マクロ経済スライドとは?経済用語について説明

マクロ経済スライド関連用語
用語	説明
マクロ経済スライド	年金制度の持続可能性を確保するため、年金の給付水準を調整する仕組み。少子高齢化が進む中で、年金受給者が増える一方、年金保険料を支払う現役世代は減っています。そのため、年金制度を維持するためには、年金の給付水準を調整する必要があります。
物価スライド	年金額を物価上昇率に合わせて改定する制度。物価スライドによって、年金の価値が物価の上昇によって目減りすることを防ぎます。
賃金スライド	年金額を賃金上昇率に合わせて改定する制度。賃金スライドによって、年金の価値が賃金の上昇によって目減りすることを防ぎます。
財政政策	政府が経済活動を調整するために、政府支出や税制などを利用する政策のことです。財政政策には、拡張財政政策と緊縮財政政策の2種類があります。
金融政策	中央銀行が経済活動を調整するために、金利やマネーストックなどを利用する政策のことです。金融政策には、金融緩和政策と金融引き締め政策の2種類があります。
GDP	ある一定期間内に、ある国で生産された財・サービスの総額を市場価格で評価したものです。GDPは、経済活動の規模を示す重要な指標であり、経済成長率を測るために用いられます。
国民所得	ある一定期間内に、ある国の国民が生産活動によって得た所得の総額のことです。国民所得は、国民の生活水準を示す重要な指標です。
消費者物価指数	一定の期間における、消費者の購入する商品の価格の平均的な変化率を示す指標です。CPIは、インフレ率を測るために用いられます。
失業率	労働力人口に占める失業者数の割合を示す指標です。失業率は、経済活動の活発さを示す指標であり、景気動向を測るために用いられます。

1. マクロ経済スライドの定義と特徴

マクロ経済スライドとは？

マクロ経済スライドとは、年金の被保険者（加入者）の減少や平均寿命の延び、更に社会の経済状況を考慮して、年金の給付金額を調整する制度のことをいう。日本の年金においては2004年に導入された。年金のスライド方式には「マクロ経済スライド」、「物価スライド」、「賃金スライド」の3通りの考え方がある。

2005年（平成17年）4月以前は、物価の動きによって見直される物価スライドが採られていた。2004年には、マクロ経済スライドが導入された。

少子高齢化社会の到来による被保険者の減少や平均寿命の延びなどなど、年金制度自体が前提とするマクロ経済の状態が大きく変わり、年金の財源問題などがでてきた。こうしたことから、年金給付額にマクロ経済全体の変化を反映させ自動的に調整させる機能を持つ制度が導入された。この制度や物価スライド制度は公的年金に適用されるもので、一般的に私的年金と呼ばれるものには適用されない。また国民年金であっても、付加年金や死亡一時金には適用されない。

ここでは、国民年金を例にとって説明する（国民年金法については以下、法とのみ記述する）。なお厚生年金においても同様の事態となっている。

マクロ経済スライドの適用例
年度	物価変動率	名目手取り賃金変動率	マクロ経済スライド適用
2015年度	プラス2.7%	プラス2.3%	適用
2016年度	プラス0.8%	マイナス0.2%	未適用
2017年度	マイナス0.1%	マイナス1.1%	未適用
2019年度	プラス0.6%	プラス0.6%	適用
2023年度	プラス2.5%	プラス2.8%	適用

マクロ経済スライドの仕組み

少なくとも5年に1度、年金の財政状態の評価と今後の見通し（「財政の現況及び見通し」）を作成する財政検証が行われる（法4条の3第1項）。将来の財政均衡期間（検証の年以降100年間）にわたり年金財政の均衡を保つことが出来ない（積立金の保有ができない）と見込まれる場合は、年金の給付額の「マクロ経済スライド」と呼ぶ調整を行うとされ（法16条の2第1項等）、政令で給付額を調整する期間（調整期間）の開始年度を定めるものとする。そして、2004年（平成16年）の検証により2005年（平成17年）度が調整期間の開始年度とされた（令4条の2の2等）。調整期間は、その後の財政検証で年金財政の均衡を保つことができる（調整がなくても積立金の保有ができる）まで続けられる。

マクロ経済スライドについて「調整率」と法律上されているが、5年前の年度から2年前の年度までの各年度の公的年金被保険者等総数の増加率の相乗平均（法27条の4第1項1号）に平均余命の延びによる給付の増加額を抑えるための一定の指数である0.997（法27条の4第1項2号）を乗じて得た率を基準とする数値である。厚生労働省の予測では、おおむね0.991になることが予想されている。

そして、調整期間において、新規裁定者については名目手取り賃金変動率に調整率を乗じた数値を基準として改定率を定め（法27条の4第1項）、既裁定者（68歳になる年度以降）は物価変動率に調整率を乗じた数値を基準として改定率を定めること（法27条の5第1項）を原則としている。

マクロ経済スライドの仕組みは、なお、平成16年改正法附則7条、12条により、2010年度から2012年度までの物価変動率分－1.7%分を反映しないまま据え置いたので、まず、その分を吸収する2015年の物価指数（これ以後に2015年の物価指数より物価指数が下がればその年度）から1.7%の物価上昇があるまで、物価スライド特例が適用され、それを上回ることになって、初めて本則が適用されることによって、マクロ経済スライドが初めて適用される制度となっている。

マクロ経済スライドの適用例

2004年の導入以来、物価上昇率の低迷が続いたことから、マクロ経済スライドによる年金額（780

物価変動率、名目手取り賃金変動率がともにマイナスで、名目手取り賃金変動率が物価変動率を下回る場合、マクロ経済スライドは発動されず、新規裁定者、既裁定者ともに、物価変動率を基準として改定することとされている（法第27条の5）。2017年（平成29年）度の場合、物価変動率がマイナス0.1%、名目手取り賃金変動率がマイナス1.1%であることから物価変動率によって改定され、となった。

2019年度は4年ぶりにマクロ経済スライドが発動されることになった。厚生労働省が発表した厚生年金のモデル世帯は、夫が平均的年収（賞与含む月額換算42.8万円）で40年間働き、その間、妻が専業主婦だった場合である。そのモデルによると2018年度の厚生年金の給付額は、夫婦2人分で月額22万1277円であった。2018年度は物価と賃金の変動率が+約0.6%増であったので2019年度の支給額は2018年度の支給額より月額1362円増額し、月額22万2639円の支給となるところであったが、マクロ経済スライドの発動により2018年度のマクロ経済スライド分約0.5%がカットされ+約0.1%増となり月額227円の増加にとどまり月額22万1504円の支給となる。

平成28年に成立した「公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律」により、平成30年度からは、マクロ経済スライドによって前年度よりも年金の名目額を下げないという措置は維持した上で、未調整分を翌年度以降に繰り越す仕組み（キャリーオーバー制度）を導入することとなった。これにより、平成30年度以降の調整期間における改定率については、新規裁定者については「算出率」を、既裁定者については「基準年度以降算出率」を基準とすることを原則とする。

まとめ

マクロ経済スライドは、年金制度の持続可能性を確保するために、年金の給付水準を調整する仕組みです。少子高齢化が進む中で、年金受給者が増える一方、年金保険料を支払う現役世代は減っています。そのため、年金制度を維持するためには、年金の給付水準を調整する必要があります。

マクロ経済スライドは、年金の給付水準を調整する仕組みですが、年金額を減らすものではありません。年金の増加率を抑えることで、将来の年金財政の安定化を図るものです。

マクロ経済スライドは、物価や賃金の変動率を基準として、年金の給付水準を調整します。物価や賃金が上昇した場合には、年金の増加率を抑え、物価や賃金が下落した場合には、年金の減少率を抑えます。

マクロ経済スライドは、将来の年金制度の安定化に重要な役割を果たす制度です。しかし、年金の給付水準が調整されることで、年金受給者にとっては、年金が減ってしまう可能性があります。そのため、マクロ経済スライドの仕組みを理解し、将来の年金について考えておくことが重要です。

2. マクロ経済指標の種類とその意味

GDP

GDP（国内総生産）とは、ある一定期間内に、ある国で生産された財・サービスの総額を市場価格で評価したものです。GDPは、経済活動の規模を示す重要な指標であり、経済成長率を測るために用いられます。

GDPは、生産、支出、所得の3つの側面から計算することができます。生産面では、各産業における付加価値の合計を計算します。支出面では、消費支出、投資支出、政府支出、純輸出の合計を計算します。所得面では、賃金、利潤、利子、家賃などの所得の合計を計算します。

GDPは、経済活動の規模を示す指標ですが、国民の生活水準を示す指標ではありません。例えば、環境問題や資源枯渇などの問題を考慮していません。また、非市場経済活動（家事労働など）も含まれていません。

GDPは、経済成長率を測るために用いられます。経済成長率は、前年比でGDPがどれだけ増加したかを表す指標です。経済成長率が高いほど、経済が活発であると判断されます。

消費者物価指数

消費者物価指数（CPI）とは、一定の期間における、消費者の購入する商品の価格の平均的な変化率を示す指標です。CPIは、インフレ率を測るために用いられます。

CPIは、代表的な消費財・サービスの価格を調査し、その価格の変動を基に計算されます。CPIは、基年と呼ばれる特定の年の価格を100として、他の年の価格を比較します。例えば、基年のCPIが100で、翌年のCPIが102であれば、翌年の物価は基年比で2%上昇したことを意味します。

CPIは、インフレ率を測るために用いられます。インフレ率は、前年比でCPIがどれだけ上昇したかを表す指標です。インフレ率が高いほど、物価が上昇していることを意味します。

CPIは、国民の生活水準を測る指標としても用いられます。CPIが上昇すると、国民の購買力は低下します。

失業率

失業率とは、労働力人口に占める失業者数の割合を示す指標です。失業率は、経済活動の活発さを示す指標であり、景気動向を測るために用いられます。

失業率は、労働力人口に占める失業者数の割合で計算されます。労働力人口とは、15歳以上で働いている人、または働きたいと思っている人のことです。失業者とは、働きたいと思っているのに仕事が見つからない人のことです。

失業率は、経済活動の活発さを示す指標です。失業率が高いほど、経済が不活発であると判断されます。

失業率は、景気動向を測るために用いられます。景気が悪化すると、失業率は上昇します。

まとめ

マクロ経済指標は、経済状況を把握するために用いられる重要な指標です。GDPは、経済活動の規模を示す指標であり、消費者物価指数は、物価の変動を示す指標であり、失業率は、労働市場の状況を示す指標です。

これらの指標は、それぞれ異なる側面から経済状況を捉えています。そのため、これらの指標を総合的に判断することで、より正確な経済状況を把握することができます。

マクロ経済指標は、経済政策の策定にも役立ちます。政府は、マクロ経済指標を参考に、経済政策の方向性を決定します。

マクロ経済指標は、私たちが経済状況を理解するために役立つ重要な指標です。これらの指標を理解することで、経済ニュースをより深く理解することができます。

3. 物価指数とマクロ経済の関係性

物価指数とは？

物価指数とは、一定期間における、消費者の購入する商品の価格の平均的な変化率を示す指標です。代表的な物価指数には、消費者物価指数（CPI）があります。

CPIは、代表的な消費財・サービスの価格を調査し、その価格の変動を基に計算されます。CPIは、基年と呼ばれる特定の年の価格を100として、他の年の価格を比較します。

例えば、基年のCPIが100で、翌年のCPIが102であれば、翌年の物価は基年比で2%上昇したことを意味します。

CPIは、インフレ率を測るために用いられます。インフレ率は、前年比でCPIがどれだけ上昇したかを表す指標です。

物価指数とマクロ経済の関係性

物価指数は、マクロ経済の状況を把握する上で重要な指標です。物価指数が上昇すると、インフレが発生していることを意味します。

インフレは、経済活動の活発化を示す一方で、国民の購買力を低下させるという側面も持ち合わせています。

物価指数が下落すると、デフレが発生していることを意味します。デフレは、経済活動の停滞を示す一方で、国民の購買力を高めるという側面も持ち合わせています。

物価指数は、経済政策の策定にも役立ちます。政府は、物価指数を参考に、インフレ対策やデフレ対策などの経済政策を策定します。

物価指数と経済の関係
物価指数	経済状況	影響
上昇	インフレ	経済活動活発化、購買力低下
下落	デフレ	経済活動停滞、購買力上昇

物価指数と年金

物価指数は、年金制度にも大きな影響を与えます。年金は、物価の上昇に合わせて、年金額が改定されます。

物価スライドとは、年金額を物価上昇率に合わせて改定する制度です。物価スライドによって、年金の価値が物価の上昇によって目減りすることを防ぎます。

しかし、近年では、マクロ経済スライドが導入され、年金の増加率が抑制されています。マクロ経済スライドは、年金制度の持続可能性を確保するために導入された制度ですが、年金受給者にとっては、年金が減ってしまう可能性があります。

物価指数は、年金制度の設計や運営において重要な役割を果たしています。

まとめ

物価指数は、経済状況を把握する上で重要な指標であり、マクロ経済の状況を反映しています。

物価指数は、インフレやデフレなどの経済現象を把握するだけでなく、年金制度など、国民生活に密接に関わる制度にも影響を与えます。

物価指数は、経済政策の策定や国民生活の安定化に役立つ重要な指標です。

物価指数を理解することで、経済ニュースをより深く理解することができます。

4. 失業率の影響と対策

失業率とは？

失業率は、経済活動の活発さを示す指標です。失業率が高いほど、経済が不活発であると判断されます。

失業率は、景気動向を測るために用いられます。景気が悪化すると、失業率は上昇します。

失業率の影響

失業率の上昇は、経済に様々な悪影響を及ぼします。失業率が上昇すると、国民の所得が減少し、消費支出が減少します。

消費支出の減少は、企業の売上減少につながり、企業は従業員を解雇したり、投資を抑制したりする可能性があります。

失業率の上昇は、社会不安や犯罪増加にもつながる可能性があります。

失業率の上昇は、経済の悪循環を引き起こす可能性があります。

失業率上昇による影響
影響	説明
国民所得減少	失業者の増加により、国民の所得が減少します。
消費支出減少	国民所得の減少により、消費支出が減少します。
企業の売上減少	消費支出の減少により、企業の売上も減少します。
社会不安・犯罪増加	失業者の増加により、社会不安や犯罪が増加する可能性があります。
経済の悪循環	失業率の上昇は、経済の悪循環を引き起こす可能性があります。

失業率対策

失業率対策には、政府が様々な政策を講じています。政府は、失業対策として、公共事業の拡大や雇用維持のための助成金などの政策を実施しています。

失業対策には、教育訓練の充実や職業紹介の強化などの政策も有効です。

失業率対策は、経済の安定化に重要な役割を果たします。

失業率対策は、国民の生活水準の向上にもつながります。

まとめ

失業率は、経済状況を把握する上で重要な指標であり、経済活動の活発さを示しています。

失業率の上昇は、経済に様々な悪影響を及ぼすため、政府は失業率対策を講じています。

失業率対策は、経済の安定化と国民の生活水準の向上に重要な役割を果たします。

失業率は、経済ニュースを理解する上で重要な指標です。

5. 財政政策と金融政策の違いと効果

財政政策とは？

財政政策とは、政府が経済活動を調整するために、政府支出や税制などを利用する政策のことです。財政政策には、拡張財政政策と緊縮財政政策の2種類があります。

拡張財政政策とは、政府支出を増やす、または税金を減らすことで、経済活動を活性化させる政策です。拡張財政政策は、景気後退時に有効な政策です。

緊縮財政政策とは、政府支出を減らす、または税金を増やすことで、経済活動を抑制する政策です。緊縮財政政策は、インフレ時に有効な政策です。

財政政策は、経済活動に大きな影響を与える政策です。

金融政策とは？

金融政策とは、中央銀行が経済活動を調整するために、金利やマネーストックなどを利用する政策のことです。金融政策には、金融緩和政策と金融引き締め政策の2種類があります。

金融緩和政策とは、金利を引き下げたり、マネーストックを増やすことで、経済活動を活性化させる政策です。金融緩和政策は、景気後退時に有効な政策です。

金融引き締め政策とは、金利を引き上げたり、マネーストックを減らすことで、経済活動を抑制する政策です。金融引き締め政策は、インフレ時に有効な政策です。

金融政策は、経済活動に大きな影響を与える政策です。

財政政策と金融政策の違い

財政政策と金融政策は、どちらも経済活動を調整するための政策ですが、その手段や効果が異なります。財政政策は、政府支出や税制などを利用して、直接的に経済活動を調整します。

一方、金融政策は、金利やマネーストックなどを利用して、間接的に経済活動を調整します。

財政政策は、短期的な効果が期待できますが、長期的な効果は限定的です。金融政策は、短期的な効果は限定的ですが、長期的な効果が期待できます。

財政政策と金融政策は、それぞれの特徴を生かして、効果的に組み合わせる必要があります。

財政政策と金融政策の違い
項目	財政政策	金融政策
手段	政府支出、税制	金利、マネーストック
効果	短期的な効果が期待できる	長期的な効果が期待できる
特徴	直接的に経済活動を調整する	間接的に経済活動を調整する