ロックアップとは?経済用語について説明

1. ロックアップの基本

1-1. ロックアップとは何か?

ロックアップとは、株式の売買を制限する自主規制のことです。新規株式公開(IPO)において、企業の創業者や従業員、ベンチャーキャピタルなどの大株主が、一定期間、保有する株式を売却できないように制限するものです。ロックアップは、IPO直後の株価の急激な変動を抑制し、市場の安定化を図ることを目的としています。

ロックアップの期間は、企業や投資家によって異なりますが、90日間または180日間に設定している企業が多いです。ごくまれに、360日に設定している企業も存在します。ロックアップ期間中に、制限対象の株主が株式を売却することができないため、株価の急激な下落を防止することができます。

ロックアップには、法律で定められた「制度ロックアップ」と自主規制の「任意ロックアップ」の2種類があります。どちらのロックアップも、市場の安定化や初期の株価変動を抑制する目的で設けられています。

1-2. ロックアップの目的

ロックアップには、主に以下の目的があります。

株価の安定化: IPO直後に大株主が大量の株式を売却してしまうと、売り圧力が強くなり、株価が急落する可能性があります。ロックアップは、大株主による売り圧力を抑制することで、株価の安定化を図ります。

長期的な企業価値の向上: ロックアップにより、経営陣や従業員は、短期的な利益よりも長期的な企業価値の向上に焦点を当てるよう促されます。

市場への信頼醸成: ロックアップは、企業が長期的に成長する意志を持っていることを市場に示すことで、投資家からの信頼獲得に役立ちます。

1-3. ロックアップの解除条件

ロックアップには、期間だけでなく、価格による解除条件が設定される場合もあります。これは、任意ロックアップにおいて、企業と投資家によって合意されたものです。

一般的な解除条件としては、公開価格の1.5倍以上でロックアップが解除されるという条件があります。まれに、2倍以上という条件も見かけられます。

期間と価格の両方のロックアップ条件が設定されている場合、期間か価格のどちらかの条件が達成されると、ロックアップが解除されます。ロックアップ解除後、制限対象の株主が株式を売却することができるようになります。

1-4. まとめ

ロックアップは、IPO直後の株価の安定化を目的として、大株主による株式売却を制限する自主規制です。ロックアップ期間中は、大株主は株式を売却することができませんが、期間や価格による解除条件が設定されている場合があります。ロックアップ制度は、市場の安定化や企業価値の向上に役立つ一方で、大株主にとっては資金回収が遅れるというデメリットも存在します。投資家は、ロックアップ期間や解除条件などをよく理解した上で、IPOへの投資判断を行う必要があります。

参考文献

ロックアップとは?意味や期間、株価への影響をわかりやすく解説

Ipoのロックアップとは?ロックアップ解除後の株価への影響は …

ロックアップとは|株式用語集|iFinance

2. ロックアップ契約とは

2-1. ロックアップ契約の定義と目的

ロックアップ契約とは、M&A(合併・買収)において、売り手側の経営者や役員などの主要人物(キーマン)が、M&A 成約後も一定期間、会社に在籍し、経営に携わり続けることを義務付ける契約条項です。別名「キーマン条項」とも呼ばれます。

M&A では、会社を買収した後、企業文化や経営体制の変更、従業員の不安定化など、様々な変化が起こり得ます。 特に、キーマンが会社を離れることで、従業員のモチベーション低下や技術・ノウハウの流出、顧客の離反などが発生し、買収した会社の価値が下がる可能性があります。 ロックアップ契約はこのようなリスクを回避し、買収後の事業安定化を図るための重要な手段の一つです。

具体的には、ロックアップ契約では、キーマンが次の行為を禁止されることが一般的です。

辞職や転職

新規事業の立ち上げ

競合会社の設立

買収対象会社の競合となる企業への出資

ロックアップ期間は、企業規模や業種、買収後の事業計画などによって異なりますが、一般的には 2~3 年が目安とされています。

2-2. ロックアップ契約のメリット・デメリット

2-2-1. 買い手側のメリット

事業の安定化: ロックアップ期間中は、キーマンが経営に携わることで、事業の安定化、顧客や従業員の維持、技術やノウハウの流出防止に役立ちます。

スムーズな事業継承: キーマンが経営を引き継ぐことで、買収後の事業継承がスムーズに行われます。

シナジー効果の最大化: キーマンの知識や経験を生かして、買収後のシナジー効果を最大限に引き出すことができます。

2-2-2. 買い手側のデメリット

キーマンのモチベーション低下: ロックアップ期間が長くなると、キーマンのモチベーションが低下し、本来の能力を発揮できない可能性があります。

経営の硬直化: キーマンの意見が強く、新しい経営陣が自由に経営判断できない場合があります。

高額な報酬: ロックアップ期間中の報酬や、契約違反に対するペナルティとして、高額な費用が発生することがあります。

2-2-3. 売り手側のメリット

売却金額の増加: ロックアップ契約は、買収後の事業安定化に役立つため、買い手側にとって価値のある条件です。その結果、売却金額が上昇する傾向があります。

アーンアウト条項: ロックアップ契約と併せて、アーンアウト条項(条件付き取得対価)が設定される場合があります。これは、買収後の業績目標達成に応じて、追加の報酬を受け取れる条項です。

2-2-4. 売り手側のデメリット

自由度の制限: ロックアップ期間中は、キーマンは自由に転職や起業などの活動ができず、キャリアプランに制限がかかります。

モチベーションの低下: 買収後、会社に対するモチベーションが低下し、積極的に仕事に取り組めなくなる可能性があります。

プレッシャー: ロックアップ期間中は、買収後の事業成功というプレッシャーを感じ続けることになります。

2-3. ロックアップ契約を締結する際の注意点

期間の設定: ロックアップ期間は、事業の安定化に必要な期間と、キーマンのモチベーション維持を両立できる期間にすることが重要です。

報酬の条件: ロックアップ期間中の報酬や、契約違反に対するペナルティなどを明確に設定する必要があります。

キーマンの役割: キーマンの役割を明確化し、買収後もその役割を果たせるよう、サポート体制を整える必要があります。

従業員への配慮: ロックアップ契約の締結によって、従業員が不安を感じる可能性があります。従業員への説明と、不安解消のための施策が必要になります。

2-4. まとめ

ロックアップ契約は、M&A を成功させるための重要な手段の一つですが、買い手側と売り手側の双方にとってメリットとデメリットがあります。 特に、売り手側のキーマンにとっては、自由度が制限されるなど、大きな負担となる場合もあります。

そのため、ロックアップ契約を締結する際には、双方の立場を理解した上で、適切な期間や条件を設定することが重要です。 また、キーマンのモチベーションを維持し、買収後の事業を安定的に発展させるための対策を検討する必要があります。

参考文献

ロックアップとは? 定義や一般的な期間について解説 – M&Aコラム – 株式会社パラダイムシフト

M&Aでのロックアップとは?期間の目安やメリット・デメリット、アーンアウト条項について解説 – M&A法務なら弁護士法人m&A総合法律事務所

M&Aにおけるロックアップとは?買い手・売り手両方の立場から解説! – M&A・事業承継なら船井総研m&A

3. ロックアップと株式市場

3-1. ロックアップの目的と仕組み

ロックアップとは、株式等の募集や売出し(オファリング)を実施した後の需給関係を安定させることを目的として、株主等が、オファリング後においても保有している株式や潜在株式等の売却等を一定期間(主として90日もしくは180日)行わない旨を確約すること、またはその制度を意味します。

一般に、ロックアップが設けられている場合は、その内容が目論見書に開示されます。IPO時におけるロックアップには「制度ロックアップ」と「任意ロックアップ」の2種類があります。

制度ロックアップとは、IPO前の一定期間内に株主等となった者に対して、取引所の規則によりIPO後の一定期間、その保有する株式等について継続所有する等の確約をすることを意味します。公開前規制や上場前規制と称させることもあります。

一方、任意ロックアップとは、制度ロックアップの対象とならない場合においても、その保有する株式等の売却等を一定期間行わない旨を、主幹事証券会社と株主等の間で任意で確約することを意味します。

ロックアップの目的は、新規公開株式(IPO)直後の株式市場の安定化にあります。IPO直後は、新規上場企業の株式が大量に市場に出回るため、需給バランスが崩れやすく、株価が急落するリスクがあります。

特に、IPO前に株式を保有していた大株主(創業メンバーやベンチャーキャピタルなど)が、ロックアップ期間が終了した後に大量の株式を売却してしまうと、株価が大幅に下落する可能性があります。

そのため、ロックアップは、IPO直後の株式市場の安定化を図り、投資家の信頼を維持し、長期的な企業価値向上に繋げることを目的としています。

3-2. ロックアップの対象となる株主

ロックアップの対象となる株主は、一般的に以下のような者が挙げられます。

創業メンバーや経営陣: IPO前の段階から企業の成長に貢献してきた人物であり、IPO後の株式売却によって利益を得る機会がある一方、売却によって株価が下落してしまう可能性もあります。

ベンチャーキャピタル: 新興企業への投資を専門とする投資家集団であり、IPO後の株式売却によって投資回収を目指します。

従業員: IPO前の段階から企業に貢献してきた従業員であり、IPO後の株式売却によって利益を得る機会があります。

その他の株主: IPO前の段階から株式を保有していた投資家や関係者などです。

これらの株主は、ロックアップ期間中は株式を売却することが制限されます。その結果、IPO直後の株式市場に大量の株式が流入することを抑制し、株価の急落を防ぐことができます。

3-3. ロックアップ解除による影響

ロックアップ期間が終了すると、大株主は自由に株式を売却できるようになります。そのため、ロックアップ解除後には、大量の株式が市場に出回る可能性があり、株価が下落するリスクがあります。

しかし、ロックアップ解除によって株価が必ずしも下落するとは限りません。企業の業績が好調な場合や、市場の需要が高い場合は、株価が上昇する可能性もあります。

ロックアップ解除後の株価は、企業の業績や市場の需給状況、投資家の心理など、様々な要因によって左右されます。

3-4. まとめ

ロックアップは、IPO直後の株式市場の安定化を図るための重要な制度です。大株主による大量売却による株価の急落を防ぎ、投資家の信頼を維持することで、長期的な企業価値向上に貢献します。

しかし、ロックアップ解除後には、株価が下落するリスクも存在します。投資家は、ロックアップ解除の時期や条件などを事前に確認し、投資戦略を立てる必要があります。

ロックアップは、株式市場の安定化と企業価値向上に重要な役割を果たす一方で、投資家にとっては注意すべきリスク要素でもあります。投資家は、ロックアップに関する情報を十分に理解した上で、投資判断を行うことが重要です。

参考文献

Ipoにおけるロックアップとは?目的や種類、解除条件について …

ロックアップ(Ipo)とは何か?~初心者にも分かりしやすく …

大株主による売却を防ぐ「ロックアップ」とは?Ipo(上場 …

コメント

タイトルとURLをコピーしました