繰延税金資産とは?経済用語について説明

繰延税金資産の全体像
項目	説明
定義	企業会計と税務会計の差異から生じる資産。将来の税負担軽減を目的とする。
計算方法	将来減算一時差異 × 法定実効税率
計上基準	将来の課税所得が十分に見込める場合のみ計上可能。
取り崩し	将来減算する課税所得が見込めなくなった場合に発生。
仕訳	借方：繰延税金資産、貸方：法人税等調整額
回収可能性	将来の課税所得が十分に見込めるかどうかを判断する。
財務への影響	利益増加、資金繰り改善、透明性向上、税務計画の効率化。
注意点	回収可能性の検討、取り崩しのリスク、専門家への相談。
展望	企業を取り巻く環境の変化に対応していく必要性。
意義	企業の財務状況を正確に反映し、税務計画を支援する。

1. 繰延税金資産の定義と意味
2. 繰延税金資産の計算方法と算定基準
3. 繰延税金資産の特徴とメリット
4. 繰延税金資産と企業の財務への影響
5. 繰延税金資産の実務上の注意点と対策
6. 繰延税金資産の今後の展望と財務への意義

1. 繰延税金資産の定義と意味

繰延税金資産とは何か？

繰延税金資産とは、企業会計と税務会計の間で発生する一時的な差異を調整するために用いられる会計上の資産です。企業会計では、費用や損失を計上するタイミングと、税務会計で損金として認められるタイミングが異なる場合があります。この差異が将来の税負担を減らす効果を持つ場合、その差異を将来減算一時差異と呼びます。繰延税金資産は、この将来減算一時差異を基に、将来の税負担が軽減される額を資産として計上したものです。

例えば、企業が賞与引当金を計上した場合、会計上は当期に費用として認識されますが、税務上は賞与が実際に支払われたときに初めて損金として認められます。この場合、会計と税務の認識時期のずれが生じ、将来の税負担が減額される可能性があります。この減額される可能性のある税金を、将来減算一時差異として捉え、繰延税金資産として計上します。

繰延税金資産は、将来の税負担を軽減する効果を資産として計上するため、貸借対照表の資産の部に計上されます。これは、将来の税金支払いを減らす効果があるため、資産価値があるとみなされるからです。

繰延税金資産は、企業が将来の税負担を効果的に予測し、資金繰りを改善するための戦略的なアプローチの一環と考えられます。このプロセスを通じて、企業は財務報告の透明性を高め、投資家やクレジット評価機関からの信頼を獲得することができます。

繰延税金資産の発生例
項目	企業会計	税務会計
賞与引当金	当期費用	賞与支払時に損金
減価償却費	定額法で早期計上	定額法で遅く計上

税効果会計とは？

税効果会計とは、企業会計と税務会計のズレを調整する手続きです。企業会計は、企業の経営状況を外部に報告することを目的としています。一方、税務会計は、税法に基づいて税金を計算することを目的としています。企業会計と税務会計では、収益や費用、益金や損金の認識時期や考え方が異なるため、その差異によって生じる不整合を調整する目的で税効果会計が導入されています。

税効果会計は、企業会計と税務会計のズレを調整することで、企業の利益と税金が適切に対応するようにします。これにより、企業の財務状況をより正確に把握することが可能になります。

税効果会計は、すべての企業に適用義務があるものではありません。適用が必要なのは上場企業や会社法上の大会社などの一部に限られ、中小企業は一部を除き任意適用です。ただし、導入により利益を正確に把握できる等のメリットもあるため、一度検討しても良いでしょう。

税効果会計は、企業の財務報告の透明性を高め、投資家やクレジット評価機関からの信頼を獲得する上で重要な役割を果たします。

税効果会計の適用範囲
対象	適用義務
上場企業	必須
金融商品取引法適用企業	必須
会社法上の大企業	必須
中小企業	任意

永久差異と一時差異

企業会計と税務会計の違いにより生じるズレは、永久差異と一時差異の2つに分けられます。

永久差異は、収益・益金および費用・損金の考え方（捉え方）の違いにより永久的に生じるズレです。例えば、企業会計では、接待交際費は全て費用として計上できますが、税務会計上では、一定の額までしか接待交際費を損金へ算入することができないため、企業会計と税効果会計で損金不算入となった金額分の差異が生じてしまいます。

一時差異は、認識時期の違いにより一時的に起こるものです。各種引当金や減価償却費等の損金算入限度超過額など、社外への流出を伴わない費用が挙げられます。

税効果会計では、一時差異を解消することに注目します。認識時期がズレてしまうことによって、法人税の金額が、企業会計の利益に対応しなくなるため、税効果会計によって調整します。

永久差異と一時差異
差異	説明	例
永久差異	認識方法の違いが解消されない	接待交際費の損金算入限度超過
一時差異	認識時期の違いが解消される	賞与引当金、減価償却費

まとめ

繰延税金資産は、企業会計と税務会計の認識時期のずれによって発生する一時的な差異を調整するために用いられる会計上の資産です。将来の税負担を軽減する効果を資産として計上するため、貸借対照表の資産の部に計上されます。

繰延税金資産は、企業が将来の税負担を効果的に予測し、資金繰りを改善するための戦略的なアプローチの一環と考えられます。

繰延税金資産は、企業の財務報告の透明性を高め、投資家やクレジット評価機関からの信頼を獲得する上で重要な役割を果たします。

2. 繰延税金資産の計算方法と算定基準

繰延税金資産の計算方法

繰延税金資産は、将来減算一時差異に法定実効税率を乗じて計算します。

将来減算一時差異とは、将来の課税所得を減額する効果を持つ一時差異のことです。例えば、企業が減価償却費を会計上は早く計上し、税務上は遅く計上した場合、将来の課税所得が減額されるため、将来減算一時差異が発生します。

法定実効税率とは、企業が利益に対して実質的に負担する税率のことです。法人税率、法人住民税率、事業税率などを総合的に考慮して計算されます。

繰延税金資産の計算は、企業が将来の税負担をより正確に予測し、計画するのに役立ちます。

法定実効税率の計算

法定実効税率は、企業が利益に対して実質的に負担する税率のことです。法人税率、法人住民税率、事業税率などを総合的に考慮して計算されます。

法定実効税率の計算式は、以下のとおりです。

法定実効税率 = {法人税率 × （1 ＋地方法人税率＋住民税率）＋事業税率} ÷ （1 ＋事業税率）

法定実効税率は、企業の税務計画と財務戦略において中核的な役割を果たし、将来の税負担の正確な予測と財務諸表の透明性の向上に寄与します。

法定実効税率の計算式
項目	計算式
法定実効税率	{法人税率 × （1 ＋地方法人税率＋住民税率）＋事業税率} ÷ （1 ＋事業税率）

繰延税金資産の計算例

繰延税金資産の計算を具体的な例で説明することで、そのプロセスの理解が深まります。例えば、ある企業が特定の年度に賞与引当金として1

賞与引当金1

この計算により、企業は将来、税負担が300万円軽減されることを財務諸表に反映させることができます。

この例は、税効果会計の枠組み内で行われる繰延税金資産の計算プロセスを示しており、企業が将来の税負担をより正確に予測し、計画するのに役立ちます。

繰延税金資産の計算例
項目	金額	計算式
賞与引当金	1,000万円	1,000万円 × 30% = 300万円
法定実効税率	30%

まとめ

繰延税金資産は、将来減算一時差異に法定実効税率を乗じて計算します。

将来減算一時差異とは、将来の課税所得を減額する効果を持つ一時差異のことです。

法定実効税率とは、企業が利益に対して実質的に負担する税率のことです。

繰延税金資産の計算は、企業が将来の税負担をより正確に予測し、計画するのに役立ちます。

3. 繰延税金資産の特徴とメリット

繰延税金資産の特徴

繰延税金資産は、将来の税負担を軽減する効果を資産として計上するため、貸借対照表の資産の部に計上されます。

繰延税金資産は、将来の税金支払いを減らす効果があるため、資産価値があるとみなされます。

繰延税金資産は、企業が将来の税負担を効果的に予測し、資金繰りを改善するための戦略的なアプローチの一環と考えられます。

繰延税金資産は、企業の財務報告の透明性を高め、投資家やクレジット評価機関からの信頼を獲得する上で重要な役割を果たします。

繰延税金資産の特徴
特徴	説明
資産計上	貸借対照表の資産の部に計上
将来の税負担軽減	将来の税金支払いを減らす効果がある
戦略的アプローチ	資金繰りの改善、財務報告の透明性向上
信頼獲得	投資家やクレジット評価機関からの信頼獲得

繰延税金資産のメリット

繰延税金資産を計上することで、企業は将来の税負担を軽減することができます。

繰延税金資産を計上することで、企業は資金繰りを改善することができます。

繰延税金資産を計上することで、企業は財務報告の透明性を高め、投資家やクレジット評価機関からの信頼を獲得することができます。

繰延税金資産を計上することで、企業は税務上の計画と戦略をより効果的に立案し、実施することができます。

繰延税金資産のメリット
メリット	説明
税負担軽減	将来の税負担を軽減
資金繰り改善	資金繰りを改善
透明性向上	財務報告の透明性向上
信頼獲得	投資家やクレジット評価機関からの信頼獲得
計画の効率化	税務上の計画と戦略を効率的に立案・実施

繰延税金資産の計上と仕訳

繰延税金資産の計上は、企業の将来の税負担を財務諸表に反映させるために重要な手続きです。

繰延税金資産は、税法と会計基準の適用によって生じる一時的な差異に基づき認識され、主に、将来の税金支払いが減少することが合理的に予測される場合に計上されます。

繰延税金資産の認識は、企業が将来支払う税金の額に対して現在の期に調整を加えることを可能にし、財務報告の正確性と透明性を向上させます。

繰延税金資産の計上は、投資家やクレジット評価機関に対して、企業の財務状態と将来の税務負担に関するより詳細な情報を提供します。

繰延税金資産の計上と仕訳
項目	借方	貸方
繰延税金資産の計上	繰延税金資産	法人税等調整額
繰延税金資産の取り崩し	法人税等調整額	繰延税金資産

まとめ

繰延税金資産は、将来の税負担を軽減する効果を資産として計上するため、貸借対照表の資産の部に計上されます。

繰延税金資産は、将来の税金支払いを減らす効果があるため、資産価値があるとみなされます。

繰延税金資産を計上することで、企業は将来の税負担を軽減することができます。

繰延税金資産を計上することで、企業は資金繰りを改善することができます。

4. 繰延税金資産と企業の財務への影響

繰延税金資産の取り崩し

繰延税金資産の取り崩しとは、将来減算する課税所得が見込めなくなった時点で、会計上も解消する処理を行うことを指します。

繰延税金資産を取り崩す主な要因は、繰延税金資産を回収するだけの課税所得が将来見込めなくなることです。業績が悪化し将来の利益が出なくなることが想定されると、繰延税金資産の利用が難しくなります。

繰延税金資産の取り崩しには、以下の2種類があります。

繰延税金資産の取り崩しは、企業の財務状況に大きな影響を与える可能性があります。

繰延税金資産の取り崩し
要因	説明
課税所得見込みの減少	将来減算する課税所得が見込めなくなった場合
業績悪化	将来の利益が出なくなることが想定される場合

繰延税金資産の取り崩しによる影響

少額の繰延税金資産を取り崩す場合、その影響は限定的ですが、取り崩し額が大きくなると、企業の業績に大きな影響が出るでしょう。

例えば、赤字以外の業績だった企業が繰延税金資産を取り崩すと、最終的に赤字を計上するケースがあります。

また、業績の悪化に伴い固定資産の減損等をあわせて行うこともあり得るため、元々想定していた利益の減額要素がより大きくなることもあります。

企業側からすると繰延税金資産の取り崩しによる業績の下方修正が根源となり、本来よりも赤字が膨らみ、企業の経営に悪影響を及ぼしかねません。

繰延税金資産の取り崩しによる影響
影響	説明
業績悪化	赤字転落の可能性
利益減少	本来想定していた利益よりも減額
経営悪化	企業の経営に悪影響

繰延税金資産の計上と仕訳

繰延税金資産が生じた際は、借方に繰延税金資産を、貸方へ法人税等調整額を計上してください。

繰延税金資産を取り崩すときは、逆に借方へ法人税等調整額を、貸方へ繰延税金資産を計上することとなります。

繰延税金資産の計上と仕訳は、企業が将来の税負担をより正確に予測し、計画するのに役立ちます。

繰延税金資産の計上と仕訳は、企業の財務報告の透明性を高め、投資家やクレジット評価機関からの信頼を獲得する上で重要な役割を果たします。

繰延税金資産の計上と仕訳
項目	借方	貸方
繰延税金資産の計上	繰延税金資産	法人税等調整額
繰延税金資産の取り崩し	法人税等調整額	繰延税金資産

まとめ

繰延税金資産の取り崩しは、将来減算する課税所得が見込めなくなった時点で、会計上も解消する処理を行うことを指します。

繰延税金資産の取り崩しは、企業の財務状況に大きな影響を与える可能性があります。

繰延税金資産の取り崩しは、企業の経営に悪影響を及ぼしかねません。

繰延税金資産の計上と仕訳は、企業が将来の税負担をより正確に予測し、計画するのに役立ちます。

5. 繰延税金資産の実務上の注意点と対策

繰延税金資産の回収可能性

繰延税金資産の回収可能性とは、繰延税金資産が実際に未来の税負担の軽減になるかどうかを判断する基準です。

過去の業績や納税状況、将来の業績予測などを総合的に考慮し、将来の課税所得を合理的に見積もる必要があります。

例えば、今後も赤字が続くと予測される企業が、将来減算一時差異を持っていたとしても、その一時差異がなくなり税負担を減らす効果がない場合、回収可能性はありません。したがって、繰延税金資産を計上できません。

一方、業績が黒字と赤字を繰り返すような企業では、一時差異がどれくらいあってどのタイミングで解消されるかによっても回収可能性が変わります。将来の予測が難しいため、回収可能性の検討は専門的で複雑な作業となります。

繰延税金資産の回収可能性の判断基準
基準	説明
将来の課税所得	将来減算する課税所得が見込めるか
過去の税務上の欠損金	過去の赤字の状況
将来加算一時差異	将来加算一時差異を相殺できるか

繰延税金資産の回収可能性の検討

繰延税金資産の回収可能性を検討する際には、配当制限がなく、配当財源に含められるかどうかも考慮しなければなりません。

回収可能性がない繰延税金資産を計上すると、企業の実態と乖離した過大な配当が行われる可能性があるためです。

繰延税金資産の回収可能性は、企業の将来の税負担を適切に評価するための重要な判断基準です。

過去の業績や将来の業績予測を総合的に勘案し、合理的な判断をしましょう。

繰延税金資産の回収可能性の検討
検討項目	説明
配当制限	配当財源に含められるか
業績予測	将来の業績見通し
税制変更	税制の変更による影響

繰延税金資産の取り崩し

繰延税金資産は、将来の利益が見込めないと現在計上されている繰延税金資産が取り崩され、取り崩された金額を損失として計上（法人税等調整額として、法人税が増える）するリスクがあります。

繰延税金資産の取り崩しは、企業の財務状況に大きな影響を与える可能性があります。

繰延税金資産の取り崩しは、企業の経営に悪影響を及ぼしかねません。

繰延税金資産の計上と仕訳は、企業が将来の税負担をより正確に予測し、計画するのに役立ちます。

繰延税金資産の取り崩しリスク
リスク	説明
業績悪化	赤字転落の可能性
利益減少	本来想定していた利益よりも減額
経営悪化	企業の経営に悪影響

まとめ

繰延税金資産を計上するためには、税理士に相談し、要件や手続きなど必要な事項について確認することが不可欠です。

繰延税金資産の回収可能性は、会社の業績に応じて判断しますので「将来黒字が出る」という大きな前提が必要となります。

将来赤字の場合には、税金はそもそも支払う必要はなくなりますから、それ以上税金の支払いが減るということにならないからです。

6. 繰延税金資産の今後の展望と財務への意義

繰延税金資産の今後の展望

繰延税金資産は、企業会計と税務会計の差異を調整するための重要な会計上の資産です。

しかし、繰延税金資産の計上には、将来の課税所得が見込めるという前提が必要であり、企業の業績悪化などによってその前提が崩れる可能性もあります。

そのため、繰延税金資産の計上は、企業の将来の業績や税制の動向などを慎重に検討する必要があります。

今後、企業を取り巻く環境はますます変化していくことが予想されます。

繰延税金資産の今後の展望
項目	説明
企業を取り巻く環境	変化に対応していく必要性
税制改正	税制改正の影響
業績変動	業績変動による影響

繰延税金資産の財務への意義

繰延税金資産は、企業の財務状況をより正確に反映するために重要な役割を果たします。

繰延税金資産を適切に計上することで、企業は将来の税負担を効果的に予測し、資金繰りを改善することができます。

また、繰延税金資産は、投資家やクレジット評価機関からの信頼を獲得する上で重要な役割を果たします。

繰延税金資産は、企業の税務上の計画と戦略をより効果的に立案し、実施する上で重要な役割を果たします。

繰延税金資産の財務への意義
意義	説明
財務状況の反映	企業の財務状況を正確に反映
資金繰り改善	資金繰りを改善
信頼獲得	投資家やクレジット評価機関からの信頼獲得
計画の効率化	税務上の計画と戦略を効率的に立案・実施