項目 | 内容 |
---|---|
定義 | 外国企業や外国人が国内企業に対して行う投資を制限する制度 |
目的 | 自国の重要な資源や資産などを守ること |
メリット | 自国の安全保障や経済政策の保護、国内産業の育成、雇用創出の促進 |
デメリット | 国内企業の競争環境への影響、経済成長の阻害、国際的な貿易摩擦 |
国際比較 | アメリカ、中国、インド、タイ、インドネシアなど、各国で規制内容が異なる |
改革の動向 | グローバル化や技術革新に対応するため、多くの国で外資規制の緩和が進められている |
1. 投資制限制度とは
投資制限制度の定義
投資制限制度とは、外国企業や外国人が国内企業に対して行う投資を制限する制度のことです。これは、自国の重要な資源や資産などを守るため、安全保障や経済政策の観点から設けられています。グローバル化が進んだ現代においては、先進国は対外取引を原則自由としていますが、完全に自由にしてしまうと、お金を積めば他国の資源や資産をすべて手に入れることができる、という事態が起こり得ます。そのため、各国は自国の安全と経済を守るために、一定の制限を設けているのです。
日本の外資規制は、外国為替及び外国貿易管理法(通称:外為法)と、個別業法の2本柱によって構成されています。外為法は、外国の投資家が日本企業の株式を取得する場合、事前の届出や、事後報告を義務づけています。個別業法とは、各業界を規制する法律のことです。例えば、鉱業法は、鉱業権は日本国民か日本国法人しか取得できない、と定めています。電波法と放送法は、外国人の議決権割合が5分の1以上になっている企業は、無線局を開設できない、と定めています。
外資規制は、その国の経済戦略や安全保障に深く関わりのある規制です。それぞれの国が自国の貿易促進や安全保障との関係を考慮した上で定めています。そのため、規制内容は各国によって異なります。例えば、マスメディアや不動産は外資規制の対象になりやすいなどの傾向はあるものの、時代の流れや世界情勢によっても変わるので、投資を考える際には必ず投資先の国の最新の外資規制について調べることが必要です。
項目 | 内容 |
---|---|
定義 | 外国企業や外国人が国内企業に対して行う投資を制限する制度 |
目的 | 自国の重要な資源や資産などを守ること |
例 | 軍事関連の技術、インフラ、資源など |
投資制限制度の必要性
外資規制は、自国の安全保障や経済政策を守るために必要不可欠な制度です。例えば、軍事関連の技術やインフラ、資源など、国家の安全保障に影響を与える可能性のある分野への外国からの投資を制限することで、自国の安全を確保することができます。また、経済政策の観点からは、国内産業の育成や雇用創出を促進するために、特定の産業への外国からの投資を制限したり、国内企業の競争力を維持するために、外国企業の参入を制限したりすることがあります。
しかし、外資規制をあまりにも厳しくしてしまうと、グローバル時代の国際競争についていけなくなってしまいます。そのため、各国は、自国の安全と経済を守ることのできる範囲で、健全な対外取引を行うために、外資規制のバランスを調整しています。
日本の外資規制は、戦後、経済の復興や自国の産業を育成するために対外取引を厳しく制限していましたが、1964年にOECD(経済協力開発機構)に加盟した以降は資本自由化を進め、1980 年には外国為替及び外国貿易管理法(通称:外為法)改正によって「原則自由」への転換をはかります。その後1996年には、当時の橋本内閣が提唱した金融制度改革である日本版ビッグバンによって抜本的な金融市場の改革が進められました。
項目 | 内容 |
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安全保障 | 軍事関連技術やインフラへの投資を制限することで、自国の安全を確保 |
経済政策 | 国内産業の育成や雇用創出を促進するために、特定の産業への外国からの投資を制限 |
投資制限制度の例
日本の外資規制の例として、航空機、武器、原子力、宇宙開発、エネルギー、上水道、通信、放送、鉄道、路線バス、内航海運、石油、皮革、履物、農業、林業、水産業、警備業などがあります。これらの産業は、国家の安全保障や国民生活に重要な役割を果たすため、外国からの投資を制限することで、安定的な運営を確保することが目的です。
また、近年では、コロナ禍の影響もあり、感染症に関わるワクチンと医薬品、さらに人工呼吸器などの高度医療機器が、外為法上の「安全保障上、特に重要な業種(分野)」に追加されました。これは、これらの製品の安定供給を確保するために、海外資本による買収を制限する目的があります。
さらに、2019年11月には、外為法が改正され、海外資本による、日本の「重点企業」の株式取得がさらに厳格化されました。従来は、海外の投資家などが重点企業の株式を取得するとき、持ち株比率で10%以上の株式を購入する場合に限り、事前届出が必要でした。改正外為法では、この基準が1%以上になりました。重点企業は518社に及び、これは上場企業の14%にあたります。
産業 | 内容 |
---|---|
航空機 | 航空機製造や航空運送への投資を制限 |
武器 | 武器製造や販売への投資を制限 |
原子力 | 原子力発電所建設や運営への投資を制限 |
通信 | 通信インフラへの投資を制限 |
放送 | 放送事業への投資を制限 |
鉄道 | 鉄道事業への投資を制限 |
まとめ
投資制限制度は、自国の安全保障や経済政策を守るために、各国が導入している制度です。グローバル化が進む現代においても、その重要性はますます高まっています。投資制限制度は、国によってその内容や対象となる産業が異なります。そのため、海外進出を検討する際には、必ず投資先の国の最新の外資規制について調べる必要があります。
日本の外資規制は、戦後、経済の復興や自国の産業を育成するために対外取引を厳しく制限していましたが、1960年代以降は資本自由化を進め、現在では「原則自由」となっています。しかし、安全保障や国民生活に重要な役割を果たす産業については、依然として外資規制が設けられています。
近年では、コロナ禍の影響もあり、感染症に関わるワクチンや医薬品、高度医療機器など、国家の安全保障に影響を与える可能性のある分野への外資規制が強化されています。また、海外資本による日本の「重点企業」の株式取得も厳格化されています。
2. 投資制限制度の種類と例
外為法関連
外為法関連の投資制限制度は、外国為替及び外国貿易管理法に基づいて、外国の投資家が日本企業の株式を取得する場合に、事前届出や事後報告を義務づけるものです。事前届出が必要な投資には、アフリカや中央アジアの一部といった対内直接投資に関する条約がない国からの投資や、航空機、武器、原子力、宇宙開発、エネルギー、上水道、通信、放送、鉄道、路線バス、内航海運、石油、皮革、履物、農業、林業、水産業、警備業などがあります。
事前届出が必要なもの以外の投資は、事後報告が可能です。しかし、株式取得を行なった日の翌月15日までに報告が必要になりますので注意してください。
2019年11月には、外為法が改正され、海外資本による、日本の「重点企業」の株式取得がさらに厳格化されました。従来は、海外の投資家などが重点企業の株式を取得するとき、持ち株比率で10%以上の株式を購入する場合に限り、事前届出が必要でした。改正外為法では、この基準が1%以上になりました。重点企業は518社に及び、これは上場企業の14%にあたります。
項目 | 内容 |
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事前届出 | アフリカや中央アジアの一部など、対内直接投資に関する条約がない国からの投資 |
事前届出 | 航空機、武器、原子力、宇宙開発、エネルギー、上水道、通信、放送、鉄道、路線バス、内航海運、石油、皮革、履物、農業、林業、水産業、警備業など |
事後報告 | 事前届出が必要なもの以外の投資 |
個別業法関連
個別業法関連の投資制限制度は、各業界を規制する法律のなかで、外資を制限する手法です。対象となる法律は、鉱業法、日本電信電話株式会社法、電波法、放送法、船舶法、航空法、貨物利用運送事業法などがあります。
例えば、鉱業法は、鉱業権は日本国民か日本国法人しか取得できない、と定めています。電波法と放送法は、外国人の議決権割合が5分の1以上になっている企業は、無線局を開設できない、と定めています。
このように、一部の業種については、外国人や海外資本がメーンとなってビジネスを遂行することはできません。
法律 | 内容 |
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鉱業法 | 鉱業権は日本国民か日本国法人しか取得できない |
電波法 | 外国人の議決権割合が5分の1以上になっている企業は、無線局を開設できない |
放送法 | 外国人の議決権割合が5分の1以上になっている企業は、無線局を開設できない |
外資規制違反の事例
2021年4月の報道で、フジテレビなどを傘下に置くフジ・メディア・ホールディングスが、2014年9月までの約2年間にわたり放送法の外資規制に違反していたことを認めました。放送法では、外国人の議決権比率を20%未満に制限していますが、この件では、過去に外資の比率が20%以上の違反状態となっていたことが発覚しました。放送事業者としての認定を受ける際には、事業者側が議決権の割合を自己申告するだけで、総務省がそれを確認できる仕組みになっていなかった体制も、問題だと指摘されていますが、規制違反にならないよう手続きの際にはかなり慎重にならないといけません。
企業 | 内容 |
---|---|
フジ・メディア・ホールディングス | 2014年9月までの約2年間にわたり放送法の外資規制に違反していた |
まとめ
投資制限制度は、外為法関連と個別業法関連の2種類があります。外為法関連は、外国の投資家が日本企業の株式を取得する場合に、事前届出や事後報告を義務づけるものです。個別業法関連は、各業界を規制する法律のなかで、外資を制限する手法です。
外資規制は、その国の経済戦略や安全保障に深く関わりのある規制です。それぞれの国が自国の貿易促進や安全保障との関係を考慮した上で定めています。そのため、規制内容は各国によって異なります。
投資を考える際には、投資先の国の法律についても知る必要があるため、すべて自社で対応しようとするより専門家に相談した方が近道です。
3. 投資制限制度の目的とメリット
投資制限制度の目的
投資制限制度の目的は、自国の重要な資源や資産などを、他国に奪われないように守ることです。グローバル化が進んだ現代では、先進国は対外取引を原則自由としていますが、全てを自由にしてしまうと、他国の資源・資産も全てお金で手に入れられる事態が起こり得ます。
例えば、軍事関連の技術やインフラ、資源など、国家の安全保障に影響を与える可能性のある分野への外国からの投資を制限することで、自国の安全を確保することができます。また、経済政策の観点からは、国内産業の育成や雇用創出を促進するために、特定の産業への外国からの投資を制限したり、国内企業の競争力を維持するために、外国企業の参入を制限したりすることがあります。
しかし、海外からの投資を全て禁止してしまうと、その国は国際競争に勝てないということも出てきてしまいますので、最小限で安全保障や自国経済の保護をできる内容で外資規制がなされるというわけです。外国為替及び外国貿易法でも、対外取引が自由に行われることをベースに、対外取引に最小限の管理医や調整を行うという規定がされています。
項目 | 内容 |
---|---|
安全保障 | 軍事関連技術やインフラへの投資を制限することで、自国の安全を確保 |
経済政策 | 国内産業の育成や雇用創出を促進するために、特定の産業への外国からの投資を制限 |
投資制限制度のメリット
投資制限制度は、自国の安全保障や経済政策を守るために必要不可欠な制度です。例えば、軍事関連の技術やインフラ、資源など、国家の安全保障に影響を与える可能性のある分野への外国からの投資を制限することで、自国の安全を確保することができます。
また、経済政策の観点からは、国内産業の育成や雇用創出を促進するために、特定の産業への外国からの投資を制限したり、国内企業の競争力を維持するために、外国企業の参入を制限したりすることがあります。
さらに、投資制限制度は、国内企業の技術革新や競争力を促進する効果も期待できます。外国企業との競争を意識することで、国内企業は技術開発や経営効率化に積極的に取り組むようになり、結果的に経済全体の活性化につながる可能性があります。
項目 | 内容 |
---|---|
安全保障 | 軍事関連技術やインフラへの投資を制限することで、自国の安全を確保 |
経済政策 | 国内産業の育成や雇用創出を促進するために、特定の産業への外国からの投資を制限 |
技術革新 | 外国企業との競争を意識することで、国内企業は技術開発や経営効率化に積極的に取り組むようになり、結果的に経済全体の活性化につながる可能性がある |
投資制限制度の例
日本の外資規制の例として、航空機、武器、原子力、宇宙開発、エネルギー、上水道、通信、放送、鉄道、路線バス、内航海運、石油、皮革、履物、農業、林業、水産業、警備業などがあります。これらの産業は、国家の安全保障や国民生活に重要な役割を果たすため、外国からの投資を制限することで、安定的な運営を確保することが目的です。
また、近年では、コロナ禍の影響もあり、感染症に関わるワクチンと医薬品、さらに人工呼吸器などの高度医療機器が、外為法上の「安全保障上、特に重要な業種(分野)」に追加されました。これは、これらの製品の安定供給を確保するために、海外資本による買収を制限する目的があります。
さらに、2019年11月には、外為法が改正され、海外資本による、日本の「重点企業」の株式取得がさらに厳格化されました。従来は、海外の投資家などが重点企業の株式を取得するとき、持ち株比率で10%以上の株式を購入する場合に限り、事前届出が必要でした。改正外為法では、この基準が1%以上になりました。重点企業は518社に及び、これは上場企業の14%にあたります。
産業 | 内容 |
---|---|
航空機 | 航空機製造や航空運送への投資を制限 |
武器 | 武器製造や販売への投資を制限 |
原子力 | 原子力発電所建設や運営への投資を制限 |
通信 | 通信インフラへの投資を制限 |
放送 | 放送事業への投資を制限 |
鉄道 | 鉄道事業への投資を制限 |
まとめ
投資制限制度は、自国の安全保障や経済政策を守るために、各国が導入している制度です。グローバル化が進む現代においても、その重要性はますます高まっています。投資制限制度は、国によってその内容や対象となる産業が異なります。そのため、海外進出を検討する際には、必ず投資先の国の最新の外資規制について調べる必要があります。
日本の外資規制は、戦後、経済の復興や自国の産業を育成するために対外取引を厳しく制限していましたが、1960年代以降は資本自由化を進め、現在では「原則自由」となっています。しかし、安全保障や国民生活に重要な役割を果たす産業については、依然として外資規制が設けられています。
近年では、コロナ禍の影響もあり、感染症に関わるワクチンや医薬品、高度医療機器など、国家の安全保障に影響を与える可能性のある分野への外資規制が強化されています。また、海外資本による日本の「重点企業」の株式取得も厳格化されています。
4. 投資制限制度の影響とデメリット
投資制限制度の影響
投資制限制度は、外国企業の国内市場への参入を制限するため、国内企業の競争環境に影響を与える可能性があります。外国企業の参入が制限されることで、国内企業は競争意識が薄れ、技術革新や経営効率化への取り組みが遅れてしまう可能性があります。
また、投資制限制度は、外国からの投資を減らすことで、国内の経済成長を阻害する可能性もあります。外国からの投資は、国内企業への資金供給や技術導入、雇用創出など、経済活性化に大きく貢献する可能性があります。
さらに、投資制限制度は、国際的な貿易摩擦を引き起こす可能性もあります。外国企業が自国の投資制限制度によって不当に扱われたと感じる場合、WTO(世界貿易機関)などに提訴する可能性があります。
項目 | 内容 |
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競争環境 | 外国企業の参入が制限されることで、国内企業は競争意識が薄れ、技術革新や経営効率化への取り組みが遅れてしまう可能性がある |
経済成長 | 外国からの投資が減ることで、国内の経済成長を阻害する可能性がある |
国際関係 | 外国企業が自国の投資制限制度によって不当に扱われたと感じる場合、WTO(世界貿易機関)などに提訴する可能性がある |
投資制限制度のデメリット
投資制限制度は、国内企業の競争環境に影響を与える可能性があります。外国企業の参入が制限されることで、国内企業は競争意識が薄れ、技術革新や経営効率化への取り組みが遅れてしまう可能性があります。
また、投資制限制度は、外国からの投資を減らすことで、国内の経済成長を阻害する可能性もあります。外国からの投資は、国内企業への資金供給や技術導入、雇用創出など、経済活性化に大きく貢献する可能性があります。
さらに、投資制限制度は、国際的な貿易摩擦を引き起こす可能性もあります。外国企業が自国の投資制限制度によって不当に扱われたと感じる場合、WTO(世界貿易機関)などに提訴する可能性があります。
項目 | 内容 |
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競争環境 | 外国企業の参入が制限されることで、国内企業は競争意識が薄れ、技術革新や経営効率化への取り組みが遅れてしまう可能性がある |
経済成長 | 外国からの投資が減ることで、国内の経済成長を阻害する可能性がある |
国際関係 | 外国企業が自国の投資制限制度によって不当に扱われたと感じる場合、WTO(世界貿易機関)などに提訴する可能性がある |
外資規制の緩和
近年、多くの国で外資規制の緩和が進められています。これは、グローバル化が加速し、国際的な競争が激化する中で、外国からの投資を積極的に誘致することで、経済成長を促進しようとする動きが強まっているためです。
日本でも、外資規制の緩和が進められています。例えば、2019年11月には、外為法が改正され、海外資本による、日本の「重点企業」の株式取得がさらに厳格化されました。従来は、海外の投資家などが重点企業の株式を取得するとき、持ち株比率で10%以上の株式を購入する場合に限り、事前届出が必要でした。改正外為法では、この基準が1%以上になりました。重点企業は518社に及び、これは上場企業の14%にあたります。
しかし、外資規制の緩和は、必ずしもすべての産業において望ましいわけではありません。国家の安全保障や国民生活に重要な役割を果たす産業については、依然として外資規制が必要となる場合があります。
項目 | 内容 |
---|---|
目的 | グローバル化が加速し、国際的な競争が激化する中で、外国からの投資を積極的に誘致することで、経済成長を促進しようとする動きが強まっているため |
例 | 2019年11月には、外為法が改正され、海外資本による、日本の「重点企業」の株式取得がさらに厳格化されました。従来は、海外の投資家などが重点企業の株式を取得するとき、持ち株比率で10%以上の株式を購入する場合に限り、事前届出が必要でした。改正外為法では、この基準が1%以上になりました。重点企業は518社に及び、これは上場企業の14%にあたります。 |
まとめ
投資制限制度は、自国の安全保障や経済政策を守るために必要不可欠な制度ですが、同時に、国内企業の競争環境や経済成長を阻害する可能性も孕んでいます。そのため、投資制限制度は、常に時代の変化に合わせて見直される必要があります。
近年、多くの国で外資規制の緩和が進められています。これは、グローバル化が加速し、国際的な競争が激化する中で、外国からの投資を積極的に誘致することで、経済成長を促進しようとする動きが強まっているためです。
しかし、外資規制の緩和は、必ずしもすべての産業において望ましいわけではありません。国家の安全保障や国民生活に重要な役割を果たす産業については、依然として外資規制が必要となる場合があります。
5. 投資制限制度の国際比較
アメリカの外資規制
アメリカは、基本的には外国投資家を公正かつ同等に扱う姿勢を取っていますが、安全保障上の懸念がある場合は、CFIUS(対米外国投資委員会)が審査を行います。CFIUSは、外国企業がアメリカの企業を買収したり、アメリカのインフラや技術に投資したりする場合に、その取引がアメリカの安全保障に影響を与えないかどうかを審査します。
2018年、トランプ大統領によってCFIUSの権限を強化する法案「FIRRMA」が成立し、2020年に施行されました。FIRRMAでは、米国事業が保有している重要な非公開の技術情報へのアクセスなどが審査対象取引として新たに追加されました。また、FIRRMAと同時期に制定された「2018年輸出管理改革法(ECRA)」では、新興技術と基盤技術が新たに規制の対象となっており、新興技術に含まれ得る技術分野としては、AIやバイオテクノロジー、ロボット工学などがあります。
アメリカは、外国からの投資を積極的に誘致していますが、安全保障上の懸念がある場合は、厳格な審査を行うことで、自国の安全を確保しています。
項目 | 内容 |
---|---|
CFIUS | 外国企業がアメリカの企業を買収したり、アメリカのインフラや技術に投資したりする場合に、その取引がアメリカの安全保障に影響を与えないかどうかを審査 |
FIRRMA | 2018年に成立した法案で、CFIUSの権限を強化し、米国事業が保有している重要な非公開の技術情報へのアクセスなどが審査対象取引として新たに追加された |
ECRA | 2018年に制定された法案で、新興技術と基盤技術が新たに規制の対象となり、AIやバイオテクノロジー、ロボット工学などが含まれる |
中国の外資規制
中国は、自国の技術レベルが立ち遅れている産業や、国家の安全保障に影響を与える可能性のある産業に対して、厳しい外資規制を設けています。中国の外資規制は、「外商投資参入特別管理措置(ネガティブリスト)」によって、制限・禁止業種が指定されています。
中国は、自国の技術革新や産業育成を促進するために、外資規制を積極的に活用しています。一方で、近年では、米中貿易協議においてアメリカからの圧力があったと見られますが、資産運用会社や証券会社への出資規制を廃止するなど、規制緩和も進められています。
中国は、自国の経済成長を促進するために、外国からの投資を誘致する一方で、自国の安全保障や産業育成を保護するために、厳しい外資規制を維持しています。
項目 | 内容 |
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ネガティブリスト | 制限・禁止業種を指定し、自国の技術レベルが立ち遅れている産業や、国家の安全保障に影響を与える可能性のある産業に対して、厳しい外資規制を設けている |
規制緩和 | 近年では、米中貿易協議においてアメリカからの圧力があったと見られますが、資産運用会社や証券会社への出資規制を廃止するなど、規制緩和も進められています |
その他の国の外資規制
インドでは、インド準備銀行(RBI)が所管する「外為管理法」(FEMA)に基づき、商工省産業政策促進局(DIPP)が毎年発表する統合版FDIポリシー(Consolidated FDI Policy)により、外資の参入が禁止される分野と規制される分野が規定されています。インドへの投資を検討する上では、対象の業種が規制されていないかどうかを確認し、該当する場合、どのような規制の対象となるかを確認する必要があります。
タイでは、「外国人事業法(Foreign Business Act)」が2020年3月に施行されました。タイでもネガティブリストがあり、ここに載っているリストは禁止・制限する対象となりますが、注意が必要なケースもあります。ネガティブリストにない業種だと判断したものの、リストにある「その他サービス業」に含まれて規制対象になってしまうことがあります。
インドネシアでは、政府が2021年に国内外の事業活動について、投資優先分野の申請し、特定の要件を持つ事業分野の改訂など規定されました。外資資本が禁止されているものとしては、武器、弾薬、戦争用機材生産などの国防産業や、賭博、遺跡、大麻栽培、酒類製造、珊瑚の採取などへの投資です。
国 | 内容 |
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インド | インド準備銀行(RBI)が所管する「外為管理法」(FEMA)に基づき、商工省産業政策促進局(DIPP)が毎年発表する統合版FDIポリシー(Consolidated FDI Policy)により、外資の参入が禁止される分野と規制される分野が規定されている |
タイ | 「外国人事業法(Foreign Business Act)」が2020年3月に施行され、ネガティブリストにない業種だと判断したものの、リストにある「その他サービス業」に含まれて規制対象になってしまうことがある |
インドネシア | 政府が2021年に国内外の事業活動について、投資優先分野の申請し、特定の要件を持つ事業分野の改訂など規定されました。外資資本が禁止されているものとしては、武器、弾薬、戦争用機材生産などの国防産業や、賭博、遺跡、大麻栽培、酒類製造、珊瑚の採取などへの投資です。 |
まとめ
投資制限制度は、国によってその内容や対象となる産業が異なります。そのため、海外進出を検討する際には、必ず投資先の国の最新の外資規制について調べる必要があります。
アメリカは、基本的には外国投資家を公正かつ同等に扱う姿勢を取っていますが、安全保障上の懸念がある場合は、厳格な審査を行うことで、自国の安全を確保しています。
中国は、自国の技術革新や産業育成を促進するために、外資規制を積極的に活用しています。一方で、近年では、米中貿易協議においてアメリカからの圧力があったと見られますが、資産運用会社や証券会社への出資規制を廃止するなど、規制緩和も進められています。
6. 投資制限制度改革の動向
投資制限制度改革の必要性
グローバル化が加速し、国際的な競争が激化する中で、多くの国で外資規制の緩和が進められています。これは、外国からの投資を積極的に誘致することで、経済成長を促進しようとする動きが強まっているためです。
しかし、外資規制の緩和は、必ずしもすべての産業において望ましいわけではありません。国家の安全保障や国民生活に重要な役割を果たす産業については、依然として外資規制が必要となる場合があります。
そのため、投資制限制度は、常に時代の変化に合わせて見直される必要があります。
項目 | 内容 |
---|---|
グローバル化 | グローバル化が加速し、国際的な競争が激化する中で、外国からの投資を積極的に誘致することで、経済成長を促進しようとする動きが強まっているため |
技術革新 | AIや量子コンピュータなどの最新技術は、軍事利用の可能性も高く、これらの技術分野への外資規制が強化される可能性がある |
安全保障 | サイバーセキュリティやデータプライバシーなどの分野でも、外資規制が強化される可能性がある |
日本の投資制限制度改革
日本でも、外資規制の緩和が進められています。例えば、2019年11月には、外為法が改正され、海外資本による、日本の「重点企業」の株式取得がさらに厳格化されました。従来は、海外の投資家などが重点企業の株式を取得するとき、持ち株比率で10%以上の株式を購入する場合に限り、事前届出が必要でした。改正外為法では、この基準が1%以上になりました。重点企業は518社に及び、これは上場企業の14%にあたります。
また、近年では、コロナ禍の影響もあり、感染症に関わるワクチンや医薬品、高度医療機器など、国家の安全保障に影響を与える可能性のある分野への外資規制が強化されています。
日本の外資規制は、今後も時代の変化に合わせて見直されていく可能性があります。
項目 | 内容 |
---|---|
外為法改正 | 2019年11月には、外為法が改正され、海外資本による、日本の「重点企業」の株式取得がさらに厳格化されました。従来は、海外の投資家などが重点企業の株式を取得するとき、持ち株比率で10%以上の株式を購入する場合に限り、事前届出が必要でした。改正外為法では、この基準が1%以上になりました。重点企業は518社に及び、これは上場企業の14%にあたります。 |
コロナ禍の影響 | 近年では、コロナ禍の影響もあり、感染症に関わるワクチンや医薬品、高度医療機器など、国家の安全保障に影響を与える可能性のある分野への外資規制が強化されています。 |
今後の投資制限制度改革の展望
今後の投資制限制度改革は、グローバル化の進展、技術革新、安全保障上の脅威など、様々な要因によって影響を受ける可能性があります。
特に、AIや量子コンピュータなどの最新技術は、軍事利用の可能性も高く、これらの技術分野への外資規制が強化される可能性があります。また、サイバーセキュリティやデータプライバシーなどの分野でも、外資規制が強化される可能性があります。
一方で、経済成長を促進するために、外資規制を緩和する動きも続くと予想されます。特に、新興国では、外国からの投資を誘致することで、経済発展を加速させようとする動きが強まっています。
項目 | 内容 |
---|---|
技術革新 | AIや量子コンピュータなどの最新技術は、軍事利用の可能性も高く、これらの技術分野への外資規制が強化される可能性がある |
安全保障 | サイバーセキュリティやデータプライバシーなどの分野でも、外資規制が強化される可能性がある |
経済成長 | 経済成長を促進するために、外資規制を緩和する動きも続くと予想されます。特に、新興国では、外国からの投資を誘致することで、経済発展を加速させようとする動きが強まっています。 |
まとめ
投資制限制度は、自国の安全保障や経済政策を守るために必要不可欠な制度ですが、同時に、国内企業の競争環境や経済成長を阻害する可能性も孕んでいます。そのため、投資制限制度は、常に時代の変化に合わせて見直される必要があります。
今後の投資制限制度改革は、グローバル化の進展、技術革新、安全保障上の脅威など、様々な要因によって影響を受ける可能性があります。
投資制限制度は、今後も国際的な議論の対象となるでしょう。
参考文献
・目論見書に記載されている「投資制限」とは? | 投資信託の …
・投資制限制度とは?株式用語解説 – お客様サポート – Dmm 株
・わかりやすい用語集 解説:投資制限制度(とうしせいげんせい …
・ファンドの投資対象、投資信託の投資対象の制限についてgt東京 …
・投資における「5つのリスク」を徹底解説!はじめての投資に …
・投資にはどんなリスクがある?投資リスクを軽減する方法【Fp …
・資産運用のリスクとリターンについて知っておこう | みずほ証券
・初心者のための用語集 – 初めての投資に役立つ基礎用語 …
・外資規制とは?海外進出に必要不可欠な基礎知識を主要国ごと …
・外国からの投資を制限する「外資規制」を解説、コロナ禍で …
・外資規制の基礎知識 | 日本と海外の外資規制の違い / 外資規制 …
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