異なる特徴を持っています。生息域は浅い海域で、魚網などによる混獲や生息環境の悪化により、その数は減少しています。スナメリの生息状況は、海の健康状態を表す指標として重要であり、その保護と生息環境の保全が求められます。

参考文献

スナメリとは – 生態や形態の特徴解説 – Zukan(図鑑)

スナメリ – Wikipedia

スナメリ – ほ乳類 – 動物 – Yahoo!きっず図鑑

2. スナメリの特徴と進化

2-1. スナメリの形態学的特徴

スナメリは、ネズミイルカ科に属する小型のイルカで、その名前の通り背びれを持たないことが大きな特徴です。代わりに、背中には首の後方から肛門付近まで細長い隆起が伸びており、この隆起は「稜線」と呼ばれています。稜線には突起がいくつもついており、ざらざらとした感触をしています。この稜線は、スナメリ同士の接触時に感覚器官として機能すると考えられています。

スナメリの体型は細長く、体長は日本沿岸産では最大で192cm、平均160~170cmです。胸鰭は体に対して大きく、小回りがきく構造をしています。また、上下のあごにはそれぞれ15~20対のスペード状の歯が生えています。

スナメリの体色は銀白色のような明るい灰色で、頭部は丸みを帯びています。尾びれは三日月型をしています。これらの特徴は、スナメリが浅い海域で生活し、魚類やイカなどの頭足類、甲殻類などを捕食するのに適した体型であることを示しています。

2-2. スナメリの生態と行動

スナメリは、主に水深50m以内の浅い海域で暮らしており、河口域や沿岸域で見られることが多いです。生息域は広く、西はペルシャ湾から東は富山湾、仙台湾まで分布しています。日本における主な生息地は瀬戸内海から紀伊水道にかけてで、伊勢湾から仙台湾、北九州から富山湾、西九州(有明海、八代海)などにも生息しています。

スナメリは、通常単独か3頭程度の小集団で生活していますが、一時的に50頭以上が集まる場合もあります。静かに泳ぎ、水面行動は少ないとされています。船に近寄ることも稀で、舳先の波に乗るバウライディングもほとんどしません。クリックスと呼ばれる鳴音でエコロケーションを行い、採餌などの活動を行っています。

2-3. スナメリの進化と分類

スナメリの進化については、まだ完全には解明されていません。しかし、化石記録や遺伝子解析などから、スナメリはネズミイルカ科の中で比較的原始的なグループに属すると考えられています。

スナメリは、東アジアの亜種(N. a. sunameri)と長江の淡水域で暮らす亜種、ヨウスコウスナメリ(N. a. asiaeorientalis)が知られています。ペルシャ湾から台湾海峡付近にまで生息するニシスナメリ(N. asiaeorientalis)とは一部生息地を重複させながら別種とされています。

2-4. まとめ

スナメリは、背びれを持たない、独特の形態を持つ小型のイルカです。浅い海域に生息し、魚類やイカなどを捕食しています。スナメリは、沿岸域の開発や漁業による混獲などにより、生息数が減少しており、現在では絶滅危惧種に指定されています。スナメリの保護のためには、生息環境の保全と、混獲対策などが重要となります。

参考文献

スナメリはどんな動物?特徴、生態、生息地について解説 水族 …

スナメリ Webいきもの図鑑

環境省_せとうちネット:スナメリ

3. スナメリの生活習性と繁殖

3-1. スナメリの生息環境と分布

スナメリは、沿岸性の小型のハクジラ類で、日本近海では最も身近なクジラと言えます。しかし、彼らが生息できる場所は限られています。まず、スナメリは寒さに弱いため、暖かい海域に生息しています。ペルシャ湾からインド洋、東南アジア、中国、韓国、そして日本と、分布域は比較的広範囲に渡りますが、日本はその生息域の北限となります。また、スナメリは遠浅で海底が砂や泥質の場所を好み、岩礁地帯には生息しません。そのため、日本では有明海、大村湾、響灘から瀬戸内海、伊勢湾、三河湾、東京湾、そして九十九里浜から仙台湾にかけて、限られた地域にのみ生息しています。

形態や遺伝子の研究から、これらの海域の間にはスナメリの行き来はほとんどないことが分かっています。つまり、ある海域のスナメリが減ってしまうと、他の海域から補充されることはほとんどないということです。これは、スナメリの個体群がそれぞれの海域で孤立し、その環境に適応した独自の進化を遂げていることを示唆しています。

3-2. スナメリの食性と行動

スナメリは、エビなどの底生甲殻類から、コノシロ、イカナゴ、カタクチイワシなどの群集性魚類、イカまで、様々な餌を食べています。興味深いことに、九州での研究では、若いスナメリは底生のものを多く食べ、成長するにつれて泳ぎ回る魚を多く食べるようになると報告されています。これは、スナメリが成長とともに餌の種類や捕食方法を変化させていることを示しています。

スナメリは、イルカのように活発にジャンプしたり、大きな群れを作ることはあまりありません。また、船に近づくことも少なく、水面に背中を少しだけ出して、静かに息継ぎをして潜っていきます。そのため、水面から観察する限りは、スナメリはシャイで物静かな動物のように思えるかもしれません。しかし、実際には水族館の大水槽で泳ぐスナメリを見れば分かるように、彼らは水中では非常にしなやかに優雅に泳ぎ回っています。つまり、スナメリは水面では穏やかに見えるものの、実際には活発な動物なのです。

3-3. スナメリの繁殖

スナメリの繁殖期は秋(西九州)または初夏(瀬戸内海以東)で、おもに内湾で行われます。妊娠期間は約11ヶ月で、1回に1子を出産します。生まれた子は体長70~80cmで、母親に伴われて湾外に出ます。数ヶ月で離乳し、年齢4~7歳、体長1.5mで成熟します。

3-4. まとめ

スナメリは、日本近海で最も身近なクジラでありながら、限られた生息環境と独自の個体群を持っていることがわかりました。また、彼らは水面では穏やかな印象を与えますが、水中では活発に活動し、様々な餌を食べる雑食性であることも明らかになりました。しかし、スナメリは、埋め立てや漁業による混獲、海洋汚染などの様々な脅威にさらされており、その個体数は減少傾向にあります。彼らの生息環境を守るために、人間はスナメリの生活習性と繁殖について理解を深め、適切な保護対策を講じる必要があります。

参考文献

スナメリとは

スナメリとは? 意味や使い方 – コトバンク

牛窓ウォータートレイル【公式】 | スナメリのはなし

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