中世墓碑ステチュツィの墓所群とは？世界遺産についての解説

中世墓碑ステチュツィの墓所群の概要
項目	内容
ステチュツィの名称	ステチュツィ（Stećci）
ステチュツィの定義	中世の墓碑
ステチュツィの分布	ボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチア、モンテネグロ、セルビア
ステチュツィの時代	12世紀後半～16世紀
ステチュツィの素材	石灰岩、凝灰岩、蛇紋岩、粘板岩、礫岩
ステチュツィの形状	スラブ型、石櫃型、切妻屋根型、十字架型、柱型
ステチュツィの装飾	宗教的なシンボル、太陽や月、星、渦巻き、ロゼット、十字、幾何学図形、動物、植物、武器、道具など
ステチュツィの碑文	ボスニア・キリル文字、ラテン文字
ステチュツィの宗教的背景	ボスニア教会
ステチュツィの世界遺産登録	2016年
ステチュツィの世界遺産登録基準	(iii) 現存するか消滅しているかにかかわらず、ある文化的伝統又は文明の存在を伝承する物証として無二の存在(少なくとも希有な存在)である。 (vi) 顕著な普遍的価値を有する出来事(行事)、生きた伝統、思想、信仰、芸術的作品、あるいは文学的作品と直接または実質的関連がある(この基準は他の基準とあわせて用いられることが望ましい)

1. ステチュツィの意味とは
2. 中世墓碑ステチュツィの起源
3. ステチュツィの特徴と役割
4. 中世墓碑ステチュツィの分布と様式
5. 世界遺産に登録された中世墓碑ステチュツィ
6. 中世墓碑ステチュツィが物語る歴史

1. ステチュツィの意味とは

ステチュツィの語源と意味

ステチュツィは、ボスニア・ヘルツェゴビナや周辺地域に点在する中世の墓碑を指す言葉です。この言葉は、スラヴ語の「stajati（立つ）」という動詞に由来し、名詞形である「stećak」は「立っているもの」を意味します。複数形が「stećci」となり、世界遺産登録名にもなっています。ステチュツィは、12世紀後半から16世紀にかけて、ボスニア王国や周辺地域で多く作られました。

ステチュツィは、単に墓石ではなく、その地域の人々の文化や歴史を伝える重要なシンボルです。ステチュツィは、石灰岩や凝灰岩などの石材で造られ、その形状や装飾は多様性に富んでいます。

ステチュツィの形状には、単純な石板のようなスラブ型、箱のような石櫃型、∧形の切妻屋根型、十字架型、柱型などがあります。装飾は何もないものも多いですが、文字や記号、絵を彫り込んだものも少なくありません。

ステチュツィの装飾には、宗教的なシンボル、太陽や月、星、渦巻き、ロゼット、十字、幾何学図形、動物、植物、武器、道具など、様々なモチーフが用いられています。中には、民族舞踊や騎馬戦、狩猟の様子を描いた複雑な装飾も見られます。これらの装飾は、死者の精神的、宗教的、思想的背景を反映していると考えられています。

ステチュツィの語源と意味
言葉	意味
stajati	立つ
stećak	立っているもの
stećci	立っているもの（複数形）

ステチュツィの碑文

ステチュツィの多くには、碑文が刻まれています。碑文は、現在使われていないボスニア・キリル文字で書かれたものが多く、一部でラテン文字も見られます。碑文の内容は、宗教的なフレーズ、故人の思想や信条、仕事、親族など、多岐にわたります。

ステチュツィの碑文は、中世の人々の生活や信仰、社会構造を理解する上で貴重な資料となります。また、ステチュツィの碑文は、ボスニア語やスラヴ語の言語学的研究にも役立ちます。

ステチュツィの碑文
文字	内容
ボスニア・キリル文字	宗教的なフレーズ、故人の思想や信条、仕事、親族など
ラテン文字	宗教的なフレーズ、故人の思想や信条、仕事、親族など

ステチュツィの宗教的背景

ステチュツィは、ボスニア教会の墓地によく見られます。ボスニア教会は、ローマ・カトリック教会や東方正教会とは異なる、独自のキリスト教の宗派でした。ボスニア教会は、12世紀にボスニア王国で興り、15世紀にオスマン帝国の支配下に入ると衰退していきました。

ボスニア教会は、カトリック教会や正教会から異端とみなされることもありました。しかし、ボスニア教会は、独自の信仰体系と文化を確立し、ステチュツィはその象徴的な存在でした。

ステチュツィの装飾には、キリスト教的なモチーフと、土着の宗教的なモチーフが混在しているものもあります。これは、ボスニア教会が、キリスト教と土着の信仰を融合させた独自の信仰体系を持っていたことを示唆しています。

ステチュツィは、ボスニア教会の信仰や文化を理解する上で重要な役割を果たしています。また、ステチュツィは、中世ヨーロッパにおける宗教的多様性を示す貴重な遺産でもあります。

ステチュツィと宗教
宗教	特徴
ボスニア教会	ローマ・カトリック教会や東方正教会とは異なる独自のキリスト教の宗派
カトリック教会	ボスニア教会を異端とみなすこともあった
正教会	ボスニア教会を異端とみなすこともあった

まとめ

ステチュツィは、ボスニア・ヘルツェゴビナや周辺地域に点在する中世の墓碑であり、その地域の人々の文化や歴史を伝える重要なシンボルです。

ステチュツィは、スラヴ語の「stajati（立つ）」という動詞に由来し、名詞形である「stećak」は「立っているもの」を意味します。

ステチュツィは、12世紀後半から16世紀にかけて、ボスニア王国や周辺地域で多く作られました。

ステチュツィは、その形状や装飾、碑文などから、中世の人々の生活や信仰、社会構造を理解する上で貴重な資料となります。

2. 中世墓碑ステチュツィの起源

ステチュツィの起源と時代背景

ステチュツィは、11世紀に現れ始め、14世紀から15世紀にかけて最盛期を迎えました。ステチュツィの制作は、15世紀後半にオスマン帝国がバルカン半島を征服すると衰退していきました。

ステチュツィの起源は、特定されていません。ボスニア・ヘルツェゴビナの文化的伝統に由来すると考えられていますが、巨石文化やキリスト教の石棺の影響を受けているともいわれています。

ステチュツィは、ボスニア王国や周辺地域で、宗教や教派の違いに関係なく見られました。墓の多くは、同じ方向を向いて整然と並べられていました。

ステチュツィは、墓の上に置かれた墓石、あるいは文字や記号、絵を刻んだ墓碑でした。石の位置や大きさ、種類、装飾などで、宗教、民族、階級などを表現していました。

ステチュツィの時代と分布
時代	分布
11世紀	ボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチア、モンテネグロ、セルビア
14世紀～15世紀	ボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチア、モンテネグロ、セルビア
15世紀後半	ボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチア、モンテネグロ、セルビア

ステチュツィの制作と素材

ステチュツィは、主に石灰岩が使用されましたが、凝灰岩、蛇紋岩、粘板岩、礫岩の例もあります。大きな石を採るために、墓地は採石場の近くに設けられることが多く、碑文を刻む職人の工房も近郊で営業していました。

ステチュツィの制作には、熟練した職人の技術と知識が必要とされました。ステチュツィの装飾は、手作業で彫り込まれており、その精緻な技術は、今日でも多くの人々を魅了しています。

ステチュツィの素材
素材	特徴
石灰岩	最も一般的な素材
凝灰岩	比較的硬い素材
蛇紋岩	緑色の石材
粘板岩	薄い板状の石材
礫岩	砂利が固まった石材

ステチュツィの分布と数

ステチュツィは、ボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチア、モンテネグロ、セルビアの広範囲にわたって分布しています。特に、ボスニア・ヘルツェゴビナには、約6万のステチュツィが発見されています。

ステチュツィは、中世のボスニア王国や周辺地域の人々の生活や信仰を反映する重要な遺産です。ステチュツィは、その数と分布から、当時の社会構造や文化圏を理解する上で重要な資料となります。

まとめ

3. ステチュツィの特徴と役割

ステチュツィの形状と装飾

ステチュツィは、その形状や装飾によって、様々な種類に分類されます。代表的な形状には、スラブ型、石櫃型、切妻屋根型、十字架型、柱型などがあります。

ステチュツィの装飾には、宗教的なシンボル、太陽や月、星、渦巻き、ロゼット、十字、幾何学図形、動物、植物、武器、道具など、様々なモチーフが用いられています。

ステチュツィの装飾は、死者の身分や地位、信仰、社会的な役割などを反映していると考えられています。また、ステチュツィの装飾は、当時の芸術や文化水準を示すものでもあります。

ステチュツィの装飾は、中世の人々の生活や信仰、社会構造を理解する上で重要な資料となります。また、ステチュツィの装飾は、当時の芸術や文化水準を示すものでもあります。

ステチュツィの形状
形状	特徴
スラブ型	単純な石板
石櫃型	箱のような形
切妻屋根型	∧形の屋根
十字架型	十字架の形
柱型	柱のような形

ステチュツィの碑文と意味

ステチュツィの多くには、碑文が刻まれています。碑文は、現在使われていないボスニア・キリル文字で書かれたものが多く、一部でラテン文字も見られます。

碑文の内容は、宗教的なフレーズ、故人の思想や信条、仕事、親族など、多岐にわたります。ステチュツィの碑文は、中世の人々の生活や信仰、社会構造を理解する上で貴重な資料となります。

ステチュツィの装飾
モチーフ	意味
宗教的なシンボル	キリスト教、土着の宗教
太陽や月	天体信仰
星	天体信仰
渦巻き	生命力、永遠
ロゼット	花、美しさ
十字	キリスト教
幾何学図形	秩序、美しさ
動物	動物信仰、象徴
植物	自然信仰、象徴
武器	武勇、権力
道具	生活、仕事

ステチュツィの役割と意義

ステチュツィは、単なる墓石ではなく、その地域の人々の文化や歴史を伝える重要なシンボルです。ステチュツィは、中世の人々の生活や信仰、社会構造を理解する上で重要な資料となります。

ステチュツィは、中世ヨーロッパにおける宗教的多様性を示す貴重な遺産でもあります。ステチュツィは、その芸術的な美しさから、訪れる人々に強い印象を与えます。

ステチュツィは、その芸術的な美しさから、訪れる人々に強い印象を与えます。ステチュツィは、中世ヨーロッパにおける宗教的多様性を示す貴重な遺産でもあります。

まとめ

ステチュツィは、その形状や装飾、碑文などによって、様々な種類に分類されます。代表的な形状には、スラブ型、石櫃型、切妻屋根型、十字架型、柱型などがあります。

4. 中世墓碑ステチュツィの分布と様式

ステチュツィの分布

ステチュツィの分布
地域	数
ボスニア・ヘルツェゴビナ	約6万
クロアチア	約1万
セルビア	約1万
モンテネグロ	約1万

ステチュツィの様式

ステチュツィの様式
地域	形状	装飾
ボスニア・ヘルツェゴビナ	スラブ型、石櫃型	比較的シンプル
クロアチア	切妻屋根型、十字架型	複雑
セルビア	スラブ型、石櫃型、切妻屋根型、十字架型、柱型	多様
モンテネグロ	スラブ型、石櫃型、切妻屋根型、十字架型、柱型	多様

ステチュツィの地域性

ステチュツィは、地域によって、形状や装飾に特徴が見られます。例えば、ボスニア・ヘルツェゴビナのステチュツィは、スラブ型や石櫃型が多く、装飾も比較的シンプルです。

一方、クロアチアのステチュツィは、切妻屋根型や十字架型が多く、装飾もより複雑です。ステチュツィの地域性は、当時の社会構造や文化圏の違いを反映していると考えられています。

ステチュツィの地域性は、当時の社会構造や文化圏の違いを反映していると考えられています。ステチュツィは、地域によって、形状や装飾に特徴が見られます。例えば、ボスニア・ヘルツェゴビナのステチュツィは、スラブ型や石櫃型が多く、装飾も比較的シンプルです。

まとめ

ステチュツィは、中世の人々の生活や信仰、社会構造を理解する上で重要な資料となります。また、ステチュツィは、当時の芸術や文化水準を示すものでもあります。

5. 世界遺産に登録された中世墓碑ステチュツィ

世界遺産登録の経緯

ステチュツィは、2016年にユネスコの世界遺産リストに正式登録されました。登録されたのは、ボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチア、モンテネグロ、セルビアの4カ国にわたる28の墓地です。

ステチュツィは、世界遺産登録基準の(iii)「現存するか消滅しているかにかかわらず、ある文化的伝統又は文明の存在を伝承する物証として無二の存在(少なくとも希有な存在)である。」と(vi)「顕著な普遍的価値を有する出来事(行事)、生きた伝統、思想、信仰、芸術的作品、あるいは文学的作品と直接または実質的関連がある(この基準は他の基準とあわせて用いられることが望ましい)」の2つの基準を満たしています。

世界遺産登録情報
項目	内容
登録年	2016年
登録基準	(iii) 現存するか消滅しているかにかかわらず、ある文化的伝統又は文明の存在を伝承する物証として無二の存在(少なくとも希有な存在)である。 (vi) 顕著な普遍的価値を有する出来事(行事)、生きた伝統、思想、信仰、芸術的作品、あるいは文学的作品と直接または実質的関連がある(この基準は他の基準とあわせて用いられることが望ましい)
登録された墓地数	28
登録された国	ボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチア、モンテネグロ、セルビア

世界遺産登録の意義

ステチュツィの世界遺産登録は、中世ヨーロッパの文化や歴史を理解する上で重要な意味を持ちます。ステチュツィは、当時の社会構造、宗教、文化、芸術などを反映する貴重な遺産です。

ステチュツィの世界遺産登録は、ボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチア、モンテネグロ、セルビアの4カ国にとって、文化的な誇りであり、国際的な認知度を高める機会となります。

世界遺産登録後の取り組み

ステチュツィの世界遺産登録後、各国政府や国際機関は、ステチュツィの保護と保存のための取り組みを強化しています。ステチュツィは、自然環境や人為的な影響による劣化が進んでおり、保全活動が重要視されています。

ステチュツィの保護と保存のための取り組みには、遺跡の修復、周辺環境の整備、観光客の増加による影響の抑制などが含まれます。ステチュツィは、未来に向けてその価値を守り続けていくべき重要な文化財です。

まとめ

6. 中世墓碑ステチュツィが物語る歴史

ステチュツィとボスニア教会

ステチュツィは、ボスニア教会の墓地によく見られます。ボスニア教会は、ローマ・カトリック教会や東方正教会とは異なる、独自のキリスト教の宗派でした。

ボスニア教会は、12世紀にボスニア王国で興り、15世紀にオスマン帝国の支配下に入ると衰退していきました。ボスニア教会は、カトリック教会や正教会から異端とみなされることもありました。

しかし、ボスニア教会は、独自の信仰体系と文化を確立し、ステチュツィはその象徴的な存在でした。ステチュツィの装飾には、キリスト教的なモチーフと、土着の宗教的なモチーフが混在しているものもあります。

これは、ボスニア教会が、キリスト教と土着の信仰を融合させた独自の信仰体系を持っていたことを示唆しています。ステチュツィは、ボスニア教会の信仰や文化を理解する上で重要な役割を果たしています。

ボスニア教会
特徴	内容
宗派	独自のキリスト教の宗派
成立	12世紀
衰退	15世紀
信仰	キリスト教と土着の信仰を融合
ステチュツィ	象徴的な存在