項目 | 内容 |
---|---|
分布 | 北太平洋の温帯から寒帯域に広く分布。特に大陸棚付近に多く生息。 |
外観 | 最大全長160cm、体重9,100g。体型は細長く流線型。背側は灰色から褐色、腹側は白色。体側には白色斑が多数見られる。 |
生態 | 深海の底性部や北方海域の浅い海の沖合に生息。底生性生物、魚類、甲殻類、軟体動物などを主食とする。 |
繁殖 | 胎生で、卵黄依存型の胎生。妊娠期間は20~22ヶ月。一度に10尾前後の稚魚を産む。 |
保護活動 | 成長が遅く、繁殖力が低く、寿命が長いことから、過剰な漁獲によって資源量が減少。漁獲量の制限や、小型魚や高齢魚の再放流などの取り組みが行われている。 |
人間との関係 | 古くから食用とされてきた。日本では東北地方を中心に、様々な料理に使われている。棒ザメとして加工され、関東や東北地方などで流通している。 |
1. アブラツノザメの分布
1-1. アブラツノザメの生息域
アブラツノザメは、北太平洋の温帯から寒帯域にかけて広く分布しています。特に、大陸棚付近に多く生息し、水深0mから900mの範囲で見られます。日本近海では、東北地方や北海道の沖合に多く、太平洋側では千葉県以北、日本海側では日本海の西部まで生息しています。青森県の津軽海峡周辺は、アブラツノザメの重要な生息域の一つとされています。
アブラツノザメは回遊魚であり、群れを作って分布範囲を広げることもあります。春には日本海や東北地方から北上し、秋には千島列島や樺太(サハリン)に達するなど、長距離を移動することが知られています。
アブラツノザメは、水温が低い海域を好み、低温海域の北方では比較的浅い深度にも上がってきます。
生息域 | 水深 | 特徴 |
---|---|---|
北太平洋の温帯から寒帯域 | 0mから900m | 大陸棚付近に多く生息 |
日本近海 | 東北地方や北海道の沖合 | 太平洋側では千葉県以北、日本海側では日本海の西部まで生息 |
津軽海峡周辺 | 重要生息域 | 漁獲量が多い |
1-2. アブラツノザメの分布域の変遷
かつては、アブラツノザメは全世界の寒帯に生息すると考えられていました。しかし、2010年に北太平洋に生息するアブラツノザメは、他の地域のアブラツノザメとは異なる種であることが判明しました。
北太平洋に生息するアブラツノザメは、学名がSqualus acanthiasからSqualus suckleyiに変更され、英名もNorth pacific spiny dogfishとなりました。
この発見により、アブラツノザメの分布域は、北太平洋の温帯から寒帯域に限定されることになりました。
時期 | 分布域 | 学名 | 英名 |
---|---|---|---|
以前 | 全世界の寒帯 | Squalus acanthias | Spiny Dogfish |
2010年以降 | 北太平洋の温帯から寒帯域 | Squalus suckleyi | North pacific spiny dogfish |
1-3. アブラツノザメの分布域と漁獲量
アブラツノザメは、日本近海では、北海道、青森県、宮城県などで多く漁獲されています。特に、津軽海峡周辺は、アブラツノザメの主要な漁場となっています。
日本のアブラツノザメの漁獲量は、1952年にピークを迎えた後、減少傾向にあります。近年は、3
世界的には、アメリカやカナダで漁獲量が多く、FAOの調査では、2000年の漁獲量は約3万トンでした。
地域 | 漁獲量 | 特徴 |
---|---|---|
日本近海 | 3,000トンから4,000トンの横ばい傾向 | 北海道、青森県、宮城県などで多く漁獲 |
世界 | 約3万トン | アメリカやカナダで漁獲量が多い |
1-4. まとめ
アブラツノザメは、北太平洋の温帯から寒帯域にかけて広く分布し、特に大陸棚付近に多く生息しています。
日本近海では、東北地方や北海道の沖合に多く、津軽海峡周辺は重要な生息域の一つです。
アブラツノザメは回遊魚であり、長距離を移動することが知られています。
アブラツノザメの分布域は、北太平洋に限定され、世界的に分布しているわけではありません。
2. アブラツノザメの外観
2-1. アブラツノザメの体長と体型
アブラツノザメは、最大で全長160cm、体重9
体型は細長く、流線型をしています。これは、水中で効率的に泳ぐために適した体型です。
項目 | 内容 |
---|---|
最大全長 | 160cm |
最大体重 | 9,100g |
平均全長 | 70cmから100cm |
体型 | 細長く流線型 |
2-2. アブラツノザメの体色
アブラツノザメの体色は、背側は灰色から褐色、腹側は白色をしています。
体側には、白色の斑点が多数見られます。
部位 | 体色 |
---|---|
背側 | 灰色から褐色 |
腹側 | 白色 |
体側 | 白色斑が多数見られる |
2-3. アブラツノザメの特徴的な部位
アブラツノザメは、ツノザメ属の仲間であるため、背鰭の前に1本の太い棘があります。この棘の基部には、弱い毒を出す部分があり、敵に襲われた際に身を守るために使われます。
アブラツノザメは、臀鰭がありません。また、尾柄部には隆起線があり、尾鰭上葉に欠刻はありません。
アブラツノザメの歯は、両顎歯が同形で、深い欠刻があり、先端は口角を向いています。歯列全体で一連の刃縁を形成しています。
アブラツノザメは、暗闇では目が赤く光ります。
部位 | 特徴 |
---|---|
背鰭 | 1本の太い棘があり、毒を持つ |
臀鰭 | なし |
尾柄部 | 隆起線がある |
尾鰭上葉 | 欠刻なし |
歯 | 両顎歯が同形で、深い欠刻があり、先端は口角を向く。歯列全体で一連の刃縁を形成する。 |
目 | 暗闇では赤く光る |
2-4. まとめ
アブラツノザメは、最大で全長160cm、体重9
体型は細長く、流線型で、背側は灰色から褐色、腹側は白色をしています。
体側には白色の斑点が多数見られ、背鰭の前に1本の太い棘があります。
アブラツノザメは、臀鰭がなく、尾柄部には隆起線があり、尾鰭上葉に欠刻はありません。また、暗闇では目が赤く光ります。
3. アブラツノザメの生態
3-1. アブラツノザメの食性
アブラツノザメは、深海の底性部や北方海域の浅い海の沖合に生息し、底生性生物(ベントス)や魚類、甲殻類や軟体動物などを主食にしています。
具体的には、藻類、サンゴ、甲殻類などを食べています。
アブラツノザメは、サケやマダラなどの有用魚種も捕食することがあります。
餌 | 種類 |
---|---|
底生生物 | 藻類、サンゴ、甲殻類など |
魚類 | サケ、マダラなど |
その他 | 甲殻類、軟体動物など |
3-2. アブラツノザメの行動
アブラツノザメは、普段はゆったりと泳いでいますが、餌の時間になると他の魚に取られまいと活発に泳ぎ回ります。
アブラツノザメは、群れで行動することが多く、時には大規模な回遊を行うこともあります。
行動 | 特徴 |
---|---|
普段 | ゆったりと泳ぐ |
餌の時間 | 活発に泳ぎ回る |
移動 | 群れで行動し、大規模な回遊を行うことも |
3-3. アブラツノザメの天敵
アブラツノザメは、自分よりも大型の魚類や、アザラシ、トドなどの海生哺乳類に捕食されることがあります。
また、ミズダコもアブラツノザメの天敵として知られています。水族館で、同じ水槽で飼育されていたミズダコに攻撃されて死亡した例もあります。
天敵 | 種類 |
---|---|
大型魚類 | アブラツノザメより大型の魚 |
海生哺乳類 | アザラシ、トドなど |
その他 | ミズダコ |
3-4. まとめ
アブラツノザメは、深海の底性部や北方海域の浅い海の沖合に生息し、底生性生物(ベントス)や魚類、甲殻類や軟体動物などを主食にしています。
アブラツノザメは、普段はゆったりと泳いでいますが、餌の時間になると活発に泳ぎ回ります。
アブラツノザメは、自分よりも大型の魚類や、アザラシ、トドなどの海生哺乳類、ミズダコなどに捕食されることがあります。
4. アブラツノザメの繁殖
4-1. アブラツノザメの繁殖方法
アブラツノザメは、胎生で、卵黄依存型の胎生です。
メスは、体内で卵を孵化させ、稚魚を産みます。
妊娠期間は20~22ヶ月と長く、一度に10尾前後の稚魚を産みます。
項目 | 内容 |
---|---|
繁殖方法 | 胎生、卵黄依存型の胎生 |
妊娠期間 | 20~22ヶ月 |
産仔数 | 10尾前後 |
稚魚の大きさ | 全長30cm程度 |
4-2. アブラツノザメの成熟年齢
アブラツノザメは、成長が遅く、成熟するまでに時間がかかります。
雄は、全長約70cm、生後14年で成熟します。
雌は、全長約90cm、生後23年で成熟します。
性別 | 成熟年齢 | 全長 |
---|---|---|
雄 | 生後14年 | 約70cm |
雌 | 生後23年 | 約90cm |
4-3. アブラツノザメの寿命
アブラツノザメは、寿命が長く、平均25~30年、中には60年以上生きる個体もいると言われています。
項目 | 内容 |
---|---|
平均寿命 | 25~30年 |
最長寿命 | 60年以上 |
4-4. まとめ
アブラツノザメは、胎生で、卵黄依存型の胎生です。
妊娠期間は20~22ヶ月と長く、一度に10尾前後の稚魚を産みます。
アブラツノザメは、成長が遅く、成熟するまでに時間がかかります。
アブラツノザメは、寿命が長く、平均25~30年、中には60年以上生きる個体もいると言われています。
5. アブラツノザメの保護活動
5-1. アブラツノザメの資源減少
アブラツノザメは、成長が遅く、繁殖力が低く、寿命が長いことから、過剰な漁獲によって資源量が減少しています。
特に、北東太平洋では、全生息数のベースラインの95%が減少しているという報告もあります。
地中海や黒海でも、アブラツノザメの資源量は減少しています。
地域 | 減少状況 |
---|---|
北東太平洋 | 全生息数のベースラインの95%が減少 |
地中海 | 資源量が減少 |
黒海 | 1981年から1992年にかけて60%減少 |
北西大西洋 | メスの成魚の75%が10年で減少 |
5-2. アブラツノザメの保護活動
アブラツノザメの資源保護のため、いくつかの国や地域で漁獲量の制限や、小型魚や高齢魚の再放流などの取り組みが行われています。
しかし、アブラツノザメは、世界的に分布しているため、国際的な協力が必要となります。
取り組み | 内容 |
---|---|
漁獲量の制限 | 資源保護のため、漁獲量を制限 |
小型魚や高齢魚の再放流 | 資源保護のため、小型魚や高齢魚を再放流 |
5-3. アブラツノザメの保護活動の課題
アブラツノザメの保護活動には、いくつかの課題があります。
一つは、アブラツノザメの資源量や分布状況に関するデータが不足していることです。
もう一つは、アブラツノザメの漁獲を規制する国際的な枠組みが整っていないことです。
課題 | 内容 |
---|---|
データ不足 | 資源量や分布状況に関するデータ不足 |
国際的な枠組みの不足 | アブラツノザメの漁獲を規制する国際的な枠組みが整っていない |
5-4. まとめ
アブラツノザメは、成長が遅く、繁殖力が低く、寿命が長いことから、過剰な漁獲によって資源量が減少しています。
アブラツノザメの資源保護のため、いくつかの国や地域で漁獲量の制限や、小型魚や高齢魚の再放流などの取り組みが行われています。
しかし、アブラツノザメの保護活動には、資源量や分布状況に関するデータ不足や、国際的な枠組みの不足といった課題があります。
6. アブラツノザメと人間の関係
6-1. アブラツノザメの食用としての利用
アブラツノザメは、古くから食用とされてきました。
日本では、東北地方を中心に、刺身、煮付け、照り焼き、フライ、唐揚げなど、様々な料理に使われています。
また、魚肉練り製品の原料や、フカヒレの代用品としても利用されています。
料理 | 特徴 |
---|---|
刺身 | 新鮮なものが食べられる |
煮付け | 定番料理 |
照り焼き | 人気料理 |
フライ | 揚げ物として人気 |
唐揚げ | 揚げ物として人気 |
魚肉練り製品 | 原料として利用 |
フカヒレ | 代用品として利用 |
6-2. アブラツノザメの利用方法
アブラツノザメは、頭や内臓、皮を取り除いた「棒ザメ」として加工され、関東や東北地方などで流通しています。
棒ザメは、煮付けや、酢味噌和えなどに使われます。
また、アブラツノザメの肝油は、ビタミンAの供給源として、かつては重要な役割を果たしていました。
加工品 | 特徴 |
---|---|
棒ザメ | 頭と内臓、皮を取り除いたもの。関東や東北地方などで流通 |
肝油 | ビタミンAの供給源として、かつては重要な役割を果たしていた |
6-3. アブラツノザメの文化
青森県の津軽地方では、アブラツノザメの頭を茹でてからほぐし、酢味噌と大根おろしなどを加えて和えた「すくめ」という郷土料理があります。
北海道や青森~岩手の八戸南部地域、秋田などでも、似たような料理があります。
地域 | 料理名 | 特徴 |
---|---|---|
青森県の津軽地方 | すくめ | アブラツノザメの頭を茹でてからほぐし、酢味噌と大根おろしなどを加えて和えたもの |
北海道、青森~岩手の八戸南部地域、秋田など | 鮫のぬた、鮫頭のぬた、のたや、鮫頭のなます、サメのなます、サメなます | アブラツノザメの頭を茹でてからほぐし、酢味噌と大根おろしなどを加えて和えたもの |
6-4. まとめ
アブラツノザメは、古くから食用とされてきました。
日本では、東北地方を中心に、様々な料理に使われています。
アブラツノザメは、棒ザメとして加工され、関東や東北地方などで流通しています。
アブラツノザメは、日本の食文化に深く根ざした魚です。
参考文献
・アブラツノザメとは?生態から釣り方・料理まで紹介 | お食事 …
・アブラツノザメの生態や基本情報まとめ【魚図鑑】 | kurashi-no
・アブラツノザメ(あぶらつのざめ)とは? 意味や使い方 – コトバンク
・アブラツノザメってどんな魚?美味しい料理や生態・釣り方を …
・新潟市水族館 マリンピア日本海 生物図鑑 ≫ 「アブラツノザメ」
・アメリカ初の大西洋アブラツノザメ漁業、MSC認証取得 | Marine …
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