信託契約とは | 財産を信頼できる相手に託す契約 |
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委託者 | 財産を託す人 |
受託者 | 財産の管理・処分・運用を任される人 |
受益者 | 信託財産から生じた利益を受け取る人 |
信託財産 | 委託者が託した財産 |
信託目的 | 信託契約で定められた目的 |
信託契約の種類 | 契約信託、遺言信託、自己信託 |
信託の目的 | 資産の適切な管理、資産の運用、資産の承継、社会貢献 |
1. 信託契約の概要
信託契約とは何か?
信託契約とは、財産を持つ人が所有する財産の管理・処分・運用を信頼できる相手に託し、その相手が信託の目的に従って財産の管理・処分・運用を行う契約です。相手を信頼して財産を託すことから「信託」といいます。
財産を託す人を「委託者」、財産の管理などを任された人を「受託者」といい、託された財産から生じた利益を受け取る人を「受益者」といいます。受益者は委託者と同じ人でもよく、委託者と受益者が同じ場合の信託を「自益信託」といいます。
また、委託された財産を「信託財産」といい、受託者は信託契約で決められた目的に従って管理・処分・運用しなければなりません。
信託契約は、委託者が財産を受託者に移転し、受託者は「信託目的」を実現するために、委託された信託財産を管理・処分します。
役割 | 説明 |
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委託者 | 財産を託す人 |
受託者 | 財産の管理・処分・運用を任される人 |
受益者 | 信託財産から生じた利益を受け取る人 |
信託契約の種類
信託契約はその設定方法により、以下の3つに分類されます。
契約信託は、委託者と受託者が「信託契約書」を交わすことで開始します。契約であるため、委託者には契約が可能な判断能力が必要となり、認知症などにより判断能力が衰えている場合は、信託契約はできません。
遺言信託とは、遺言書の中で信託を設定するものです。信託銀行などの商品である「遺言信託」とは別物であることに注意しましょう。
自己信託は「信託宣言」ともいわれ、委託者兼受託者が自分の財産を信託することを宣言するだけで成立します。一人で実施できるため要件が厳格化されており、公正証書化するか、受益者に確定日付のある証書により信託された旨およびその内容を通知するなどしなければ効力が発生しません。
種類 | 説明 |
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契約信託 | 委託者と受託者が信託契約書を交わすことで開始 |
遺言信託 | 遺言書の中で信託を設定 |
自己信託 | 委託者兼受託者が自分の財産を信託することを宣言 |
信託の目的
信託契約の中で「信託の目的」を設定しますが、その内容は主に次の4つに分類されます。
資産の適切な管理:認知症などで判断能力が衰えた場合に、資産の凍結を防ぎ、受託者に生活費や医療費・介護費の支払いをしてもらうことなどが該当します。
資産の運用:投資信託を思い浮かべる人も多いかもしれません。投資信託とは、多くの投資家から集めたお金をまとめて、運用の専門家が投資家に代わって株や債券などの有価証券や土地などの不動産に投資し、その利益を投資家に分配するものです。
資産の承継:遺言でも資産を承継できますが、承継人を指定できるのは相続人のみで、そこから先の相続に関しては関与することができません。しかし、信託では、実家の家と土地をまずは長男に相続させ、その次は長男の長男にというように、数次にわたって承継人を指定できます。
目的 | 説明 |
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資産の適切な管理 | 認知症などで判断能力が衰えた場合に、資産の凍結を防ぐ |
資産の運用 | 投資信託などを通じて、資産を増やす |
資産の承継 | 遺言ではできない、複数世代にわたる承継を指定 |
社会貢献 | 公益法人やNPO法人への寄付などを通じて、社会に貢献 |
まとめ
信託契約は、財産を所有する人が、信頼できる相手に財産の管理・処分・運用を託すための契約です。
信託契約には、契約信託、遺言信託、自己信託の3つの種類があります。
信託の目的は、資産の適切な管理、資産の運用、資産の承継、社会貢献などがあります。
信託契約は、委託者、受託者、受益者の3者で構成され、委託者は財産を受託者に移転し、受託者は信託目的を実現するために、委託された信託財産を管理・処分します。
2. 信託契約のメリットとデメリット
信託契約のメリット
信託契約には、以下のメリットがあります。
財産の安全性が確保される:信託財産は、信託契約の中で定められた信託目的に沿って、受益者のために管理・処分されますが、その内容は委託者が自由に決めることができます。
柔軟な財産管理が可能:信託は、委任契約や成年後見制度などにはない柔軟性を備えています。
税制上の優遇措置がある:年間110万円を超える贈与を受けた場合、贈与税が課せられますが、信託ではさまざまな税制上の優遇措置があります。
メリット | 説明 |
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財産の安全性 | 信託法などの法律によって、信託財産の安全性が確保される |
柔軟な財産管理 | 委託者の意向を反映した柔軟な管理が可能 |
税制上の優遇措置 | 教育資金贈与信託や結婚・子育て支援信託など、税制上の優遇措置がある |
信託契約のデメリット
信託契約には、以下のデメリットがあります。
手数料がかかる:信託はあくまでもビジネスであってボランティアではありません。当然ながら発生した利益の一部を手数料として受託者に支払う必要があります。
関係者間のトラブルの原因になる可能性がある:信託はあくまでも金融商品なので損失が出ることもあります。損失が出続けると委託者は受託者に不信感を募らせることになるため、どうしてもトラブルに発展しやすくなります。
信託契約の内容によっては、贈与税が発生する場合がある:自己信託を設定した時点でみなし贈与として課税対象になることです。
デメリット | 説明 |
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手数料 | 信託報酬などの手数料が発生する |
トラブルの可能性 | 受託者との間でトラブルが発生する可能性がある |
贈与税 | 自己信託の場合、贈与税が課税される可能性がある |
信託契約の注意点
信託契約を行う際には、以下の点に注意する必要があります。
信託契約の内容をよく理解すること:信託契約の内容をよく理解した上で、契約を締結することが重要です。
信頼できる受託者を選ぶこと:受託者は、信託財産を管理・処分・運用する責任を負うため、信頼できる人を選ぶことが重要です。
信託契約の内容を家族と話し合うこと:信託契約の内容は、家族と話し合って決めることが重要です。
まとめ
信託契約には、財産の安全性を確保できる、柔軟な財産管理が可能、税制上の優遇措置があるなどのメリットがあります。
一方で、手数料がかかる、関係者間のトラブルの原因になる可能性がある、信託契約の内容によっては贈与税が発生する場合があるなどのデメリットもあります。
信託契約を行う際には、メリットとデメリットを理解した上で、慎重に検討することが重要です。
信頼できる専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることも大切です。
3. 信託契約の種類
個人信託
個人信託とは、委託者が個人となる信託です。
個人信託には、投資信託、不動産信託、家族信託などがあります。
家族信託は、家族・親族を受託者として託す仕組みで、「家族の家族による家族のための民事信託」とも呼ばれます。
家族信託は、高齢者や病気の方の財産管理、障害のある子どもの財産管理などに利用されます。
種類 | 説明 |
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投資信託 | 多くの投資家から集めた資金を運用する |
不動産信託 | 不動産を託して管理・運用・処分を委託する |
家族信託 | 家族・親族を受託者として託す |
法人信託
法人信託とは、委託者が法人となる信託です。
法人信託は、従業員のための年金、企業の資金調達、企業の買収防衛などに利用されます。
法人信託は、信託業の免許を持つ受託者に預ける信託で、「商事信託」または「営利信託」とも呼ばれます。
法人信託は、信託業法の規制下で行われます。
種類 | 説明 |
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従業員年金 | 従業員の年金制度として利用 |
企業の資金調達 | 企業の資金調達手段として利用 |
企業の買収防衛 | 企業の買収防衛策として利用 |
公益・福祉信託
公益・福祉信託とは、公益や福祉のために利用される信託です。
公益・福祉信託には、公益信託、特定贈与信託、後見制度支援信託などがあります。
公益信託は、篤志家などから一定の社会全体の利益を目的として財産を預かり、その財産を管理・運用・処分して公益の目的に役立てる信託制度です。
特定贈与信託は、公益法人やNPO法人に寄付をすることで、社会貢献ができる信託です。
種類 | 説明 |
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公益信託 | 社会全体の利益を目的として財産を預かり、運用する |
特定贈与信託 | 公益法人やNPO法人への寄付を通じて、社会貢献を行う |
後見制度支援信託 | 成年後見制度において、被後見人の財産を保護する |
まとめ
信託契約には、個人信託、法人信託、公益・福祉信託の3つの種類があります。
個人信託は、個人が財産を託す信託で、投資信託、不動産信託、家族信託などがあります。
法人信託は、法人が財産を託す信託で、従業員のための年金、企業の資金調達、企業の買収防衛などに利用されます。
公益・福祉信託は、公益や福祉のために利用される信託で、公益信託、特定贈与信託、後見制度支援信託などがあります。
4. 信託契約の手続きと必要な書類
信託契約の手続き
信託契約の手続きは、以下のとおりです。
信託契約の内容を決定する:委託者と受託者は、信託契約の内容について話し合い、合意します。
信託契約書を作成する:信託契約の内容を記載した信託契約書を作成します。
信託契約書を公正証書にする:信託契約書を公正証書にすることで、信託契約の効力をより確実なものにすることができます。
手順 | 説明 |
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信託契約の内容を決定 | 委託者と受託者が信託契約の内容について話し合い、合意する |
信託契約書を作成 | 信託契約の内容を記載した信託契約書を作成する |
信託契約書を公正証書にする | 信託契約の効力をより確実なものにするために、公正証書にする |
必要な書類
信託契約を行う際に必要な書類は、以下のとおりです。
委託者の本人確認書類:運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなど
受託者の本人確認書類:運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなど
信託財産の所有を証明する書類:不動産であれば登記簿謄本、株式であれば株券など
書類 | 説明 |
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委託者の本人確認書類 | 運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなど |
受託者の本人確認書類 | 運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなど |
信託財産の所有を証明する書類 | 不動産であれば登記簿謄本、株式であれば株券など |
信託契約の費用
信託契約には、以下の費用がかかります。
信託契約書作成費用:公正証書にする場合は、公証人費用がかかります。
信託財産管理費用:信託銀行などに信託財産を管理してもらう場合は、信託報酬がかかります。
不動産登記費用:信託財産が不動産の場合、不動産登記費用がかかります。
費用 | 説明 |
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信託契約書作成費用 | 公正証書にする場合は、公証人費用がかかる |
信託財産管理費用 | 信託銀行などに信託財産を管理してもらう場合は、信託報酬がかかる |
不動産登記費用 | 信託財産が不動産の場合、不動産登記費用がかかる |
まとめ
信託契約の手続きは、信託契約の内容を決定し、信託契約書を作成し、公正証書にするという流れで行います。
信託契約を行う際には、委託者の本人確認書類、受託者の本人確認書類、信託財産の所有を証明する書類などが必要になります。
信託契約には、信託契約書作成費用、信託財産管理費用、不動産登記費用などの費用がかかります。
信託契約を行う際には、費用についても事前に確認しておくことが重要です。
5. 信託契約と遺産相続
信託契約と相続の関係
信託契約は、遺産相続と密接な関係があります。
信託契約によって、相続財産の管理・処分・運用を事前に決めておくことができます。
信託契約によって、相続財産の分配方法を事前に決めておくことができます。
信託契約によって、相続税対策を行うことができます。
関係 | 説明 |
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相続財産の管理・処分・運用 | 信託契約によって、相続財産の管理・処分・運用を事前に決めておくことができる |
相続財産の分配方法 | 信託契約によって、相続財産の分配方法を事前に決めておくことができる |
相続税対策 | 信託契約によって、相続税対策を行うことができる |
信託契約による相続対策
信託契約は、相続税対策に有効な手段の一つです。
信託契約によって、相続財産の評価を下げることができ、相続税を節税することができます。
信託契約によって、相続財産の分配を柔軟に行うことができ、相続税を節税することができます。
信託契約によって、相続争いを防ぐことができます。
対策 | 説明 |
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相続財産の評価を下げる | 信託契約によって、相続財産の評価を下げることができ、相続税を節税することができる |
相続財産の分配を柔軟に行う | 信託契約によって、相続財産の分配を柔軟に行うことができ、相続税を節税することができる |
相続争いを防ぐ | 信託契約によって、相続争いを防ぐことができる |
信託契約と遺言の関係
信託契約は、遺言と併用することもできます。
遺言で信託契約の内容を指定することができます。
遺言信託は、遺言書の中で信託を設定するものです。
遺言信託は、委託者の死亡までその効力は発生しないため、委託者の存命中は受託者による財産の管理・処分・運用はできません。
関係 | 説明 |
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遺言で信託契約の内容を指定 | 遺言で信託契約の内容を指定することができます |
遺言信託 | 遺言書の中で信託を設定する |
遺言信託の効力 | 遺言信託は、委託者の死亡までその効力は発生しないため、委託者の存命中は受託者による財産の管理・処分・運用はできません |
まとめ
信託契約は、遺産相続において、相続財産の管理・処分・運用、分配方法、相続税対策、相続争い防止などに役立ちます。
信託契約は、遺言と併用することもできます。
信託契約は、相続税対策に有効な手段の一つですが、税制上の優遇措置を受けるためには、一定の要件を満たす必要があります。
信託契約を行う際には、専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることが重要です。
6. 信託契約の税務上の取り扱い
信託契約と贈与税
信託契約は、贈与税の対象となる場合があります。
信託契約によって、財産を移転した場合、贈与とみなされることがあります。
贈与税の課税対象となるかどうかは、信託契約の内容によって異なります。
信託契約を行う際には、贈与税の課税について、事前に確認しておくことが重要です。
関係 | 説明 |
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贈与とみなされる場合 | 信託契約によって、財産を移転した場合、贈与とみなされることがあります |
課税対象 | 贈与税の課税対象となるかどうかは、信託契約の内容によって異なります |
事前確認 | 信託契約を行う際には、贈与税の課税について、事前に確認しておくことが重要です |
信託契約と相続税
信託契約は、相続税の対象となる場合があります。
信託契約によって、相続財産の評価を下げることができ、相続税を節税することができます。
信託契約によって、相続財産の分配を柔軟に行うことができ、相続税を節税することができます。
信託契約によって、相続争いを防ぐことができます。
関係 | 説明 |
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相続税対策 | 信託契約によって、相続財産の評価を下げることができ、相続税を節税することができます |
相続財産の分配 | 信託契約によって、相続財産の分配を柔軟に行うことができ、相続税を節税することができます |
相続争い防止 | 信託契約によって、相続争いを防ぐことができます |
信託契約とその他の税金
信託契約は、贈与税や相続税以外にも、以下の税金の対象となる場合があります。
所得税:信託財産から発生した所得は、受託者の所得として課税されます。
固定資産税:信託財産が不動産の場合、固定資産税が課税されます。
登録免許税:信託財産が不動産の場合、不動産登記費用として登録免許税が課税されます。
税金 | 説明 |
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所得税 | 信託財産から発生した所得は、受託者の所得として課税されます |
固定資産税 | 信託財産が不動産の場合、固定資産税が課税されます |
登録免許税 | 信託財産が不動産の場合、不動産登記費用として登録免許税が課税されます |
まとめ
信託契約は、贈与税、相続税、所得税、固定資産税、登録免許税などの税金の対象となる場合があります。
信託契約を行う際には、税務上の取り扱いについて、事前に確認しておくことが重要です。
専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることも大切です。
信託契約は、税務上のメリットとデメリットを理解した上で、慎重に検討することが重要です。
参考文献
・信託契約とは?仕組み・メリット・種類を分かりやすく解説 …
・信託とは?仕組みやメリットデメリットをわかりやすく解説 …
・信託契約(しんたくけいやく) | 証券用語集 | 東海東京証券
・信託の定義と種類 – 信託 | 弁護士法人法律事務所瀬合 …
・【契約による信託の成立の要件・判断基準(信託の性質決定 …
・信託契約(しんたくけいやく)とは? 意味や使い方 – コトバンク
・家族信託とは? 仕組みやメリット・デメリットを司法書士が …
・信託契約とは|はじめての相続|SMBC信託銀行プレスティア