格付け会社 | 設立 | 本社 | 特徴 |
---|---|---|---|
格付投資情報センター(R&I) | 1998年 | 日本 | 国内法人を中心に約800社を格付け。大企業、政府系機関など大規模発行体のカバー率が高い。 |
日本格付研究所(JCR) | 1985年 | 日本 | 国内系では唯一、米国の認定格付機関(NRSRO)となっている。国内法人を中心に、約800社を格付け。 |
S&Pグローバル・レーティング | 1941年 | アメリカ | 世界128カ国に展開、アナリスト数1500名を擁し、格付けした対象債券の総額は46兆ドル。 |
ムーディーズ | 1900年代初頭 | アメリカ | 全世界で40カ国以上に展開し、従業員数14000以上(アナリスト数ではない)、格付けした対象債券の総額は72兆ドル以上。 |
フィッチ・レーティングス | 1914年 | イギリス・アメリカ | 金融機関を中心におよそ8000先の発行体をカバー。 |
1. 格付け会社とは
格付けとは何か?
格付けとは、企業や国の債務返済能力の程度をアルファベットの記号で分かりやすく表したものです。格付けは、単純に企業が倒産する確率を表している訳ではありません。発行会社が倒産して社債がデフォルト(債務不履行)するリスク、すなわち「信用リスク」に加えて、社債がデフォルトしたときに社債を保有する投資家(社債権者)が債権回収できる可能性、すなわち「回収リスク」の両方を考慮して、格付けが決定されます。例えば、ある企業が同時に2つの社債を発行したとします。片方は他の社債に比べて社債がデフォルトしたときに社債権者の地位が著しく弱いとします(劣後債等)。どちらも発行会社は同じなので信用リスクは同じですが、それぞれ回収リスクが異なるため、この2つの社債は格付けが異なることがあります。
そのため、格付けには、発行体(債券の発行元)を対象としたものと、個別債務(社債等)を対象としたものがあります。
格付け | 定義 |
---|---|
AAA | 債務履行の確実性が最も高い。 |
AA | 債務履行の確実性は非常に高い。 |
A | 債務履行の確実性は高い。 |
BBB | 債務履行の確実性は認められるが、上位等級に比べて、将来債務履行の確実性が低下する可能性がある。 |
BB | 債務履行に当面問題はないが、将来まで確実であるとは言えない。 |
B | 債務履行の確実性に乏しく、懸念される要素がある。 |
CCC | 現在においても不安な要素があり、債務不履行に陥る危険性がある。 |
CC | 債務不履行に陥る危険性が高い。 |
C | 債務不履行に陥る危険性が極めて高い。 |
LD | 一部の債務について約定どおりの債務履行を行っていないが、その他の債務については約定どおりの債務履行を行っているとJCR が判断している。 |
D | 実質的にすべての金融債務が債務不履行に陥っているとJCR が判断している。 |
格付会社とは?
格付会社(格付機関)とは、企業の信用格付けを行う会社です。通常、その企業から依頼されて格付けを行います。
投資家の参考のために、依頼に基づかずに格付を行うこともあります。頼まれていないのに格付会社が勝手に格付しているので、「勝手格付」と呼ばれています。
信用格付はどんな業者でも行うことができますが、金融商品取引法第66条の27に基づく登録を受けた信用格付業者以外が格付を行う場合は、無登録業者である旨を明示しなければいけません。
金融商品取引法第66条の27に基づく登録を受けた信用格付業者は次の7社です。
信用格付業者 | 設立 |
---|---|
株式会社格付投資情報センター(R&I) | 1998年 |
株式会社日本格付研究所(JCR) | 1985年 |
S&Pグローバル・レーティング・ジャパン | 1941年 |
ムーディーズ・ジャパン | 1900年代初頭 |
フィッチ・レーティングス・ジャパン | 1914年 |
格付けの種類
投資適格とは投資に適した格付のことで、一般的に格付が「BBB」以上のものをいいます。ムーディーズ・ジャパンでは「Baa」以上が投資適格です。個人向け社債は、基本的に投資適格のものだけが新規発行されます。格付が「BB」以下は投機的水準とされます。格付が「BB」以下の債券は「ジャンク債」または「ハイ・イールド債」と呼ばれます。
まとめ
格付けは、企業や国の債務返済能力を客観的に評価する指標であり、投資家にとって重要な判断材料となります。格付けは、発行体と個別債務の2種類があり、格付会社は金融商品取引法に基づいて登録されています。
格付けは、投資適格と投機的格付けに分けられ、投資適格はBBB以上、投機的格付けはBB以下となります。
2. 格付け会社の役割
格付けの必要性
格付けが存在しない社債市場を想像してみましょう。債券を発行したい企業は、投資家たちに自らの事業の魅力を説明し、信頼を勝ち取る必要が生じます。
その反対に投資家は、投資の判断を下す前に、事業内容や財務健全性を詳しく調査・分析する必要に迫られるでしょう。このような過程には大きなコストがかかります。さらに、どの程度の利回りならば適切か、同時期に発行される別の会社の債券との比較から最も望ましい選択を判断する必要があります。
格付け機関による格付けは、これらの課題に対応しています。統一された評価基準を提供し、判断をしやすくする役割を持っています。
格付けの役割
よりフォーマルな表現で説明すると、格付けには以下の3つの大きな役割があります。
①「投資家と発行体の間の情報のギャップ(情報の非対称性)」を解消
②投資家は、格付けを活用することで「情報の収集や分析にかかるコスト」を削減
③複数の債券を一元的に比較することで、利回りの妥当性を判断する「価格発見」機能
役割 | 説明 |
---|---|
情報のギャップ解消 | 投資家と発行体の間の情報の非対称性を解消 |
コスト削減 | 投資家は、格付けを活用することで情報の収集や分析にかかるコストを削減 |
価格発見機能 | 複数の債券を一元的に比較することで、利回りの妥当性を判断する |
格付けと利回り
特に③の役割によって、格付けの高い債券ほど、返済される確率が高いことから利回りが低く、格付けが低い債券ほど返済されなくなる危険性が高いことから利回りが高くなります。
まとめ
格付け会社は、投資家と発行体の間の情報格差を解消し、投資判断を容易にする役割を担っています。
格付けは、投資家にとって情報の収集コスト削減、価格発見機能を提供し、債券の利回りの決定にも影響を与えます。
3. 主要な格付け会社
国内の格付け会社
日本で高いカバー率を誇る大手機関。日系では唯一、世界の開発銀行5行の格付けを行ってもいます。国内・海外大手の中で、一番高い格付けをする傾向があるといわれています。
日本経済新聞社の社内で発足した「公社債研究会」に端を発する機関。現在は日経の連結子会社かつ特定子会社になっています。
格付け会社 | 特徴 |
---|---|
格付投資情報センター(R&I) | 国内法人を中心に約800社を格付け。大企業、政府系機関など大規模発行体のカバー率が高い。 |
日本格付研究所(JCR) | 国内系では唯一、米国の認定格付機関(NRSRO)となっている。国内法人を中心に、約800社を格付け。 |
海外の格付け会社
アメリカの2大格付け会社の1つ。もっとも厳しい格付けをする傾向があるといわれています。株式指数である「S&P 500」を発表している機関です。日本では「スタンダード&プアーズ・レーティング・ジャパン」と「日本スタンダード&プアーズ株式会社」が共同して国内の企業や債券の格付けを行っています。
こちらも米大手トップ2の1社。日本が発行体の債券についても、戦前から調査・評価を行ってきた歴史を持っています。現在、国内の信用格付業者では「ムーディーズ・ジャパン株式会社(Moody’s)」と「ムーディーズSFジャパン株式会社(Moody’s)」の2社が登録されています。
ロンドンとニューヨークに本拠地のある格付け会社。上記2社に続く、世界3番手の機関(イギリスの会社と米国の会社が合併してできた機関であることから)。日本では登録を受けた「フィッチ・レーティングス・ジャパン株式会社」があります。
格付け会社 | 特徴 |
---|---|
S&Pグローバル・レーティング | 世界128カ国に展開、アナリスト数1500名を擁し、格付けした対象債券の総額は46兆ドル。 |
ムーディーズ | 全世界で40カ国以上に展開し、従業員数14000以上(アナリスト数ではない)、格付けした対象債券の総額は72兆ドル以上。 |
フィッチ・レーティングス | 金融機関を中心におよそ8000先の発行体をカバー。 |
格付けの違い
では、それぞれの企業で何が違うのか解説していきましょう。
まず簡単なところでは、格付けに使われる記号が違います。大まかにいえば、どの企業もABCDのランクを付けていて、AからBの上位あたりまでが「投資適格」、Bの下のほうとC・Dは「投機的」とみなされます。ただ、同じAの中にもランクがあり、その表し方が異なります。例えば、Aの3番目はムーディーズなら「AA」、S&Pなら「Aa2」という具合です。
また、「国内の格付け会社」か「海外の格付け会社」という大きな違いもあります。国内の格付け会社は、主に日本の企業や、海外の金融機関の日本支社、国内の債券などを評価しています。日本の事情に精通しているので、国内企業の分析は「得意」であるといえます。また海外の格付け会社がフォローしていない中小企業の格付けもしています。
Moody’s(ムーディーズ)、S&P(スタンダード&プアーズ)、Fitch(フィッチ)などに代表される海外の格付け会社は、よりグローバルに格付けを広げています。これらの機関の格付けは、日本国や国内企業については、国内の格付け機関より辛い点をつける傾向があります。
まとめ
格付け会社は、国内と海外に様々な会社が存在し、それぞれ独自の基準で格付けを行っています。
格付けの記号や基準は会社によって異なるため、複数の格付け会社から評価を得て比較検討することが重要です。
4. 格付けの基準
格付けの基準
格付け会社は、独自の基準に基づいて企業や債券の信用力を評価しています。
格付けの基準は、企業の財務状況、経営状況、業界動向、経済状況など、様々な要素を総合的に判断して決定されます。
具体的には、企業の収益性、負債の状況、キャッシュフロー、経営体制、市場競争力、規制環境などが評価されます。
格付けの評価方法
格付け会社は、企業の財務諸表や経営計画書などの資料を分析し、インタビューや現地調査なども行うことで、企業の信用力を評価します。
格付けの評価方法は、定量的な分析と定性的な分析を組み合わせることで行われます。
定量的な分析では、財務比率や統計データなどを用いて、企業の財務状況を客観的に評価します。
定性的な分析では、企業の経営戦略、経営体制、業界動向、経済状況などを考慮して、企業の将来性を評価します。
格付けの透明性
格付けの透明性は、格付けの信頼性を高める上で非常に重要です。
格付け会社は、格付けの基準や評価方法を公開することで、格付けの透明性を高める努力をしています。
しかし、格付けの基準は複雑で、すべての情報が公開されているわけではありません。
そのため、格付けの透明性については、常に議論が続いています。
まとめ
格付けは、企業の財務状況、経営状況、業界動向、経済状況など、様々な要素を総合的に判断して決定されます。
格付け会社は、定量的な分析と定性的な分析を組み合わせることで、企業の信用力を評価します。
格付けの透明性は、格付けの信頼性を高める上で重要であり、格付け会社は格付けの基準や評価方法を公開することで、透明性を高める努力をしています。
5. 格付けがリスクに与える影響
格付けと投資判断
格付けは、投資家にとって重要な情報源となり、投資判断に影響を与えます。
高い格付けを持つ企業や国に対しては、投資家からの信頼が高まり、低コストで資金調達が行えます。
逆に、低い格付けを持つ企業や国は、投資家からの信頼を失い、高い利子を支払わなければならないなどのデメリットが生じます。
格付けと市場への影響
格付けは市場全体に影響を与えることもあります。
例えば、ある企業や国の格付けが引き下げられると、その企業や国の信用力に対する不安が広がり、株価や債券価格が下落する傾向があります。
逆に、格付けが引き上げられると、市場への信用回復が期待されて株価や債券価格が上昇する場合もあります。
格付けの利点
格付けは企業や国の信用力を客観的に評価するため、市場参加者の信頼性を高める役割があります。
投資家は、格付け会社が独自の基準で企業や国を評価していることを知り、その評価結果を参考に投資判断を行うことができます。
高い格付けを持つ企業や国は、低コストで資金を調達することができます。投資家からの信頼が高く、信用リスクが低いと認識されるため、金利や利回りが低くなります。これにより、企業や国はより安定した資金調達を行うことができます。
まとめ
格付けは、投資家の投資判断、市場全体の動向、企業や国の資金調達に影響を与えます。
格付けは、市場参加者の信頼性を高め、情報の透明性を向上させる役割も担っています。
6. 格付けの将来性と課題
格付けの課題
格付けは、一定の基準に基づいて行われるべきですが、実際には主観的な要素が含まれることがあります。
格付け会社は独自の評価基準を持っており、その基準が透明性に欠ける場合や、適切なデータや情報がない場合には、格付けの信頼性が低くなる可能性があります。
格付けは一度行われた後、ある程度の期間有効とされますが、市場や企業の状況は絶えず変動しています。そのため、格付けが市場の実態に追いつかない場合があります。また、情報の更新や再評価には時間がかかるため、投資家や市場参加者は古い情報に基づいた判断をする可能性があります。これにより、格付けの役割が果たされない場合や、不正確な情報に基づいた投資判断が行われることがあります。
格付けの批判
格付けは、投資家や金融業界によって重要視される指標となっています。しかし、格付け会社が与える評価やランキングに過剰に依存することで、市場の健全性や正確な判断が失われる可能性があります。また、格付けの信頼性が低い場合には、信頼できない情報に基づいた投資判断が行われる可能性もあります。
格付け会社は、投資家や企業から直接依頼を受けて格付けを行うことがありますが、この場合、利害関係の問題が生じる可能性があります。格付け会社が依頼者や関係者に有利な評価を行うことで、クレーディビリティや公正性の問題が生じることがあります。また、格付け会社が格付けの結果によって報酬を得ることもあり、その場合には利益追求が格付けの正確性や公正性を損なう可能性があります。
格付けの将来性
格付けは、金融市場の健全性を支える上で不可欠な仕組みですが、変化する市場環境に合わせて、格付け制度自体の継続的な見直しも必要不可欠でしょう。
格付けの透明性向上、評価基準の精緻化、情報公開の強化、利害関係の排除など、様々な課題を克服していく必要があります。
格付け会社は、これらの課題に取り組むことで、格付けの信頼性を高め、金融市場の安定に貢献していくことが期待されます。
まとめ
格付けは、金融市場において重要な役割を果たしていますが、主観性、遅延、利害関係の問題など、様々な課題を抱えています。
格付けの信頼性を高めるためには、格付け会社の透明性向上、評価基準の精緻化、情報公開の強化、利害関係の排除など、様々な課題を克服していく必要があります。
格付けは、金融市場の健全性を支える上で不可欠な仕組みですが、変化する市場環境に合わせて、格付け制度自体の継続的な見直しも必要不可欠でしょう。
参考文献
・格付けとは?格付け会社や日本国債などの格付けを詳しく解説 …
・格付会社(カクヅケガイシャ)とは? 意味や使い方 – コトバンク
・格付けとは何?格付けの基礎や世界の格付会社&国債の格付けを …
・「格付け会社」ってなに | 注目記事 – 金融を目指す就活生必読のニュース・情報 | キャリタスファイナンス
・格付会社|用語解説|三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社
・格付けとは【話題の金融用語】 専門用語を初心者向けに解説 …
・格付けって何?【債券の基礎シリーズ㉒】|藤村大星(富裕層 …
・格付とは? 格付会社の信用格付で社債が投資適格かどうかが …