1. MLPとは何か
1-1. MLPの定義と仕組み
MLPは「Master Limited Partnership」の略称で、米国で行われている共同投資事業形態の一つです。MLPは、総所得の90%以上を歳入法で定められたエネルギー・天然資源関連事業、不動産などの特定の事業から得ており、その出資持分がニューヨーク証券取引所やNASDAQなどの金融商品取引所に上場されているものを指します。
MLPは、無限責任を負うゼネラル・パートナー(GP)と有限責任を負うリミテッド・パートナー(LP)によって構成されます。LPは一般投資家で、出資した金額以上の損失を負うことはありません。LPは、経営には参加できませんが、MLPのユニット(株式に相当する)を保有することで、リミテッド・パートナーとなり、分配金を受け取ることができます。ユニットの保有者はユニット・ホルダーと呼ばれます。
MLPは、事業の収益の大半を配当としてLPに分配することを方針としているため、高い配当利回りが期待できます。また、MLPは、長期契約による安定収入を得ているため、景気の影響を受けにくいという特徴もあります。
1-2. MLPの投資対象
MLPが関わる事業は多岐に渡りますが、主な投資対象は石油・天然ガスの精製、備蓄、輸送(パイプライン)施設などエネルギー・インフラに関わる事業です。これらの事業は、施設利用料などを長期契約することで安定的に収入を得ることができ、収益の安定性が高いとされています。
MLPの投資対象は、近年ではシェール革命による石油・天然ガスの増産に伴い、より注目を集めています。シェール革命とは、従来採掘が困難だったシェールガスなどの非在来型天然ガスを、新技術を用いて採掘する技術革新のことです。シェール革命によって、米国はエネルギー生産国としての地位を確立し、MLPもその恩恵を受けて成長しています。
1-3. MLPの魅力とリスク
MLPの魅力は、高い配当利回り、安定的な収益、成長性の高さです。
高い配当利回り: MLPは、収益の大半を配当として支払うことを方針としているため、他の資産クラスと比べて利回り水準が高い傾向にあります。
安定的な収益: MLPは、長期契約による安定収入を得ているため、景気の影響を受けにくいという特徴があります。
成長性の高さ: シェール革命などによる石油・天然ガスの増産に伴い、MLPの市場規模は拡大し続けています。
一方で、MLPにはリスクも存在します。
エネルギー価格の変動リスク: MLPの収益は、石油・天然ガスの価格に大きく影響されます。エネルギー価格が下落すると、MLPの収益も減少する可能性があります。
規制リスク: MLPは、エネルギー関連事業を行っているため、政府の規制によって事業が制限される可能性があります。
金利上昇リスク: 金利が上昇すると、MLPのユニット価格が下落する可能性があります。
1-4. まとめ
MLPは、高い配当利回り、安定的な収益、成長性の高さという魅力を持つ一方で、エネルギー価格の変動リスク、規制リスク、金利上昇リスクなどのリスクも存在します。投資を行う際は、これらのリスクを理解した上で、自分の投資方針に合った投資判断を行うことが重要です。
参考文献
・【MLPとは？】REIT（リート）とは違う!その概要・仕組みと2019年以降の見通しをわかりやすく解説。
・ハイイールド債より高利回り、Reitより高成長!今、注目のmlpとは | トウシル 楽天証券の投資情報メディア
2. MLPの特徴と利点
2-1. 法人税免除による高い配当収益
MLP（マスター・リミテッド・パートナーシップ）は、米国における共同投資事業の形態の一つであるLP（リミテッド・パートナーシップ）の一種です。MLPは、総所得の90%以上をエネルギー・天然資源関連事業から得ることで、原則として法人税が免除されます。この法人税免除という特徴は、MLPにとって大きなメリットであり、高い配当収益を生み出す要因となっています。
MLPでは、現在の事業の運営に必要のない全ての収益については配当としてユニット・ホルダーに分配しなければならないと定められています。そのため、MLPは一般的に高い配当収益を期待できます。これは、日本のREIT（不動産投資信託）に似ています。REITも、不動産からの賃貸収入などの収益を分配金として投資家に還元することが特徴です。
MLPの法人税免除は、エネルギーインフラへの投資促進を目的として、1980年代に米国で誕生した制度です。米国政府は、エネルギーインフラの整備を促進するために、MLPに法人税免除という優遇措置を与えることで、投資家の関心を集め、資金調達を容易にしました。
2-2. 安定したキャッシュフローとインデックス指標との低い相関性
MLPの主な事業は、パイプラインをはじめとするエネルギーインフラの「ミッドストリーム事業」です。ミッドストリーム事業は、エネルギー関連の天然資源において、川上の生産者（アップストリーム）と川下の最終消費者（ダウンストリーム）を繋ぐ事業です。
ミッドストリーム事業は、以下のような特徴があります。
需要の安定性：エネルギーは、生活必需品であり、需要が安定しています。
課金収入：パイプラインなどのインフラ事業は、輸送や貯蔵などのサービスを提供する対価として、安定した課金収入を得ることができます。
これらの特徴により、MLPは安定したキャッシュフローを生み出すことが期待できます。また、MLPは株式等のインデックス指標との相関性が低いことも特徴です。これは、MLPがインフラ事業に特化しており、経済の変動に大きく左右されないためです。
2-3. シェールガス革命による成長性
近年、シェールガス革命によって、米国では天然ガスの生産量が増加しています。シェールガス革命は、MLPにとって追い風となっています。シェールガス革命によって、天然ガスの生産量が増加すると、それに伴ってパイプラインなどのインフラ需要も増加します。
MLPは、シェールガス革命によって成長するエネルギーインフラ市場に投資する機会を得ています。シェールガス革命は、MLPの成長性を高める要因の一つとなっています。
2-4. まとめ
MLPは、法人税免除、安定したキャッシュフロー、インデックス指標との低い相関性、シェールガス革命による成長性など、多くの魅力的な特徴を持つ投資対象です。しかし、MLPは、原油価格や天然ガス価格の変動、規制環境の変化などのリスクも抱えています。
MLPへの投資を検討する際は、これらのリスクを理解した上で、自身の投資方針に合った投資を行うことが重要です。また、MLPは、一般的な株式とは異なる投資対象であるため、投資前に十分な知識を身につけることが重要です。
参考文献
・「MLP」投資入門ガイド：パイプラインMLPの概要、MLP関連ETF（AMLP/EMLP/MLPA/MLPX）
・米国mlp 米国mlp市場の上昇の背景と2023年の見通し |フランクリン・テンプルトン
3. MLPの投資リスク
3-1. 原油・天然ガス価格の変動リスク
MLPは、原油や天然ガスの生産・輸送・精製といった事業に携わっており、これらの原油・天然ガス価格の変動は、MLPの収益に大きな影響を与えます。原油・天然ガス価格は、世界的な需給バランスや地政学的な要因など、様々な要因によって変動します。
原油・天然ガス価格が上昇すると、MLPの収益は増加し、株価は上昇する傾向があります。しかし、原油・天然ガス価格が下落すると、MLPの収益は減少する可能性があり、株価は下落する傾向があります。特に、原油・天然ガス価格の下落が長期化すると、MLPの経営は悪化し、倒産のリスクも高まります。
また、原油・天然ガス価格の変動は、MLPの配当にも影響を与える可能性があります。原油・天然ガス価格が下落すると、MLPは配当を削減または停止する可能性があります。そのため、MLPに投資する際には、原油・天然ガス価格の変動リスクを理解しておくことが重要です。
3-2. 金利上昇リスク
MLPは、事業の拡大や設備投資のために、多くの資金を借入しています。そのため、金利上昇はMLPの財務負担を増加させ、収益を圧迫する可能性があります。金利が上昇すると、MLPは借入金の利払い費用が増加し、利益が減少する可能性があります。
金利上昇は、MLPの株価にも影響を与える可能性があります。金利が上昇すると、投資家はより高利回りな投資商品に資金をシフトする可能性があり、MLPの株価は下落する可能性があります。そのため、MLPに投資する際には、金利上昇リスクを理解しておくことが重要です。
3-3. 規制リスク
MLPは、原油・天然ガスの生産・輸送・精製といった事業を行っており、事業活動は、政府や規制当局によって規制されています。政府や規制当局は、環境保護や安全対策などの理由から、MLPの事業活動に対する規制を強化することがあります。
規制が強化されると、MLPは事業活動を行うために、新たな設備投資や対策費用が必要となる可能性があります。また、規制の変更によって、MLPの事業が制限される可能性もあります。規制リスクは、MLPの収益や株価に悪影響を与える可能性があるため、注意が必要です。
3-4. まとめ
MLPは、原油・天然ガスの価格変動リスク、金利上昇リスク、規制リスクなど、様々なリスクを抱えています。これらのリスクは、MLPの収益や株価に悪影響を与える可能性があるため、MLPに投資する際には、これらのリスクを理解しておくことが重要です。
MLPは高利回りな投資商品として注目されていますが、リスクも高いことを認識し、投資判断を行う必要があります。投資前に、MLPの事業内容やリスクを十分に理解し、自身の投資目標やリスク許容度に見合った投資を行うことが重要です。
参考文献
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