W-アーリー-ペンジャリ保護地域群とは?世界遺産についての解説

W-アーリー-ペンジャリ保護地域群の概要
項目 内容
位置 ニジェール、ベナン、ブルキナファソの3ヶ国にまたがる
面積 1万7148.31平方km
設立 1954年(W国立公園)
世界遺産登録 1996年(ニジェールのW国立公園)
拡大登録 2017年(W・アルリ・パンジャリ自然公園群)
特徴 サバンナ、森林、湿地など多様な生態系
生物多様性 西アフリカ最大のゾウの生息地、絶滅危惧種多数
評価 生態系の進化の過程を示す顕著な例、生物多様性の保護に重要な地域

1. W-アーリー-ペンジャリ保護地域群の概要

要約

W-アーリー-ペンジャリ保護地域群とは?

W-アーリー-ペンジャリ保護地域群は、西アフリカのニジェール、ベナン、ブルキナファソの3ヶ国にまたがる広大な自然保護区です。1954年にフランス領西アフリカの一部として設立されたW国立公園を核として、2017年にベナンのパンジャリ国立公園とブルキナファソのアルリ国立公園が加わり、現在の名称となりました。この地域は、サバンナ、森林、湿地など多様な生態系を持ち、西アフリカ最大のゾウの生息地として知られています。

W国立公園は、ニジェール川が「W」の形に曲がりくねって流れることからその名が付けられました。この地域は、サバンナの草原地帯と森林地帯の移行地帯であり、3ヶ国9つの保護区が合わさった、1万7148.31平方kmという広大なエリアとなっています。

W-アーリー-ペンジャリ保護地域群は、西アフリカでも最大のゾウの生息地で、他の地域で絶滅もしくは絶滅寸前の動物が多く見られるのが特徴です。1996年に登録した際は、ニジェールのW国立公園だけでしたが、ベナンからも新規で申請があり、2017年にはベナン・ブルキナファソも合わせて「W・アルリ・パンジャリ自然公園群」となりました。

W-アーリー-ペンジャリ保護地域群の構成
名称 国名
W国立公園 ニジェール
パンジャリ国立公園 ベナン
アルリ国立公園 ブルキナファソ

地理的な位置と特徴

W-アーリー-ペンジャリ保護地域群は、ニジェール川の流域に位置し、サヘル(半乾燥地域)とサバンナ地帯の境界に位置しています。この地域は、雨季と乾季が交互に訪れ、水の干満によって豊富な種類の植物が生まれ、それに関連して多様な動物相が見られるという仕組みです。

手つかずのサヘル(半乾燥地域)やサバンナ、草原、低木、樹木が広がり、半落葉樹林など数多くの植生が見られます。約5万年前にわたって人類による火の使用によって植生の多様性が維持され、その特徴が生息地に見られるという点も特徴です。

ニジェール川は、西アフリカを横断するように流れる川で、長さは約4200kmで西アフリカでは最長ですが、アフリカ大陸では3番目に長い川です。

W-アーリー-ペンジャリ保護地域群の植生
植生 特徴
サバンナ 草原地帯
森林 樹木が生い茂る地域
半落葉樹林 一部の葉が落ちる樹木が生い茂る地域
草原 草が生えている地域
低木 背の低い木が生えている地域
樹木 背の高い木が生えている地域

生物多様性

W-アーリー-ペンジャリ保護地域群は、西アフリカで絶滅した、もしくは絶滅に瀕している動物が暮らす地で、西アフリカ最大規模のゾウの生息地です。この地域のサバンナゾウの85%が暮らし、アフリカマナティー、チーター、ライオン、ヒョウ、リカオン、トピといった西アフリカの大型哺乳類の中でも、特に絶滅危惧種の生息地となっています。

ライオンとチーターはこの地域で唯一の生息地と考えられるものもあります。魚類は固有性が高く、ボルダ川には9つの固有種のうち7種類が生息しているという点も注目されています。

W-アーリー-ペンジャリ保護地域群は、3ヶ国にまたがり、サバンナ地帯と森林地帯の境目であることから植物が多く育つことから動物の種類も豊富で、西アフリカでも貴重な大型哺乳類も多く暮らす保護区であるという点で評価されています。

W-アーリー-ペンジャリ保護地域群の動物相
動物 特徴
ゾウ 西アフリカ最大の生息地
ライオン 絶滅危惧種
チーター 絶滅危惧種
ヒョウ 絶滅危惧種
アフリカマナティー 絶滅危惧種
リカオン 絶滅危惧種
トピ 絶滅危惧種

まとめ

W-アーリー-ペンジャリ保護地域群は、西アフリカの3ヶ国にまたがる広大な自然保護区であり、サバンナ、森林、湿地など多様な生態系を持ち、西アフリカ最大のゾウの生息地として知られています。

この地域は、手つかずの自然が残されており、多様な動植物が生息しています。特に、絶滅危惧種を含む大型哺乳類の生息地として、世界的に重要な役割を果たしています。

W-アーリー-ペンジャリ保護地域群は、西アフリカの自然環境と生物多様性を理解する上で重要な場所であり、今後もその保護と保全が求められています。

2. ワールドヘリテージ登録の過程と意義

要約

世界遺産登録までの道のり

W-アーリー-ペンジャリ保護地域群は、1996年に世界遺産に登録されましたが、その道のりは長く、複雑でした。最初に登録されたのは、ニジェールのW国立公園のみでした。

しかし、世界遺産委員会の諮問機関である国際自然保護連合(IUCN)は、W国立公園単体では顕著な普遍的価値を認めず、登録は紛糾しました。最終的には、投票によって登録が決定されました。

その後、ベナンはW国立公園の自国領部分を、パンジャリ国立公園と併せて世界遺産登録を申請しましたが、IUCNはこれらの国立公園のみでは顕著な普遍的価値が示されていないとし、ニジェールのW国立公園の拡大案件として再考するよう勧告しました。

2011年には、ベナンのパンジャリ国立公園がニジェールのW国立公園の拡大案件として審議されましたが、ブルキナファソの自然保護区も含めた範囲の再考などを指摘され、IUCNからは登録延期を勧告されました。

世界遺産登録の過程
出来事
1954年 W国立公園設立
1996年 ニジェールのW国立公園が世界遺産に登録
2011年 ベナンのパンジャリ国立公園の拡大登録が延期
2016年 ブルキナファソのアルリ国立公園を含む拡大登録申請
2017年 W・アルリ・パンジャリ自然公園群として世界遺産に登録

拡大登録と3ヶ国連携

W国立公園のブルキナファソ領内の部分や、アルリ国立公園も含めた推薦はようやく2016年に実現しました。IUCNも拡大承認を勧告し、2017年に第41回世界遺産委員会で登録が実現しました。

文化遺産しか保有していなかったベナンとブルキナファソにとっては、初の世界自然遺産となりました。アフリカでの3ヶ国にまたがる自然遺産は、サンガ川流域の3か国保護地域(2012年)以来2件目です。

世界遺産の正式登録名は、英語: W-Arly-Pendjari Complex / フランス語: Complexe W-Arly-Pendjariです。

世界遺産としての意義

W-アーリー-ペンジャリ保護地域群は、西アフリカのサバンナ地帯における陸生、半水生、水生の生態系の最大の生息地です。

この地域は、手つかずのサヘル(半乾燥地域)やサバンナ、草原、低木、樹木が広がり、半落葉樹林など数多くの植生が見られ、約5万年前にわたって人類による火の使用によって植生の多様性が維持され、その特徴が生息地に見られるという点で評価されています。

西アフリカで絶滅した、もしくは絶滅に瀕している動物が暮らす地で、西アフリカ最大規模のゾウの生息地で、この地域のサバンナゾウの85%が暮らし、アフリカマナティー、チーター、ライオン、ヒョウ、リカオン、トピといった西アフリカの大型哺乳類の中でも、特に絶滅危惧種の生息地となっています。

世界遺産登録基準
基準 内容
(ix) 生態系の進化の過程を示す顕著な例
(x) 生物多様性の保護に重要な地域

まとめ

W-アーリー-ペンジャリ保護地域群は、世界遺産登録までに多くの困難を経験しましたが、3ヶ国の連携によって、世界遺産としての価値を認められました。

この地域は、西アフリカの生態系と生物多様性の保護において重要な役割を果たしており、世界遺産登録によって、その保護と保全が強化されました。

3ヶ国が協力して、この貴重な自然遺産を次世代に継承していくことが重要です。

3. 生態多様性と環境保護活動

要約

豊かな生態系

W-アーリー-ペンジャリ保護地域群は、サバンナ、森林、湿地など多様な生態系を持ち、それぞれが豊かな動植物の生息地となっています。

この地域には、象、ライオン、チーター、ヒョウ、バッファローなどの大型哺乳類が生息しています。また、350種以上の鳥類が確認されており、特に渡り鳥の重要な休息地となっています。

W-アーリー-ペンジャリ保護地域群は、美しい自然景観を持つ地域であり、広大なサバンナ、森林、湿地が広がっています。

W-アーリー-ペンジャリ保護地域群の生態系
生態系 特徴
サバンナ 草原地帯
森林 樹木が生い茂る地域
湿地 水辺の地域

絶滅危惧種の保護

W-アーリー-ペンジャリ保護地域群は、西アフリカで最後の健康な大型哺乳類の生息地であり、多くの絶滅危惧種が保護されています。

特に、ゾウ、ライオン、チーター、ヒョウ、アフリカマナティー、コリンガゼルなどの絶滅危惧種が生息しており、これらの種の保護は、世界的な課題となっています。

W-アーリー-ペンジャリ保護地域群は、これらの絶滅危惧種の保護に重要な役割を果たしており、その保護活動は、世界中の注目を集めています。

W-アーリー-ペンジャリ保護地域群の絶滅危惧種
動物 特徴
ゾウ 西アフリカ最大の生息地
ライオン 絶滅危惧種
チーター 絶滅危惧種
ヒョウ 絶滅危惧種
アフリカマナティー 絶滅危惧種
コリンガゼル 絶滅危惧種

環境保護活動

W-アーリー-ペンジャリ保護地域群では、生態系の保全と持続可能な利用を目的とした様々な環境保護活動が行われています。

具体的には、密猟の防止、森林伐採の規制、環境教育、地域住民との協力による保全活動などが挙げられます。

これらの活動は、世界遺産の価値を維持し、将来にわたってこの貴重な自然遺産を保護していくために不可欠です。

環境保護活動
活動 内容
密猟の防止 違法な狩猟の防止
森林伐採の規制 森林の乱伐防止
環境教育 地域住民への環境保護意識啓発
地域住民との協力 地域住民と連携した保全活動

まとめ

W-アーリー-ペンジャリ保護地域群は、豊かな生態系と多くの絶滅危惧種が生息する、世界的に重要な自然保護区です。

この地域では、生態系の保全と持続可能な利用を目的とした様々な環境保護活動が行われており、これらの活動は、世界遺産の価値を維持し、将来にわたってこの貴重な自然遺産を保護していくために不可欠です。

今後も、国際的な協力のもと、環境保護活動が継続されることが重要です。

4. 文化遺産と共生する自然保護地域

要約

人類と自然の共存

W-アーリー-ペンジャリ保護地域群は、自然保護区であると同時に、古くから人類が居住してきた地域でもあります。

この地域には、多くの考古学的遺跡が発見されており、人類と自然が長い年月をかけて共存してきた歴史を物語っています。

W-アーリー-ペンジャリ保護地域群は、自然保護と文化遺産の保全を両立させる、重要な場所です。

W-アーリー-ペンジャリ保護地域群の考古学的遺跡
遺跡 特徴
古代遺跡 人類の居住地を示す遺跡
石器 古代の人々が使用した石製の道具

地域住民との連携

W-アーリー-ペンジャリ保護地域群の保全には、地域住民との連携が不可欠です。

地域住民は、この地域の歴史と文化を理解しており、自然保護活動に重要な役割を果たしています。

環境保護活動は、地域住民の生活と文化を尊重し、持続可能な形で進められる必要があります。

文化遺産の保護

W-アーリー-ペンジャリ保護地域群には、考古学的遺跡だけでなく、伝統的な文化や生活様式も残されています。

これらの文化遺産は、自然保護活動と同様に、保護と継承していく必要があります。

地域住民の伝統的な知識や技術は、自然保護活動に役立つだけでなく、文化遺産の保全にも貢献します。

W-アーリー-ペンジャリ保護地域群の文化遺産
文化遺産 特徴
伝統的な文化 地域住民の生活様式
伝統的な知識 自然保護に役立つ知識
伝統的な技術 自然保護に役立つ技術

まとめ

W-アーリー-ペンジャリ保護地域群は、自然保護区であると同時に、人類と自然が長い年月をかけて共存してきた歴史を持つ地域です。

地域住民との連携を強化し、自然保護と文化遺産の保全を両立させることが重要です。

この地域は、自然と文化が調和した、貴重な場所であり、その価値を次世代に継承していく必要があります。

5. 観光と持続可能な開発

要約

観光の現状

W-アーリー-ペンジャリ保護地域群は、豊かな自然と生物多様性を持つことから、観光客にとって魅力的な場所です。

近年、この地域への観光客数は増加傾向にあり、観光収入は地域経済に貢献しています。

しかし、観光客の増加は、環境問題や文化遺産への影響も懸念されています。

持続可能な観光

W-アーリー-ペンジャリ保護地域群では、環境保護と観光の両立を目指した持続可能な観光の取り組みが進められています。

具体的には、観光客の分散化、環境負荷の低減、地域住民への経済効果の還元などが挙げられます。

観光客は、自然保護の重要性を理解し、環境に配慮した行動をとることが求められます。

持続可能な観光の取り組み
取り組み 内容
観光客の分散化 観光客を様々な地域に誘導
環境負荷の低減 環境に配慮した観光
地域住民への経済効果の還元 地域住民が観光から利益を得られるようにする

地域住民の参画

持続可能な観光を実現するためには、地域住民の参画が不可欠です。

地域住民は、観光客に地元の文化や歴史を紹介したり、環境保護活動に参加したりすることで、観光の恩恵を受けながら、地域を守ることができます。

観光客と地域住民が協力することで、W-アーリー-ペンジャリ保護地域群の価値を維持し、将来にわたってこの地域を保護していくことができます。

まとめ

W-アーリー-ペンジャリ保護地域群は、観光客にとって魅力的な場所ですが、観光客の増加は、環境問題や文化遺産への影響も懸念されています。

持続可能な観光の取り組みを進め、環境保護と観光の両立を目指していく必要があります。

地域住民の参画を促進し、観光客と地域住民が協力することで、W-アーリー-ペンジャリ保護地域群の価値を維持し、将来にわたってこの地域を保護していくことができます。

6. 今後の展望と課題

要約

保護活動の強化

W-アーリー-ペンジャリ保護地域群の保護活動は、今後も強化していく必要があります。

特に、密猟の防止、森林伐採の規制、環境教育、地域住民との協力による保全活動などを強化していく必要があります。

国際的な協力体制を強化し、資金や技術の支援を継続していくことが重要です。

観光客の増加と環境負荷

観光客の増加は、環境負荷の増加につながる可能性があります。

観光客の分散化、環境負荷の低減、地域住民への経済効果の還元など、持続可能な観光の取り組みをさらに強化していく必要があります。

観光客は、環境に配慮した行動をとるように心がける必要があります。

地域住民の生活と文化の維持

W-アーリー-ペンジャリ保護地域群は、地域住民の生活と文化と密接に関係しています。

観光開発は、地域住民の生活や文化に悪影響を及ぼさないように、慎重に進める必要があります。

地域住民の生活と文化を尊重し、地域住民が主体的に観光に関わる仕組み作りが重要です。

まとめ

W-アーリー-ペンジャリ保護地域群は、世界的に重要な自然遺産であり、その保護と保全は、人類共通の課題です。

環境保護活動の強化、持続可能な観光の推進、地域住民の生活と文化の維持など、様々な課題がありますが、国際的な協力と地域住民の参画によって、これらの課題を克服していくことができます。

W-アーリー-ペンジャリ保護地域群の価値を次世代に継承していくために、今後も様々な取り組みが続けられることが重要です。

参考文献

世界遺産 W-アーリー-ペンジャリ保護地域群|ホットホリデー

ニジェール・ベナン・ブルキナファソの世界遺産「W・アルリ・パンジャリ自然公園群」とは?世界遺産マニアが解説 | 世界遺産マニア

W・アルリ・パンジャリ自然公園群 – W・アルリ・パンジャリ自然公園群の概要 | わかりやすく解説 Weblio辞書

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