ブルゴス大聖堂とは？世界遺産についての解説

ブルゴス大聖堂の概要
項目	内容
所在地	スペイン・カスティーリャ・イ・レオン州ブルゴス県ブルゴス
建設期間	1221年～1567年
建築様式	ゴシック様式、フランボワイヤン様式、プラテレスコ様式
世界遺産登録	1984年
登録基準	(ii)(iv)(vi)
見どころ	ファサード、内部、礼拝堂、聖像群、回廊、墓所
重要性	ゴシック様式の発展、スペインの芸術の発展、スペインの歴史と文化を象徴する場所

1. ブルゴス大聖堂の歴史

ブルゴス大聖堂の建設

ブルゴス大聖堂は、スペイン北部のブルゴス県ブルゴスにあるゴシック様式のカトリック教会の大聖堂です。正式名称はサンタ・マリア・デ・ブルゴス大聖堂といい、聖母マリアに捧げられた巨大な建築物として知られています。建設は1221年7月20日に、カスティーリャ王フェルナンド3世とイングランド出身のブルゴス司教マウリシオの命によって開始されました。建設は、以前のロマネスク様式の大聖堂があった場所で、完成に9年を要したアプスのシュヴ部分から着工されました。祭壇は最初に1260年に聖化されました。しかし、その後、建設はほぼ200年中断され、15世紀中頃に再開されました。これは100年以上も続けられ、各地から職人が集まり、壁画や聖歌隊席、ドーム天井、ステンドグラスなど、後期ゴシック様式の傑作とも呼ばれるものが多く作られました。

大聖堂の工事は、建物の交差部分上部のランタン尖塔が完成した1567年にようやく完成しました。建設期間は実に300年以上にも及びます。長い建設期間の中で、フランスやドイツなどヨーロッパ各地から芸術家や職人が集まったため、ヨーロッパ各地のゴシック様式が混在するという非常に珍しいものになりました。

ブルゴス大聖堂は、フランスのランス大聖堂を参考に設計されました。フランスの作業員が建設を進めましたが、設計者のエンリケの死とともに次第にスペインの建築家・作業員に引き継がれていきました。15世紀半ばに再開された工事では、ドイツ・ケルンの建築家フアン・デ・コロニアと息子シモンや、フランスの彫刻家フェリペ・ビガーニー（フェリペ・デ・ブルゴーニュ）らを中心とした国際チームが編成されました。

最終的に、スペインの建築家フアン・デ・バジェホとフアン・デ・カスタニェーダのふたりによって大聖堂は完成しました。完成時には、すでにブルゴス大聖堂は後期ゴシック様式の建築・芸術を代表する傑作との名声を得ていました。その後も名建築家と名彫刻家による作品が加えられ、ブルゴス大聖堂はスペイン屈指の大聖堂へと上り詰めたのです。

ブルゴス大聖堂の建設
時期	内容
1221年7月20日	建設開始
1260年	祭壇が聖化
1339年～1453年	百年戦争とペスト流行により中断
15世紀中頃	建設再開
1567年	完成

ブルゴス大聖堂とエル・シッド

ブルゴス大聖堂は、レコンキスタ（スペインにおけるキリスト教勢力によるイスラム教勢力からの国土回復運動）で活躍した英雄エル・シッドことロドリーゴ・ディアス・デ・ビバールとその妻ドーニャ・ヒメーナの墓所としても有名です。エル・シッドはブルゴス郊外のビバールで生まれ、レコンキスタの英雄と称えられています。

エル・シッドは、11世紀後半にレコンキスタで活躍した英雄です。彼はブルゴス郊外のビバールで生まれ、レコンキスタの英雄としてスペインの歴史に名を刻んでいます。エル・シッドは、ブルゴス大聖堂の十字形の交差廊に立つシンボリオと呼ばれる八角形の塔の下の床に、妻のドーニャ・ヒメナとともに埋葬されています。

エル・シッドは、カスティーリャ王国の王族や貴族から信頼され、レコンキスタの重要な役割を担いました。彼の功績は、スペインの歴史において重要な位置を占めており、ブルゴス大聖堂は、彼の功績を称えるとともに、スペインの歴史と文化を象徴する場所となっています。

ブルゴス大聖堂は、エル・シッドの墓所であるだけでなく、レコンキスタやスペイン統一の歴史と密接に関係しています。祭壇の下には初期のカスティリャ王家の棺の数々も安置されており、フェルナンド3世による大聖堂の建設はカスティリャとスペイン王政の象徴的な出来事でもありました。

ブルゴス大聖堂とエル・シッド
人物	内容
エル・シッド	レコンキスタの英雄
ドーニャ・ヒメナ	エル・シッドの妻
墓所	ブルゴス大聖堂のシンボリオと呼ばれる八角形の塔の下の床

ブルゴス大聖堂の世界遺産登録

ブルゴス大聖堂は、1984年にユネスコの世界遺産に登録されました。登録基準は、(ii)大聖堂は13世紀にフランスのゴシック様式を普及させ、15・16世紀には各地から芸術家や建築家、彫刻家が集まったりと、長年に渡って建築と芸術の発展に影響を与えていたという点、(iv)4世紀以上にわたって工事が続いた大聖堂は、建築家や彫刻家、職人の技術力の高さを証明しているという点、(vi)エル・シッドなど、レコンキスタで活躍した貴族が眠っていたりと、大聖堂はレコンキスタやスペイン統一の歴史と関係しているということです。

ブルゴス大聖堂は、4世紀に渡って工事が続いた結果、ゴシック様式の発展の歴史が見られる博物館のような大聖堂になりました。そして、建設を命じたフェルナンド3世はレコンキスタを完了させた人物であり、大聖堂そのものが、レコンキスタやスペイン統一のシンボルともなっているというのもポイントです。

ブルゴス大聖堂は、スペインで唯一、建築物単独で世界遺産に登録されています。これは、その建築的、芸術的、歴史的な価値が世界的に認められたことを意味しています。ブルゴス大聖堂は、ゴシック建築の発展とその時代の文化を今に伝える重要なシンボルとして、世界的な評価を受けています。

ブルゴス大聖堂は、世界遺産登録基準を満たすだけでなく、その建築美とともに多くの芸術品を収容しており、スペインで唯一、その建物だけでUNESCOの世界遺産に指定されています。ブルゴス大聖堂は、そのゴシック様式の美しさ、そして数世紀にわたる芸術と歴史の融合を体験できる場所として、訪れる価値があります。

ブルゴス大聖堂の世界遺産登録
登録年	1984年
登録基準	(ii)(iv)(vi)
内容	建築と芸術の発展への影響、建築家や職人の技術力、レコンキスタやスペイン統一の歴史との関係

まとめ

ブルゴス大聖堂は、13世紀に建設が始まり、16世紀に完成した、スペインを代表するゴシック様式の大聖堂です。建設には300年以上もの歳月を要し、フランスやドイツなどヨーロッパ各地から集まった芸術家や職人の技術が結集されています。

ブルゴス大聖堂は、レコンキスタの英雄エル・シッドの墓所としても有名で、スペインの歴史と文化を象徴する場所となっています。また、1984年にユネスコの世界遺産に登録され、その建築的、芸術的、歴史的な価値が世界的に認められています。

ブルゴス大聖堂は、ゴシック様式の発展の歴史を目の当たりにすることができる貴重な建造物です。その壮大さと美しさは、訪れる人々に感動を与え、忘れられない思い出となるでしょう。

ブルゴス大聖堂は、スペインの歴史、文化、芸術を凝縮した場所です。その建築美と歴史的背景を理解することで、スペインの文化への理解を深めることができるでしょう。

2. ブルゴス大聖堂の建築様式

ゴシック様式

ブルゴス大聖堂は、フランスのランス大聖堂を参考に設計されたゴシック様式の大聖堂です。ゴシック様式は、12世紀後半から16世紀にかけてヨーロッパで流行した建築様式です。特徴としては、尖塔やアーチ、ステンドグラスなどが挙げられます。

ブルゴス大聖堂は、フランスのゴシック様式の影響を強く受けていますが、スペイン独自の要素も取り入れられています。例えば、15世紀にドイツ人の建築家ファン・デ・コロニアが建築に携わると、フランボワイヤン様式という、燃え上がる炎の形のような装飾が取り入れられました。また、細やかな浮き彫りの装飾は、イスラムの銀細工の手法を取り入れたプラテレスコ様式という方法が導入されています。

ブルゴス大聖堂は、フランスのゴシック様式をベースにしながらも、スペイン独自の要素を取り入れることで、独自の美しさを生み出しています。

ブルゴス大聖堂は、ゴシック様式の中でも特に優れたものとして認められています。繊細な窓のトレーサリー、壮麗なヴォールト天井、そしてその他のアーキテクチャルな特徴は、ゴシック建築の特徴と発展を体現しています。

ゴシック様式
特徴	内容
尖塔	高くそびえ立つ塔
アーチ	窓や扉の上部を飾るアーチ
ステンドグラス	窓に嵌め込まれた色ガラス

フランボワイヤン様式

フランボワイヤン様式は、14世紀後半から16世紀にかけてフランスで流行したゴシック様式の変種です。特徴としては、炎のような曲線や反曲線を用いた装飾が挙げられます。

ブルゴス大聖堂では、15世紀にドイツ人の建築家ファン・デ・コロニアが建築に携わった際に、フランボワイヤン様式が取り入れられました。特に、元帥の礼拝堂では、曲線を用いた装飾、騎士や天使の像、紋章などで飾り立てられています。

フランボワイヤン様式は、ゴシック様式に華やかさとダイナミックさを加えた様式です。ブルゴス大聖堂では、フランボワイヤン様式が、ゴシック様式の厳粛さを和らげ、華麗な雰囲気を醸し出しています。

フランボワイヤン様式は、ゴシック様式の中でも特に装飾的な様式です。ブルゴス大聖堂では、フランボワイヤン様式が、ゴシック様式の建築に華やかさとダイナミックさを加え、独特の美しさを生み出しています。

フランボワイヤン様式
特徴	内容
装飾	炎のような曲線や反曲線
例	元帥の礼拝堂

プラテレスコ様式

プラテレスコ様式は、16世紀初頭にスペインで流行した建築様式です。特徴としては、細やかな浮き彫りの装飾が挙げられます。

ブルゴス大聖堂では、プラテレスコ様式が、ゴシック様式の建築に華やかさと繊細さを加えています。特に、聖歌隊席や主祭壇など、内部の装飾に多く見られます。

プラテレスコ様式は、イスラムの銀細工の手法を取り入れた装飾様式です。繊細な彫刻や装飾は、ゴシック様式の建築に華やかさと洗練された美しさを加えています。

プラテレスコ様式は、スペイン独自の建築様式です。ブルゴス大聖堂では、プラテレスコ様式が、ゴシック様式の建築に華やかさと繊細さを加え、スペインらしい独特の雰囲気を醸し出しています。

プラテレスコ様式
特徴	内容
装飾	細やかな浮き彫り
例	聖歌隊席、主祭壇

まとめ

ブルゴス大聖堂は、ゴシック様式を基調としつつも、フランボワイヤン様式やプラテレスコ様式など、様々な建築様式が融合した、非常に個性的な建築物です。

フランスのゴシック様式をベースにしながらも、スペイン独自の要素を取り入れることで、独自の美しさを生み出しています。

ブルゴス大聖堂は、ゴシック様式の発展と、スペイン独自の建築様式の融合を見ることができる貴重な建造物です。

ブルゴス大聖堂は、ゴシック様式とスペイン独自の建築様式の融合によって、壮大で美しい建築物となっています。

3. ブルゴス大聖堂の見どころ

ファサード

ブルゴス大聖堂のファサードは、立体的なアーチで飾られた三つの入り口があります。その上は六角形の尖塔が建ち、土台となった方形の塔に、頂点が尖ったアーチ状の窓に石の縁取り（トレーサリー）が施されています。

トレーサリーは狭間飾りとも呼ばれ、窓を幾何学模様や花、葉等の形に加工して仕切り、ステンドグラスを嵌め込んだりします。後期ゴシック様式になると、このような飾りを壁面や仕切りに施すようになって行きます。

その更に上には、二連の頂点が尖ったアーチ状の窓が作られて、台座に乗せられた像が配置されています。ベランダの真ん中は聖母マリアで、手摺りには「PULCHRA ES ET DECORA (“Beautiful art Thou

真ん中の入り口の上には繊細な模様がくり抜かれ、ステンドグラスが嵌め込まれた薔薇窓があり、光が入ってくる様子は圧巻の一言です。

ファサード
部分	内容
入り口	立体的なアーチで飾られた三つの入り口
尖塔	六角形の尖塔
窓	頂点が尖ったアーチ状の窓
バラ窓	ステンドグラスが嵌め込まれた円形の窓

内部

ブルゴス大聖堂の内部は、ゴシック様式や、スペイン特有の細かなルネサンス装飾を特徴とするプラテレスコ様式、過剰なまでのバロック装飾を盛り込んだチュリゲラ様式といった多彩な装飾で覆われています。

たとえば黄金のゴシック彫刻で覆われた主祭壇、彫刻家フェリペ・ビガーニーによるプラテレスコ様式の装飾で彩られたクワイヤ（内陣の一部で聖職者や聖歌隊のためのスペース）、彫刻家ディエゴ・デ・シロエによるプラテレスコ様式の黄金の階段といった具合です。

ブルゴス大聖堂の内部は、ゴシック様式とルネサンス様式が融合した、非常に華麗な空間です。

内部
様式	内容
ゴシック様式	尖塔やアーチ、ステンドグラス
プラテレスコ様式	細やかな浮き彫り装飾
チュリゲラ様式	過剰なバロック装飾
見どころ	主祭壇、クワイヤ、黄金の階段

礼拝堂

ブルゴス大聖堂には、23の礼拝堂があります。

中でも有名なのが「元帥の礼拝堂」です。1492年にイスラム教徒からグラナダを奪回したベラスコ元帥を記念して造られたもので、天井のステンドグラスの美観が素晴らしいです。

また、ダ・ヴィンチの弟子によるマグダラのマリアの絵が展示されていますが、一説では一部をダ・ヴィンチ本人が手がけているのではと言われています。

ブルゴス大聖堂の礼拝堂は、それぞれに特徴があり、見ごたえがあります。

礼拝堂
礼拝堂	内容
元帥の礼拝堂	ベラスコ元帥を記念した礼拝堂
マグダラのマリアの絵	ダ・ヴィンチの弟子による絵画

まとめ

ブルゴス大聖堂は、ファサード、内部、礼拝堂など、見どころ満載です。

特に、ファサードの尖塔やバラ窓、内部の装飾、元帥の礼拝堂は必見です。

ブルゴス大聖堂は、ゴシック様式とルネサンス様式が融合した、非常に美しい建築物です。

4. ブルゴス大聖堂の聖像群

ポルタダ・デ・ラ・コロネリア

北交差廊の入口上部には、12使徒像を彫り込んだ「ポルタダ・デ・ラ・コロネリア」があります。別名「使徒の扉」とも言われるこれは1250年ごろの作といわれています。

最後の審判を描いた彫刻で、左に聖母マリア、右に洗礼者ヨハネが中央のキリストを囲み、その下では大天使ミカエルが魂を裁いています。その周りを天使達が尖塔型アーチで取り囲み、扉の両脇には使途が六人ずつ並んでいます。

ポルタダ・デ・ラ・コロネリアは、ブルゴス大聖堂の重要な彫刻の一つです。

ポルタダ・デ・ラ・コロネリア
内容	説明
彫刻	最後の審判を描いた彫刻
像	キリスト、聖母マリア、洗礼者ヨハネ、大天使ミカエル、使徒

サルメンタルのファサード

南のサルメンタルのファサードもギャラリー、バラ窓、サルメンタル門という構成で、ギャラリーや門は精緻な彫刻やレリーフで彩られています。

中央で本を手にしているのがイエス・キリスト。キリストを囲む４人のエヴァンゲリスタは、マタイ(Mateo)・マルコ（Marcos）・ルカ(Lucas)・ヨハネ(Juan)。4人？と思われるでしょうが、Tetramorfos（テトラモルフォス）という図像学で、人物がMateo、獅子がMarcos、牛がLucas、ワシがJuanを表すようです。

サルメンタルのファサードは、ブルゴス大聖堂のもう一つの見どころです。