退職給付債務とは?経済用語について説明

退職給付債務の全体像
項目	説明
退職給付債務	将来支払うべき退職金などの給付を現在価値で評価したもの
PBO	Projected Benefit Obligation（予測給付債務）
DBO	Defined Benefit Obligation（確定給付制度債務）
ABO	Accumulated Benefit Obligation（累積給付債務）
退職給付会計	退職給付に関連するコストや支払い義務の現在価値などを把握するための計算
退職給付引当金	将来の退職給付のうち当期末時点で発生している部分の見積り金額
退職給付費用	退職給付に関するさまざまな費用の総称
年金資産	退職金の支払いを目的として企業外で積み立てられた資産
勤務費用	1年間分の退職給付債務
利息費用	勤務費用にかかる利息
割引率	将来の価値を現在の価値に換算するための比率
未認識項目	当期末時点において未だ費用処理されていない数理計算上の差異と過去勤務費用
期待運用収益	年金資産の運用によって生ずることが期待される収益
確定給付制度	勤続期間や給与水準を基準として定められた金額を支給する制度
確定拠出制度	企業外部で掛金の積み立てを行う制度
退職給付債務の未履行リスク	企業が将来の退職給付を約束しているにもかかわらず、実際に支払うことができなくなるリスク

1. 退職給付債務とは
2. 退職給付債務の計算方法
3. 退職給付債務の法律上の規定
4. 退職給付債務の会計処理
5. 退職給付債務の影響とリスク
6. 退職給付債務の未履行リスク

1. 退職給付債務とは

退職給付債務の定義

退職給付債務とは、企業が従業員に対して将来支払うべき退職金などの給付を、現在価値で評価したものです。従業員が退職するまでには長い年月がかかるため、将来の支払いを現在の価値で評価することが重要になります。退職給付債務は、企業にとって負債であり、将来の支払いを確実に行うために、事前に積み立てを行う必要があります。

退職給付債務は、従業員の勤務期間が長くなるほど増加していく傾向があります。これは、従業員の勤務期間が長くなればなるほど、将来支払うべき退職金の総額が増加するためです。また、退職給付債務は、従業員の年齢や給与水準、退職率、死亡率などの要素によって変化します。

退職給付債務は、企業の財務状況を評価する上で重要な指標の一つです。退職給付債務が大きくなると、企業の財務負担が増加し、将来の事業活動に影響を与える可能性があります。そのため、企業は退職給付債務を適切に管理し、将来の支払いに備える必要があります。

退職給付債務は、企業が従業員に対して負っている債務であり、将来の支払いを確実に行うために、事前に積み立てを行う必要があります。退職給付債務は、企業の財務状況を評価する上で重要な指標の一つであり、企業は退職給付債務を適切に管理し、将来の支払いに備える必要があります。

退職給付債務の定義
用語	説明
退職給付債務	将来支払うべき退職金などの給付を現在価値で評価したもの
PBO	Projected Benefit Obligation（予測給付債務）
DBO	Defined Benefit Obligation（確定給付制度債務）

退職給付債務の英語表記

退職給付債務は、英語では、米国の会計基準「SFAS87」に準拠した「PBO：Projected Benefit Obligation」や、国際会計基準（IFRS）における「DBO：Defined Benefit Obligation」が用いられるケースが多いです。

PBOは、将来の退職給付見込み額を現在価値に割り引いたもので、退職給付債務の概念を表す最も一般的な用語です。DBOは、IFRSで用いられる用語で、PBOとほぼ同じ意味を持ちます。

退職給付債務の英語表記
用語	説明
PBO	Projected Benefit Obligation（予測給付債務）
DBO	Defined Benefit Obligation（確定給付制度債務）

退職給付債務と累積給付債務

退職給付債務を指すPBOに類似する略語で、「ABO」という言葉があります。「ABO」は、「Accumulated Benefit Obligation」の頭文字を取った略語で、日本語では「累積給付債務」と訳されます。

累積給付債務は、確定給付型の制度における債務評価に用いられる概念で、PBOから将来の昇給見込みを控除した額のことです。以前まで「SFAS87」における項目として採用されていましたが、2016年の基準改正により開示対象から除外されました。

退職給付債務と累積給付債務
用語	説明
PBO	将来の退職給付見込み額を現在価値に割り引いたもの
ABO	PBOから将来の昇給見込みを控除した額

まとめ

退職給付債務は、企業が従業員に対して将来支払うべき退職金などの給付を、現在価値で評価したものです。従業員が退職するまでには長い年月がかかるため、将来の支払いを現在の価値で評価することが重要になります。

退職給付債務は、企業にとって負債であり、将来の支払いを確実に行うために、事前に積み立てを行う必要があります。退職給付債務は、従業員の勤務期間が長くなるほど増加していく傾向があります。

退職給付債務は、企業の財務状況を評価する上で重要な指標の一つです。退職給付債務が大きくなると、企業の財務負担が増加し、将来の事業活動に影響を与える可能性があります。

企業は退職給付債務を適切に管理し、将来の支払いに備える必要があります。退職給付債務は、企業が従業員に対して負っている債務であり、将来の支払いを確実に行うために、事前に積み立てを行う必要があります。

2. 退職給付債務の計算方法

退職給付債務の計算イメージ

退職給付債務の計算は、将来の退職給付見込額を現在価値に割り引くことで行われます。将来の退職給付見込額は、従業員の退職率、死亡率、昇給率などを考慮して見積もられます。

割引率は、将来の価値を現在の価値に換算するための比率で、安全性の高い債券の利回りを基準として決定されます。割引率は、将来の金利変動などを考慮して設定されます。

退職給付債務の計算は、従業員ごとに個別に計算されるのが一般的です。ただし、従業員数が多く、個別に計算することが難しい場合は、従業員をグループ化して平均的な数値を用いて計算することもあります。

退職給付債務の計算は、複雑なプロセスを伴うため、専門的な知識や経験が必要です。企業は、退職給付債務の計算を専門の機関に委託することもあります。

期間定額基準と給付算定式基準

退職給付債務の計算方法には、期間定額基準と給付算定式基準の2つの方法があります。どちらの方法を採用するかは、企業が自由に選択できますが、一度選択すると、その後変更することはできません。

期間定額基準は、将来の退職給付見込額を従業員の勤務期間で割った額を、毎期の発生額とする方法です。この方法は、計算が比較的簡単ですが、従業員の退職率や死亡率などの変動要因を考慮することが難しいという欠点があります。

給付算定式基準は、退職給付制度の給付算定式に従って、各勤務期間に帰属させた給付に基づき見積った額を、退職給付見込額の各期の発生額とする方法です。この方法は、期間定額基準よりも複雑ですが、従業員の退職率や死亡率などの変動要因をより正確に考慮することができます。

企業は、自社の状況に合わせて、適切な計算方法を選択する必要があります。

期間定額基準と給付算定式基準
計算方法	説明
期間定額基準	将来の退職給付見込額を従業員の勤務期間で割った額を、毎期の発生額とする方法
給付算定式基準	退職給付制度の給付算定式に従って、各勤務期間に帰属させた給付に基づき見積った額を、退職給付見込額の各期の発生額とする方法

割引計算

割引計算は、将来の価値を現在の価値に換算するための計算です。将来の価値を現在の価値に換算するためには、割引率を用います。割引率は、将来の金利変動などを考慮して設定されます。

割引計算は、退職給付債務の計算において重要な役割を果たします。将来の退職給付見込額を現在の価値に換算することで、企業が将来の支払いに備えるために必要な資金を正確に把握することができます。

割引計算は、複雑な計算を伴うため、専門的な知識や経験が必要です。企業は、割引計算を専門の機関に委託することもあります。

割引計算は、将来の価値を現在の価値に換算するための計算であり、退職給付債務の計算において重要な役割を果たします。

まとめ

3. 退職給付債務の法律上の規定

退職給付に関する会計基準

退職給付債務の計算方法や会計処理については、企業会計基準第26号「退職給付に関する会計基準」と、企業会計基準適用指針第25号「退職給付に関する会計基準の適用指針」で定められています。

これらの基準では、退職給付債務の計算方法、割引率の設定方法、費用処理の方法などが詳細に規定されています。企業は、これらの基準に従って、退職給付債務を計算し、財務諸表に適切に反映させる必要があります。

退職給付に関する会計基準
基準	説明
企業会計基準第26号	退職給付に関する会計基準
企業会計基準適用指針第25号	退職給付に関する会計基準の適用指針

退職給付債務の法律上の注意点

退職給付債務の計算においては、従業員の退職率、死亡率、昇給率などの要素を考慮する必要があります。これらの要素は、将来予測が困難なため、退職給付債務の計算には不確実性が伴います。

また、退職給付債務の計算には、割引率の設定も重要です。割引率は、将来の価値を現在の価値に換算するための比率で、安全性の高い債券の利回りを基準として決定されます。しかし、割引率は将来の金利変動などを考慮して設定されるため、不確実性が伴います。

退職給付債務と税務

退職給付債務は、税務上も重要な要素です。企業は、退職給付債務の計算結果に基づいて、法人税の申告を行う必要があります。

退職給付債務の計算には、割引率の設定が重要です。割引率は、将来の価値を現在の価値に換算するための比率で、安全性の高い債券の利回りを基準として決定されます。

まとめ

退職給付債務は、税務上も重要な要素です。企業は、退職給付債務の計算結果に基づいて、法人税の申告を行う必要があります。

4. 退職給付債務の会計処理

退職給付会計の概要

退職給付会計とは、従業員に支給する退職金に関連する会計のことで、「退職給付引当金」と「退職給付費用」の計上を目的として行われます。

退職給付会計は、簡単に言うと退職給付に関連するコストや支払い義務の現在価値などを把握するために行う計算です。退職給付債務は企業にとって負債であり、’’ある時点における財産の状態’’を表す「貸借対照表（B／S）」と、’’ある一定期間にどれだけの利益を得たか’’を表す「損益計算書（P／L）」に反映させる必要があります。

しかし、退職給付債務はその性質上支払額の確定までに時間を要するため、一期あたりの負担額の算出が難しい。そこで、毎期の負担額を合理的に算出する方法の「退職給付に関する会計基準」や「退職給付に関する会計基準の適用方針」などが退職給付会計基準として用いられている。

退職給付会計は、企業が従業員に対して負っている債務を適切に管理し、将来の支払いに備えるための重要なプロセスです。

退職給付債務の会計処理の流れ

退職給付会計では、まず、現時点における従業員に支払う退職金を現在の価値で評価した「退職給付債務」の計算を行います。具体的には、1年間分の退職給付債務を指す「勤務費用」とその「利息費用」について、勤続年数分の累積額を算出します。

より正確な計算を行う場合、将来における退職給付債務の価値を現在価値に置き換えるために「割引率」という比率を用います。

次に、退職金の支払いを目的として企業外で積み立てられた資産である「年金資産」を計算します。「厚生年金基金制度」や「確定企業給付年金」などがこれに該当します。退職給付会計において、年金資産は退職給付引当金の算出に必要となります。

「勤務費用」と「利息費用」に加え、「未認識項目」と「期待運用収益」を算出します。未認識項目とは、当期末時点において未だ費用処理されていない数理計算上の差異と過去勤務費用のこと。期待運用収益は、年金資産の運用によって生ずることが期待される収益のことで、計算上収益の額だけ将来の拠出金が削減されると捉えて控除する。

退職給付債務の会計処理の流れ
ステップ	説明
1. 退職給付債務の計算	勤務費用、利息費用、割引率を用いて計算
2. 年金資産の計算	企業外で積み立てられた資産を計算
3. 未認識項目と期待運用収益の計算	未認識項目と期待運用収益を算出
4. 退職給付引当金と退職給付費用の確定	計算結果に基づいて確定
5. 決算書への反映	退職給付引当金は貸借対照表（B／S）に、退職給付費用は損益計算書（P／L）に記載

退職給付引当金と退職給付費用

以上の計算を終えると、「退職給付引当金」と「退職給付費用」が確定します。退職給付引当金は、将来の退職給付のうち当期末時点で発生している部分の見積り金額を指します。退職給付費用は、退職給付に関するさまざまな費用の総称です。

退職給付引当金と退職給付費用を決算書に反映させます。前者は貸借対照表（B／S）に、後者は損益計算書（P／L）に記載します。

まとめ

退職給付会計は、従業員に支給する退職金に関連する会計のことで、「退職給付引当金」と「退職給付費用」の計上を目的として行われます。

退職給付債務はその性質上支払額の確定までに時間を要するため、一期あたりの負担額の算出が難しい。そこで、毎期の負担額を合理的に算出する方法の「退職給付に関する会計基準」や「退職給付に関する会計基準の適用方針」などが退職給付会計基準として用いられている。

退職給付会計は、企業が従業員に対して負っている債務を適切に管理し、将来の支払いに備えるための重要なプロセスです。

5. 退職給付債務の影響とリスク

退職給付債務の増加要因

退職給付債務は、従業員の勤務期間が長くなるほど増加する傾向があります。これは、従業員の勤務期間が長くなればなるほど、将来支払うべき退職金の総額が増加するためです。

また、退職給付債務は、従業員の年齢や給与水準、退職率、死亡率などの要素によって変化します。従業員の年齢が高くなると、退職までの期間が短くなるため、退職給付債務は増加する傾向があります。

給与水準が高くなると、将来支払うべき退職金の総額が増加するため、退職給付債務は増加する傾向があります。退職率や死亡率が高くなると、従業員の平均勤務期間が短くなるため、退職給付債務は減少する傾向があります。

退職給付債務の増加要因
要因	説明
従業員の勤務期間	勤務期間が長くなると増加
従業員の年齢	年齢が高くなると増加
従業員の給与水準	給与水準が高くなると増加
退職率	退職率が高くなると減少
死亡率	死亡率が高くなると減少

退職給付債務の減少要因

退職給付債務は、年金資産の運用によって減少する可能性があります。年金資産は、株式や債券などの金融商品で運用され、その運用益は将来の退職給付の支払いに充てられます。

年金資産の運用がうまくいき、その価値が退職給付債務を上回るケースも考えられます。例えば、株式市場の好調などにより、年金資産の運用益が想定以上に増加した場合などが考えられます。

退職給付債務の減少要因
要因	説明
年金資産の運用	運用がうまくいくと減少
株式市場の好調	運用益が想定以上に増加すると減少

退職給付債務のリスク

退職給付債務は、将来の支払いを確実に行うために、事前に積み立てを行う必要があります。しかし、退職給付債務は、将来の金利変動や市場の動向などの影響を受けるため、リスクを伴います。

例えば、金利が上昇すると、割引率が上昇し、退職給付債務は減少します。逆に、金利が低下すると、割引率が低下し、退職給付債務は増加します。

また、市場の動向によって、年金資産の価値が変動する可能性があります。年金資産の価値が低下すると、退職給付債務をカバーすることができなくなり、企業の財務状況が悪化する可能性があります。

退職給付債務のリスク
リスク	説明
金利変動	金利上昇で減少、金利低下で増加
市場の動向	年金資産の価値が低下するとリスク

まとめ

退職給付債務は、従業員の勤務期間が長くなるほど増加する傾向があります。また、従業員の年齢や給与水準、退職率、死亡率などの要素によって変化します。

企業は、退職給付債務を適切に管理し、将来の支払いに備える必要があります。退職給付債務は、企業が従業員に対して負っている債務であり、将来の支払いを確実に行うために、事前に積み立てを行う必要があります。

6. 退職給付債務の未履行リスク

退職給付債務の未履行リスクとは

退職給付債務の未履行リスクとは、企業が将来の退職給付を約束しているにもかかわらず、実際に支払うことができなくなるリスクのことです。

退職給付債務の未履行リスクは、企業の財務状況が悪化した場合や、年金資産の運用が不振に陥った場合などに発生する可能性があります。

退職給付債務の未履行リスクは、企業の信用力低下や従業員の士気低下につながる可能性があります。そのため、企業は退職給付債務の未履行リスクを最小限に抑えるための対策を講じる必要があります。

退職給付債務の未履行リスクは、企業にとって深刻な問題であり、適切な対策を講じる必要があります。

退職給付債務の未履行リスクの要因

退職給付債務の未履行リスクは、企業の財務状況が悪化した場合や、年金資産の運用が不振に陥った場合などに発生する可能性があります。

企業の財務状況が悪化した場合、退職給付債務を支払うための資金が不足する可能性があります。年金資産の運用が不振に陥った場合、年金資産の価値が低下し、退職給付債務をカバーすることができなくなる可能性があります。

退職給付債務の未履行リスクは、企業にとって深刻な問題であり、適切な対策を講じる必要があります。

退職給付債務の未履行リスクの要因
要因	説明
企業の財務状況悪化	資金不足の可能性
年金資産の運用不振	年金資産の価値低下
信用力低下	企業の信用力が低下
従業員の士気低下	従業員の士気が低下

退職給付債務の未履行リスク対策

退職給付債務の未履行リスクを最小限に抑えるためには、企業は、財務状況の改善、年金資産の適切な運用、退職給付制度の見直しなどの対策を講じる必要があります。

財務状況の改善には、収益性の向上、コスト削減、資金調達などが挙げられます。年金資産の適切な運用には、リスク管理、運用戦略の見直しなどが挙げられます。

退職給付制度の見直しには、給付水準の調整、確定給付制度から確定拠出制度への移行などが挙げられます。

退職給付債務の未履行リスクは、企業にとって深刻な問題であり、適切な対策を講じる必要があります。

退職給付債務の未履行リスク対策
対策	説明
財務状況の改善	収益性の向上、コスト削減、資金調達
年金資産の適切な運用	リスク管理、運用戦略の見直し
退職給付制度の見直し	給付水準の調整、確定給付制度から確定拠出制度への移行