CAPMとは?経済用語について説明

CAPMの構成要素
要素 説明
リスクフリーレート リスクがほとんどない投資(例えば、国債)の期待収益率
β 個別証券のリスクと市場全体のリスクの関連性を示す指標
市場のリスクプレミアム 市場全体のリスクに対する追加的なリターン
サイズプレミアム 小規模企業の株式の方が、大規模企業の株式よりも高いリターンを期待できるという傾向を表すもの
バリュープレミアム 割安な企業の株式の方が、割高な企業の株式よりも高いリターンを期待できるという傾向を表すもの
ゼロベータポートフォリオ 市場ポートフォリオとの相関がゼロとなるポートフォリオ

1. CAPMの定義とは

要約

CAPMとは何か

CAPM(Capital Asset Pricing Model)とは、個別証券(個別株式)の期待収益率を計算するためのモデルです。簡単に言うと、ある企業の株式を買ったらいくら儲かるのかを計算するための計算式のことです。CAPMは、投資家がリスクを取ることで得られるリターンを合理的に評価し、適切な投資判断を行うために用いられます。

CAPMは、投資の世界における基本的な考え方であるリスクとリターンの関係を定量的に評価するためのモデルです。一般的に、リスクが高いほど期待されるリターンも高くなる傾向があります。CAPMは、このリスクとリターンの関係を数式で表現することで、投資家の期待収益率を計算することを可能にします。

CAPMは、1960年代にウィリアム・シャープ、ジョン・リンター、ジャン・モッシンによって開発された理論で、金融資産のリターンとリスクの関係を示すモデルです。CAPMは、株式市場を含む金融資産の投資リターンが、無リスク資産(例:国債)のリターンと、システムリスク(市場全体のリスク)に依存することを示しています。

CAPMは、投資家や資産マネージャーが資産の適正価格や適切なポートフォリオの構築に役立てることができる重要なツールとなっています。資産価格の動向や市場のリスクを理解する上で欠かせない概念です。

CAPMの定義
定義 説明
CAPM 個別証券の期待収益率を計算するためのモデル
リスクとリターンの関係 リスクが高いほど期待されるリターンも高くなる傾向がある
金融資産のリターンとリスクの関係 金融資産の投資リターンは、無リスク資産のリターンと、システムリスクに依存する
投資判断のツール 投資家がリスクに見合ったリターンを期待できるかどうかを判断するツール

CAPMの計算式

CAPMの基本的な式は、以下のように表されます。\n\n個別証券の期待収益率 = リスクフリーレート + β(市場のリターン – リスクフリーレート)\n\nここで、βは資産の特有リスクと市場全体のリスクとの関連性を示す指標です。βが1より大きい資産は市場よりもリスキーで、逆にβが1より小さい資産は市場よりも安全と見なされます。

CAPMは、投資家や資産マネージャーが資産の適正価格や適切なポートフォリオの構築に役立てることができる重要なツールとなっており、資産価格の動向や市場のリスクを理解する上で欠かせない概念です。

このように、CAPMは資産価格のリスクとリターンの関係性を理解するためのモデルとして、経済の分野で広く活用されています。

CAPMの計算式
要素 説明
個別証券の期待収益率 投資家が個別証券から期待する収益率
リスクフリーレート リスクがほとんどない投資(例えば、国債)の期待収益率
β 個別証券のリスクと市場全体のリスクの関連性を示す指標
市場のリスクプレミアム 市場全体のリスクに対する追加的なリターン

CAPMの重要性

CAPMは、投資家がリスクとリターンの関係を理解し、適切な投資判断を行うために重要な役割を果たします。CAPMを用いることで、投資家はリスクに見合ったリターンを期待できるかどうかを判断することができます。

また、CAPMは企業が資金調達を行う際に、株主に対してどの程度の収益率を約束する必要があるのかを判断する際にも役立ちます。これは、企業が資金調達を行う際に発生するコストである株主資本コストを算定する際に用いられます。

さらに、CAPMは投資ポートフォリオの構築にも役立ちます。投資家は、CAPMを用いて各資産のリスクとリターンの関係を分析し、リスクとリターンのバランスが取れたポートフォリオを構築することができます。

まとめ

CAPMは、個別証券の期待収益率を計算するためのモデルであり、投資家がリスクとリターンの関係を理解し、適切な投資判断を行うために重要な役割を果たします。

CAPMは、リスクフリーレート、β、市場リスクプレミアムの3つの要素を用いて計算されます。

CAPMは、投資ポートフォリオの構築や株主資本コストの算定など、様々な場面で活用されています。

2. CAPMの前提条件とは

要約

完全市場

CAPMは、完全市場という理想的な市場が存在することを前提としています。完全市場とは、以下の条件を満たす市場のことです。

* すべての投資家が市場の情報を完全に把握している。\n* すべての投資家は合理的で、自己利益を最大化しようとする。\n* すべての資産は自由に売買でき、取引コストは発生しない。\n* すべての投資家は、リスクとリターンの関係を同じように認識している。

現実の世界では、これらの条件は完全に満たされることはなく、CAPMは現実の市場を完全に反映しているとは言えません。

完全市場の条件
条件 説明
情報完全性 すべての投資家が市場の情報を完全に把握している
合理的行動 すべての投資家は合理的で、自己利益を最大化しようとする
取引コストの不存在 すべての資産は自由に売買でき、取引コストは発生しない
リスクとリターンの共通認識 すべての投資家は、リスクとリターンの関係を同じように認識している

投資家の合理的行動

CAPMは、投資家が合理的行動をとることを前提としています。合理的行動とは、投資家が自分の利益を最大化するために、リスクとリターンの関係を考慮して投資判断を行うことを意味します。

しかし、現実の世界では、投資家は必ずしも合理的行動をとるとは限りません。例えば、感情的な判断や過去の経験に基づいた判断など、非合理的行動をとる場合もあります。

投資家の非合理的行動は、市場の効率性を低下させ、CAPMの予測精度を低下させる可能性があります。

平均分散分析

CAPMは、平均分散分析というポートフォリオ選択理論に基づいています。平均分散分析とは、投資家がリスクとリターンの関係を考慮して、最適な投資ポートフォリオを選択するための方法です。

平均分散分析では、投資家は、期待収益率とリスク(標準偏差)を考慮して、リスクとリターンのバランスが取れたポートフォリオを選択します。

CAPMは、平均分散分析に基づいて、市場ポートフォリオが最も効率的なポートフォリオであると結論付けています。

まとめ

CAPMは、完全市場、投資家の合理的行動、平均分散分析という3つの前提条件に基づいています。

これらの前提条件は、現実の世界では完全に満たされることはなく、CAPMは現実の市場を完全に反映しているとは言えません。

しかし、CAPMは、投資リスクとリターンの関係を理解するための重要なモデルであり、投資判断を行うための基礎的な知識として役立ちます。

3. CAPMの計算方法

要約

CAPMの計算式

CAPMの計算式は、以下の通りです。\n\n個別証券の期待収益率 = リスクフリーレート + β(市場のリターン – リスクフリーレート)\n\nこの式は、個別証券の期待収益率が、リスクフリーレートに、市場のリスクプレミアム(市場のリターンとリスクフリーレートの差)を掛けたものに、βを掛けたものを加えたものであることを示しています。

ここで、各要素の意味は以下の通りです。

* リスクフリーレート: リスクがほとんどない投資(例えば、国債)の期待収益率。\n* β: 個別証券のリスクと市場全体のリスクの関連性を示す指標。βが1より大きい場合は、市場よりもリスクが高いことを示し、βが1より小さい場合は、市場よりもリスクが低いことを示します。\n* 市場のリスクプレミアム: 市場全体のリスクに対する追加的なリターン。

CAPMの計算式
要素 説明
個別証券の期待収益率 投資家が個別証券から期待する収益率
リスクフリーレート リスクがほとんどない投資(例えば、国債)の期待収益率
β 個別証券のリスクと市場全体のリスクの関連性を示す指標
市場のリスクプレミアム 市場全体のリスクに対する追加的なリターン

βの求め方

βは、個別証券のリスクと市場全体のリスクの関連性を示す指標であり、過去のデータから計算されます。

具体的には、個別証券と市場全体の過去の収益率の共分散を、市場全体の収益率の分散で割ることで計算されます。

βは、個別証券の価格変動が市場全体の価格変動にどれだけ敏感であるかを示す指標です。βが大きいほど、個別証券の価格変動は市場全体の価格変動に敏感であることを示します。

市場リスクプレミアムの求め方

市場リスクプレミアムは、市場全体のリスクに対する追加的なリターンであり、過去のデータから推定されます。

一般的には、市場全体の期待収益率からリスクフリーレートを差し引くことで計算されます。

市場全体の期待収益率は、過去の市場全体の平均収益率や、将来の経済成長率などを考慮して推定されます。

まとめ

CAPMは、リスクフリーレート、β、市場リスクプレミアムの3つの要素を用いて計算されます。

βは、個別証券のリスクと市場全体のリスクの関連性を示す指標であり、過去のデータから計算されます。

市場リスクプレミアムは、市場全体のリスクに対する追加的なリターンであり、過去のデータから推定されます。

4. CAPMの利用例

要約

株主資本コストの算定

CAPMは、企業が資金調達を行う際に、株主に対してどの程度の収益率を約束する必要があるのかを判断する際にも役立ちます。

これは、企業が資金調達を行う際に発生するコストである株主資本コストを算定する際に用いられます。

株主資本コストは、企業が投資家から資金を調達するために支払う必要があるコストであり、企業の投資判断を行う上で重要な指標となります。

株主資本コストの算定
要素 説明
株主資本コスト 企業が投資家から資金を調達するために支払う必要があるコスト
CAPM 株主資本コストを算定するためのモデル

投資ポートフォリオの構築

CAPMは、投資ポートフォリオの構築にも役立ちます。投資家は、CAPMを用いて各資産のリスクとリターンの関係を分析し、リスクとリターンのバランスが取れたポートフォリオを構築することができます。

投資家は、CAPMを用いて、各資産のβを計算し、リスクとリターンの関係を分析することができます。

そして、リスクとリターンのバランスが取れたポートフォリオを構築することで、投資目標の達成をより確実なものにすることができます。

個別証券の評価

CAPMは、個別証券の評価にも役立ちます。投資家は、CAPMを用いて、個別証券の期待収益率を計算し、その証券が割安なのか割高なのかを判断することができます。

個別証券の期待収益率は、CAPMの計算式を用いて計算されます。

そして、個別証券の期待収益率と現在の市場価格を比較することで、その証券が割安なのか割高なのかを判断することができます。

まとめ

CAPMは、株主資本コストの算定、投資ポートフォリオの構築、個別証券の評価など、様々な場面で活用されています。

CAPMは、投資家がリスクとリターンの関係を理解し、適切な投資判断を行うために重要な役割を果たします。

CAPMは、投資の世界における重要なツールであり、投資判断を行うための基礎的な知識として役立ちます。

5. CAPMの限界と批判

要約

現実世界の市場との乖離

CAPMは、完全市場という理想的な市場が存在することを前提としています。しかし、現実の世界では、完全市場は存在しません。

現実の世界では、投資家は市場の情報を完全に把握することはできませんし、取引コストも発生します。また、投資家は必ずしも合理的行動をとるとは限りません。

そのため、CAPMは現実の市場を完全に反映しているとは言えません。

市場リスクプレミアムの推定の難しさ

CAPMでは、市場リスクプレミアムを過去のデータから推定する必要があります。しかし、過去のデータは将来の市場動向を必ずしも反映しているとは限りません。

そのため、市場リスクプレミアムを正確に推定することは困難であり、CAPMの予測精度を低下させる可能性があります。

また、市場リスクプレミアムは、経済状況や投資家の心理など、様々な要因によって変化するため、常に最新の情報を収集し、市場リスクプレミアムを適宜見直す必要があります。

βの限界

βは、個別証券のリスクと市場全体のリスクの関連性を示す指標ですが、βは過去のデータから計算されるため、将来の市場動向を必ずしも反映しているとは限りません。

また、βは、個別証券の価格変動が市場全体の価格変動にどれだけ敏感であるかを示す指標ですが、個別証券の価格変動は、市場全体の価格変動以外にも、様々な要因によって影響を受ける可能性があります。

そのため、βは、個別証券のリスクを完全に反映しているとは言えません。

まとめ

CAPMは、現実世界の市場を完全に反映しているとは言えません。

市場リスクプレミアムの推定の難しさや、βの限界など、CAPMにはいくつかの限界があります。

しかし、CAPMは、投資リスクとリターンの関係を理解するための重要なモデルであり、投資判断を行うための基礎的な知識として役立ちます。

6. CAPMと他のリスク評価モデルの比較

要約

ファーマ・フレンチの3ファクターモデル

ファーマ・フレンチの3ファクターモデルは、CAPMを拡張したモデルであり、市場リスクプレミアムに加えて、サイズプレミアムとバリュープレミアムを考慮しています。

サイズプレミアムとは、小規模企業の株式の方が、大規模企業の株式よりも高いリターンを期待できるという傾向を表すものです。

バリュープレミアムとは、割安な企業の株式の方が、割高な企業の株式よりも高いリターンを期待できるという傾向を表すものです。

ファーマ・フレンチの3ファクターモデル
要素 説明
サイズプレミアム 小規模企業の株式の方が、大規模企業の株式よりも高いリターンを期待できるという傾向を表すもの
バリュープレミアム 割安な企業の株式の方が、割高な企業の株式よりも高いリターンを期待できるという傾向を表すもの

アービトラージ・プライシング・セオリー(APT)

APTは、複数のファクターを考慮することで、資産のリスクとリターンの関係を説明するモデルです。

APTは、CAPMよりも現実の市場をよりよく反映していると考えられています。

しかし、APTは、CAPMよりも複雑なモデルであり、ファクターの選択や推定が難しいという課題があります。

ゼロベータCAPM

ゼロベータCAPMは、無リスク資産の存在を仮定しないCAPMです。

ゼロベータCAPMでは、市場ポートフォリオとゼロベータポートフォリオのリスクプレミアムによる2ファクターモデルを用いて、資産のリスクとリターンの関係を説明します。

ゼロベータCAPMは、無リスク資産が存在しない現実の市場をよりよく反映していると考えられています。

まとめ

CAPMは、投資リスクとリターンの関係を説明するための基本的なモデルですが、現実の市場を完全に反映しているとは言えません。

ファーマ・フレンチの3ファクターモデルやAPTなど、CAPMを拡張したモデルが提案されています。

これらのモデルは、CAPMよりも現実の市場をよりよく反映していると考えられています。

投資家は、これらのモデルを理解し、それぞれのモデルのメリットとデメリットを考慮して、適切なモデルを選択する必要があります。

参考文献

CAPMとは?リスクとリターンの関係性を理解しよう | sasa-dango

【会社の価格算定】CAPM(キャップエム)とは?

資本資産価格モデル – Wikipedia

CAPMとは|資産運用用語集|iFinance

CAPMの計算式は?株主資本コスト・DCF・WACCの関係も解説

CAPM|証券用語解説集|野村證券

Capmとは【経済用語をやさしく解説】 | 数学・統計教室の和から株式会社

Capm(資本資産価格モデル)|グロービス経営大学院 創造と変革のmba

CAPMとは【経済用語をやさしく解説】 – note(ノート)

投資リスクを管理するためのCAPM入門:メリットとデメリットを詳しく解説 – Otama’s Playground

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