WTIとは?経済用語について説明

WTIに関する項目一覧
項目	内容
WTIの定義	アメリカで生産される原油の基準価格
WTIの特徴	軽質で低硫黄、ガソリン製造に適している
WTIの役割	世界的な原油価格の指標
WTI価格の決定要因	需要と供給、OPECの影響、地政学リスク
WTIの影響	世界経済、企業、投資に影響
WTIと他の油価指標の違い	北海ブレント、ドバイ原油、オマーン原油など
WTIの将来予測	世界経済、原油需給、地政学リスクなどを総合的に判断する必要がある

1. WTIとは何か

WTIの定義

WTIとは、West Texas Intermediateの略称で、アメリカ合衆国で生産される原油のベンチマーク（基準価格）とされる品質のことです。WTIはテキサス州の特定の地域で産出される軽質で低硫黄の原油を指し、これによって世界的な原油価格の指標の一つとなっています。原油市場では、WTIの価格が先物取引における参照価格として広く用いられ、投資家や産業関係者が原油の価格動向を分析する際の重要な指標となっています。WTIはニューヨーク商品取引所（NYMEX）で取引され、その価格は世界のエネルギー市場における供給と需要のバランスを反映しています。

WTIは、アメリカ国内で産出される原油の6%、世界で産出される原油の1～2%ほどを占めています。硫黄分が少ないため、ガソリンや石油製品の製造に適したAPI度[注 1]が39.6（比重0.827）の軽質油です。

WTI先物は、ニューヨーク・マーカンタイル取引所 (NYMEX) においてNYMEX Light Sweet Crude（軽質スイート原油）として取引が行われています。1983年5月に上場され、現在は同取引所の主要な取引品としての地位を確立しています。ただしこれ以前にも、取引は行われていました。WTIの先物取引所がニューヨークにあるため、日本ではWTI先物を「ニューヨーク原油先物」「NY原油先物」とも表記します[注 2]。

WTI価格は、この取引価格で決まり、その価格は世界の原油価格の中で最も有力な指標です。実際のWTIの産出量は、一日あたり100万バレルに満たないのに対し、WTI先物の一日あたり取引量は、その100倍の1億バレルを超えています。したがって、大きな価格変動（特に値上がり）が起きると、世界経済に直接、大きな影響を及ぼします。

WTIの定義
項目	内容
略称	West Texas Intermediate
産地	アメリカ合衆国テキサス州
特徴	軽質で低硫黄
役割	世界的な原油価格の指標

WTIの取引方法

WTIの取引方法は下記の2種類です[2]。\n1. 現物取引：実際に原油を売買する取引\n2. 先物取引：将来の特定の日に、特定の価格で原油を売買する契約を結ぶ取引

取引量に比べ産出量はごくわずかのため、実際には他の原油をWTIと同質となるようにブレンドしたもので受け渡しが行われます。

米国は、1973年の第一次オイルショックを契機として、1975年に安全保障に関する法律により、米国産原油の禁輸措置を導入して以来、原油の輸出が禁止されていましたが、2015年12月18日には、米国産原油の輸出を40年振りに解禁する、と報じられています。

決済されたWTIの現物は、集油所のあるオクラホマ州カッシングで受け渡されますが、内陸部で港湾施設がないため、タンカーによる引き取りはできません。

WTIの取引方法
取引方法	内容
現物取引	実際に原油を売買する取引
先物取引	将来の特定の日に、特定の価格で原油を売買する契約を結ぶ取引

WTI価格の変動要因

基本的に、WTIの価格はアメリカ国内の原油現物市場を反映したものです。過去には受け渡し拠点のクシンの地理的条件から原油の流通量に限界があり、価格が偏る事態が発生していましたが、パイプラインの整備や輸入原油の導入などにより、国際価格を反映できるよう改善しました。しかし、アメリカの価格を大きく反映する傾向は否めず、暖房用の精製油の消費量を左右する北米の冬の天候が暖かくなると価格が低下、寒くなると上昇します。また、メキシコ湾岸にハリケーンの被害が及ぶと石油精製施設の稼働率が下がるため、価格が上昇します。

もちろん、原油市場全体に一様に見られる、原油生産国の政情不安による価格変動もみられます。また、世界全体での資金の流れの動向にも影響を受けていると見られ、近年は金融市場や株式市場の低迷や不安定化により、WTIをはじめとした原油や金などの商品市場に資金が流入する傾向にあります。

NYMEXでのWTIの取引が始まった当初は、専門の投資家による取引が多かったですが、一般の個人投資家やヘッジファンドによる取引、インターネットを通した取引の割合が増加してきています。通常、取引の多くはスプレッド取引やアウトライトといった手法の取り引きが多いですが、価格の変動が大きいときには投機的な取引が増えます。

2000年代前半から、中華人民共和国やインドといった新興国の経済成長に伴い石油製品の需要が増加し、価格が一時高騰しました。また、価格が初めて70ドル/バレルを突破した2005年ごろから、投機的な取引による暴騰が指摘されるようになりました。暴騰の原因としては、価格高騰によって増えたオイルマネーのさらなる流入、バイオエタノールとの関連性などが考えられています。

WTI価格の変動要因
要因	内容
アメリカ国内の原油現物市場	価格を大きく反映
原油生産国の政情不安	価格変動
世界全体の資金の流れ	近年は商品市場に資金流入
投資家の心理	投機的な取引が増加

まとめ

WTIは、アメリカで生産される原油の基準価格であり、世界的な原油価格の指標の一つとなっています。WTIの価格は、ニューヨーク商品取引所（NYMEX）で取引される先物価格によって決まります。

WTIの価格は、アメリカの原油現物市場、原油生産国の政情不安、世界全体の資金の流れ、投資家の心理など、様々な要因によって変動します。

WTIの価格変動は、世界経済に大きな影響を与えます。特に、原油を輸入に頼っている国は、WTI価格の上昇によって経済的な打撃を受ける可能性があります。

WTIの将来予測は、世界経済の動向、原油の需給、地政学リスクなどを総合的に判断する必要があります。

2. WTIの特徴と役割

WTIの特徴

WTIは、テキサス州西部とニューメキシコ州南東部で産出される原油で、軽質で低硫黄という特徴があります。このため、ガソリンや石油製品の製造に適しており、アメリカ国内で高い需要があります。

WTIは、API度が39度以上と超軽質で、硫黄分も0.2％程度と少なく良質です。また消費地に近いことから、ドバイ原油やオマーン原油よりも一般的に高値で取引されています。

近年では、シェールオイルの増産により、WTIの価格には低下の圧力がかかる傾向があります。そのため、WTIを取引する際は米国内のシェールオイルの生産量を常にチェックする必要があります。

WTIは、アメリカ国内のマーケットで高い需要がありますが、近年ではシェールオイルの増産により、価格が下落傾向にあります。

WTIの特徴
項目	内容
API度	39度以上
硫黄分	0.2％程度
品質	超軽質で良質
需要	アメリカ国内で高い需要
価格	ドバイ原油やオマーン原油よりも高値

WTIの役割

WTIは、世界的な原油価格の指標の一つとして、原油取引の基準価格として広く利用されています。

WTIの価格は、世界のエネルギー市場における供給と需要のバランスを反映しており、投資家や産業関係者が原油の価格動向を分析する際の重要な指標となっています。

WTIは、原油価格の指標にとどまらず、世界経済の動向を占う重要な経済指標のひとつにもなっています。

WTIは、原油価格の指標として、世界中の投資家や企業が注目しています。

WTIの役割
役割	内容
原油取引の基準価格	世界的な原油価格の指標
世界のエネルギー市場の動向	供給と需要のバランスを反映
世界経済の動向	重要な経済指標

WTIと北海ブレント原油の関係

WTIと北海ブレント原油は、どちらも軽質スウィート原油のベンチマークであるため、高い相関関係にあります。

しかし近年では、WTIよりも北海ブレント原油の方が国際的な原油先物価格のベンチマークとして注目されています。

これは、北海ブレント原油が、欧州に近い中東やアフリカの情勢変化を敏感に反映する傾向があるためです。

WTIは、アメリカ国内の原油生産や在庫など、米国固有の事情の影響を強く受けやすい一方、北海ブレント原油は、世界的な原油価格の指標として、より幅広い影響を受けています。

WTIと北海ブレント原油の関係
項目	WTI	北海ブレント原油
特徴	アメリカ国内の原油生産や在庫の影響を受けやすい	欧州に近い中東やアフリカの情勢変化を敏感に反映
役割	アメリカ国内の原油価格の指標	世界的な原油価格の指標

まとめ

WTIは、アメリカで生産される軽質で低硫黄の原油で、世界的な原油価格の指標の一つとして重要な役割を果たしています。

WTIは、アメリカ国内の原油市場の動向を反映しており、シェールオイルの増産などの影響を受けています。

WTIは、北海ブレント原油と並んで、世界の原油市場の重要な指標となっています。

WTIは、原油価格の動向を把握する上で、重要な指標となっています。

3. WTI価格の決定要因

需要と供給

原油の価格は、他のあらゆる商品と同じように市場の需要と供給で決まります。

需要に対して供給が少なければ価格はあがり、逆の場合はさがります。

原油の需要は、世界経済の成長、人口増加、自動車の普及などによって増加します。

原油の供給は、原油の生産量、原油の在庫量、原油の輸出入量などによって変化します。

需要と供給
項目	内容
需要増加要因	世界経済の成長、人口増加、自動車の普及
供給変化要因	原油の生産量、原油の在庫量、原油の輸出入量

OPECの影響

OPECとは、石油輸出国機構のことで、世界最大の原油生産国であるサウジアラビア、ロシア、アメリカなどが加盟しています。

OPECは、原油の供給量を調整することで、原油価格をコントロールしようとしています。

OPECが原油の供給量を制限すると、原油価格が上昇します。逆に、OPECが原油の供給量を増やすと、原油価格が下落します。

OPECは、原油価格の安定化を目指していますが、常に成功するとは限りません。

OPECの影響
項目	内容
OPEC	石油輸出国機構
加盟国	サウジアラビア、ロシア、アメリカなど
供給量調整	原油価格のコントロール
供給量制限	原油価格の上昇
供給量増加	原油価格の下落

地政学リスク

原油生産国における政治不安や紛争などの地政学リスクは、原油価格に大きな影響を与えます。

例えば、中東地域で紛争が発生すると、原油の供給が不安定になり、原油価格が上昇する可能性があります。

また、原油生産国の経済制裁なども、原油価格に影響を与える可能性があります。

地政学リスクは、原油価格の変動要因として、常に注目されています。

地政学リスク
項目	内容
影響	原油価格に大きな影響
例	中東地域での紛争、原油生産国の経済制裁

まとめ

WTIの価格は、需要と供給、OPECの影響、地政学リスクなど、様々な要因によって決定されます。

需要と供給のバランスが崩れると、原油価格が大きく変動する可能性があります。

OPECは、原油価格をコントロールしようとしていますが、常に成功するとは限りません。

地政学リスクは、原油価格の変動要因として、常に注目されています。

4. WTIとはどのように影響を及ぼすか

経済への影響

WTIの価格変動は、世界経済に大きな影響を与えます。

特に、原油を輸入に頼っている国は、WTI価格の上昇によって経済的な打撃を受ける可能性があります。

WTI価格の上昇は、ガソリンや石油製品の価格上昇につながり、消費者物価の上昇、企業の生産コストの上昇、経済活動の停滞などを招く可能性があります。

逆に、WTI価格の下落は、消費者物価の下落、企業の生産コストの低下、経済活動の活性化などを招く可能性があります。

経済への影響
WTI価格	経済への影響
上昇	消費者物価の上昇、企業の生産コストの上昇、経済活動の停滞
下落	消費者物価の下落、企業の生産コストの低下、経済活動の活性化

企業への影響

WTIの価格変動は、企業の業績にも大きな影響を与えます。

特に、原油を原料とする企業や、原油価格の変動に影響を受けやすい企業は、WTI価格の変動によって業績が大きく左右される可能性があります。

例えば、石油精製会社や石油化学会社は、WTI価格の上昇によって、原油の仕入れコストが上昇し、利益が減少する可能性があります。

また、航空会社や自動車メーカーなども、WTI価格の上昇によって、燃料費が上昇し、業績が悪化する可能性があります。

企業への影響
企業	影響
石油精製会社、石油化学会社	原油の仕入れコスト上昇、利益減少
航空会社、自動車メーカー	燃料費上昇、業績悪化

投資への影響

WTIの価格変動は、投資にも大きな影響を与えます。

WTI価格の上昇は、原油関連企業の株価上昇につながる可能性があります。

逆に、WTI価格の下落は、原油関連企業の株価下落につながる可能性があります。

投資家は、WTIの価格動向を注視し、投資戦略を立てる必要があります。

投資への影響
WTI価格	投資への影響
上昇	原油関連企業の株価上昇
下落	原油関連企業の株価下落

まとめ

WTIの価格変動は、世界経済、企業、投資に大きな影響を与えます。

WTI価格の上昇は、消費者物価の上昇、企業の生産コストの上昇、経済活動の停滞などを招く可能性があります。

WTI価格の下落は、消費者物価の下落、企業の生産コストの低下、経済活動の活性化などを招く可能性があります。

投資家は、WTIの価格動向を注視し、投資戦略を立てる必要があります。

5. WTIと他の油価指標の違い

北海ブレント原油

北海ブレント原油は、北海油田・英国領海北部のブレント油田で産出されている原油です。

ブレント原油は欧州向け原油の指標とされ、NYMEXのWTI原油と並んで、世界の原油市場の一角を形成しています。

ブレント原油は、WTI原油よりも硫黄分が多く、中質原油に分類されます。

ブレント原油は、欧州やアフリカの情勢変化を敏感に反映する傾向があります。

北海ブレント原油
項目	内容
産地	北海油田・英国領海北部
特徴	硫黄分が多く、中質原油
役割	欧州向け原油の指標
影響	欧州やアフリカの情勢変化を敏感に反映

ドバイ原油

ドバイ原油は、アラブ首長国連邦（UAE）の構成首長国の一つであるドバイで産出されている原油です。

ドバイ原油は、仕向地の制約がないことから取引に便利な原油として絶対値価格でのスポット取引が活発に行われています。

ドバイ原油は、API度が約31度で中質原油に分類され、硫黄分は約2％です。

ドバイ原油は、中東産原油の価格指標となっています。

ドバイ原油
項目	内容
産地	アラブ首長国連邦（UAE）ドバイ
特徴	仕向地の制約がない、絶対値価格でのスポット取引が活発
API度	約31度
硫黄分	約2％
役割	中東産原油の価格指標

オマーン原油

オマーン原油は、中東のオマーンで産出されている原油です。

ドバイ原油よりも埋蔵量が多く、比較的産出量が安定しており、仕向地の制約を受けないことから、ドバイ原油とともに中東産原油の価格指標となっています。

オマーン原油は、API度が約34度で中質原油に分類され、硫黄分が約２％です。

オマーン原油は、ドバイ原油と同様に、中東産原油の価格指標となっています。

オマーン原油
項目	内容
産地	中東オマーン
特徴	ドバイ原油よりも埋蔵量が多い、産出量が安定
API度	約34度
硫黄分	約2％
役割	中東産原油の価格指標

まとめ

WTI、北海ブレント、ドバイ原油、オマーン原油は、それぞれ異なる地域で産出される原油で、品質や硫黄分などが異なります。

WTIは、アメリカで生産される軽質で低硫黄の原油で、北米の原油価格の指標となっています。

北海ブレント原油は、欧州向け原油の指標として、世界的な原油価格の指標の一つとなっています。

ドバイ原油とオマーン原油は、中東産原油の価格指標となっています。

6. WTIの将来予測と市場動向

WTI価格の今後の見通し

WTIの将来予測は、世界経済の動向、原油の需給、地政学リスクなどを総合的に判断する必要があります。

世界経済が成長すれば、原油の需要が増加し、WTI価格が上昇する可能性があります。

逆に、世界経済が停滞すれば、原油の需要が減少する可能性があり、WTI価格が下落する可能性があります。

原油の供給が不安定になれば、WTI価格が上昇する可能性があります。

WTI価格の今後の見通し
項目	内容
世界経済成長	原油需要増加、WTI価格上昇
世界経済停滞	原油需要減少、WTI価格下落
原油供給不安定	WTI価格上昇

市場動向

原油市場は、常に変化しています。

最新の市場動向を把握し、WTIの価格変動を予測することが重要です。

原油価格の変動要因は、多岐にわたります。

投資家は、原油市場の動向を注視し、投資戦略を立てる必要があります。

市場動向
項目	内容
変化	常に変化
重要性	最新の市場動向を把握
変動要因	多岐にわたる
投資戦略	市場動向を注視し、戦略を立てる

WTI価格のターゲット

WTI原油価格は、2023年10月以来はじめて、一時87ドルに上昇しました。

イスラエルとイランの対立が激化したことに加え、ロシア・ウクライナ情勢が一段と緊迫化したことなどが、原油価格を押し上げました。

イランは、世界有数の原油生産国ですが、原油価格の今後の見通しは不透明です。

WTI原油価格は、今後の地政学リスクや経済状況によって、大きく変動する可能性があります。

WTI価格のターゲット
項目	内容
2023年10月	一時87ドルに上昇
上昇要因	イスラエルとイランの対立激化、ロシア・ウクライナ情勢の緊迫化
今後の見通し	地政学リスクや経済状況によって大きく変動する可能性