貿易統計とは?経済用語について説明

貿易統計に関する項目一覧
項目	説明
貿易統計	日本の輸出入動向を把握するための統計データ
貿易バランス	輸出額と輸入額の差額
貿易黒字	輸出額が輸入額を上回っている状態
貿易赤字	輸入額が輸出額を上回っている状態
FOB価格	輸出における運賃・保険料を含まない価格
CIF価格	輸入における運賃・保険料を含む価格
実質輸出入	輸出入金額を輸出入物価指数で実質化した値
貿易指数	貿易統計を指数化したもの
数量指数	金額指数を価格指数で除して算出した値
WTO	世界貿易機関
GATT	関税と貿易に関する一般協定
ウルグアイ・ラウンド	GATTの多角的な通商交渉
最恵国待遇原則	特定の国に有利な条件を適用する際は、他の加盟国にも同様の条件を適用すること
内国民待遇原則	輸入品に内国税や国内法令を適用する際は、同種の国内産品に適用する税や法令よりも不利にならない条件を適用すること
企業特性別貿易統計	企業の規模や業種、外資比率などの特性別に輸出入を分析する統計
多国籍企業統計	多国籍企業の海外子会社などの活動を把握する統計
電子商取引	インターネットを利用した商品やサービスの販売・購入
データ分析技術	ビッグデータ分析やAIなどの技術
国際的な連携強化	国際機関との連携を強化し、国際的な標準化を進めること
データ利活用促進	貿易統計データの利活用を促進するための取り組み

1. 貿易統計とは

貿易統計の概要

貿易統計とは、財務省が毎月発表する、日本の輸出入動向を把握するための統計データです。品目別、地域（国）別、貿易指数などの詳細な情報が公開され、経済分析に役立てられています。この統計は、税関を通過する際の輸出入申告書などを基に作成されます。ただし、少額貨物（1件あたり20万円以下のもの）、見本品、密輸入品、贈与品、寄贈品、旅客用品などは除外されます。計上価格は、輸出では運賃・保険料を含まないFOB価格、輸入では運賃・保険料を含むCIF価格で計上されます。

貿易統計は、速報性の観点から優れており、月分の速報値を主要品目・主要国別で翌月下旬に公表しています。全国分の輸出入総額は、上旬分（当月下旬）、上中旬分（翌月上旬）を公表しています。しかし、営業日数などの影響で統計に振れが生じ、月次の数値と乖離するケースがある点には注意が必要です。

貿易統計は、経済分析において重要な役割を果たします。例えば、輸出入金額を輸出入物価指数で実質化した実質輸出入は、輸出入動向を把握するために用いられます。また、貿易統計を指数化（平成12年＝100）した貿易指数は、金額指数、価格指数、数量指数などに分類され、詳細な分析を可能にします。特に、金額指数を価格指数で除して算出した数量指数は、為替相場や原油価格などの価格変動の影響を除いた実勢としての輸出入動向を判断する上で有用な指標となります。

貿易統計は、経済状況を把握する上で重要な指標であり、企業や投資家にとって貴重な情報源となります。貿易統計データは、政府の経済政策や金融政策の策定にも役立てられています。

貿易統計の計上価格
価格	説明
FOB価格	輸出における運賃・保険料を含まない価格
CIF価格	輸入における運賃・保険料を含む価格

貿易統計の入手方法

貿易統計データは、財務省のホームページから入手できます。データは、品目コードで分類されており、最新の品目コード表を参照する必要があります。品目コードは頻繁に改定されるため、最新のものを確認することが重要です。

貿易統計検索ページから、「1. 普通貿易統計について調べる」を選択し、「全国の統計品目情報」の次にある「全国の概況品情報」を見ます。

さまざまなデータが入手できますが、「B-4 概況品別推移表」を選びます。品目の指定以外は簡単に設定できます。「概況品の指定」に概況品コードを入力します。参照ボタンでメニューから品目を選ぶこともできます。

検索ボタンを押すと、データが表示されます。これをCSVファイルでダウンロードすることができます。金額と数量について、月次の単月と年初からの累積データが出力されます。

貿易統計の入手方法
手順	説明
財務省HPへアクセス	貿易統計検索ページへ移動
普通貿易統計を選択	全国の概況品情報を確認
B-4 概況品別推移表を選択	品目コードを入力
検索ボタンを押す	データが表示され、CSVファイルでダウンロード可能

貿易統計の利用例

貿易統計は、様々な用途で利用されています。例えば、企業は、自社の輸出入動向を把握し、今後の事業戦略を策定するために貿易統計データを利用します。投資家は、貿易統計データから経済状況を分析し、投資判断を行います。政府は、貿易統計データに基づいて経済政策を策定します。

貿易統計の利用例
主体	利用目的
企業	輸出入動向の把握、事業戦略の策定
投資家	経済状況の分析、投資判断
政府	経済政策の策定

まとめ

貿易統計は、日本の輸出入動向を把握するための重要な統計データです。品目別、地域別、貿易指数などの詳細な情報が公開され、経済分析に役立てられています。

貿易統計は、速報性が高く、毎月発表されるため、最新の経済状況を把握することができます。ただし、統計の振れやデータの解釈には注意が必要です。

貿易統計は、企業や投資家、政府など様々な主体にとって重要な情報源となります。貿易統計データは、経済政策の策定や事業戦略の立案、投資判断などに役立てられています。

貿易統計は、日本の経済活動を理解する上で欠かせない指標であり、今後もその重要性はますます高まっていくと考えられます。

2. 貿易バランスとは

貿易収支の定義

貿易収支とは、輸出額と輸入額の差額のことです。輸出額が輸入額よりも多ければ貿易黒字、輸出額が輸入額よりも少なければ貿易赤字となります。

貿易収支は、財務省関税局が発表する「貿易統計」に基づいたものと、日本銀行と財務省が共同で発表する「国際収支統計」に基づいたものの2種類があります。

前者は関税境界を通過した貨物を計上範囲に、後者は居住者と非居住者の間で所有権が移転した財貨を計上範囲としており、両者の数値には差異があります。

一般的に、FX市場で貿易収支が取り上げられる場合は、国際収支統計に基づいた貿易収支です。

貿易収支の種類
種類	説明
貿易統計に基づく貿易収支	関税境界を通過した貨物を計上
国際収支統計に基づく貿易収支	居住者と非居住者の間で所有権が移転した財貨を計上

貿易収支の推移

日本の貿易収支は、2010年までは貿易黒字が続いていましたが、2011年の東日本大震災の影響を受けて貿易赤字に転じ、しばらく貿易赤字が続きました。

その後、2016年～2021年には貿易黒字に戻りましたが、2022年からは再び貿易赤字になっています。

貿易赤字は、輸入額が輸出額を上回っている状態を指し、国内産業が海外市場で競争力を失っていることを示唆しています。

一方、貿易黒字は、輸出額が輸入額を上回っている状態を指し、国内産業が海外市場で競争力を維持し、利益を上げていることを示します。

日本の貿易収支の推移
年	貿易収支
2010年	黒字
2011年	赤字
2016年～2021年	黒字
2022年～現在	赤字

貿易収支に影響を与える要因

貿易収支は、様々な要因によって影響を受けます。主な要因としては、以下のものが挙げられます。

・エネルギー資源の輸入：日本はエネルギー資源の多くを輸入に頼っており、エネルギー価格の上昇は貿易赤字拡大に繋がります。

・為替レートの変動：円安になると輸出企業の競争力が強まり、貿易黒字に繋がりやすくなります。逆に円高になると輸出企業の競争力が弱まり、貿易赤字に繋がりやすくなります。

・国内産業の競争力：国内産業の競争力が低下すると、輸出が減少して貿易赤字に繋がりやすくなります。

貿易収支に影響を与える要因
要因	説明
エネルギー資源の輸入	エネルギー価格の上昇は貿易赤字拡大に繋がる
為替レートの変動	円安は輸出企業の競争力を強化、円高は輸出企業の競争力を弱める
国内産業の競争力	国内産業の競争力低下は輸出減少に繋がる

まとめ

貿易収支は、輸出額と輸入額の差額であり、日本の経済状況を把握する上で重要な指標です。

貿易収支は、エネルギー資源の輸入、為替レートの変動、国内産業の競争力など、様々な要因によって影響を受けます。

近年、日本の貿易収支は、エネルギー資源の輸入増加や円高などの影響で赤字傾向にあります。

貿易収支の改善には、エネルギー資源の効率的な利用、国内産業の競争力強化、円安誘導などの対策が必要となります。

3. 貿易統計の重要性

経済状況の把握

貿易統計は、日本の経済状況を把握する上で非常に重要な指標です。貿易統計から、輸出入の動向、貿易相手国、輸出品目、輸入品目などの情報を得ることができます。

貿易統計は、企業の経営戦略や投資家の投資判断、政府の経済政策の策定などに役立てられています。

例えば、貿易統計から、特定の品目の輸出入が急増していることが分かれば、その品目の需要が拡大している可能性が考えられます。

また、貿易統計から、特定の国との貿易収支が赤字になっていることが分かれば、その国との貿易関係を見直す必要があるかもしれません。

貿易統計から得られる情報
情報	説明
輸出入の動向	輸出入額の増減、推移
貿易相手国	主要な貿易相手国
輸出品目	主要な輸出品目
輸入品目	主要な輸入品目

国際競争力の評価

貿易統計は、日本の国際競争力を評価する上でも重要な指標です。輸出額が輸入額を上回れば、日本の製品やサービスが海外で高く評価されていることを示します。

逆に、輸出額が輸入額を下回れば、日本の製品やサービスの国際競争力が低下している可能性を示唆します。

貿易統計と国際競争力
状況	説明
輸出額＞輸入額	日本の製品やサービスが海外で高く評価されている
輸出額＜輸入額	日本の製品やサービスの国際競争力が低下している可能性

政策立案への貢献

貿易統計は、政府の経済政策の策定にも役立てられています。例えば、貿易統計から、特定の品目の輸出入が急増していることが分かれば、その品目の生産を促進する政策を検討する必要があるかもしれません。

また、貿易統計から、特定の国との貿易収支が赤字になっていることが分かれば、その国との貿易関係を見直す政策を検討する必要があるかもしれません。

貿易統計と政策立案
状況	政策検討
特定の品目の輸出入が急増	その品目の生産を促進する政策
特定の国との貿易収支が赤字	その国との貿易関係を見直す政策

まとめ

貿易統計は、日本の経済状況を把握し、国際競争力を評価し、政府の経済政策の策定に貢献する重要な指標です。

貿易統計は、企業や投資家、政府など様々な主体にとって貴重な情報源となります。

貿易統計は、日本の経済活動を理解する上で欠かせない指標であり、今後もその重要性はますます高まっていくと考えられます。

4. WTOと貿易統計

WTOの概要

WTO（世界貿易機関）とは、1995年に設立された国際機関で、世界各国の貿易を円滑に進めるためのルールを定め、貿易障壁の削減・撤廃を目指しています。

WTOの前身は、1948年に発効したGATT（関税と貿易に関する一般協定）です。GATTは、第2次世界大戦後の保護主義的なブロック経済に対する反省から、自由貿易を実現するために設立されました。

WTOは、GATTのウルグアイ・ラウンド交渉で合意された協定の実施を監視し、貿易に関する交渉の場を提供しています。

WTOの主な役割は、貿易ルールを定め、貿易障壁を削減・撤廃すること、貿易紛争を解決すること、貿易に関する交渉の場を提供することです。

WTOの主な役割
役割	説明
貿易ルールの制定	貿易障壁の削減・撤廃
貿易紛争の解決	加盟国間の貿易紛争を公平に解決
貿易に関する交渉の場提供	国際貿易システムの改革を推進

WTO協定の主な内容

WTO協定は、WTO設立協定とその附属書に含まれている協定の集合体です。

WTO協定の主な内容は、以下のとおりです。

・最恵国待遇原則：特定の国に、低い関税などの貿易に有利な条件を適用するときは、他のWTO加盟国にも同様の条件を適用すること。

・内国民待遇原則：輸入品に内国税や国内法令を適用するときは、同種の国内産品に適用する税や法令よりも不利にならない条件を適用すること。

WTO協定の主な内容
内容	説明
最恵国待遇原則	特定の国に有利な条件を適用する際は、他の加盟国にも同様の条件を適用すること
内国民待遇原則	輸入品に内国税や国内法令を適用する際は、同種の国内産品に適用する税や法令よりも不利にならない条件を適用すること

WTOの紛争解決手続

WTOは、加盟国間の貿易紛争を解決するための紛争解決手続を設けています。

紛争解決手続は、二審制を採用しており、まず当事者間で協議を行い、解決しない場合はWTOに申立てを行います。

WTOは、紛争解決手続を通じて、加盟国間の貿易紛争を公平に解決し、国際貿易秩序の維持に貢献しています。

WTOの紛争解決手続
段階	説明
当事者間協議	まず当事者間で協議を行う
WTOへの申立て	協議が解決しない場合はWTOに申立てを行う
小委員会による1審	WTOは小委員会を設置し、1審を行う
上級委員会による最終審	1審で解決しない場合は、上級委員会で最終審を行う

まとめ

WTOは、世界各国の貿易を円滑に進めるためのルールを定め、貿易障壁の削減・撤廃を目指しています。

WTOは、貿易紛争を解決するための紛争解決手続を設けており、国際貿易秩序の維持に貢献しています。

WTOは、貿易に関する交渉の場を提供し、国際貿易システムの改革を推進しています。

WTOは、国際貿易のルール作りにおいて重要な役割を果たしており、今後もその役割はますます重要になっていくと考えられます。

5. 貿易統計の課題

企業特性別貿易統計の整備

企業特性別貿易統計とは、企業の規模や業種、外資比率などの特性別に輸出入を分析する統計です。

この統計は、貿易の現状をより深く理解し、政策立案に役立てるために重要です。

しかし、日本では、企業特性別貿易統計は十分に整備されていません。

企業特性別貿易統計の整備には、企業に関する情報と貿易に関する情報の連携が必要となります。

企業特性別貿易統計の課題
課題	説明
企業情報の不足	企業に関する情報と貿易に関する情報の連携が不足
データ収集の困難さ	企業特性別貿易統計に必要なデータの収集が難しい
プライバシー保護	企業情報のプライバシー保護の観点からの課題

多国籍企業統計の整備

多国籍企業統計は、多国籍企業の海外子会社などの活動を把握する統計です。

この統計は、グローバルな経済活動を理解する上で重要です。

しかし、日本では、多国籍企業統計は十分に整備されていません。

多国籍企業統計の整備には、海外子会社などの情報収集と分析が必要となります。

多国籍企業統計の課題
課題	説明
海外子会社情報の不足	海外子会社などの情報収集が難しい
データ分析の複雑さ	多国籍企業の活動を把握するためのデータ分析が複雑
国際的な標準化	国際的な標準化が進んでいない

電子商取引に関する統計の整備

電子商取引は、近年急速に拡大しており、貿易統計においても電子商取引に関するデータを整備することが重要になっています。

しかし、日本では、電子商取引に関する統計は十分に整備されていません。

電子商取引に関する統計の整備には、電子商取引の取引データの収集と分析が必要となります。

電子商取引に関する統計の課題
課題	説明
取引データの収集	電子商取引の取引データの収集が難しい
データ分析の複雑さ	電子商取引のデータを分析するための技術が不足
プライバシー保護	個人情報のプライバシー保護の観点からの課題

まとめ

貿易統計の整備には、企業特性別貿易統計、多国籍企業統計、電子商取引に関する統計など、様々な課題があります。

これらの課題を克服し、より詳細で正確な貿易統計を整備することで、日本の経済状況をより深く理解し、政策立案に役立てることができます。

貿易統計の整備には、企業や政府の協力が必要となります。

6. 貿易統計の将来展望

データ分析技術の活用

近年、データ分析技術が発展しており、貿易統計データの分析方法も進化しています。

ビッグデータ分析やAIなどの技術を活用することで、貿易統計データからより多くの情報を得ることが可能になります。

データ分析技術を活用することで、貿易統計データから、新たな経済指標や予測モデルを開発することができます。

データ分析技術の活用
技術	説明
ビッグデータ分析	大量のデータを分析し、新たな知見を得る
AI	AIを活用することで、より精度の高い分析が可能になる
機械学習	機械学習を用いて、貿易統計データから予測モデルを開発する

国際的な連携強化

貿易統計は、国際的な比較可能性を高めることが重要です。

そのため、国際機関との連携を強化し、国際的な標準化を進める必要があります。

国際的な連携強化により、貿易統計データの信頼性と透明性を向上させることができます。

国際的な連携強化
連携	説明
国際機関との連携	国際機関との連携を強化し、国際的な標準化を進める
データ共有	国際機関間でデータ共有を進める
共同研究	国際機関間で共同研究を行う

データ利活用促進

貿易統計データは、経済分析や政策立案だけでなく、企業の事業戦略や投資家の投資判断など、様々な用途で活用することができます。

そのため、貿易統計データの利活用を促進するための取り組みが必要です。

貿易統計データの利活用を促進することで、日本の経済活性化に貢献することができます。

データ利活用促進
取り組み	説明
データ公開	貿易統計データの公開範囲を拡大する
データ分析ツールの提供	データ分析ツールを提供することで、データ利活用を促進する
データ活用事例の公開	データ活用事例を公開することで、データ利活用の促進を図る