項目 | 内容 |
---|---|
定義 | 投資対象資産に加えて、為替取引の対象となる通貨も選択できる投資信託 |
収益源 | 投資対象資産の値上がり益、為替取引による利益、金利差益 |
リスク | ハイイールド債券の値下がり、為替変動による為替差損、金利差逆転による為替ヘッジコスト |
運用方法 | 投資対象資産への投資と、選択した通貨に対する為替取引を組み合わせる |
選び方 | 投資目標を明確にする、リスク許容度を把握する、ファンドの運用内容を調べる |
1. 通貨選択型投資信託とは
通貨選択型投資信託とは何か?
通貨選択型投資信託とは、株式や債券といった投資対象資産に加えて、為替取引の対象となる円以外の通貨も選択することができるよう設計された投資信託です。投資対象資産の値上がり益に加え、為替取引による利益も期待できるため、高い収益性を期待できる一方、リスクも高いという特徴があります。
例えば、欧州のハイイールド債券に投資するタイプの通貨選択型ファンドにおいて、為替取引について豪ドル、ブラジル・レアル、トルコ・リラの3つの通貨から選択可能というものであれば、次の3本のファンドが用意されていることになります。なお、この例では、選択可能な通貨は3通貨ですが、通貨の種類や数はファンドにより異なります。
(1) 通貨選択型ファンド(豪ドルコース)\n(2) 通貨選択型ファンド(ブラジル・レアルコース)\n(3) 通貨選択型ファンド(トルコ・リラコース)
(1)の通貨選択型ファンド(豪ドルコース)は、欧州のハイイールド債券投資からの配当収益や長期的な債券の値上がり益と豪ドルの対円での値上がり益の獲得を目指します。さらに、豪ドルの金利と日本円の金利の間に金利差が発生するため、為替ヘッジプレミアムと呼ばれる金利差収入の獲得も期待されます。 同様に(2)の通貨選択型ファンド(ブラジル・レアルコース)は欧州のハイイールド債券投資からの収益とブラジル・レアルの対円での上昇、ブラジルと日本の金利差を、(3)の通貨選択型ファンド(トルコ・リラコース)は欧州のハイイールド債券投資からの収益とトルコ・リラの対円での値上がり益、日米間の金利差収益の獲得を目指します。
ファンド名 | 投資対象資産 | 選択可能な通貨 |
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通貨選択型ファンド(豪ドルコース) | 欧州ハイイールド債券 | 豪ドル |
通貨選択型ファンド(ブラジル・レアルコース) | 欧州ハイイールド債券 | ブラジル・レアル |
通貨選択型ファンド(トルコ・リラコース) | 欧州ハイイールド債券 | トルコ・リラ |
通貨選択型投資信託の収益源
通貨選択型投資信託では、ハイイールド債券などの実質的な投資対象からの配当や値上がり益、為替取引による為替差益、金利差益の3つの収益の源泉が存在することになります。
① 投資対象資産による収益\n② 為替取引によるプレミアム(金利差相当分の収益)\n③ 為替変動による収益
①は、投資対象資産が値上がりした場合や利子・配当が支払われた場合に得られます。②は、選択した通貨の金利が投資対象資産の通貨の金利よりも高い場合に期待できます。③は、選択した通貨の対円レートが上昇した場合に得られます。
ただし、これらの収益源に相応してリスクが内在していることについて注意が必要です。ハイイールド債券の値下がり、為替変動による為替差損、金利差逆転による為替ヘッジコストという3つの損失の可能性をもっていることになります。
収益源 | 説明 |
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投資対象資産による収益 | 投資対象資産が値上がりした場合や利子・配当が支払われた場合に得られる |
為替取引によるプレミアム | 選択した通貨の金利が投資対象資産の通貨の金利よりも高い場合に期待できる |
為替変動による収益 | 選択した通貨の対円レートが上昇した場合に得られる |
通貨選択型投資信託のリスク
単純に、日本の債券に投資するファンドであれば、債券価格の変動によるリスクだけを考慮すればすみますが、通貨選択型ファンドでは、収益の源泉が3つ存在している分、損失の源泉も3つ存在しており、よりハイリスク・ハイリターンの投資対象であると言えます。
しかも、実質的な投資対象であるハイイールド債券や新興国の債券などは、先進国の国債や一般企業の社債に比べて信用度が低く、それ自体がハイリスクの投資対象です。
また、為替取引部分について、用意されている通貨の多くはブラジル・レアル、トルコ・リラ、メキシコ・ペソなど、新興国の通貨が多く、先進国の通貨より大きな為替リスクを抱えています。
なお、ファンド名には「通貨選択型」あるいは「通貨選択シリーズ」といった言葉が含まれているものも多く存在しますが、単に「新興国債券ファンド・ブラジル・レアルコース」「新興国債券ファンド・トルコ・リラ・コース」のように、通貨選択型という言葉がファンド名に含まれていないファンドもあります。
リスク | 説明 |
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ハイイールド債券の値下がり | ハイイールド債券は格付が低く、価格が大きく変動する可能性がある |
為替変動による為替差損 | 選択した通貨が円に対して下落した場合に発生する |
金利差逆転による為替ヘッジコスト | 選択した通貨の金利が投資対象資産の通貨の金利よりも低くなった場合に発生する |
まとめ
通貨選択型投資信託は、投資対象資産の値上がり益に加え、為替取引による利益も期待できるため、高い収益性を期待できる一方、リスクも高いという特徴があります。
ハイイールド債券や新興国債券など、それ自体がハイリスクな投資対象に投資する場合、さらに為替変動によるリスクも加わるため、投資初心者には難しい投資信託と言えるでしょう。
通貨選択型投資信託は、投資対象資産の値上がり益、為替取引による利益、金利差益の3つの収益源と、ハイイールド債券の値下がり、為替変動による為替差損、金利差逆転による為替ヘッジコストという3つの損失の可能性を理解した上で投資を行う必要があります。
投資信託を選ぶ際には、ファンドの運用内容やリスクをよく理解した上で、自分の投資目標やリスク許容度に合わせて慎重に選択することが重要です。
2. 通貨リスクとは?
通貨リスクとは何か?
通貨リスクとは、投資対象資産の通貨と投資家の通貨との間の為替レートの変動によって生じるリスクのことです。通貨選択型投資信託では、投資対象資産の通貨とは異なる通貨を選択することができるため、為替リスクが大きくなる可能性があります。
例えば、日本円建ての投資信託でブラジル・レアルを選択した場合、ブラジル・レアルが円に対して下落すると、投資信託の価値が下落し、損失が発生する可能性があります。
逆に、ブラジル・レアルが円に対して上昇すると、投資信託の価値が上昇し、利益が発生する可能性があります。
通貨リスクは、投資対象資産の通貨と投資家の通貨の組み合わせによって大きく異なります。
通貨リスクの種類
通貨リスクには、大きく分けて2つの種類があります。
① 為替変動リスク\n② 金利差リスク
①は、投資対象資産の通貨と投資家の通貨のレートが変動することによって生じるリスクです。②は、投資対象資産の通貨と投資家の通貨の金利差が変動することによって生じるリスクです。
通貨選択型投資信託では、これらのリスクを理解した上で投資を行う必要があります。
リスクの種類 | 説明 |
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為替変動リスク | 投資対象資産の通貨と投資家の通貨のレートが変動することによって生じるリスク |
金利差リスク | 投資対象資産の通貨と投資家の通貨の金利差が変動することによって生じるリスク |
通貨リスクを軽減する方法
通貨リスクを軽減するためには、いくつかの方法があります。
① 為替ヘッジ\n② 分散投資\n③ 通貨リスク許容度を考慮した投資
①は、投資対象資産の通貨と投資家の通貨のレートが変動することによって生じるリスクを軽減する方法です。②は、複数の通貨に分散して投資することで、為替リスクを分散させる方法です。③は、自分のリスク許容度に合わせて、通貨リスクの高い投資信託を選ぶか、低い投資信託を選ぶかを判断する方法です。
通貨リスクは、投資信託の運用成績に大きな影響を与える可能性があるため、投資を行う前にしっかりと理解しておくことが重要です。
方法 | 説明 |
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為替ヘッジ | 投資対象資産の通貨と投資家の通貨のレートが変動することによって生じるリスクを軽減する方法 |
分散投資 | 複数の通貨に分散して投資することで、為替リスクを分散させる方法 |
通貨リスク許容度を考慮した投資 | 自分のリスク許容度に合わせて、通貨リスクの高い投資信託を選ぶか、低い投資信託を選ぶかを判断する方法 |
まとめ
通貨リスクは、投資対象資産の通貨と投資家の通貨のレートが変動することによって生じるリスクです。通貨選択型投資信託では、投資対象資産の通貨とは異なる通貨を選択することができるため、為替リスクが大きくなる可能性があります。
通貨リスクには、為替変動リスクと金利差リスクの2つの種類があります。
通貨リスクを軽減するためには、為替ヘッジ、分散投資、通貨リスク許容度を考慮した投資など、いくつかの方法があります。
通貨リスクは、投資信託の運用成績に大きな影響を与える可能性があるため、投資を行う前にしっかりと理解しておくことが重要です。
3. 通貨選択型投資信託のメリット
高い収益性
通貨選択型投資信託は、投資対象資産の値上がり益に加えて、為替取引による利益も期待できるため、高い収益性を期待できます。
特に、高金利通貨を選択した場合、為替ヘッジプレミアムによって、さらに収益が期待できます。
ただし、為替リスクや投資対象資産のリスクも高いため、必ずしも高い収益が得られるとは限りません。
投資を行う前に、リスクとリターンのバランスをしっかりと理解しておくことが重要です。
投資対象資産の選択肢が多い
通貨選択型投資信託は、投資対象資産だけでなく、通貨も選択できるため、投資家のニーズに合わせた投資を行うことができます。
例えば、ハイイールド債券に投資したいけど、為替リスクは避けたいという場合は、日本円を選択することができます。
逆に、高金利通貨で運用して、為替差益も期待したいという場合は、ブラジル・レアルやトルコ・リラなど、高金利通貨を選択することができます。
投資対象資産と通貨の組み合わせによって、さまざまな投資戦略を立てることができます。
毎月分配型が多い
通貨選択型投資信託は、毎月分配型が多いのも特徴です。
毎月分配金を受け取ることができるため、安定収入を得たい投資家にとって魅力的な投資信託と言えます。
ただし、分配金は運用益から支払われるため、運用成績が悪化すると、分配金が減額される可能性があります。
分配金に頼り切りにするのではなく、長期的な視点で投資を行うことが重要です。
まとめ
通貨選択型投資信託は、高い収益性、投資対象資産の選択肢が多い、毎月分配型が多いなど、いくつかのメリットがあります。
ただし、これらのメリットの裏には、為替リスクや投資対象資産のリスクなど、いくつかのデメリットも存在します。
投資を行う前に、メリットとデメリットをしっかりと理解した上で、自分の投資目標やリスク許容度に合わせて慎重に選択することが重要です。
通貨選択型投資信託は、必ずしもすべての投資家に適した投資信託ではありません。
4. 通貨選択型投資信託のデメリット
複雑な仕組み
通貨選択型投資信託は、投資対象資産、為替取引、金利差益など、複数の要素が組み合わさった複雑な仕組みになっています。
そのため、投資初心者にとっては、仕組みを理解するのが難しい場合があります。
投資信託を選ぶ際には、ファンドの運用内容やリスクをよく理解した上で、自分の投資目標やリスク許容度に合わせて慎重に選択することが重要です。
複雑な仕組みを理解できない場合は、他の投資信託を選ぶことを検討しましょう。
高い手数料
通貨選択型投資信託は、複雑な仕組みのため、運用する側も手間がかかります。
そのため、手数料が割高になる傾向があります。
投資信託を選ぶ際には、手数料も重要な判断材料の一つです。
手数料が安い投資信託を選ぶようにしましょう。
為替リスク
通貨選択型投資信託では、投資対象資産の通貨とは異なる通貨を選択することができるため、為替リスクが大きくなります。
特に、高金利通貨を選択した場合、為替変動が大きくなる可能性があります。
為替リスクを軽減するためには、為替ヘッジや分散投資などを検討する必要があります。
為替リスクを理解した上で、投資を行うようにしましょう。
まとめ
通貨選択型投資信託は、複雑な仕組み、高い手数料、為替リスクなど、いくつかのデメリットがあります。
投資を行う前に、これらのデメリットをしっかりと理解した上で、自分の投資目標やリスク許容度に合わせて慎重に選択することが重要です。
通貨選択型投資信託は、必ずしもすべての投資家に適した投資信託ではありません。
投資初心者やリスク許容度の低い投資家は、他の投資信託を選ぶことを検討しましょう。
5. 通貨選択型投資信託の運用方法
通貨選択型投資信託の運用方法とは?
通貨選択型投資信託の運用方法は、投資対象資産への投資と、選択した通貨に対する為替取引を組み合わせたものです。
投資対象資産への投資は、株式、債券、不動産など、さまざまな資産に投資されます。
為替取引は、投資対象資産の通貨とは異なる通貨を選択し、その通貨の対円レートの変動によって利益を得ることを目指します。
通貨選択型投資信託では、これらの運用方法を組み合わせることで、投資対象資産の値上がり益に加えて、為替取引による利益も期待できます。
為替ヘッジ
為替ヘッジとは、為替レートの変動リスクを軽減するための方法です。
通貨選択型投資信託では、投資対象資産の通貨とは異なる通貨を選択した場合、為替レートの変動によって損失が発生する可能性があります。
為替ヘッジを行うことで、このリスクを軽減することができます。
為替ヘッジには、さまざまな方法がありますが、通貨選択型投資信託では、主に金利差を利用した為替ヘッジが行われます。
金利差を利用した為替ヘッジ
金利差を利用した為替ヘッジとは、投資対象資産の通貨と選択した通貨の金利差を利用して、為替レートの変動リスクを軽減する方法です。
例えば、投資対象資産の通貨が米ドルで、選択した通貨がブラジル・レアルの場合、ブラジル・レアルの金利が米ドルの金利よりも高い場合、その金利差を利用して為替ヘッジを行うことができます。
具体的には、投資対象資産の通貨を、選択した通貨に換金し、その通貨を預金することで、金利差による利益を得ることができます。
ただし、金利差を利用した為替ヘッジは、必ずしも成功するとは限りません。為替レートが大きく変動した場合、損失が発生する可能性もあります。
通貨 | 金利 |
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米ドル | 1% |
ブラジル・レアル | 11% |
為替レート | 1ドル = 2レアル |
まとめ
通貨選択型投資信託の運用方法は、投資対象資産への投資と、選択した通貨に対する為替取引を組み合わせたものです。
為替ヘッジは、為替レートの変動リスクを軽減するための方法であり、金利差を利用した為替ヘッジなどが行われます。
通貨選択型投資信託の運用方法は複雑なため、投資を行う前にしっかりと理解しておくことが重要です。
投資信託を選ぶ際には、ファンドの運用内容やリスクをよく理解した上で、自分の投資目標やリスク許容度に合わせて慎重に選択することが重要です。
6. 通貨選択型投資信託の選び方
投資目標を明確にする
通貨選択型投資信託を選ぶ際には、まず自分の投資目標を明確にすることが重要です。
どのような資産に投資したいのか、どのくらいの期間でどのくらいの収益を期待しているのか、などを明確にしましょう。
投資目標が明確になれば、それに合った投資信託を選ぶことができます。
投資目標が定まっていない場合は、投資信託を選ぶことが難しく、失敗する可能性が高くなります。
リスク許容度を把握する
通貨選択型投資信託は、ハイリスク・ハイリターンの投資信託です。
そのため、投資を行う前に、自分のリスク許容度を把握しておくことが重要です。
リスク許容度とは、投資によってどれだけの損失を許容できるのかを表すものです。
リスク許容度が低い場合は、他の投資信託を選ぶことを検討しましょう。
ファンドの運用内容を調べる
通貨選択型投資信託を選ぶ際には、ファンドの運用内容をしっかりと調べる必要があります。
投資対象資産、運用方法、手数料、リスクなど、さまざまな情報を収集し、比較検討しましょう。
ファンドの運用内容を理解した上で、自分の投資目標やリスク許容度と合致する投資信託を選びましょう。
ファンドの運用内容がわからない場合は、投資信託会社に問い合わせるなどして、しっかりと理解してから投資を行うようにしましょう。
まとめ
通貨選択型投資信託を選ぶ際には、投資目標を明確にし、リスク許容度を把握し、ファンドの運用内容をしっかりと調べる必要があります。
投資信託を選ぶ際には、自分の投資目標やリスク許容度と合致する投資信託を選びましょう。
通貨選択型投資信託は、必ずしもすべての投資家に適した投資信託ではありません。
投資初心者やリスク許容度の低い投資家は、他の投資信託を選ぶことを検討しましょう。
参考文献
・「通貨選択型」投資信託の収益/損失に関するご説明 | 投資 …
・通貨選択型投資信託のしくみ | 東海東京証券 – Tokai Tokyo
・通貨が選べていいとこ取り!?通貨選択型ファンドとは [投資信託 …
・通貨選択型投資信託 | 金融・証券用語解説集 | 大和証券
・PDF 「通貨選択型の投資信託」とは? – 日本証券業協会
・通貨選択型投資信託とは?株式用語解説 – お客様サポート – Dmm 株
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