ホンジャ・アフメッド・ヤサウイ廟とは?世界遺産についての解説

ホンジャ・アフメッド・ヤサウイ廟の概要
項目 内容
場所 カザフスタン南部のテュルキスタン市
建設時期 1397年~1405年(ティムールによる改築)
登録年 2003年
登録区分 文化遺産
主な見どころ ダブル・ドーム、大広間、ミナレット、ヤサウイの墓
アクセス アルマトイから車で約11時間、シムケントからミニバスで約3時間
注意点 治安が不安定な地域もあるため、最新の安全情報を確認すること

1. ホンジャアフメッドヤサウイ廟の歴史

要約

12世紀の聖者、ホージャ・アフマド・ヤサウイ

ホージャ・アフマド・ヤサウイ廟は、カザフスタン南部のテュルキスタン市にある、未完成に終わった廟建築です。12世紀に活躍したスーフィー(聖者)であるホージャ・アフマド・ヤサウイと、歴代のヤサヴィー教団の指導者の墓が置かれています。ヤサウイは、12世紀半ばに中央アジアのテュルク系遊牧民へのイスラーム化に尽力した人物で、カザフスタンのサイラムの出身でしたが、のちにヤサ(現テュルキスタン市)に移住したため、「ヤサヴィー」のニスバで呼ばれています。

ヤサウイは、イスラム神秘主義の一派であるヤサヴィー教団の教祖として、中央アジアのイスラム教徒に大きな影響を与えました。彼の教えは、テュルク語で書かれた詩集『ディワーン』にまとめられており、現在でも中央アジアの人々に愛読されています。ヤサウイの死後、彼の墓の近くに小さな廟が建てられ、やがて巡礼地として発展していきました。

ヤサウイ廟は、中央アジアのイスラム教徒にとって聖地の一つであり、草原地帯ではヤサヴィー廟への参詣はメッカ巡礼に勝る善行と見なされていました。そのため、ヤサウイ廟には、中央アジア各地から多くの巡礼者が訪れていました。

ホージャ・アフマド・ヤサウイの生涯
項目 内容
生没年 1103年~1166年
出身地 カザフスタンのサイラム
活動 テュルク系遊牧民へのイスラーム化
教え ヤサヴィー教団の教祖
著作 詩集『ディワーン』

ティムールによる改築

14世紀末、中央・西アジアに帝国を築いたティムールは、ヤサウイ廟を改築しました。ティムールは、ヤサウイ廟を改築することで、遊牧民から敬意を払われているヤサウイの廟を改築することで、東方のモグーリスタンに居住する遊牧民の支持を獲得する意図があったと考えられています。

ティムールは、ペルシャからの職人を招いて、1397年から2年がかりで現在の建築物を造営しました。廟の建築を手がけたのは、ホージャ・フサイン・シーラーズィーとシャムス・アブドゥッラー・シーラーズィーだと考えられています。

ティムールが1405年に死亡したことにより、廟建築の継続は中止されました。その後の統治者はこの廟にあまり関心を持たなかったため、ティムール建築の典型例が当時の姿のまま残りました。

ティムールによる改築の概要
項目 内容
改築期間 1397年~1399年
目的 遊牧民の支持獲得
建築家 ホージャ・フサイン・シーラーズィー、シャムス・アブドゥッラー・シーラーズィー
特徴 サマルカンドブルーのドーム、精緻な装飾

20世紀以降の変遷

テュルキスタンがロシアに編入された後も、ロシア革命直前まで廟に多くの参詣者が訪れていました。1994年にはトルコ共和国との協定が締結されてアフマド・ヤサヴィー大学が創設され、トルコ政府の援助によって3

19世紀当時に廟の周囲を取り囲んでいた壁が復元され、古い街並みが日干しレンガで再現されました。2003年に廟が世界遺産に指定された後、テュルキスタンの観光産業は急速に発展し、新しいホテルや廟を模した建物が建設されました。

20世紀以降の変遷
時期 内容
1994年 トルコ政府による修復工事
2003年 世界遺産登録
現在 観光地として発展

まとめ

ホンジャ・アフマド・ヤサウイ廟は、12世紀の聖者ホージャ・アフマド・ヤサウイの廟として、中央アジアのイスラム教徒にとって重要な聖地でした。14世紀末にティムールによって改築され、現在見られる壮大な建築物は、ティムール建築の代表作の一つとして、世界遺産に登録されています。

ヤサウイ廟は、中央アジアの歴史と文化を象徴する建築物であり、現在でも多くの観光客が訪れています。

2. ホンジャアフメッドヤサウイ廟の建築様式

要約

中央アジア最大級のイスラム建築

ホンジャ・アフメッド・ヤサウイ廟は、中央アジアにおける典型的なイスラム建築の代表例であり、45.8m×62.7mの長方形で建設されました。ペルシャからの建築家による設計により、高さ38.7メートルのダブル・ドームが建築されると同時に、煉瓦、モルタル、粘土が建築材料として使用されました。

ダブル・ドームには、緑色と金色のタイルがスカイ・ブルーの屋根を縁取る、美しい装飾が施されています。全てをドームなどの屋根で覆われた廟の構造は、アナトリア半島に建てられたマドラサ(神学校)との類似性が指摘されています。

ホンジャ・アフメッド・ヤサウイ廟の規模
項目 内容
面積 45.8m×62.7m
高さ 38.7m
ドーム ダブル・ドーム
建築材料 煉瓦、モルタル、粘土

特徴的な構造と装飾

廟の中心には、直径20m、高さ40m、ズィヤラット・ハーネ(「参詣堂」の意)と呼ばれる大広間があります。大広間にはティムールが寄進したと伝えられている大鍋が展示されており、鍋は7種類の金属の合金だと言われています。階段を上った参詣者は、願をかけて鍋の中に賽銭を投げ入れます。

また、大広間にはミフラーブが存在していません。大広間の後ろに位置する北のリブドームの直下の部屋には、ヤサヴィーの墓が安置されています。廟内での撮影は禁止されており、ヤサヴィーの墓石を撮影しようとしてもフィルムが白く感光されるだけだと言われています。墓石はウグイス色の大理石で作られています。

廟はヤサヴィー教団に属する修行者の生活の場でもあり、大広間の周辺には大小の応接室、礼拝堂、図書館が置かれています。広間周辺の小さな暗い部屋には、かつては神との合一を得ようとする修行者が籠っていました。上階には、修行者や旅行者が利用していた宿泊所が置かれています。

ホンジャ・アフメッド・ヤサウイ廟の内部構造
場所 内容
大広間 直径20m、高さ40m、ズィヤラット・ハーネ
大鍋 ティムールが寄進、7種類の金属の合金
ヤサウイの墓 北のリブドームの直下の部屋
その他 応接室、礼拝堂、図書館、宿泊所

未完成のミナレット

南のイーワーン(門)近くのミナレットは未完成のまま放置されており、被覆材が貼られていません。墓室に直接通じる北の入り口には美しいタイル装飾が施されているため、南北の入り口の建設時期は異なっているのではないかと推測されています。

ミナレット部分の設計者は、ホージャ・フサイン・シーラーズィーと伝えられています。

ミナレットの特徴
項目 内容
状態 未完成
位置 南のイーワーン近く
装飾 被覆材が貼られていない
設計者 ホージャ・フサイン・シーラーズィー

まとめ

ホンジャ・アフメッド・ヤサウイ廟は、中央アジア最大級のイスラム建築であり、ティムール建築の代表作の一つとして、その壮大さと美しさで知られています。

廟は、ダブル・ドーム、大広間、ミナレットなど、特徴的な構造と装飾を備えており、当時の建築技術の高さを示しています。

また、廟は、ヤサヴィー教団の修行者の生活の場でもあり、様々な機能を備えた複合建築であることも特徴です。

3. ホンジャアフメッドヤサウイ廟の意義と影響

要約

イスラム教の聖地としての役割

ホンジャ・アフメッド・ヤサウイ廟は、中央アジアのイスラム教徒にとって重要な聖地であり、現在でも多くの巡礼者が訪れています。ヤサウイは、イスラム神秘主義の一派であるヤサヴィー教団の教祖として、中央アジアのイスラム教徒に大きな影響を与えました。

彼の教えは、テュルク語で書かれた詩集『ディワーン』にまとめられており、現在でも中央アジアの人々に愛読されています。ヤサウイ廟は、ヤサウイの教えを継承する場所として、中央アジアのイスラム教徒にとって特別な意味を持つ場所となっています。

イスラム教徒にとっての聖地
項目 内容
信仰 ヤサヴィー教団の教祖
巡礼 メッカ巡礼に勝る善行と見なされていた
現在 多くの巡礼者が訪れる

文化交流の拠点としての役割

ホンジャ・アフメッド・ヤサウイ廟は、中央アジアの文化交流の拠点としての役割も果たしてきました。廟は、様々な文化や宗教が交差するシルクロードの重要な位置にあり、東西文化の交流の場となっていました。

廟の建築様式には、ペルシャ、トルコ、アラブなどの様々な文化の影響が見られ、中央アジアの文化的多様性を象徴する建築物となっています。

文化交流の拠点
項目 内容
位置 シルクロードの重要な位置
影響 ペルシャ、トルコ、アラブなどの文化の影響が見られる
象徴 中央アジアの文化的多様性を象徴

観光地としての発展

ホンジャ・アフメッド・ヤサウイ廟は、世界遺産に登録されたことで、観光地として発展してきました。廟を訪れる観光客は、世界中から訪れており、カザフスタンを代表する観光スポットの一つとなっています。

廟の周辺には、ホテルやレストランなどが整備され、観光客にとって快適な環境が整えられています。

観光地としての発展
項目 内容
登録 世界遺産登録
観光客 世界中から訪れる
周辺環境 ホテルやレストランなどが整備されている

まとめ

ホンジャ・アフメッド・ヤサウイ廟は、イスラム教の聖地としての役割、文化交流の拠点としての役割、そして観光地としての役割を果たしており、中央アジアの歴史と文化を象徴する重要な場所です。

廟は、現在でも多くの巡礼者や観光客が訪れており、その歴史的、文化的、宗教的な価値は、世界的に認められています。

4. ホンジャアフメッドヤサウイ廟の保存状況

要約

修復と保存への取り組み

ホンジャ・アフメッド・ヤサウイ廟は、世界遺産に登録されたことで、その保存状況が注目されています。カザフスタン政府は、廟の保存と修復に力を入れており、国際的な協力も得ながら、様々な取り組みを行っています。

1994年にはトルコ共和国との協定が締結され、トルコ政府の援助によって3

修復と保存への取り組み
時期 内容
1994年 トルコ政府による修復工事
現在 カザフスタン政府による保存と修復

課題と今後の展望

ホンジャ・アフメッド・ヤサウイ廟の保存には、いくつかの課題があります。一つは、地下水位の上昇による塩害です。塩害は、建築物の劣化を引き起こすため、対策が必要です。

もう一つは、観光客の増加による影響です。観光客の増加は、廟の環境負荷を高めるため、適切な観光客管理が必要です。

保存の課題
課題 内容
塩害 地下水位の上昇による建築物の劣化
観光客の影響 環境負荷や文化への影響

持続可能な観光

ホンジャ・アフメッド・ヤサウイ廟の保存には、持続可能な観光の推進が重要です。観光客の増加は、経済効果をもたらす一方で、環境負荷や文化への影響も懸念されます。

そのため、観光客の増加と廟の保存のバランスをどのように取るかが課題となっています。

持続可能な観光の推進
項目 内容
目的 観光客の増加と廟の保存のバランス
取り組み 適切な観光客管理、環境負荷の低減

まとめ

ホンジャ・アフメッド・ヤサウイ廟は、世界遺産として、その保存状況が注目されています。カザフスタン政府は、廟の保存と修復に力を入れており、国際的な協力も得ながら、様々な取り組みを行っています。

しかし、地下水位の上昇による塩害や観光客の増加による影響など、課題も存在します。今後の課題としては、持続可能な観光の推進と、廟の保存と観光客の増加のバランスをどのように取るかが挙げられます。

5. ホンジャアフメッドヤサウイ廟にまつわる伝説

要約

ヤサウイの伝説

ホンジャ・アフメッド・ヤサウイ廟には、ヤサウイにまつわる多くの伝説が残されています。ヤサウイは、預言者モハメットが亡くなった年の63歳以降、地下で隠遁生活を送ったと伝えられています。

彼は、その間、神との対話に明け暮れ、多くの奇跡を起こしたと言われています。ヤサウイの死後、彼の墓の近くに小さな廟が建てられ、やがて巡礼地として発展していきました。

ヤサウイの伝説
内容 詳細
隠遁生活 預言者モハメットが亡くなった年の63歳以降、地下で隠遁生活を送った
奇跡 神との対話に明け暮れ、多くの奇跡を起こした
廟の起源 ヤサウイの死後、彼の墓の近くに小さな廟が建てられ、やがて巡礼地として発展していった

ティムールの伝説

ティムールは、ヤサウイ廟を改築した際に、ヤサウイの霊を鎮めるために、廟の中に大鍋を寄進したと伝えられています。この大鍋は、7種類の金属の合金でできており、現在でも廟の中に展示されています。

また、ティムールは、ヤサウイ廟の建設中に、ヤサウイの霊に導かれて、廟の設計を変更したという伝説も残されています。

ティムールの伝説
内容 詳細
大鍋の寄進 ヤサウイの霊を鎮めるために、廟の中に大鍋を寄進した
設計変更 ヤサウイの霊に導かれて、廟の設計を変更した
目的 ヤサウイの霊を鎮め、廟の建設を成功させるため

聖なるパワー

ホンジャ・アフメッド・ヤサウイ廟は、聖なるパワーを持つ場所として、人々に崇められています。廟内では、撮影が禁止されており、ヤサヴィーの墓石を撮影しようとしてもフィルムが白く感光されるだけだと言われています。

また、廟を訪れた人々は、ヤサウイの霊に願い事をかけ、その霊験を信じていると言われています。

聖なるパワー
内容 詳細
撮影禁止 廟内では撮影が禁止されており、ヤサヴィーの墓石を撮影しようとしてもフィルムが白く感光される
霊験 ヤサウイの霊に願い事をかけ、その霊験を信じている

まとめ

ホンジャ・アフメッド・ヤサウイ廟には、ヤサウイやティムールにまつわる多くの伝説が残されています。これらの伝説は、廟が人々にどのように崇められてきたのか、そして、廟が人々の生活にどのように影響を与えてきたのかを示しています。

ヤサウイ廟は、単なる建築物ではなく、人々の信仰と歴史が積み重ねられた聖地であり、その神秘的な魅力は、現在でも多くの人々を魅了しています。

6. ホンジャアフメッドヤサウイ廟へのアクセス方法

要約

カザフスタンへのアクセス

ホンジャ・アフマド・ヤサウイ廟は、カザフスタン南部のテュルキスタン市にあります。カザフスタンへのアクセスは、日本からの直行便はありません。そのため、ソウルや北京、あるいはタシケントなどの経由便を利用する必要があります。

カザフスタン国内の移動は、飛行機、鉄道、バスなどがあります。飛行機は、アルマトイやアスタナなどの主要都市からテュルキスタンへの便があります。鉄道は、アルマトイからテュルキスタンへの直通列車があります。バスは、アルマトイやシムケントなどの都市からテュルキスタンへの便があります。

カザフスタンへのアクセス
手段 内容
飛行機 ソウル、北京、タシケントなどの経由便
鉄道 アルマトイからテュルキスタンへの直通列車
バス アルマトイ、シムケントなどの都市からテュルキスタンへの便

テュルキスタン市内へのアクセス

テュルキスタン市内には、バスやタクシーがあります。バスは、テュルキスタン市内を走る路線バスがあります。タクシーは、街の中心部からホンジャ・アフマド・ヤサウイ廟まで約10分程度で到着します。

テュルキスタン市内へのアクセス
手段 内容
バス テュルキスタン市内を走る路線バス
タクシー 街の中心部からホンジャ・アフメッド・ヤサウイ廟まで約10分

注意点

ホンジャ・アフマド・ヤサウイ廟は、カザフスタン南部のテュルキスタン市にあります。テュルキスタン市は、カザフスタンの主要都市から離れており、アクセスには時間がかかります。

また、カザフスタンは、治安が不安定な地域もあるため、旅行前に最新の安全情報を確認することが重要です。

注意点
項目 内容
治安 不安定な地域もあるため、最新の安全情報を確認すること
アクセス時間 カザフスタンの主要都市から離れているため、アクセスには時間がかかる

まとめ

ホンジャ・アフマド・ヤサウイ廟へのアクセスは、日本からの直行便がないため、乗り継ぎが必要となります。カザフスタン国内の移動手段は、飛行機、鉄道、バスなどがあります。

テュルキスタン市内には、バスやタクシーがあります。ホンジャ・アフマド・ヤサウイ廟は、カザフスタンの主要都市から離れており、アクセスには時間がかかります。旅行前に最新の安全情報を確認することが重要です。

参考文献

カザフスタンの世界遺産「ホージャ・アフマド・ヤサヴィー廟 …

未完成に終わった廟建築、ホンジャ・アフメッド・ヤサウイ廟 …

ホージャ・アフマド・ヤサヴィー廟 | カザフスタン | 世界遺産 …

ホージャ・アフマド・ヤサヴィー廟 – Wikipedia

ホージャ・アフマド・ヤサヴィー廟 – 世界遺産を学ぶ

Mausoleum of Khoja Ahmed Yasawi – UNESCO World …

ホンジャ-アフメッド-ヤサウイ廟(ホンジャアフメッドヤサウイ …

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