項目 | 内容 |
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定義 | 顧客が、注文を委託した取引参加者と異なる取引参加者との間で決済関連業務(先物取引の決済時における差金,オプション取引代金及び証拠金等の授受)を行う制度 |
目的 | 取引の効率化、コスト削減、リスク管理の向上 |
対象商品 | 先物取引、オプション取引、外国為替証拠金取引など |
メリット | 事務負担の軽減、証拠金所要額の削減、取引目的別の清算業務分散 |
デメリット | 追加手数料の発生、取引参加者の選定、情報管理の複雑化 |
国際的な普及状況 | 米国や欧州などの先進国では広く普及している |
今後の展望 | テクノロジーの進化、規制の強化、グローバル化の進展に対応していく必要がある |
1. ギブアップ制度とは
ギブアップ制度の概要
ギブアップ制度とは、顧客が、注文を委託した取引参加者と異なる取引参加者との間で決済関連業務(先物取引の決済時における差金,オプション取引代金及び証拠金等の授受)を行う制度のことです。ギブアップ制度を活用することで、A証券の建玉をB証券で返済を行うことが可能です。複数の証券会社に発注する投資者にとっては、清算・決済を一つの証券会社にまとめることで事務負担や証拠金所要額等を軽減できるメリットがあります。逆に、一つの証券会社を通じて成立した取引の清算・決済を、取引目的等に応じて複数の証券会社に分散化することも可能です。
ギブアップ制度は、取引所の定めるところにより、取引の執行と清算(証拠金および損益の管理を含みます。)をそれぞれ別の会員・取引参加者が行うことをいいます。顧客にとっては、専門性を考慮した業者選択が可能となります。
店頭の外国為替証拠金取引においては、カバー取引とカバーにより生じた建玉の管理をそれぞれ別のカバー先で行うことをいいます。外国為替証拠金取引業者にとっては、リスク管理が容易になること、売建玉と買建玉がネットされることでカバー先と行うスワップポイントの授受がネットされることなどのメリットがあります。
用語 | 説明 |
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注文執行取引参加者 | 顧客から注文の執行を依頼された取引参加者 |
清算執行取引参加者 | 成立した取引の清算業務を依頼された取引参加者 |
ギブアップ申告 | 注文執行取引参加者が、取引成立後に清算執行取引参加者を指定するために、取引システムから、または約定後に清算システムから行う申告 |
ギブアップ制度の仕組み
ギブアップ制度の仕組みは比較的シンプルです。まず、投資家がブローカーAを通じて株式などの金融商品を購入します。その後、投資家は何らかの理由で、この取引をブローカーBに譲渡したいと考えることがあります。この時、ブローカーAは取引の詳細をブローカーBに通知し、ブローカーBがその取引を引き受けることに同意すれば、ギブアップという形で取引が譲渡されます。このプロセスを通じて、取引の最終的な決済はブローカーBが行うことになります。
具体的には、顧客が取引参加者Aに注文を出し、取引が成立した場合、顧客は取引参加者Aに清算を依頼するのではなく、取引参加者Bに清算を依頼することができます。取引参加者Aは、取引参加者Bに取引の詳細を通知し、取引参加者Bがその取引を引き受けることに同意すれば、ギブアップが成立します。
ギブアップが成立すると、取引参加者Aと顧客との間の取引関係は消滅し、取引参加者Bと顧客との間に新たな取引関係が成立します。これにより、顧客は取引参加者Aに支払う手数料や証拠金などを削減することができます。
ギブアップ制度の用語
ギブアップ制度には、いくつかの重要な用語があります。
注文執行取引参加者:顧客から注文の執行を依頼された取引参加者。
清算執行取引参加者:成立した取引の清算業務を依頼された取引参加者。
ギブアップ申告:注文執行取引参加者が、取引成立後に清算執行取引参加者を指定するために、取引システムから、または約定後に清算システムから行う申告。
まとめ
ギブアップ制度は、顧客が取引の清算・決済を別の取引参加者に委託できる制度です。
この制度を利用することで、顧客は取引の効率化やコスト削減を実現することができます。
また、取引参加者にとっても、リスク管理や業務効率化などのメリットがあります。
2. ギブアップ制度のメリットとデメリット
ギブアップ制度のメリット
ギブアップ制度を利用することで、顧客は様々なメリットを享受することができます。
清算業務の効率化:複数の取引参加者に注文を委託している場合、ギブアップ制度を利用することで、清算業務を一つの取引参加者に集中させることができます。これにより、事務管理コストの軽減や必要証拠金額の削減が可能になります。
大口注文執行のコスト上昇回避:一つの取引参加者に大口注文を委託すると、市場に影響を与えてしまい、注文執行コストが上昇する可能性があります。ギブアップ制度を利用することで、複数の取引参加者に分散して発注した後、清算業務を一つの取引参加者に集中させることで、コスト上昇を回避することができます。
目的別の清算業務分散:取引成立後に、取引を分割し、その清算・決済を複数の清算執行取引参加者に分散することが可能です。これにより、取引目的別に最適な清算・決済を行うことができます。
メリット | 説明 |
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清算業務の効率化 | 複数の取引参加者に注文を委託している場合、ギブアップ制度を利用することで、清算業務を一つの取引参加者に集中させることができます。これにより、事務管理コストの軽減や必要証拠金額の削減が可能になります。 |
大口注文執行のコスト上昇回避 | 一つの取引参加者に大口注文を委託すると、市場に影響を与えてしまい、注文執行コストが上昇する可能性があります。ギブアップ制度を利用することで、複数の取引参加者に分散して発注した後、清算業務を一つの取引参加者に集中させることで、コスト上昇を回避することができます。 |
目的別の清算業務分散 | 取引成立後に、取引を分割し、その清算・決済を複数の清算執行取引参加者に分散することが可能です。これにより、取引目的別に最適な清算・決済を行うことができます。 |
ギブアップ制度のデメリット
ギブアップ制度には、いくつかのデメリットも存在します。
追加手数料の発生:ギブアップ取引を行う際には、追加の手数料が発生することがあります。
取引参加者の選定:すべての取引参加者がギブアップ制度を提供しているわけではありません。そのため、事前にギブアップ制度を提供している取引参加者かどうかを確認する必要があります。
情報管理の複雑化:複数の取引参加者と取引を行う場合、情報管理が複雑になる可能性があります。
デメリット | 説明 |
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追加手数料の発生 | ギブアップ取引を行う際には、追加の手数料が発生することがあります。 |
取引参加者の選定 | すべての取引参加者がギブアップ制度を提供しているわけではありません。そのため、事前にギブアップ制度を提供している取引参加者かどうかを確認する必要があります。 |
情報管理の複雑化 | 複数の取引参加者と取引を行う場合、情報管理が複雑になる可能性があります。 |
まとめ
ギブアップ制度は、顧客にとって様々なメリットをもたらす一方で、デメリットも存在します。
顧客は、ギブアップ制度を利用する前に、メリットとデメリットを比較検討し、自分のニーズに合った方法を選択する必要があります。
また、取引参加者も、ギブアップ制度の提供によって顧客との関係を強化し、競争力を高めることができます。
3. ギブアップ制度の運用例
機関投資家の利用例
機関投資家であるD社は、広く相場情報を取得するために複数の取引参加者に金利先物等取引の注文執行を依頼しています。このような場合、ポジションや証拠金の管理については、ギブアップ制度を利用して一つの取引参加者に集中することで、事務管理コストの軽減と、必要証拠金額の削減を図ること*が可能になります。
*商品相互間でのリスクの相殺などが可能となるからです。詳細は『【1】SPAN Ⓡ』の章を参照
また、大型のファンドを運用しているE社では、一つの取引参加者に大口注文の執行を依頼することでマーケットインパクトによって相場が変動し、注文の執行コストが上昇することを回避したいと考えています。このような場合、複数の取引参加者に分散して発注した後、ギブアップ制度で清算業務を一つの取引参加者に集中することで、コスト上昇を回避することが可能になります。
取引目的別の清算業務分散
機関投資家であるF社は、ある取引参加者に100 枚の注文を1口でまとめて執行依頼しました。約定後に、そのうち50 枚は日本国債先物取引との裁定取引、残り50 枚は金利スワップのヘッジ取引として、それぞれ取引の目的別に清算業務を異なる取引参加者に委託しました。このように取引成立後に取引を分割(約定分割)し、その清算・決済を複数の清算執行取引参加者に分散することが可能です。
まとめ
ギブアップ制度は、機関投資家にとって、取引の効率化やコスト削減、リスク管理などの様々なメリットをもたらします。
特に、複数の取引参加者と取引を行う場合や、大口注文を行う場合に有効です。
また、取引目的別に清算業務を分散することも可能であり、より柔軟な取引を行うことができます。
4. ギブアップ制度と経済への影響
市場の活性化
ギブアップ制度は、取引の効率化やコスト削減を促進することで、市場の活性化に貢献します。
取引参加者は、ギブアップ制度を利用することで、顧客に魅力的なサービスを提供することができます。
これにより、取引参加者間の競争が促進され、顧客にとってより有利な取引条件が実現される可能性があります。
リスク管理の向上
ギブアップ制度は、取引参加者にとって、リスク管理の向上にも役立ちます。
取引参加者は、ギブアップ制度を利用することで、顧客との取引に伴うリスクを軽減することができます。
また、ギブアップ制度は、取引参加者間の連携を促進し、市場全体の安定化にも貢献します。
まとめ
ギブアップ制度は、市場の活性化とリスク管理の向上に貢献する重要な制度です。
この制度は、取引参加者と顧客双方にとって、より効率的で安全な取引環境を実現する役割を果たしています。
今後、ギブアップ制度は、金融市場のグローバル化やテクノロジーの進化に伴い、さらに重要な役割を果たしていくことが期待されます。
5. ギブアップ制度の今後の展望
テクノロジーの進化
金融市場では、テクノロジーの進化が急速に進んでいます。
特に、AIやブロックチェーン技術の導入は、取引の効率化や透明性の向上に大きく貢献すると期待されています。
ギブアップ制度も、これらのテクノロジーを活用することで、より効率的で安全な運用が可能になるでしょう。
規制の強化
金融市場の安定化を図るため、世界各国で金融規制の強化が進められています。
ギブアップ制度も、これらの規制の対象となる可能性があります。
取引参加者は、規制への対応を強化し、透明性と健全性を高める必要があります。
グローバル化の進展
金融市場のグローバル化は、今後も進展していくと考えられます。
ギブアップ制度は、国際的な取引を円滑に行う上で重要な役割を果たします。
取引参加者は、国際的な基準や慣習に対応し、グローバルな競争力を強化する必要があります。
まとめ
ギブアップ制度は、テクノロジーの進化、規制の強化、グローバル化の進展など、様々な変化に対応していく必要があります。
取引参加者は、これらの変化を的確に捉え、顧客に魅力的なサービスを提供することで、競争力を維持していく必要があります。
また、顧客は、ギブアップ制度のメリットを理解し、適切に利用することで、より効率的で安全な取引を行うことができます。
6. ギブアップ制度の国際比較
国際的な普及状況
ギブアップ制度は、世界中の多くの金融市場で導入されています。
特に、米国や欧州などの先進国では、ギブアップ制度が広く普及しています。
これらの地域では、ギブアップ制度は、取引の効率化やリスク管理の向上に大きく貢献しています。
制度の違い
ギブアップ制度は、国や取引所によって、その内容や運用方法が異なります。
例えば、ギブアップ制度の対象となる商品や、ギブアップを行うための手続きなどが、国や取引所によって異なります。
取引参加者は、それぞれの国や取引所のルールを理解し、適切な対応を行う必要があります。
まとめ
ギブアップ制度は、国際的に普及している制度ですが、国や取引所によって、その内容や運用方法が異なります。
取引参加者は、それぞれの国や取引所のルールを理解し、適切な対応を行うことで、国際的な取引を円滑に進めることができます。
また、ギブアップ制度の国際的な比較研究を進めることで、より効率的で安全な取引システムの構築に貢献することができます。
参考文献
・ギブアップ制度 | auカブコム証券 | ネット証券(国内株・米国株 …
・ギブアップ制度:Fx用語集 | フィリップ証券の外国為替証拠金(Fx …
・日本の取引所におけるギブアップ制度とは何? わかりやすく …
・わかりやすい用語集 解説:ギブアップ制度(ぎぶあっぷせいど …
・ギブアップ制度とは?株式用語解説 – お客様サポート – Dmm 株
・株式用語: ギブアップ制度 – スマート投資: 株と自動売買の教科書
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