項目 | 内容 |
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場所 | 中華人民共和国山西省大同市の西方20km |
規模 | 東西1kmにわたる約51窟 |
建造時期 | 北魏の460年から494年 |
登録年 | 2001年 |
登録基準 | (i)(ii)(iii)(iv) |
特徴 | ガンダーラ美術やグプタ朝の様式の影響を受けた仏教石窟寺院 |
主な観光スポット | 曇曜五窟、第19窟、第20窟 |
1. 雲崗石窟の歴史
雲崗石窟の始まり
雲崗石窟は、中華人民共和国山西省大同市の西方20kmに位置する、東西1kmにわたる約51窟の石窟寺院です。北魏の沙門統である曇曜が文成帝に上奏して460年(和平元年)頃に、桑乾河の支流の武周川の断崖に開いた所謂「曇曜五窟」(第16窟、第17窟、第18窟、第19窟、第20窟)に始まります。この曇曜五窟は、北魏の五人の先代皇帝を記念して造られたもので、北魏という国家、そして皇帝の権力を誇示する象徴的な存在でした。
曇曜五窟は、北魏の仏教復興事業のシンボル的存在であり、厳しい仏教弾圧を経験した直後だけに、仏教を永遠不滅なものにしたいという願いが込められていると考えられます。それぞれの石窟内部には十数メートルもある本尊像が立ち並び、仏、菩薩、天人などの群像は、いずれも素朴で力強い作風を示し、遊牧部族だった北魏の拓跋族のたくましいエネルギーを感じさせます。
文成帝が崩ずると、13歳の献文帝が立ち、ついで5歳の孝文帝が即位しますが、政治の実権は文成の皇后、馮太后の手に握られていました。彼女は熱烈な仏教信者で、側近の元老たちも仏教に熱心だったため、北魏の仏教は繁栄の一途をたどりました。雲崗石窟の造営も活発を極め、第7洞、第8洞、第5洞、第6洞など中央の石窟群が完成すると、石窟の造営は東方へ、さらに西方へと広がっていきました。
涼州出身の僧である曇曜は480年代まで、20年余も沙門統の地位にあって活躍しましたが、彼の率いる北涼系の工人集団が、石窟の造営、仏像の制作などの主流を占めていたと考えられます。雲崗の仏像様式が西方の影響を強く受けていることは、シバやビシュヌ神のようなインドの神々、牛や金翅鳥(ガルダ)にのる多面多臂像の存在によって明らかです。
窟番号 | 説明 |
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第16窟 | 北魏の五人の先代皇帝を記念 |
第17窟 | 北魏の五人の先代皇帝を記念 |
第18窟 | 北魏の五人の先代皇帝を記念 |
第19窟 | 北魏の五人の先代皇帝を記念 |
第20窟 | 北魏の五人の先代皇帝を記念 |
雲崗石窟の様式
雲崗石窟の様式は、最初期の「曇曜五窟」には、ガンダーラ美術やグプタ朝の様式の影響が色濃く見られます。その後、石窟ではギリシア様式の唐草文様に代表される西方起源の意匠も凝らされており、当時の建築様式を模した装飾も豊富に見られます。しかし、洛陽へ遷都する494年以降の末期になると、初期の雄大な質感は姿を消し華奢で力強さの感じられない造形が増加する傾向が顕著となります。
雲崗の様式は涼州の石窟にその淵源を持つとも考えられますが、雲崗の影響は龍門・天龍山・南北の響堂山などの広範囲な石窟寺院に及んでいます。雲崗石窟は、中国における初期仏教芸術の傑作とされ、敦煌の莫高窟と龍門石窟とともに中国3大石窟のひとつに数えられています。
雲崗石窟は、中央アジアや南アジアの仏教美術と中国文化が融合したものであり、中国における仏教信仰の拡大が、雲崗石窟で見られるという点で評価されています。
仏教石窟は、雲崗石窟の建造によって大きく発展していったという点も重要な評価ポイントです。
時期 | 様式の特徴 |
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初期 | ガンダーラ美術やグプタ朝の様式の影響 |
中期 | ギリシア様式の唐草文様など、西方起源の意匠 |
後期 | 華奢で力強さの感じられない造形 |
影響 | 龍門、天龍山、南北の響堂山などの広範囲な石窟寺院に影響 |
雲崗石窟と日本人
日中戦争中の1937年から1944年にわたり、東方文化学院の水野清一、長広敏雄らによる全体的な調査が行われました。戦後彼らによって出版された『雲崗石窟』全16巻32冊は、21世紀に入っても中国初期仏教文化の学術資料として評価されています。
1961年に中華人民共和国全国重点文物保護単位の第一次の認定を[5]、2001年に世界文化遺産の指定をうけました。
雲崗石窟は、中国における初期仏教石窟の傑作であるという点、中央アジアや南アジアの仏教美術と中国文化が融合したものであるということ、中国における仏教信仰の拡大が、雲崗石窟で見られるという点、仏教石窟は、雲崗石窟の建造によって大きく発展していったという点で評価され、世界遺産に登録されました。
雲崗石窟は、南アジアで生まれた仏教が中央アジアを通って中国に伝わっていき、それが中国独自の文化と融合して、仏教石窟に大きな影響が与えたという点で評価されています。
期間 | 調査者 | 成果 |
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1937年-1944年 | 水野清一、長広敏雄 | 『雲崗石窟』全16巻32冊の出版 |
まとめ
雲崗石窟は、北魏王朝が仏教を国家的に保護し、積極的に仏教文化を導入した結果、誕生した石窟寺院です。曇曜五窟は、北魏の五人の先代皇帝を記念して造られたもので、北魏の仏教復興事業の象徴的な存在でした。
雲崗石窟は、ガンダーラ美術やグプタ朝の様式の影響を受けながらも、中国独自の様式を確立し、中国仏教彫刻史において重要な位置を占めています。
雲崗石窟は、中国における初期仏教芸術の傑作であり、世界遺産に登録されるほど高い評価を受けています。
雲崗石窟は、東西文化の融合を象徴する重要な遺跡であり、歴史的、芸術的価値の高い場所です。
2. 雲崗石窟の壁画
壁画の特徴
雲崗石窟の壁画は、仏教の教えや故事、経文などを題材として描かれており、当時の仏教信仰や社会の様子を垣間見ることができます。壁画は、鮮やかな色彩で描かれており、当時の技術力の高さをうかがわせます。
壁画には、仏陀や菩薩、天人、動物など様々なモチーフが描かれており、それぞれのモチーフには深い意味が込められています。
壁画は、石窟の内部だけでなく、外部にも描かれており、石窟全体を装飾しています。
壁画は、風化や盗難によって損傷しているものも多いですが、それでも当時の壮大さを垣間見ることができます。
特徴 | 説明 |
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色彩 | 鮮やか |
モチーフ | 仏陀、菩薩、天人、動物など |
技法 | 線描、彩色、浮彫など |
場所 | 石窟内部と外部 |
壁画のテーマ
雲崗石窟の壁画のテーマは、主に仏教の教えや故事、経文などを題材としています。
仏陀の生涯を描いた仏伝図や、仏陀の前生の物語である本生図などが多く描かれています。
壁画には、仏教の教えを分かりやすく説明するための図解や、仏教の教えを説く高僧の姿などが描かれています。
壁画は、当時の仏教信仰の盛んさを物語る貴重な資料となっています。
テーマ | 説明 |
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仏教の教え | 仏陀の生涯を描いた仏伝図、仏陀の前生の物語である本生図など |
仏教の故事 | 仏教の教えを分かりやすく説明するための図解、仏教の教えを説く高僧の姿など |
社会の様子 | 当時の仏教信仰の盛んさを物語る貴重な資料 |
壁画の技法
雲崗石窟の壁画は、主に漆喰や土などを用いて描かれています。
壁画には、線描、彩色、浮彫など様々な技法が用いられています。
壁画は、当時の技術力の高さを示すものであり、現代でもその美しさに魅了される人が多くいます。
壁画は、当時の社会の様子や文化を伝える貴重な資料となっています。
まとめ
雲崗石窟の壁画は、仏教の教えや故事、経文などを題材として描かれており、当時の仏教信仰や社会の様子を垣間見ることができます。
壁画は、鮮やかな色彩で描かれており、当時の技術力の高さをうかがわせます。
壁画には、仏陀や菩薩、天人、動物など様々なモチーフが描かれており、それぞれのモチーフには深い意味が込められています。
壁画は、風化や盗難によって損傷しているものも多いですが、それでも当時の壮大さを垣間見ることができます。
3. 雲崗石窟の彫刻
彫刻の特徴
雲崗石窟の彫刻は、仏像を中心に、菩薩、天人、動物など様々なモチーフが彫られています。
彫刻は、石窟の内部だけでなく、外部にも施されており、石窟全体を装飾しています。
彫刻は、当時の技術力の高さを示すものであり、現代でもその美しさに魅了される人が多くいます。
彫刻は、当時の社会の様子や文化を伝える貴重な資料となっています。
特徴 | 説明 |
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モチーフ | 仏像、菩薩、天人、動物など |
場所 | 石窟内部と外部 |
技法 | 写実的な表現と抽象的な表現の融合 |
印象 | 力強くダイナミック |
彫刻の様式
雲崗石窟の彫刻は、ガンダーラ美術やグプタ朝の様式の影響を受けていますが、中国独自の様式も確立しています。
彫刻は、写実的な表現と抽象的な表現が融合しており、力強くダイナミックな印象を与えます。
彫刻は、当時の仏教信仰や社会の様子を反映しており、様々な文化が融合した独特の様式となっています。
彫刻は、当時の技術力の高さを示すものであり、現代でもその美しさに魅了される人が多くいます。
様式 | 説明 |
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ガンダーラ美術 | パキスタン北部の仏教美術の影響 |
グプタ朝の様式 | インドの仏教美術の影響 |
中国独自の様式 | 写実的な表現と抽象的な表現の融合 |
文化 | 東西文化が融合した独特の様式 |
彫刻のモチーフ
雲崗石窟の彫刻のモチーフは、主に仏陀や菩薩、天人、動物などです。
仏陀は、悟りを開いた釈迦牟尼の姿を表しており、慈悲深い表情をしています。
菩薩は、仏陀の教えを広めるために修行している存在であり、仏陀の慈悲深い心を象徴しています。
天人は、仏陀の教えを聞き、仏陀を賛美する存在であり、仏陀の教えの広がりを表しています。
モチーフ | 説明 |
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仏陀 | 悟りを開いた釈迦牟尼の姿 |
菩薩 | 仏陀の教えを広めるために修行している存在 |
天人 | 仏陀の教えを聞き、仏陀を賛美する存在 |
動物 | 仏教の教えを象徴する動物 |
まとめ
雲崗石窟の彫刻は、仏像を中心に、菩薩、天人、動物など様々なモチーフが彫られています。
彫刻は、当時の技術力の高さを示すものであり、現代でもその美しさに魅了される人が多くいます。
彫刻は、当時の社会の様子や文化を伝える貴重な資料となっています。
雲崗石窟の彫刻は、仏教の教えや当時の社会の様子を伝える重要な資料であり、芸術的価値の高いものです。
4. 雲崗石窟の保存状況
保存状況
雲崗石窟は、世界文化遺産に登録されており、保存活動が進められています。
しかし、風化や盗掘によって損傷している部分も多く、完全な状態のものはわずかしか残っていないそうです。
保存活動は、石窟の保護だけでなく、周辺環境の整備なども行われています。
雲崗石窟は、貴重な文化遺産であり、後世に伝えるために、保存活動が重要です。
状況 | 説明 |
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現状 | 風化や盗掘によって損傷している部分も多い |
保存活動 | 石窟の保護、周辺環境の整備、研究活動など |
課題 | 風化、盗掘 |
保存活動
雲崗石窟の保存活動は、石窟の保護、周辺環境の整備、研究活動など多岐にわたっています。
石窟の保護活動は、風化や盗掘を防ぐための対策、石窟の構造を維持するための補修などが行われています。
周辺環境の整備活動は、石窟周辺の環境を改善し、観光客が快適に過ごせるようにするための活動です。
研究活動は、雲崗石窟の歴史や文化を解明するための活動です。
課題
雲崗石窟の保存活動は、風化や盗掘などの課題に直面しています。
風化は、自然現象であり、完全に防ぐことは難しいです。
盗掘は、貴重な文化遺産を破壊する行為であり、厳しく取り締まる必要があります。
雲崗石窟の保存活動は、今後も継続していく必要があります。
まとめ
雲崗石窟は、世界文化遺産に登録されており、保存活動が進められています。
しかし、風化や盗掘などの課題に直面しており、今後も継続的な保存活動が必要です。
雲崗石窟は、貴重な文化遺産であり、後世に伝えるために、保存活動が重要です。
雲崗石窟の保存活動は、国際的な協力のもと、積極的に進められています。
5. 雲崗石窟の世界遺産登録基準
登録基準
雲崗石窟は、ユネスコの世界遺産に登録されており、世界遺産登録基準のうち、以下の条件を満たしています。
登録基準(i):雲崗石窟は、中国における初期仏教石窟の傑作であるという点。
登録基準(ii):雲崗石窟は、中央アジアや南アジアの仏教美術と中国文化が融合したものであるということ。
登録基準(iii):中国における仏教信仰の拡大が、雲崗石窟で見られるという点。
基準 | 説明 |
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(i) | 初期中国の仏教洞窟壁画の傑作 |
(ii) | 南アジアおよび中央アジアの仏教の宗教的象徴芸術と中国の文化的伝統との融合 |
(iii) | 中国における仏教信仰の力と忍耐力を示す |
(iv) | 仏教の伝統的な宗教的な洞窟壁画が大きな影響を与え独自の特徴と芸術力を発展させた場所 |
評価コメント
ユネスコは、雲崗石窟について、以下の評価コメントを発表しています。
登録基準(i):The assemblage of statuary of the Yungang Grottoes is a masterpiece of early Chinese Buddhist cave art.(雲崗石窟の彫像は初期中国の仏教洞窟壁画の傑作。)
登録基準(ii):The Yungang cave art represents the successful fusion of Buddhist religious symbolic art from south and central Asia with Chinese cultural traditions
登録基準(iii):The power and endurance of Buddhist belief in China are vividly illustrated by the Yungang grottoes.(中国における仏教信仰の力と忍耐力は雲崗石窟によって示されている。)
登録基準(iv)
登録基準(iv):The Buddhist tradition of religious cave art achieved its first major impact at Yungang
雲崗石窟は、これらの登録基準を満たすことで、世界遺産に登録されました。
雲崗石窟は、世界遺産に登録されることで、国際的な注目を集め、保存活動が促進されました。
雲崗石窟は、世界遺産として、人類共通の財産として保護されています。
まとめ
雲崗石窟は、世界遺産登録基準(i)(ii)(iii)(iv)を満たすことで、世界文化遺産に登録されました。
ユネスコは、雲崗石窟を、初期中国の仏教洞窟壁画の傑作、南アジアおよび中央アジアの仏教の宗教的象徴芸術と中国の文化的伝統との融合に成功した例、中国における仏教信仰の力と忍耐力を示すもの、仏教の伝統的な宗教的な洞窟壁画が大きな影響を与え独自の特徴と芸術力を発展させた場所として評価しています。
雲崗石窟は、世界遺産として、国際的な注目を集め、保存活動が促進されています。
雲崗石窟は、世界遺産として、人類共通の財産として保護されています。
6. 雲崗石窟の観光スポット
曇曜五窟
曇曜五窟は、雲崗石窟の中でも最も有名な石窟群です。
曇曜五窟は、北魏の五人の先代皇帝を記念して造られたもので、それぞれの石窟には、巨大な仏像が安置されています。
曇曜五窟は、雲崗石窟の代表的な観光スポットであり、多くの観光客が訪れます。
曇曜五窟は、北魏時代の仏教文化を象徴する重要な場所です。
窟番号 | 説明 |
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第16窟 | 北魏の五人の先代皇帝を記念 |
第17窟 | 北魏の五人の先代皇帝を記念 |
第18窟 | 北魏の五人の先代皇帝を記念 |
第19窟 | 北魏の五人の先代皇帝を記念 |
第20窟 | 北魏の五人の先代皇帝を記念 |
第19窟
第19窟は、雲崗石窟の中で最大の石窟です。
第19窟には、高さ16.8mの巨大な仏像が安置されています。
第19窟は、雲崗石窟の壮大さを象徴する場所です。
第19窟は、雲崗石窟の中でも特に人気のある観光スポットです。
第20窟
第20窟は、曇曜五窟の一つであり、北魏の初代皇帝・道武帝の姿を模したとされています。
第20窟の本尊は、今は失われたバーミヤンの大仏を彷彿させる、高さ13.75mの大仏です。
第20窟は、雲崗石窟の中でも特に人気のある観光スポットです。
第20窟は、雲崗石窟の芸術的な魅力を象徴する場所です。
まとめ
雲崗石窟は、曇曜五窟、第19窟、第20窟など、多くの観光スポットがあります。
これらの観光スポットは、雲崗石窟の歴史、文化、芸術を象徴する重要な場所です。
雲崗石窟を訪れる際には、これらの観光スポットをぜひ訪れてみてください。
雲崗石窟は、歴史、文化、芸術を学ぶことができる貴重な場所です。
参考文献
・雲崗石窟(ウンコウセックツ)とは? 意味や使い方 – コトバンク
・雲崗石窟|中国世界遺産の旅ーアラチャイナ(AraChina)中国旅行
・中国の世界遺産「雲崗石窟」は仏教彫刻に囲まれた3d空間 …
・雲崗石窟~大規模な造像事業 仏像美術vol.6 | 仏像美術
・雲崗石窟-全長約1kmにおよぶ5~6世紀の約51窟の仏教石窟群
・雲崗石窟