需給ギャップとは?経済用語について説明

需給ギャップのまとめ
項目	内容
定義	経済全体の総需要と供給力の差
計算方法	（実際のGDP – 潜在GDP）÷ 潜在GDP
指標	経済の活動水準、物価変動圧力
影響	インフレギャップ（需要＞供給）、デフレギャップ（供給＞需要）
対策	財政政策、金融政策、構造政策
予測	世界経済、国内政策、技術革新などの要因によって変化する可能性がある

1. 需給ギャップの定義と見方

需給ギャップとは何か？

需給ギャップとは、経済全体の総需要と供給力の差を指します。総需要は実際の国内総生産（GDP）と同じであり、供給力は国内の労働力や製造設備などから推計されます。需給ギャップがマイナスという場合、需要よりも供給力が多い状態をさし、企業の設備・人員が過剰で、物余りの状態になっていることを示します。GDPギャップ。生産ギャップ。

需給ギャップは、経済の活動水準を表し、物価変動圧力の目安となる指標です。需給ギャップがプラスのときは需要が供給を上回り、物価の押し上げ圧力になる。マイナスのときは需要が不足し、物価の下げ圧力になる。景気の良しあしも表します。

内閣府によると、日本の2020年7～9月期の需給ギャップはマイナス6.2%だった。マイナスは4四半期連続。金額にすると年換算で34兆円の需要不足で、4～6月期の57兆円より縮んだもののなお大きい。4～6月期は1980年以降で最大のマイナス幅だった。

需要が足りないと、企業は従業員や設備が過剰となり、解雇や投資の先送りに動く。それがさらに景気を冷え込ませて持続的なデフレに陥るという悪循環につながる。逆に経済が過熱して需要超過の幅が広がると政府・中央銀行は財政引き締めや金融引き締めで需要を冷まし、景気の振幅を抑えるのが一般的なマクロ経済政策だ。

需給ギャップの状況
時期	需給ギャップ
1980年代後半～1990年代前半	プラス（需要＞供給）
2009年頃	マイナス（供給＞需要）
2016年頃～	プラス（需要＞供給）
2020年以降	マイナス（供給＞需要）

需給ギャップの計算方法

需給ギャップは、実際のGDPと潜在的なGDPの差を潜在的なGDPで割った値です。GDPギャップを$GAP$、実際のGDPを$Y$、潜在的なGDPを$Y^*$とすると、次式のように定義されます。\n\n$\displaystyle GAP = \dfrac{Y \; – \; Y^*}{Y^*} \times 100$

ここで、潜在GDPとは、本来の日本経済が有している供給能力に基づいたGDPです。言い換えれば、経済においては、資本や労働を用いて、生産を行うことになるわけですが、資本や労働を100%用いた場合のGDPが潜在GDPになります。

このとき、上記のGDPギャップの分子で、$Y \; – \; Y^*$がプラスならば、残業や無理に設備などを動かして、供給能力以上のGDPを生み出している状態で、総需要のほうが総供給よりも多いことを示しています。

逆に、$Y \; – \; Y^*$がマイナスならば、供給能力がほうが大きく、人や設備が余っている状態で、総供給のほうが総需要よりも多いことを示すことになります。つまり、\n\nGDPギャップ　> 0　⇒　総需要　> 総供給\nGDPギャップ　< 0　⇒　総需要　< 総供給\n\nということを表しています。（この意味から、「需給ギャップ」と言われたりもしているわけです）

需給ギャップの計算式
項目	説明
GAP	需給ギャップ
Y	実際のGDP
Y*	潜在GDP

需給ギャップを知る方法

日本銀行では四半期に1回、GDPギャップ（需給ギャップ）を公表しており、日本銀行のサイトを見れば、すぐにGDPギャップを知ることができます。

非常に簡単です。それでは、実際のGDPギャップを見てみましょう。下のようなグラフで、GDPギャップを見ることができます（エクセルのデータもあります）。

1980年代後半から1990年代前半までは、バブル経済で大きくプラスになっており、需要のほうが大きく、供給不足になっていることが分かります。その後、上下はありますが、リーマンショップで2009年あたりで大きな落ち込み、需要不足が生じ、2015年あたりまで続いています。アベノミクスのおかげか分かりませんが、2016年頃から、プラスになり、需要のほうが大きくなっています。ちょうど、人手不足などが言われたりしていたのを覚えている人も多いでしょう。ただ、コロナ禍で2020年には一気に落ち込み、需要不足が生じ、現在に至っています。

上記の日本銀行のデータを見れば、すぐにGDPギャップを知ることができ、便利です。ただあくまでも、日本銀行が推計した1つのデータであるという点に注意が必要です。GDPギャップを推計するには、いくつかの方法があり、取り扱うデータによっても、数字は変わってきます。

まとめ

需給ギャップは、経済全体の需要と供給のバランスを表す重要な指標です。需給ギャップがプラスであれば需要が供給を上回り、マイナスであれば供給が需要を上回っていることを示します。

需給ギャップは、日本銀行が四半期ごとに公表しており、経済状況を把握する上で役立ちます。ただし、需給ギャップは推計値であり、推計方法によって数値が異なる可能性があることに注意が必要です。

需給ギャップは、経済政策の策定や経済状況の分析に役立ちます。例えば、需給ギャップがマイナスで需要不足の状態であれば、政府は財政政策や金融政策によって需要を喚起する必要があります。

需給ギャップは、経済の動向を理解する上で重要な指標の一つですが、あくまでも推計値であり、他の経済指標と合わせて総合的に判断する必要があります。

2. 需給ギャップが引き起こす影響とは？

インフレギャップ

需給ギャップがプラスの状態を「インフレギャップ」と呼びます。インフレギャップは、需要が供給を上回っている状態を示し、経済が過熱している状態を表します。

インフレギャップが拡大すると、物価が上昇し、企業は価格転嫁を行いやすくなります。また、賃金上昇圧力も高まり、インフレが加速する可能性があります。

インフレギャップは、経済にとって必ずしも悪いものではありません。しかし、インフレが加速すると、家計や企業の購買意欲が冷え込み、経済成長が鈍化する可能性があります。

そのため、政府や中央銀行は、インフレギャップを抑制するために、財政政策や金融政策によって需要を抑制する必要があります。

インフレギャップの特徴
項目	説明
需要	供給を上回る
物価	上昇傾向
経済	過熱状態
対策	需要抑制

デフレギャップ

需給ギャップがマイナスの状態を「デフレギャップ」と呼びます。デフレギャップは、供給が需要を上回っている状態を示し、経済が不況状態にあることを表します。

デフレギャップが拡大すると、企業は売上が減少するため、価格を下げたり、生産を縮小したりする傾向があります。また、雇用も減少する可能性があります。

デフレギャップは、経済にとって深刻な問題です。デフレが続くと、企業の投資意欲が減退し、経済成長が停滞する可能性があります。

そのため、政府や中央銀行は、デフレギャップを解消するために、財政政策や金融政策によって需要を喚起する必要があります。

デフレギャップの特徴
項目	説明
需要	供給を下回る
物価	下落傾向
経済	不況状態
対策	需要喚起

需給ギャップと物価変動

需給ギャップは、物価変動と密接な関係があります。インフレギャップでは、需要が供給を上回っているため、物価が上昇する傾向があります。

逆に、デフレギャップでは、供給が需要を上回っているため、物価が下落する傾向があります。

需給ギャップが大きいほど、物価変動が大きくなる傾向があります。そのため、需給ギャップを適切に管理することが、物価安定のために重要です。

政府や中央銀行は、物価安定を目標に、需給ギャップを調整するための政策を実施しています。

まとめ

需給ギャップは、経済の需要と供給のバランスを表す指標であり、インフレギャップとデフレギャップの2つの状態があります。

インフレギャップは、需要が供給を上回っている状態であり、物価上昇や経済過熱につながる可能性があります。デフレギャップは、供給が需要を上回っている状態であり、物価下落や経済不況につながる可能性があります。

需給ギャップは、経済政策の目標達成に重要な役割を果たします。政府や中央銀行は、需給ギャップを適切に管理することで、物価安定や経済成長を促進することができます。

需給ギャップは、経済状況を把握する上で重要な指標の一つであり、他の経済指標と合わせて総合的に判断する必要があります。

3. 需給ギャップの具体例と対策

バブル経済

1980年代後半から1990年代前半のバブル経済では、需給ギャップが大きくプラスになっていました。これは、需要が供給を大きく上回っていたことを示しており、経済が過熱していた状態でした。

バブル経済では、不動産価格や株価が急騰し、投資熱が高まりました。しかし、バブル崩壊後は、需給ギャップがマイナスに転じ、デフレ不況に陥りました。

バブル経済は、需給ギャップが拡大し、経済が過熱した状態であることを示す典型的な例です。バブル経済は、短期的に経済成長を促進する効果がありますが、長期的に見ると、経済の安定性を損なう可能性があります。

バブル経済を抑制するためには、政府や中央銀行は、金融政策や財政政策によって需要を抑制する必要があります。

バブル経済の特徴
項目	説明
需給ギャップ	プラス（需要＞供給）
経済状況	過熱状態
対策	需要抑制

リーマンショック

2008年のリーマンショックは、世界経済に大きな影響を与え、日本経済も深刻な不況に陥りました。リーマンショック後、日本の需給ギャップは大きくマイナスに転じ、デフレ不況が深刻化しました。

リーマンショックは、金融市場の混乱や世界的な需要の減少によって発生しました。日本経済は、輸出や投資の減少によって大きな打撃を受けました。

リーマンショック後のデフレ不況を克服するためには、政府や中央銀行は、財政政策や金融政策によって需要を喚起する必要があります。

リーマンショックは、需給ギャップがマイナスに転じ、経済が不況に陥る可能性を示す典型的な例です。リーマンショックのような経済危機を回避するためには、金融システムの安定化や国際的な協力が重要です。

リーマンショックの特徴
項目	説明
需給ギャップ	マイナス（供給＞需要）
経済状況	不況状態
対策	需要喚起

コロナ禍

2020年以降のコロナ禍は、世界経済に大きな影響を与え、日本の需給ギャップも大きくマイナスに転じました。コロナ禍は、経済活動の制限や消費の減少によって発生しました。

コロナ禍は、需給ギャップがマイナスに転じ、経済が不況に陥る可能性を示す典型的な例です。コロナ禍のような経済危機を回避するためには、政府や中央銀行は、財政政策や金融政策によって需要を喚起する必要があります。

コロナ禍は、経済活動の制限や消費の減少によって発生しました。日本経済は、観光業やサービス業などの需要が大きく減少しました。

コロナ禍後の経済回復のためには、政府や中央銀行は、財政政策や金融政策によって需要を喚起する必要があります。また、ワクチン接種や感染対策の強化によって、経済活動を正常化させる必要があります。

コロナ禍の特徴
項目	説明
需給ギャップ	マイナス（供給＞需要）
経済状況	不況状態
対策	需要喚起

まとめ

需給ギャップは、経済状況によって変化し、インフレギャップやデフレギャップを引き起こす可能性があります。

バブル経済やリーマンショック、コロナ禍など、歴史的な経済危機は、需給ギャップが大きく変化した結果として発生しました。

政府や中央銀行は、需給ギャップを適切に管理することで、経済の安定化を図る必要があります。

4. 需給ギャップと経済成長の関係性

需給ギャップと経済成長の関係

需給ギャップは、経済成長と密接な関係があります。インフレギャップは、需要が供給を上回っている状態であり、経済が過熱している状態を示します。

インフレギャップが拡大すると、企業は売上が増加するため、投資や雇用を増やす傾向があります。そのため、経済成長が加速する可能性があります。

しかし、インフレギャップが拡大しすぎると、物価が急上昇し、家計や企業の購買意欲が冷え込み、経済成長が鈍化する可能性があります。

そのため、政府や中央銀行は、インフレギャップを適切に管理することで、持続的な経済成長を促進する必要があります。

インフレギャップと経済成長
項目	説明
需給ギャップ	プラス（需要＞供給）
経済成長	加速する可能性
リスク	インフレ加速による成長鈍化
対策	需要抑制

デフレギャップと経済成長の関係

デフレギャップは、供給が需要を上回っている状態であり、経済が不況状態にあることを示します。デフレギャップが拡大すると、企業は売上が減少するため、投資や雇用を縮小する傾向があります。

そのため、経済成長が停滞する可能性があります。デフレギャップは、経済にとって深刻な問題です。デフレが続くと、企業の投資意欲が減退し、経済成長が停滞する可能性があります。

そのため、政府や中央銀行は、デフレギャップを解消するために、財政政策や金融政策によって需要を喚起する必要があります。

デフレギャップは、経済成長を阻害する要因の一つです。政府や中央銀行は、デフレギャップを解消することで、経済成長を促進する必要があります。

デフレギャップと経済成長
項目	説明
需給ギャップ	マイナス（供給＞需要）
経済成長	停滞する可能性
対策	需要喚起

需給ギャップと潜在成長率

潜在成長率とは、経済が持続的に成長できる潜在的な能力を表す指標です。潜在成長率は、労働力や生産性などの要素によって決まります。

需給ギャップは、潜在成長率と密接な関係があります。インフレギャップは、経済が潜在成長率を上回るペースで成長している状態を示します。

デフレギャップは、経済が潜在成長率を下回るペースで成長している状態を示します。

政府や中央銀行は、潜在成長率を維持または向上させるために、需給ギャップを適切に管理する必要があります。

潜在成長率と需給ギャップ
項目	説明
潜在成長率	経済が持続的に成長できる能力
インフレギャップ	潜在成長率を上回る成長
デフレギャップ	潜在成長率を下回る成長
対策	潜在成長率維持・向上

まとめ

需給ギャップは、経済成長と密接な関係があります。インフレギャップは、経済成長を加速させる可能性がありますが、インフレが加速すると経済成長が鈍化する可能性もあります。

潜在成長率は、経済が持続的に成長できる潜在的な能力を表す指標であり、需給ギャップと密接な関係があります。

政府や中央銀行は、潜在成長率を維持または向上させるために、需給ギャップを適切に管理する必要があります。

5. 需給ギャップの解消方法とは？

財政政策

財政政策とは、政府が経済活動を調整するために、歳出や税収を調整する政策です。財政政策には、需要を喚起するための拡張財政政策と、需要を抑制するための緊縮財政政策があります。

デフレギャップを解消するためには、政府は拡張財政政策を実施する必要があります。拡張財政政策には、公共事業の拡大や減税などが挙げられます。

インフレギャップを抑制するためには、政府は緊縮財政政策を実施する必要があります。緊縮財政政策には、公共事業の縮小や増税などが挙げられます。

財政政策は、経済状況に応じて適切に実施する必要があります。財政政策の効果は、時間差で現れるため、適切なタイミングで政策を実施することが重要です。

財政政策の種類
政策	説明
拡張財政政策	需要喚起（公共事業拡大、減税）
緊縮財政政策	需要抑制（公共事業縮小、増税）

金融政策

金融政策とは、中央銀行が経済活動を調整するために、金利や通貨供給量を調整する政策です。金融政策には、需要を喚起するための金融緩和政策と、需要を抑制するための金融引き締め政策があります。

デフレギャップを解消するためには、中央銀行は金融緩和政策を実施する必要があります。金融緩和政策には、政策金利の引き下げや国債の買い入れなどが挙げられます。

インフレギャップを抑制するためには、中央銀行は金融引き締め政策を実施する必要があります。金融引き締め政策には、政策金利の引き上げや国債の売却などが挙げられます。

金融政策は、経済状況に応じて適切に実施する必要があります。金融政策の効果は、時間差で現れるため、適切なタイミングで政策を実施することが重要です。

金融政策の種類
政策	説明
金融緩和政策	需要喚起（政策金利引き下げ、国債買い入れ）
金融引き締め政策	需要抑制（政策金利引き上げ、国債売却）

構造政策

構造政策とは、経済の潜在能力を高めるために、制度や構造を改革する政策です。構造政策には、労働市場の活性化、教育投資の促進、規制改革などが挙げられます。

構造政策は、長期的な経済成長を促進するために重要です。構造政策によって、経済の潜在成長率を高めることができます。

構造政策は、財政政策や金融政策と比べて、効果が現れるまでに時間がかかる傾向があります。しかし、構造政策は、経済の基礎体力を強化し、持続的な経済成長を実現するために不可欠です。

政府は、構造政策を積極的に推進することで、経済の潜在成長率を高め、需給ギャップを解消する必要があります。

構造政策の種類
政策	説明
労働市場活性化	雇用機会拡大、労働移動促進
教育投資促進	人材育成、スキル向上
規制改革	新規参入促進、競争力強化

まとめ

需給ギャップを解消するためには、財政政策、金融政策、構造政策の3つの政策を組み合わせることが重要です。

財政政策は、需要を喚起または抑制するために、歳出や税収を調整します。金融政策は、金利や通貨供給量を調整することで、需要を喚起または抑制します。

構造政策は、経済の潜在能力を高めるために、制度や構造を改革します。

政府は、これらの政策を適切に組み合わせることで、需給ギャップを解消し、経済の安定化と成長を促進する必要があります。

6. 今後の経済動向と需給ギャップの予測

今後の経済動向

今後の経済動向は、世界経済の動向、国内の政策動向、技術革新など、様々な要因によって左右されます。

世界経済は、ロシアによるウクライナ侵攻やサプライチェーンの混乱など、不確実な要素が多く、今後の動向は不透明です。

国内の政策動向としては、政府は、財政政策や金融政策によって経済を支援していく方針です。

技術革新は、経済成長の潜在力を高める可能性がありますが、一方で、雇用への影響など、新たな課題も生み出す可能性があります。

今後の経済動向の要因
要因	説明
世界経済	ロシアによるウクライナ侵攻、サプライチェーン混乱
国内政策	財政政策、金融政策による経済支援
技術革新	経済成長の潜在力向上、雇用への影響

需給ギャップの予測

今後の需給ギャップは、経済動向によって変化する可能性があります。世界経済が回復すれば、日本の需給ギャップも改善する可能性があります。

しかし、世界経済の不確実性や国内の政策動向によっては、需給ギャップが拡大する可能性もあります。

政府や中央銀行は、経済動向を注視し、需給ギャップを適切に管理するための政策を検討していく必要があります。

需給ギャップは、経済の安定と成長に重要な影響を与えるため、今後の動向を注視していく必要があります。

需給ギャップの予測
状況	説明
世界経済回復	需給ギャップ改善の可能性
世界経済不確実性	需給ギャップ拡大の可能性
対策	経済動向を注視し、適切な政策を検討