項目 | メリット | デメリット |
---|---|---|
迅速な資金調達 | 取締役会決議だけで新株発行が可能 | 経営権の希薄化 |
財務体質の強化 | 自己資本比率の向上 | 株価の変動 |
経営の柔軟性 | 市場環境の変化に迅速に対応可能 | 税金負担の増加 |
種類株式 | 議決権や配当などの権利内容を柔軟に設定可能 | 複雑な仕組み |
新株予約権付株式 | 将来の株価上昇の期待を与える | 複雑な仕組み |
資金調達 | 迅速な資金調達が可能 | 経営権の希薄化 |
事業拡大 | 新たな事業への投資や既存事業の拡大が可能 | 株価の変動 |
経営戦略 | 経営戦略の変更や新たな事業への投資が可能 | 税金負担の増加 |
成功事例 | 企業の成長や発展を促進 | リスクを十分に考慮する必要がある |
1. 授権株式とは
授権株式の定義
授権株式とは、株式会社において、定款に定める株式数(授権株式数・発行可能株式総数)の範囲内であれば、取締役会の判断でいつでも新株発行をすることができる制度をいう。(授権株式制度とも言う。) 日本やアメリカ合衆国の各州法で採用されている。
日本においては、会社法37条1項、199条1項、2項、201条1項[1]が授権資本制度を採用しているが、会社の設立に際して発行する株式の総数は、公開会社でない会社を除いて、授権株式数の4分の1以上でなければならない(会社法37条3項[2])という規制がある。
ただし、公開会社でない会社においては、新株発行事項の決定について、株主総会の特別決議によらなければならない(会社法199条2項、309条2項5号)。
授権資本制度は、既存株主や会社債権者を保護しつつ、経営上の判断により迅速な資金調達を可能にすることを目的とする。また、株主に対する配当として新株を発行するのにも利用される。
項目 | 内容 |
---|---|
公開会社でない会社 | 設立時に授権株式数の4分の1以上を発行する必要がある |
公開会社 | 定款を変更して授権株式数を増やす場合、発行済株式総数の4倍までしか増加できない |
非公開会社 | 授権株式制度による制約はない |
授権株式制度の目的
授権株式制度は、企業が将来発行する予定の株式数をあらかじめ定款に定めておくことで、その範囲内で取締役会の決議だけで新株を発行することを可能にする制度です。
新株式の発行が無制限に認められることとなると、既存の株主の利益を害することがありますが、他方、発行のたびに株主総会の決議が必要となると円滑な資金調達をはかることが困難となり、ひいては会社の存続が危機におちいることにもなりかねません。
そこで会社法は、一定の限度で授権株式制度を認めています。
項目 | 内容 |
---|---|
既存株主 | 利益を保護 |
会社債権者 | 保護 |
経営 | 迅速な資金調達を可能にする |
株主 | 配当として新株を発行 |
授権株式制度の仕組み
授権株式制度では、会社が発行できる株式の総数を定款に記載し、その範囲内で取締役会が新株発行を決定することができます。
この制度は、企業が迅速に資金調達を行うことを可能にする一方で、既存の株主の利益を保護する役割も担っています。
具体的には、会社法では、公開会社でない会社を除いて、設立時に授権株式数の4分の1以上を発行する必要があります。
また、定款を変更して授権株式数を増やす場合にも、発行済株式総数の4倍までしか増加できません。
項目 | 内容 |
---|---|
定款 | 発行できる株式の総数を記載 |
取締役会 | 新株発行を決定 |
会社法 | 公開会社でない会社を除いて、設立時に授権株式数の4分の1以上を発行する必要がある |
定款変更 | 発行済株式総数の4倍までしか増加できない |
まとめ
授権株式制度は、企業が将来発行する予定の株式数を定款に定めておくことで、取締役会が迅速に資金調達を行うことを可能にする制度です。
この制度は、企業の成長や事業拡大を促進する一方で、既存の株主の利益を保護する役割も担っています。
ただし、授権株式制度には、既存株主の持分比率が希薄化したり、経営権が奪われたりするリスクも存在します。
2. 授権株式のメリット
迅速な資金調達
授権株式制度の最大のメリットは、迅速な資金調達を可能にすることです。
従来、新株発行を行うには、株主総会の決議が必要でした。しかし、授権株式制度では、取締役会が単独で新株発行を決定できるため、迅速に資金調達を行うことができます。
これは、企業が急な資金需要に迅速に対応できることを意味し、事業機会の損失を防ぐことに役立ちます。
例えば、新たな事業への投資や、競合他社の買収など、迅速な意思決定が求められる場面で、授権株式制度は有効な手段となります。
項目 | 内容 |
---|---|
従来 | 株主総会の決議が必要 |
授権株式制度 | 取締役会が単独で新株発行を決定可能 |
メリット | 迅速な資金調達が可能 |
例 | 新たな事業への投資、競合他社の買収 |
財務体質の強化
授権株式制度は、企業の財務体質を強化する効果も期待できます。
株式発行によって調達した資金は、企業の自己資本となります。自己資本比率は、企業の財務健全性を示す重要な指標であり、自己資本比率が高いほど、企業は安定した経営基盤を持つとされています。
授権株式制度を活用することで、企業は自己資本比率を高め、財務体質を強化することができます。
これは、金融機関からの融資を受けやすくなったり、投資家からの信頼を得やすくなったりといったメリットにつながります。
項目 | 内容 |
---|---|
株式発行 | 自己資本となる |
自己資本比率 | 財務健全性を示す指標 |
メリット | 財務体質を強化 |
効果 | 金融機関からの融資を受けやすくなる、投資家からの信頼を得やすくなる |
経営の柔軟性
授権株式制度は、企業の経営をより柔軟にする効果も期待できます。
企業は、市場環境の変化や事業戦略の変更に応じて、迅速に資金調達を行う必要があります。
授権株式制度を活用することで、企業は、取締役会決議だけで新株発行を行うことができ、経営の柔軟性を高めることができます。
これは、企業が変化の激しい市場環境に適応し、競争力を維持するために不可欠な要素となります。
項目 | 内容 |
---|---|
市場環境 | 変化に迅速に対応 |
授権株式制度 | 取締役会決議だけで新株発行が可能 |
メリット | 経営の柔軟性を高める |
効果 | 変化の激しい市場環境に適応し、競争力を維持 |
まとめ
授権株式制度は、迅速な資金調達、財務体質の強化、経営の柔軟性など、企業にとって多くのメリットをもたらします。
特に、急な資金需要に対応する必要がある場合や、財務体質を強化したい場合、経営の柔軟性を高めたい場合などに有効な手段となります。
ただし、授権株式制度には、既存株主の持分比率が希薄化したり、経営権が奪われたりするリスクも存在します。
そのため、企業は、授権株式制度を活用する際には、これらのリスクを十分に考慮する必要があります。
3. 授権株式のデメリット
経営権の希薄化
授権株式制度の最大のデメリットは、経営権の希薄化です。
授権株式制度では、取締役会が新株発行を決定することができます。そのため、既存の株主の持分比率が希薄化し、経営権が奪われる可能性があります。
特に、大規模な新株発行を行う場合、既存株主の持分比率が大幅に低下し、経営への影響力が弱まる可能性があります。
これは、企業の経営方針や戦略に影響を与える可能性があり、既存株主との関係悪化につながる可能性もあります。
項目 | 内容 |
---|---|
取締役会 | 新株発行を決定 |
既存株主 | 持分比率が希薄化 |
リスク | 経営権が奪われる可能性 |
影響 | 経営方針や戦略に影響、既存株主との関係悪化 |
株価の変動
授権株式制度は、株価の変動リスクも伴います。
新株発行によって、既存株主の持分比率が低下すると、株価が下落する可能性があります。
これは、既存株主が、自分の持分比率が低下したことで、株式を売却しようとする動きが強まるためです。
また、新株発行によって、企業の財務状況が悪化するとの見方が広がれば、株価が下落する可能性もあります。
項目 | 内容 |
---|---|
持分比率 | 低下 |
リスク | 株価が下落する可能性 |
原因 | 既存株主が株式を売却しようとする動きが強まる、企業の財務状況が悪化するとの見方が広がる |
対策 | 企業の成長戦略や業績改善策を実施し、株価や株主価値の向上を図る |
税金負担の増加
授権株式制度は、税金負担の増加につながる可能性もあります。
株式発行によって、企業の資本金が増加します。資本金が増加すると、法人税などの税金負担が増加する可能性があります。
これは、企業の利益が減少し、税金負担が増加することで、企業の収益性に悪影響を及ぼす可能性があります。
そのため、企業は、授権株式制度を活用する際には、税金負担の増加についても考慮する必要があります。
項目 | 内容 |
---|---|
株式発行 | 資本金が増加 |
リスク | 法人税などの税金負担が増加 |
影響 | 企業の利益が減少し、税金負担が増加 |
対策 | 税金負担の増加を考慮し、適切な資金調達計画を立てる |
まとめ
授権株式制度は、迅速な資金調達や財務体質の強化といったメリットがある一方で、経営権の希薄化、株価の変動、税金負担の増加といったデメリットも存在します。
企業は、授権株式制度を活用する際には、これらのメリットとデメリットを比較検討し、自社の状況に最適な方法を選択する必要があります。
特に、経営権の希薄化や株価の変動は、企業の存続に影響を与える可能性があるため、十分な注意が必要です。
4. 授権株式の種類
種類株式
授権株式には、種類株式という種類があります。
種類株式とは、同一の株式会社において、株式の種類によって、議決権、剰余金の分配を受ける権利、株式の譲渡制限などの権利内容が異なる株式のことです。
例えば、議決権のない株式や、剰余金の分配を受ける権利が制限された株式などが考えられます。
種類株式は、企業の経営戦略や資金調達方法に応じて、柔軟に活用することができます。
種類 | 内容 |
---|---|
議決権のない株式 | 議決権がない |
剰余金の分配を受ける権利が制限された株式 | 剰余金の分配を受ける権利が制限されている |
株式の譲渡制限 | 株式の譲渡が制限されている |
新株予約権付株式
新株予約権付株式とは、将来、一定の条件で新株を発行する権利(新株予約権)が付与された株式のことです。
新株予約権付株式は、投資家に将来の株価上昇の期待を与えるとともに、企業は将来の資金調達を容易にすることができます。
ただし、新株予約権付株式は、複雑な仕組みを持つため、発行する際には、投資家への説明を十分に行う必要があります。
項目 | 内容 |
---|---|
新株予約権 | 将来、一定の条件で新株を発行する権利 |
メリット | 投資家に将来の株価上昇の期待を与える、企業は将来の資金調達を容易にする |
注意点 | 複雑な仕組みを持つため、投資家への説明を十分に行う必要がある |
その他
授権株式には、種類株式や新株予約権付株式以外にも、様々な種類があります。
例えば、優先株式や劣後株式などがあります。
優先株式は、剰余金の分配や解散時の財産分配において、普通株式よりも優先される権利を持つ株式です。
劣後株式は、剰余金の分配や解散時の財産分配において、普通株式よりも劣後する権利を持つ株式です。
種類 | 内容 |
---|---|
優先株式 | 剰余金の分配や解散時の財産分配において、普通株式よりも優先される権利を持つ |
劣後株式 | 剰余金の分配や解散時の財産分配において、普通株式よりも劣後する権利を持つ |
まとめ
授権株式には、種類株式、新株予約権付株式など、様々な種類があります。
企業は、自社の経営戦略や資金調達方法に応じて、適切な種類の授権株式を選択する必要があります。
それぞれの株式には、議決権、剰余金の分配を受ける権利、株式の譲渡制限などの権利内容が異なるため、発行する際には、投資家への説明を十分に行う必要があります。
5. 授権株式の活用法
資金調達
授権株式制度は、企業が資金調達を行うための有効な手段です。
企業は、授権株式制度を活用することで、取締役会決議だけで新株発行を行うことができ、迅速に資金調達を行うことができます。
これは、企業が新たな事業への投資や、設備投資など、様々な目的で資金調達を行う際に役立ちます。
また、授権株式制度は、企業が財務体質を強化するためにも有効な手段となります。
項目 | 内容 |
---|---|
メリット | 迅速な資金調達が可能 |
活用例 | 新たな事業への投資、設備投資 |
事業拡大
授権株式制度は、企業の事業拡大にも役立ちます。
企業は、授権株式制度を活用することで、新たな事業への投資や、既存事業の拡大のための資金を調達することができます。
これは、企業が市場シェアを拡大したり、新たな市場に進出したりする際に役立ちます。
また、授権株式制度は、企業がM&A(合併・買収)を行う際にも有効な手段となります。
項目 | 内容 |
---|---|
メリット | 新たな事業への投資や既存事業の拡大が可能 |
活用例 | 市場シェアの拡大、新たな市場への進出、M&A |
経営戦略
授権株式制度は、企業の経営戦略にも役立ちます。
企業は、授権株式制度を活用することで、経営戦略の変更や、新たな事業への投資など、様々な経営戦略を実行することができます。
例えば、企業が新たな技術を開発するために、外部の投資家から資金調達を行う場合、授権株式制度を活用することで、迅速に資金調達を行うことができます。
また、企業が経営権を維持するために、自社の株式を買い戻す場合にも、授権株式制度を活用することができます。
項目 | 内容 |
---|---|
メリット | 経営戦略の変更や新たな事業への投資が可能 |
活用例 | 新たな技術開発のための資金調達、経営権維持のための自社株買い |
まとめ
授権株式制度は、企業が資金調達、事業拡大、経営戦略など、様々な目的で活用できる制度です。
企業は、自社の状況に合わせて、授権株式制度を適切に活用することで、企業の成長や発展を促進することができます。
ただし、授権株式制度には、経営権の希薄化や株価の変動といったリスクも存在します。
そのため、企業は、授権株式制度を活用する際には、これらのリスクを十分に考慮する必要があります。
6. 授権株式の成功事例
事例1: 〇〇株式会社
〇〇株式会社は、成長戦略の一環として、新たな事業への投資を行うために、授権株式制度を活用しました。
同社は、取締役会決議だけで新株発行を行うことができ、迅速に資金調達を行うことができました。
その結果、同社は、新たな事業を成功させることができ、企業の成長を加速させることができました。
事例2: △△株式会社
△△株式会社は、財務体質を強化するために、授権株式制度を活用しました。
同社は、授権株式制度を活用することで、自己資本比率を高め、財務体質を強化することができました。
その結果、同社は、金融機関からの融資を受けやすくなり、事業の安定性を高めることができました。
事例3: □□株式会社
□□株式会社は、経営戦略の変更のために、授権株式制度を活用しました。
同社は、授権株式制度を活用することで、迅速に資金調達を行い、経営戦略の変更を実行することができました。
その結果、同社は、新たな市場に進出することができ、企業の成長を促進させることができました。
まとめ
授権株式制度は、企業の成長や発展を促進するための有効な手段です。
多くの企業が、授権株式制度を活用することで、資金調達、事業拡大、経営戦略など、様々な目的を達成しています。
ただし、授権株式制度には、経営権の希薄化や株価の変動といったリスクも存在します。
企業は、授権株式制度を活用する際には、これらのリスクを十分に考慮する必要があります。
参考文献
・授権株式(じゅけんかぶしき)とは? 意味や使い方 – コトバンク
・授権株式とは?株式用語解説 – お客様サポート – Dmm 株
・授権資本(じゅけんしほん) | 証券用語集 | 東海東京証券株式会社
・資本―制度―授権資本・授権資本制度 – [経済]簿記勘定科目 …
・授権株式 | auカブコム証券 | ネット証券(国内株・米国株・信用 …
・常識としてのビジネス法律 【第21回】「会社法《平成26年改正 …
・新株発行|横浜の弁護士による無料相談|横浜ロード法律事務所
・株式交付制度の概要とポイント~令和元年会社法の改正を受けて~
・資本金について会社概要に、資本金欄に「授権資本」と「払込 …