セーフガードとは?経済用語について説明

セーフガードに関する項目一覧
項目	内容
セーフガードの意味	輸入急増による国内産業への打撃を予防するための措置
セーフガードの目的	国内産業の保護、貿易摩擦の抑制、構造調整の促進
セーフガードの種類	一般セーフガード、特別セーフガード、繊維セーフガード
セーフガードのメリット	国内産業の保護、雇用維持、経済活動の活性化
セーフガードのデメリット	貿易摩擦の発生、消費者の負担増加、国際的な信頼の低下
セーフガードの適用条件	輸入増加が予見されなかった発展によるもの、国内産業に重大な損害を与えるおそれがある、国民経済上緊急の必要性がある
セーフガードの手続き	調査、関係国との協議、審議会への諮問、WTOへの通報
セーフガードと関税措置の違い	セーフガードは輸入急増による国内産業への打撃を予防するための緊急措置、関税措置は貿易政策の手段として輸入品の価格を上昇させる効果がある

1. セーフガードの意味とは何か

セーフガードの定義

セーフガードとは、特定の品目輸入が急増することによって国内産業が打撃を受けることを予防するため、関税賦課や輸入数量制限といった形で行われる措置です。これは、特定の国からの輸入が一時的に急増することで国内産業に被害が発生した場合に、セーフガードとして緊急避難的に一時的な輸入制限措置を発動することを認めたものです。

セーフガードは、GATT（関税及び貿易に関する一般協定）第19条に規定されており、WTO（世界貿易機関）協定にも引き継がれています。GATT第19条は、輸入増加によって国内産業に重大な損害が発生した場合、その損害を防止または救済するために必要な範囲で、関税の引き上げや輸入数量制限などの措置を講じることができるとしています。

セーフガードは、自由貿易を原則とするGATTやWTOにおいて、例外的に認められた措置です。これは、貿易自由化を進める一方で、国内産業の保護も必要とするという現実的な側面を反映しています。

セーフガードは、国内産業の保護という側面を持つ一方で、貿易摩擦を引き起こす可能性も孕んでいます。そのため、セーフガードの発動には、厳格な条件が設けられており、国際的なルールに基づいて慎重に運用される必要があります。

セーフガードの定義
定義	内容
セーフガード	特定の品目輸入が急増することによって国内産業が打撃を受けることを予防するため、関税賦課や輸入数量制限といった形で行われる措置
目的	国内産業の保護、貿易摩擦の抑制、構造調整の促進
発動条件	輸入増加が予見されなかった発展によるもの、国内産業に重大な損害を与えるおそれがある、国民経済上緊急の必要性がある

セーフガードの例

セーフガードの具体的な例としては、2021年3月に日本政府がアメリカ産牛肉に対して発動した措置が挙げられます。この措置は、アメリカ産牛肉の輸入量が日米貿易協定に基づく輸入基準数量を超えたことを受けて、牛肉にかかっていた25.8%の関税が38.5%まで引き上げられました。

このセーフガードの発動は、日本の畜産業界の保護を目的としていました。アメリカ産牛肉の輸入増加によって、日本の畜産農家の経営が圧迫されることを懸念したためです。

セーフガードの例
例	内容
2021年3月のアメリカ産牛肉に対するセーフガード	アメリカ産牛肉の輸入量が日米貿易協定に基づく輸入基準数量を超えたため、牛肉にかかっていた25.8%の関税が38.5%まで引き上げられた

セーフガードの目的

セーフガードの目的は、特定の品目の輸入急増によって国内産業が打撃を受けることを予防することです。これは、国内産業の雇用維持や経済活動を保護するために行われます。

セーフガードの目的
目的	内容
国内産業の保護	輸入急増による国内産業への打撃を予防し、雇用維持や経済活動を保護する
貿易摩擦の抑制	国際的なルールに基づいて運用することで、貿易紛争を回避する
構造調整の促進	国内産業が保護されることで、企業が新たな技術や製品の開発に投資したり、経営の効率化を進めたりする機会を得る

まとめ

セーフガードは、特定の品目の輸入急増によって国内産業が打撃を受けることを予防するための緊急措置です。これは、国内産業の保護という側面を持つ一方で、貿易摩擦を引き起こす可能性も孕んでいます。

セーフガードの発動には、厳格な条件が設けられており、国際的なルールに基づいて慎重に運用される必要があります。

2. セーフガードの目的とは？

国内産業の保護

セーフガードの最も重要な目的は、特定の品目の輸入急増によって国内産業が打撃を受けることを防ぐことです。これは、国内産業の雇用維持や経済活動を保護するために行われます。

例えば、安価な輸入品が国内市場に大量に流入することで、国内生産者の価格競争力が低下し、経営が圧迫される可能性があります。セーフガードは、このような事態を防ぐために、輸入品の価格を上昇させたり、輸入量を制限したりすることで、国内生産者を保護する役割を果たします。

国内産業の保護
目的	内容
国内産業の保護	安価な輸入品が国内市場に大量に流入することで、国内生産者の価格競争力が低下し、経営が圧迫される可能性を防ぐ

貿易摩擦の抑制

セーフガードは、国内産業の保護を目的とする一方で、貿易摩擦を抑制する役割も担っています。これは、セーフガードが国際的なルールに基づいて運用されることで、貿易紛争を回避できる可能性があるからです。

貿易摩擦の抑制
目的	内容
貿易摩擦の抑制	国際的なルールに基づいて運用することで、貿易紛争を回避する

構造調整の促進

セーフガードは、国内産業の保護を目的とする一方で、構造調整を促進する役割も担っています。これは、セーフガードによって国内産業が保護されることで、企業が新たな技術や製品の開発に投資したり、経営の効率化を進めたりする機会が得られるからです。

構造調整の促進
目的	内容
構造調整の促進	国内産業が保護されることで、企業が新たな技術や製品の開発に投資したり、経営の効率化を進めたりする機会を得る

まとめ

セーフガードは、国内産業の保護、貿易摩擦の抑制、構造調整の促進といった多面的役割を担っています。

3. セーフガードの種類とは？

一般セーフガード

一般セーフガードは、GATT第19条とWTOセーフガード協定に基づき、農林水産物を含む全てのモノ全般を対象とした措置です。

一般セーフガードは、関税引き上げと輸入数量制限の両方の措置がとられます。関税引き上げの場合、その引き上げ後の税額の上限は内外価格差（輸入価格と適正な国内卸売価格との差額）までとなります。数量制限の場合、その数量は原則として直近の適当と認められる3年間の平均輸入数量以上となります。

一般セーフガードは、国内産業の保護という側面を持つ一方で、貿易摩擦を引き起こす可能性も孕んでいます。そのため、セーフガードの発動には、厳格な条件が設けられており、国際的なルールに基づいて慎重に運用される必要があります。

一般セーフガード
対象	内容
対象品目	農林水産物を含む全てのモノ全般
措置	関税引き上げ、輸入数量制限
発動条件	輸入増加が予見されなかった発展によるもの、国内産業に重大な損害を与えるおそれがある、国民経済上緊急の必要性がある

特別セーフガード

特別セーフガードは、WTO農業協定第5条に基づき、ウルグアイ・ラウンド合意において関税化された農産物に適用されます。対象となる農産物は、米、小麦、大麦、乳製品、でん粉など多岐に渡ります。

特別セーフガードは、関税引き上げ措置のみがとられ、輸入数量制限措置はありません。規制を上回る輸入数量となった時に発動されます。

特別セーフガードは、国内産業の保護という側面を持つ一方で、貿易摩擦を引き起こす可能性も孕んでいます。そのため、セーフガードの発動には、厳格な条件が設けられており、国際的なルールに基づいて慎重に運用される必要があります。

特別セーフガード
対象	内容
対象品目	ウルグアイ・ラウンド合意において関税化された農産物（米、小麦、大麦、乳製品、でん粉など）
措置	関税引き上げ
発動条件	輸入増加が予見されなかった発展によるもの、国内産業に重大な損害を与えるおそれがある、国民経済上緊急の必要性がある

繊維セーフガード

繊維セーフガードは、輸入数量制限措置のみがとられるセーフガードです。

繊維セーフガードは、国内産業の保護という側面を持つ一方で、貿易摩擦を引き起こす可能性も孕んでいます。そのため、セーフガードの発動には、厳格な条件が設けられており、国際的なルールに基づいて慎重に運用される必要があります。

繊維セーフガード
対象	内容
対象品目	繊維製品
措置	輸入数量制限
発動条件	輸入増加が予見されなかった発展によるもの、国内産業に重大な損害を与えるおそれがある、国民経済上緊急の必要性がある

まとめ

セーフガードには、一般セーフガード、特別セーフガード、繊維セーフガードの3種類があります。

一般セーフガードは、農林水産物を含む全てのモノ全般を対象とした措置で、関税引き上げと輸入数量制限の両方の措置がとられます。

特別セーフガードは、関税化された農産物を対象とした措置で、関税引き上げ措置のみがとられます。

繊維セーフガードは、輸入数量制限措置のみがとられるセーフガードです。

4. セーフガードのメリットとデメリット

メリット

セーフガードのメリットは、国内産業の保護、雇用維持、経済活動の活性化などが挙げられます。

セーフガードのメリット
メリット	内容
国内産業の保護	輸入急増による国内産業への打撃を予防し、雇用維持や経済活動を保護する
貿易摩擦の抑制	国際的なルールに基づいて運用することで、貿易紛争を回避する
構造調整の促進	国内産業が保護されることで、企業が新たな技術や製品の開発に投資したり、経営の効率化を進めたりする機会を得る

デメリット

セーフガードのデメリットは、貿易摩擦の発生、消費者の負担増加、国際的な信頼の低下などが挙げられます。

セーフガードのデメリット
デメリット	内容
貿易摩擦の発生	輸出国との間で貿易摩擦が発生する可能性がある
消費者の負担増加	輸入品の価格が上昇し、消費者の負担が増加する可能性がある
国際的な信頼の低下	セーフガードが頻繁に発動されると、国際的な信頼が低下する可能性がある

セーフガードの活用

まとめ

セーフガードは、国内産業の保護という側面を持つ一方で、貿易摩擦の発生、消費者の負担増加、国際的な信頼の低下といったデメリットも存在します。

5. セーフガードの適用条件と手続き

適用条件

セーフガードを発動するためには、以下の条件を満たす必要があります。

① 輸入の増加が、事情の予見されなかった発展の結果及びWTO上の義務の効果として発生していること。

② 輸入の増加が、国内産業に重大な損害を与えているか、または与えるおそれがあること。

③ 国民経済上緊急の必要性があること。

セーフガードの適用条件
条件	内容
輸入増加が予見されなかった発展によるもの	輸入増加が、事情の予見されなかった発展の結果及びWTO上の義務の効果として発生していること
国内産業に重大な損害を与えるおそれがある	輸入の増加が、国内産業に重大な損害を与えているか、または与えるおそれがあること
国民経済上緊急の必要性がある	国民経済上緊急の必要性があること

手続き

セーフガードの発動手続きは、以下の通りです。

① 輸入増加の事実及びこれによる国内産業の重大な損害又はそのおそれがある事実についての十分な証拠がある場合、調査を行う。

② 調査の結果、セーフガードの発動が必要と判断された場合、関係国との協議を行い、補償措置をとるよう努める。

③ 関係国との協議が不調に終わった場合、関税・外国為替等審議会または産業構造審議会の諮問を経て、セーフガード措置を発動する。

セーフガードの手続き
手続き	内容
調査	輸入増加の事実及びこれによる国内産業の重大な損害又はそのおそれがある事実についての十分な証拠がある場合、調査を行う
関係国との協議	調査の結果、セーフガードの発動が必要と判断された場合、関係国との協議を行い、補償措置をとるよう努める
審議会への諮問	関係国との協議が不調に終わった場合、関税・外国為替等審議会または産業構造審議会の諮問を経て、セーフガード措置を発動する

暫定措置

調査が開始された場合において、調査完了前にも十分な証拠により輸入増加の事実及びこれが国内産業に与える重大な損害等について推定することができ、国民経済上特に緊急に必要がある場合は、暫定措置を発動することができます。

暫定措置は、関税引き上げのみがとられ、期間は200日以内となります。

暫定措置は、調査の完了前に発動可能ですが、調査により損害が認定されなければ、徴収した税は還付されます。

暫定措置をとる前にWTOに通報し、措置がとられた後に直ちに関係国と協議を行う必要があります。

暫定措置
内容	内容
発動条件	調査が開始された場合において、調査完了前にも十分な証拠により輸入増加の事実及びこれが国内産業に与える重大な損害等について推定することができ、国民経済上特に緊急に必要がある場合
措置	関税引き上げ
期間	200日以内
発動時期	調査の完了前に発動可能
税金の還付	調査により損害が認定されなければ、徴収した税は還付される
WTOへの通報	暫定措置をとる前にWTOに通報し、措置がとられた後に直ちに関係国と協議を行う

まとめ

セーフガードの発動には、厳格な条件と手続きが定められています。

6. セーフガードと関税措置の違いとは？

セーフガード

セーフガードは、特定の品目の輸入急増によって国内産業が打撃を受けることを予防するための緊急措置です。

セーフガードは、関税引き上げや輸入数量制限といった措置によって、輸入量を抑制します。

セーフガード
内容	内容
目的	輸入急増によって国内産業が打撃を受けることを予防するための緊急措置
措置	関税引き上げや輸入数量制限といった措置によって、輸入量を抑制する
発動条件	輸入増加が予見されなかった発展によるもの、国内産業に重大な損害を与えるおそれがある、国民経済上緊急の必要性がある

関税措置

関税措置は、輸入品に対して課せられる税金です。

関税措置は、輸入品の価格を上昇させることで、国内生産品の競争力を高めたり、輸入量を抑制したりする効果があります。

関税措置は、貿易政策の重要な手段の一つであり、様々な目的で利用されます。

関税措置は、国内産業の保護という側面を持つ一方で、貿易摩擦を引き起こす可能性も孕んでいます。そのため、関税措置の導入には、慎重な検討が必要です。

関税措置
内容	内容
目的	貿易政策の手段として、輸入品の価格を上昇させることで、国内生産品の競争力を高めたり、輸入量を抑制したりする効果がある
措置	輸入品に対して課せられる税金
発動条件	貿易政策の目的、国内産業の保護、財源確保など

セーフガードと関税措置の違い

セーフガードと関税措置は、どちらも輸入を抑制する手段ですが、その目的や発動条件が異なります。

セーフガードは、輸入急増によって国内産業が打撃を受けることを予防するための緊急措置であり、関税措置は、貿易政策の手段として、輸入品の価格を上昇させることで、国内生産品の競争力を高めたり、輸入量を抑制したりする効果があります。

セーフガードは、特定の品目の輸入急増を対象とするのに対し、関税措置は、様々な品目を対象とすることができます。

セーフガードと関税措置の違い
項目	セーフガード	関税措置
目的	輸入急増による国内産業への打撃を予防するための緊急措置	貿易政策の手段として、輸入品の価格を上昇させることで、国内生産品の競争力を高めたり、輸入量を抑制したりする効果がある
対象	特定の品目の輸入急増	様々な品目を対象とすることができる
発動条件	輸入増加が予見されなかった発展によるもの、国内産業に重大な損害を与えるおそれがある、国民経済上緊急の必要性がある	貿易政策の目的、国内産業の保護、財源確保など