ライツイシューとは?経済用語について説明

1. ライツイシューの定義とは

ライツイシュー(Rights Issue)は、企業が既存の株主に新株を購入する権利(新株予約権)を無償で割り当てる増資方法です。企業が資金調達を行う手段の1つとして、特に欧米で広く利用されています。日本では、2006年の会社法改正によって導入され、近年注目を集めています。

1-1. ライツイシューの仕組み

ライツイシューでは、企業が既存株主に対して、新株予約権を発行します。この権利は、既存株主が一定期間内に、あらかじめ定められた価格で新株を購入できる権利です。株主は、この権利を行使して新株を購入するか、または市場で売却することができます。

ライツイシューでは、既存株主が保有する株券の価値の希薄化を抑制することができ、公募増資に比べて既存株主にとって有利な増資方法とされています。これは、既存株主が新株予約権を行使することで、新株を発行価格で購入できるため、発行後の株価が下落しても、既存株主は損失を回避できるからです。

1-2. ライツイシューの種類

ライツイシューには、新株予約権の行使期間や、発行企業が資金調達を確実に行うためのコミットメントの有無によって、いくつかの種類があります。

コミットメント型: 特定の金融機関が、権利行使されなかった新株予約権を全額買い取ることを約束するタイプ。発行企業は、資金調達を確実に実現することができます。

パーシャルコミットメント型: 特定の金融機関が、権利行使されなかった新株予約権の一部を買い取ることを約束するタイプ。コミットメント型よりも、発行企業の負担が軽くなります。

ノンコミットメント型: 特定の金融機関が、権利行使されなかった新株予約権を買い取ることを約束しないタイプ。発行企業は、資金調達を確実に実現できないリスクがあります。

1-3. ライツイシューのメリットとデメリット

ライツイシューには、以下のようなメリットとデメリットがあります。

メリット

既存株主にとって有利な増資方法: 株価の希薄化が抑制されるため、既存株主が不利益を被る可能性が小さい。

資金調達を確実に実現できる: コミットメント型やパーシャルコミットメント型では、特定の金融機関が権利行使されなかった新株予約権を買い取るため、発行企業は計画通りの資金調達を実現できる。

デメリット

新株予約権の価格が、市場で大きく変動する可能性: 新株予約権の価格は、発行企業の業績や市場の動向によって変動するため、株主が損失を被る可能性もある。

非コミットメント型の場合、資金調達を確実に実現できない: 権利行使されなかった新株予約権がすべて消滅するため、発行企業は計画通りの資金調達を実現できない可能性がある。

1-4. まとめ

ライツイシューは、既存株主にとって有利な増資方法であり、資金調達を確実に実現できる点で優れています。ただし、新株予約権の価格が変動するリスクや、資金調達を確実に実現できないリスクなど、デメリットも存在します。ライツイシューを行う際には、これらのメリットとデメリットを理解した上で、慎重に判断する必要があります。

ライツイシューは、企業が資金調達を行うための選択肢の一つとして、今後ますます注目を集めると予想されます。既存株主にとって有利な増資方法であり、資金調達を確実に実現できる点で優れていますが、リスクも存在するため、導入する際には慎重な検討が必要です。

参考文献

ライツイシュー|証券用語解説集|野村證券

ライツイシュー – Wikipedia

ライツ・イシューとは? | 証券取引用語集

2. ライツイシューの起源と歴史

2-1. ライツイシューの誕生:欧米での導入と発展

ライツイシューは、既存株主に対して新株の購入権利(新株予約権)を割り当てることで資金調達を行う手法です。この手法は、19世紀後半に欧米で誕生し、その後急速に普及していきました。

ライツイシューが誕生した背景には、当時の企業が資金調達手段として、主に銀行からの借入に依存していたことが挙げられます。しかし、銀行からの借入には、金利負担が大きいことや、借入先の制約があるなどの問題点がありました。そこで、企業は銀行に頼らない資金調達手段として、ライツイシューに着目しました。

ライツイシューは、既存株主に新株の購入権利を与えることで、彼らに企業の成長に積極的に参加してもらうことを目的としていました。また、ライツイシューでは、既存株主の持ち株比率が希薄化しにくいというメリットもありました。そのため、ライツイシューは欧米では、企業にとって魅力的な資金調達手段として受け入れられました。

特に、1920年代の米国では、経済成長に伴い企業の資金需要が高まり、ライツイシューが盛んに行われました。しかし、1929年の世界恐慌により、ライツイシューの利用は一時的に減少しました。

2-2. 日本のライツイシュー導入:会社法改正と市場活性化

日本においては、ライツイシューは比較的新しい資金調達手法です。日本では、1990年代までは、株式の希薄化や株主との関係性悪化を懸念し、ライツイシューはあまり利用されていませんでした。しかし、2000年代に入ると、企業の資金調達手段の多様化が求められるようになり、2006年に会社法が改正され、ライツイシューが正式に導入されました。

会社法改正により、日本の企業はライツイシューを通じて、新たな資金を調達することが可能となりました。しかし、当初は、ライツイシューに関する知識不足や、市場慣習の未整備などが課題として挙げられていました。

2-3. ライツイシューの課題:希薄化リスクとノンコミットメント型問題

ライツイシューは、企業にとって魅力的な資金調達手段ですが、同時にいくつかの課題も抱えています。

一つ目の課題は、株式の希薄化リスクです。ライツイシューでは、新株の発行により、既存株主の持ち株比率が希薄化してしまいます。この希薄化は、既存株主の資産価値の減少につながる可能性があり、投資家の不安材料となりえます。

二つ目の課題は、ノンコミットメント型ライツイシューの問題です。ノンコミットメント型ライツイシューは、企業が新株予約権の発行によって必ずしも資金調達できるとは限らないという特徴があります。これは、株主が新株予約権を行使しない場合、企業は資金調達ができずに、増資が失敗してしまうリスクがあることを意味します。

2014年頃、日本では、経営が悪化した企業がノンコミットメント型ライツイシューを乱用し、市場の混乱を招いたことがありました。そのため、東京証券取引所は、ノンコミットメント型ライツイシューの上場基準を厳格化し、経営成績の悪化している企業による乱用を抑制する対策を講じています。

2-4. まとめ

ライツイシューは、欧米では古くから利用されている資金調達手法ですが、日本では近年導入された比較的新しい手法です。ライツイシューは、既存株主に新株の購入権利を与えることで、企業は銀行からの借入に頼らずに資金調達を行うことができます。

しかし、ライツイシューには、株式の希薄化リスクや、ノンコミットメント型ライツイシューによる増資失敗リスクなどの課題が存在します。企業は、ライツイシューを利用する際には、これらの課題を十分に理解した上で、慎重に判断する必要があります。

ライツイシューは、今後も企業にとって重要な資金調達手段の一つとして、利用されていくことが予想されます。企業は、ライツイシューの仕組みや課題を理解し、適切な活用によって、事業の成長につなげていくことが重要です。

参考文献

ライツ・イシューとは|財務・会計用語集|iFinance

ライツイシュー – ライツイシューの概要 – わかりやすく解説 …

ライツイシューの定義 | ライツイシューとは | Ig証券

3. ライツイシューのメリットとデメリット

3-1. ライツイシューのメリット

ライツイシューは、企業にとって魅力的な資金調達手段となり得ます。そのメリットは大きく分けて以下の3つに分類できます。

1. 既存株主の希薄化を抑制できる

ライツイシューは、既存株主に対して新株予約権を無償で割り当てるため、既存株主が保有する株式の価値が希薄化しにくいというメリットがあります。通常の株主割当増資では、新株が発行されることで既存株主の持ち株比率が低下し、株価が下落する可能性があります。しかし、ライツイシューでは、既存株主は予約権を行使して新株を購入することで、自分の持ち株比率を維持することができます。また、予約権を市場で売却することもできるため、株価の下落リスクを回避することも可能です。

2. 新規株主の獲得と資金調達を同時に実現できる

ライツイシューは、既存株主だけでなく、新規株主も新株予約権を取得して新株を購入することができます。既存株主が予約権を行使しない場合、その予約権は市場で売買され、新規株主が購入することも可能です。これにより、企業は資金調達と同時に、新規株主を獲得することができます。

3. 資金調達に必要な時間を短縮できる

ライツイシューは、公募増資と比べて資金調達に必要な時間が短縮できるというメリットがあります。公募増資では、証券会社との契約や株主への募集など、多くの手続きが必要となるため、資金調達までに数ヶ月かかることもあります。しかし、ライツイシューでは、既存株主に対して予約権を発行するだけで資金調達を行うことができるため、短期間での資金調達を実現することができます。

3-2. ライツイシューのデメリット

ライツイシューは、メリットがある一方で、デメリットも存在します。以下に、主なデメリットを挙げます。

1. 予約権の価値が不安定になる可能性

ライツイシューでは、新株予約権の価値が、発行企業の業績や市場の動向によって大きく変動する可能性があります。特に、企業の業績が悪化した場合、予約権の価値は大幅に下落する可能性があります。そのため、投資家にとっては、予約権の価値が安定しないというリスクがあります。

2. 市場での流動性が低い可能性

ライツイシューで発行された新株予約権は、市場での流動性が低い可能性があります。特に、発行企業の知名度が低い場合や、市場規模が小さい場合は、予約権の売買が活発に行われず、流動性が低くなる可能性があります。

3. 株主間の不公平が生じる可能性

ライツイシューでは、既存株主が予約権を行使して新株を購入することで、既存株主間の持ち株比率が変化する可能性があります。例えば、予約権を行使する株主と行使しない株主がいる場合、行使する株主は持ち株比率が上昇し、行使しない株主は持ち株比率が低下する可能性があります。これは、株主間の不公平感を生じさせる可能性があります。

3-3. ライツイシューを行う際の注意点

ライツイシューを行う際には、以下の点に注意する必要があります。

発行価格の決定: 発行価格は、既存株主の利益と資金調達の必要性を考慮して決定する必要があります。

予約権の行使期間: 予約権の行使期間は、企業の資金調達計画と市場の状況に合わせて決定する必要があります。

市場の反応: ライツイシューは、市場の反応によって資金調達額が大きく変わる可能性があります。そのため、市場調査を行い、市場の反応を事前に予測しておく必要があります。

3-4. まとめ

ライツイシューは、既存株主の希薄化を抑制しながら資金調達を行うことができる魅力的な方法です。しかし、予約権の価値が不安定になったり、市場での流動性が低くなったりする可能性もあります。企業は、ライツイシューを行う前に、メリットとデメリットを比較検討し、自社にとって最適な資金調達方法を選択する必要があります。

参考文献

ライツイシュー | 金融・証券用語解説集 | 大和証券

ライツイシュー | みずほ証券 ファイナンス用語集 – mizuho-sc.com

ライツイシュー – Wikiwand

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