項目 | 内容 |
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制度開始時期 | 1997年7月 |
制度廃止時期 | 2018年3月31日 |
目的 | 未公開企業への資金調達を円滑化し、投資家の換金の場を確保する |
運営主体 | 日本証券業協会 |
取引方法 | 銘柄ごとに指定された証券会社を通じてのみ売買可能 |
情報開示 | 上場会社並みの情報開示が求められる |
区分 | エマージング、オーディナリー、投信・SPC |
1. グリーンシート銘柄とは何か
グリーンシート銘柄制度の概要
グリーンシート銘柄とは、日本証券業協会が1997年7月から2018年3月まで設けていた制度で、非上場企業の株式(店頭取扱有価証券)などを売買できるようにしたものです。この制度に登録されている銘柄のことを指す場合もあります。グリーンシートという呼称は、アメリカ合衆国のピンクシート (Pink Sheets)を範としつつ、若い樹木が若葉を次々と芽吹きながら大きく成長していくように、ベンチャー企業が若々しくいきいきと活動・成長していくようにとの願いが込められています。
グリーンシート制度は、未公開企業への資金調達を円滑化し、また投資家の換金の場を確保することを目的としていました。金融商品取引法上の取引所市場とは異なったステータスで運営され、証券会社が審査した上で、日本証券業協会に申請、当該証券会社が継続的に売買の気配を提示していました。銘柄ごとに証券会社が指定され、その証券会社を通じてしか売買できませんでした。
上場会社並みの情報公開が求められていたため、指定されたものの取り消される銘柄が多く、ほとんど商いができていないのが現状でした。クラウドファンディングの合法化に伴い、2018年3月末でこの制度は廃止されました。
区分 | 内容 |
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エマージング | 成長性を有する企業が発行する株券等 |
オーディナリー | グリーンシート銘柄として適当と判断された企業が発行する株券等 |
投信・SPC | 優先出資証券や投資証券のうち、適当と判断されたもの |
グリーンシート銘柄の廃止理由
グリーンシート制度が廃止された理由は、大きく分けて2つあります。1つは、スタートアップ企業が資金調達をしやすいよう、マザーズなどの新興市場の上場基準が引き下げられたことで、グリーンシート銘柄制度がもつ上場株式市場の補完的役割が薄れてきたことです。もう1つは、グリーンシート銘柄には上場企業と同様に情報開示の義務があり、それが未上場企業にとって重荷になっていたことです。
グリーンシート銘柄には、四半期ごとの決算開示や適時開示など、TDnetを利用し上場会社並みの情報開示が求められていました。監査法人による監査も必要で、監査で適法意見がもらえず、決算が確定しない場合にはグリーンシート銘柄の指定が取り消される場合もありました。
成長性のある企業を呼び込む狙いもありましたが、20年間で東京証券取引所などに上場した企業は約15社にとどまりました。2005年の制度改正で、信頼性を高めるために導入した適時開示義務が、市場の拡大の足かせになったともいわれています。
理由 | 内容 |
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上場基準の引き下げ | マザーズなどの新興市場の上場基準が引き下げられたことで、グリーンシート銘柄制度の役割が薄れた |
情報開示の負担 | 上場企業並みの情報開示が求められ、未上場企業にとって負担が大きかった |
グリーンシート銘柄の区分
グリーンシート銘柄は、その発行会社の特徴により、次の3つに区分されていました。\n1. エマージング:成長性を有する等によりグリーンシート銘柄として適当であると判断された企業が発行する株券等を指定する銘柄区分\n2. オーディナリー:グリーンシート銘柄として適当であると判断された企業が発行する株券等を指定する銘柄区分\n3. 投信・SPC:優先出資証券及び投資証券のうち、証券会社において審査を行った結果、グリーンシート銘柄として適当であると判断されたものを指定する銘柄区分
まとめ
グリーンシート銘柄は、非上場企業の株式を売買するための制度として、1997年から2018年まで存在していました。しかし、上場基準の引き下げや情報開示の負担などにより、利用が拡大せず、2018年に廃止されました。
グリーンシート銘柄は、上場を目指す企業にとって、資金調達や知名度向上のための手段として期待されていましたが、実際には、上場に至るケースは少なく、多くの企業にとって負担が大きかったようです。
グリーンシート銘柄制度は、日本の資本市場の裾野を広げる取り組みとして、一定の役割を果たしましたが、時代の変化とともに、その役割を終えたと言えるでしょう。
2. グリーンシート銘柄の特徴
取引の仕組み
グリーンシート銘柄の売買は、銘柄ごとに指定された取扱会員または準取扱会員を通してでないと行うことができません。グリーンシート銘柄を取り扱っている証券会社であっても、その銘柄を取り扱っていなければ売買できません。
取引所上場企業と同様の手順で、証券コードも付与されます。売買は、原則として約定日から起算して4日目(休業日を除く)の日に、証券会社が提示する気配値を参考に、顧客と証券会社間の相対売買で行われます。
グリーンシート銘柄は、上場証券よりかなり少なく、流動性が低いため、短期売買は困難であり、換金リスクがあります。
情報開示の義務
グリーンシート銘柄には、四半期ごとの決算開示や適時開示など、TDnetを利用し上場会社並みの情報開示が求められます。このため、監査法人による監査が求められます。監査で適法意見がもらえず、決算が確定しない場合にはグリーンシート銘柄の指定が取り消される場合もあります。
情報開示の負担は、上場企業と変わらないレベルであり、これから事業の成長性を加速させようとする企業にとって、適時開示の義務に対応できる企業が多くないのが現状です。
リスク
グリーンシート銘柄は、上場証券に比べてリスクが高いと言われています。流動性が低いため、希望する価格で売買できない場合や、長期間売買が成立しない場合があり、換金リスクも高いです。
また、企業の財務体質が脆弱な場合や、情報開示が不十分な場合もあり、投資判断を誤ると大きな損失を被る可能性があります。
まとめ
グリーンシート銘柄は、非上場企業の株式を売買できる制度でしたが、上場会社並みの情報開示が求められるなど、投資家にとってリスクの高い側面がありました。
流動性も低く、短期売買は困難で、換金リスクも高いため、投資する際には十分な注意が必要です。
グリーンシート銘柄は、2018年に廃止されましたが、未上場企業の株式投資は、依然としてリスクの高い投資であることを理解しておく必要があります。
3. グリーンシート銘柄への投資メリット
社会貢献
グリーンシート銘柄への投資は、間接的な環境保全活動になります。投資により、資金面で環境保全活動を支援していることになるからです。同じ投資でも、社会貢献につながるのであれば、投資を行う意義も大きくなるでしょう。
また、環境保全が進めば自分自身の暮らしも豊かになります。排気ガスによる疾病リスクを低減できたり、健康的な食物が手に入りやすくなったりと、環境保全が日常生活に大きく影響するからです。
きれいな海で泳げるようになるなど、身近な環境が良くなると考えれば、グリーンシート銘柄への投資は大きなメリットといえます。
収益拡大
グリーンシート銘柄への投資により、収益の拡大が期待できます。環境問題は世界的にも長期的にも注目が高い分野といえるからです。
社会的な関心が今よりも高まれば、投資した企業の活動も高く評価されます。企業収益の向上も望めるため、投資家へのリターンも期待できるでしょう。
また、環境に配慮した事業は政府が力を入れている分野でもあるため、多くの助成や支援制度が存在します。企業が成長しやすい環境ともいえるので、長期的で大きなリターンの獲得も期待できるでしょう。
グリーンウォッシュへの注意
グリーンシート銘柄への投資には、グリーンウォッシュに注意する必要があります。グリーンウォッシュとは、表面的には環境への配慮を掲げているが、実際には配慮されていない状況を指します。
たとえば、製造過程における二酸化炭素の排出量がゼロと表示された製品が、実際には多くの二酸化炭素を排出していた場合などです。
グリーンウォッシュを正しく見極めなければ、社会貢献ではなく環境破壊に加担してしまう可能性があります。グリーンウォッシュが発覚した企業であれば、リターンの獲得も難しいでしょう。
まとめ
グリーンシート銘柄への投資は、社会貢献と収益拡大の両方を期待できる魅力的な投資方法です。しかし、グリーンウォッシュに注意する必要があります。
グリーンウォッシュを見抜くためには、企業の事業内容や情報開示をしっかりと調べる必要があります。
グリーンシート銘柄への投資は、リスクとリターンのバランスを考慮し、慎重に判断することが重要です。
4. グリーンシート銘柄の選び方
企業の成長性
グリーンシート銘柄を選ぶ際には、まず企業の成長性を評価することが重要です。企業の事業内容や市場規模、競合状況などを分析し、将来的な成長可能性を見極める必要があります。
特に、グリーンシート銘柄は、未上場企業であるため、上場企業と比べて情報が少ない場合があります。そのため、企業の経営陣や事業計画、財務状況などを詳しく調べる必要があります。
企業の成長性を見極めるためには、企業のホームページやIR資料、業界レポートなどを参考にすると良いでしょう。
経営陣の質
企業の成長性だけでなく、経営陣の質も重要な要素です。経営陣の経験や能力、ビジョンなどを評価し、企業を成長させることができるかどうかを見極める必要があります。
経営陣の質を評価するためには、企業のホームページやIR資料、メディア記事などを参考にすると良いでしょう。
財務状況
企業の財務状況も重要な要素です。企業の収益性、安全性、成長性などを評価し、投資する価値があるかどうかを見極める必要があります。
財務状況を評価するためには、企業の決算資料や財務諸表などを参考にすると良いでしょう。
まとめ
グリーンシート銘柄を選ぶ際には、企業の成長性、経営陣の質、財務状況などを総合的に評価することが重要です。
情報が少ない未上場企業への投資は、リスクが高いことを理解した上で、慎重に判断する必要があります。
投資する前に、十分な調査を行い、リスクとリターンのバランスを考慮することが重要です。
5. グリーンシート銘柄投資の注意点
流動性リスク
グリーンシート銘柄は、上場証券に比べて流動性が低いため、希望する価格で売買できない場合や、長期間売買が成立しない場合があり、換金リスクも高いです。
そのため、グリーンシート銘柄への投資は、長期的な視点で、売却時期を柔軟に考えて行う必要があります。
情報リスク
グリーンシート銘柄は、上場企業と比べて情報が少ない場合があります。そのため、企業の経営状況や財務状況などを把握することが難しく、投資判断を誤る可能性があります。
投資する前に、企業のホームページやIR資料、業界レポートなどを参考に、十分な調査を行う必要があります。
信用リスク
グリーンシート銘柄は、未上場企業であるため、上場企業と比べて信用リスクが高い場合があります。企業の経営状況が悪化したり、経営陣が交代したりした場合、投資した資金が損失になる可能性があります。
そのため、グリーンシート銘柄への投資は、リスク許容度が低い投資家には適していないと言えます。
まとめ
グリーンシート銘柄への投資は、流動性リスク、情報リスク、信用リスクなど、様々なリスクを伴います。
投資する前に、これらのリスクを十分に理解し、リスク許容度に見合った投資を行う必要があります。
グリーンシート銘柄への投資は、経験豊富な投資家や、リスク許容度が高い投資家に向いていると言えます。
6. グリーンシート銘柄とエコロジーの関係
グリーンシート銘柄と環境問題
グリーンシート銘柄は、非上場企業の株式を売買できる制度であり、環境問題に配慮した事業を行う企業の株式も含まれていました。
環境問題に配慮した事業は、社会的に注目を集めやすく、成長性も期待できるため、グリーンシート銘柄として登録されるケースもありました。
グリーン投資との関連
グリーンシート銘柄への投資は、グリーン投資の一種と捉えることもできます。グリーン投資とは、環境問題の解決に貢献できる投資方法であり、SDGsの普及に伴って注目度が高まっている投資方法です。
グリーンシート銘柄の中には、再生可能エネルギーや環境保護技術などの分野で事業を行う企業も含まれていました。
グリーンウォッシュへの注意
グリーンシート銘柄を選ぶ際には、グリーンウォッシュに注意する必要があります。グリーンウォッシュとは、表面的には環境への配慮を掲げているが、実際には配慮されていない状況を指します。
グリーンシート銘柄の中には、環境問題に配慮していることを強調している企業も存在しますが、実際には環境負荷の高い事業を行っている企業も存在する可能性があります。
グリーンウォッシュを見抜くためには、企業の事業内容や情報開示をしっかりと調べる必要があります。
まとめ
グリーンシート銘柄は、環境問題に配慮した事業を行う企業の株式も含まれており、グリーン投資の一種と捉えることもできます。
しかし、グリーンウォッシュに注意する必要があります。企業の事業内容や情報開示をしっかりと調べ、本当に環境問題に配慮した事業を行っている企業かどうかを見極めることが重要です。
グリーンシート銘柄への投資は、社会貢献と収益拡大の両方を期待できる魅力的な投資方法ですが、リスクとリターンのバランスを考慮し、慎重に判断することが重要です。
参考文献
・グリーンシート銘柄 | 金融・証券用語解説集 | 大和証券
・わかりやすい用語集 解説:グリーンシート銘柄(ぐりーんしー …
・気配公表銘柄(グリーンシート銘柄) 制度について – Chisso
・グリーンシート銘柄とは?株式用語解説 – お客様サポート – Dmm 株
・グリーンシート銘柄とは? わかりやすく解説 – Weblio 辞書
・非上場株取引の「グリーンシート」20年の歴史に幕 – J-cast …
・PDF グリーンシート銘柄の取引に関する説明書グリーンシート銘柄 …
・グリーンシートと株主コミュニティの歴史 ―日本の資本市場の …
・グリーンシート銘柄とは (株式用語解説) – クローズアップ株式
・グリーンシート市場 (グリーンシートシジョウ)とは? 意味や使い方 – コトバンク
・グリーン投資とは?Esg投資との違いや投資家のメリット、注意点について解説|経営コラム|中小企業の伴走型支援 株式会社ウィルリンクス 中小企業 …