シェーンブルン宮殿と庭園群とは?世界遺産についての解説

シェーンブルン宮殿と庭園群の構成
構成要素 説明
宮殿本館 ハプスブルク家の夏の離宮として使用されたバロック様式の建物。1441室あり、40室ほどが公開されている。
庭園 フランス式庭園で、東西約1.2km、南北約1kmの広大な敷地を誇る。
グロリエッテ 対プロイセン戦勝記念碑。丘の上にあり、庭園を一望できる展望台がある。
ネプチューンの噴水 ギリシャ神話をモチーフにした噴水。庭園の中央に位置する。
動物園 世界最古の動物園。パンダなど、珍しい動物を飼育している。
パルメンハウス ヨーロッパ最大の温室。熱帯、温帯、冷帯の植物を展示している。
迷路庭園 1720年から続く伝統的な迷路庭園。複数の茂みによる挑戦が楽しめる。
ローマ遺跡 1778年に建てられた古代ローマ遺跡のレプリカ。
オベリスク エジプトのヒエログリフでハプスブルク王朝の物語を語る大きなオベリスク。
日本庭園 1913年に造られた日本庭園。枯山水など、日本庭園の特徴が見られる。
馬車博物館 オーストリア皇帝の豪華な馬車を展示している。

1. シェーンブルン宮殿の歴史

要約

シェーンブルン宮殿の名前の由来

シェーンブルン宮殿は、オーストリアの首都ウィーンにある宮殿で、ハプスブルク家の歴代君主が夏の離宮として使用していました。宮殿の名前の由来は、17世紀初頭に皇帝マティアスが狩猟中に発見した美しい泉にちなみます。この泉は、現在も宮殿庭園内の一角に残されており、外から見学することができます。ひっそりと湧き出る泉を眺めていると、当時にタイムスリップしそうな感覚になる不思議なスポットです。

シェーンブルン宮殿は、16世紀後半ごろは、ハプスブルク家の狩猟場でした。1683年にオスマン帝国による攻撃で狩猟館が破壊されましたが、1695年にレオポルト一世がここにバロック様式の夏の離宮を建設しました。しかし、予算が不足し、当初の計画よりも小さな宮殿となり、1700年に完成しました。

1740年には、マリア・テレジアがハプスブルク家唯一の女帝となり、この小さな夏の宮殿を1744年から5年かけて優雅で壮麗な居城に増改築しました。建築家ニコラス・フォン・パカッシによって建てられたこの宮殿は、ヴェルサイユ宮殿と肩を並べるほどの大宮殿となりました。

シェーンブルン宮殿の歴史年表
出来事
1619年 皇帝マティアスが泉を発見し、シェーンブルンと命名
1683年 オスマン帝国によるウィーン包囲戦で破壊
1695年 レオポルト一世が夏の離宮として建設開始
1700年 宮殿完成
1740年 マリア・テレジアが女帝に
1744年~1749年 マリア・テレジアによる大規模な増改築
1752年 フランツ一世が動物園を開設
1918年 オーストリア共和国政府の所有となる
1996年 ユネスコ世界遺産に登録

マリア・テレジアによるシェーンブルン宮殿の拡張

マリア・テレジアは、シェーンブルン宮殿を夏の離宮として頻繁に利用していました。彼女は、宮殿をさらに拡張し、豪華な内装を施しました。宮殿の外観は、マリア・テレジア・イエローと呼ばれる、独特の黄色で統一されており、中央の屋上にはハプスブルク家の紋章「双頭の鷲」が装飾されています。

1752年には、宮殿脇にフランツ一世が世界で初めての動物園を設置しました。市民に解放されていた動物園で、かのマリー・アントワネットも頻繁に訪れています。

シェーンブルン宮殿は、1996年に世界遺産に登録されました。登録基準は、文化遺産 (ⅰ) (ⅳ) です。

シェーンブルン宮殿の建築家
建築家 担当部分
ヨハン・ベルンハルト・フィッシャー・フォン・エルラッハ 初期の宮殿建設
ニコラウス・フォン・パカッシー マリア・テレジア時代の増改築

シェーンブルン宮殿の所有権の変遷

シェーンブルン宮殿は、長い間ハプスブルク家の所有でしたが、20世紀に入って、600年以上続いたハプスブルク家の栄華も終焉を迎えます。第一次大戦後、オーストリアも共和制の波が押し寄せ、時の皇帝カール1世は国事から退くことを宣言しました。ウィーンもハプスブルク家の統治からオーストリア共和国の都市へと変わっていきます。カール皇帝の宣言が行われたのもシェーンブルン宮殿です。

以後、この宮殿はオーストリア政府の所有となります。数々の歴史の舞台となってきた宮殿にも、変化の時が訪れました。シェーンブルン宮殿は、王宮としての役割を終え、主を失いましたが、マリア・テレジアが愛した建物は当時の気品をたたえたまま、その美しさを今に残しています。

まとめ

シェーンブルン宮殿は、ハプスブルク家の歴史と深く結びついた宮殿です。当初は狩猟場として利用されていましたが、レオポルト一世によって夏の離宮として建設され、マリア・テレジアによってさらに拡張されました。その後、ハプスブルク家の所有からオーストリア政府の所有へと移り変わり、現在では世界遺産として多くの人々に愛されています。

シェーンブルン宮殿は、バロック様式とロココ様式が融合した建築様式で、その壮大さと美しさは、多くの観光客を魅了しています。また、宮殿内には、マリア・テレジアやフランツ・ヨーゼフ1世など、歴史上の人物が暮らした部屋や、モーツァルトが演奏した部屋など、貴重な歴史的遺産が残されています。

2. シェーンブルン宮殿の庭園群

要約

シェーンブルン宮殿の庭園の特徴

シェーンブルン宮殿の庭園は、宮殿と同じように、ハプスブルク家の歴史と深く結びついています。庭園は、フランス式庭園の様式を取り入れ、東西約1.2km、南北約1kmという広大な敷地を誇ります。

庭園内には、幾何学的にデザインされた美しい花壇や噴水、彫刻などが配置され、訪れる人々に華やかで優雅な印象を与えます。また、庭園内には、世界最古の動物園や、ガラス張りの温室「パルメンハウス」、ローマ遺跡風の建造物など、さまざまな見どころがあります。

庭園の見どころ

庭園の中央にある、ギリシャ神話がモチーフになっているネプチューンの噴水は迫力満点です。噴水の後ろには、プロイセン戦争の戦勝記念として建てられた、戦死者追悼の碑「グロッテリア」があります。

庭園内には、迷路の庭園や、美しいバラが咲き誇るバラ園、世界の植物をコレクションするためにテレジアが作ったガラス張りの温室などがあります。

また、バロック風の装飾を施した豪華な馬車を展示する馬車博物館や日本庭園も、見逃せないスポットです。

シェーンブルン宮殿庭園の見どころ
名称 説明
グロリエッテ 対プロイセン戦勝記念碑。丘の上にあり、庭園を一望できる展望台がある。
ネプチューンの噴水 ギリシャ神話をモチーフにした噴水。庭園の中央に位置する。
迷路庭園 1720年から続く伝統的な迷路庭園。複数の茂みによる挑戦が楽しめる。
ローマ遺跡 1778年に建てられた古代ローマ遺跡のレプリカ。
オベリスク エジプトのヒエログリフでハプスブルク王朝の物語を語る大きなオベリスク。
日本庭園 1913年に造られた日本庭園。枯山水など、日本庭園の特徴が見られる。
バラ園 美しいバラが咲き誇る庭園。
パルメンハウス ヨーロッパ最大の温室。熱帯、温帯、冷帯の植物を展示している。
動物園 世界最古の動物園。パンダなど、珍しい動物を飼育している。
馬車博物館 オーストリア皇帝の豪華な馬車を展示している。

庭園の散策

シェーンブルン宮殿の庭園は、広大で、散策するだけでも十分に楽しめます。庭園内には、ミニ鉄道が運行されているので、広大な敷地内を効率よく移動することができます。

庭園内には、カフェやレストランもあるので、休憩しながらゆっくりと散策を楽しむことができます。

まとめ

シェーンブルン宮殿の庭園は、宮殿の壮大さをさらに引き立てる、見事な景観です。フランス式庭園の様式を取り入れ、幾何学的なデザインと、自然の美しさを融合させた庭園は、訪れる人々に癒しを与えてくれます。

庭園内には、さまざまな見どころがあり、一日中散策しても飽きないほどです。動物園や温室、噴水、彫刻、迷路など、それぞれのスポットが、庭園の魅力を高めています。

3. シェーンブルン宮殿の内部の見どころ

要約

宮殿内部の見学ツアー

シェーンブルン宮殿の内部は、1441室もの部屋があり、そのうち一般公開されているのは40室ほどです。宮殿内部の見学は、インペリアルツアーとグランドツアーの2つのツアーがあります。

インペリアルツアーは、30~40分ほどの短いツアーで、ハプスブルク家代々の皇帝が各国の大使を出迎えた「謁見の間」や饗宴に用いられた「大広間」、神童モーツァルトが若干6歳で演奏した「鏡の間」、さらに(実質上)最後の皇帝フランツ・ヨーゼフ1世と皇后エリザベートが暮らしたプライベートな空間などを見学することができます。

グランドツアーは、50~60分ほどのツアーで、インペリアルツアーの22室に加え、北京から取り寄せられた漆の壁面が見事な「漆の間」や青と白で統一された「磁器の間」など18世紀の女帝マリア・テレジアの時代に設えられた格調高い部屋の数々を見学することができます。

シェーンブルン宮殿の見学ツアー
ツアー名 見学室数 所要時間 料金
インペリアルツアー 22室 30~40分 16ユーロ
グランドツアー 40室 50~60分 20ユーロ

宮殿内部の見どころ

宮殿内部の見どころは、数多くありますが、特に有名なのは、ナポレオン戦争後には、ヨーロッパ各国が集まり「ウィーン会議」が開催された「グローサーザール(大広間)」です。

「会議は踊る、されど進まず」という、有名な言葉がここで生まれました。金がふんだんに使われたロココ調の部屋は、ローズウッドの寄木やマリア・テレジアの肖像画も描かれている天井のフレスコ画、壁などの細かな細工もみどころです。

また、かのモーツアルトが6歳で演奏のために呼ばれた時に、7歳のマリー・アントワネットに求婚したとして有名な「鏡の間」も見逃せません。

東洋風の装飾が魅力の丸い中国の間では、当時この小部屋でテレジアと部下の密談が行われ、さまざまな決定がくだされたとか。ここには隠し扉があり、部下の部屋へも行き来できたようです。

宮殿内部の部屋

宮殿内部には、他にも見どころがたくさんあります。例えば、女帝テレジアの初恋の相手で夫の肖像画が飾られた漆の間は、夫が先立ち未亡人となったテレジアが、喪服を着て過ごしたとか。晩年はこの漆の間を好み、ここで過ごすことが多かったようです。

また、皇帝フランツ・ヨーゼフ1世が晩年を過ごした部屋や、最後の皇帝カール1世が退位宣言をした部屋など、歴史的な意味を持つ部屋も数多くあります。

シェーンブルン宮殿の主な部屋
部屋名 説明
グローサーザール(大広間) ウィーン会議の舞踏会会場として使用された。金がふんだんに使われたロココ調の部屋。
鏡の間 モーツァルトが6歳で演奏した部屋。ヴェルサイユ宮殿の「鏡の間」を彷彿とさせる。
中国の間 東洋風の装飾が魅力の部屋。マリア・テレジアと部下の密談が行われた場所。
漆の間 マリア・テレジアの夫の肖像画が飾られた部屋。マリア・テレジアが晩年を過ごした場所。
フランツ・ヨーゼフ1世の寝室 フランツ・ヨーゼフ1世が晩年を過ごした部屋。
カール1世の退位宣言をした部屋 最後の皇帝カール1世が退位宣言をした部屋。

まとめ

シェーンブルン宮殿の内部は、バロック様式とロココ様式が融合した、華麗な空間が広がっています。各部屋には、ハプスブルク家の歴史を感じさせる貴重な調度品や美術品が展示されています。

宮殿内部の見学は、インペリアルツアーとグランドツアーの2つのツアーがあります。どちらのツアーも、日本語のオーディオガイドがあるので、安心して見学することができます。

4. シェーンブルン宮殿の世界遺産登録について

要約

世界遺産登録の理由

シェーンブルン宮殿は、1996年にユネスコの世界遺産に登録されました。登録基準は、文化遺産 (ⅰ) (ⅳ) です。

文化遺産 (ⅰ) は、「人類の創造的才能を表現する傑作」であり、文化遺産 (ⅳ) は、「人類の歴史上重大な時代を例証する建築様式、建物群、技術の集積」であることを示しています。

シェーンブルン宮殿の世界遺産登録基準
基準 説明
(ⅰ) 人類の創造的才能を表現する傑作
(ⅳ) 人類の歴史上重大な時代を例証する建築様式、建物群、技術の集積

世界遺産としての価値

シェーンブルン宮殿は、ハプスブルク家の歴史と文化を伝える貴重な遺産です。宮殿の建築様式や内装は、当時のヨーロッパの文化水準の高さを示しており、世界遺産としての価値が高いとされています。

また、シェーンブルン宮殿は、ヨーロッパの歴史において重要な役割を果たした場所でもあります。マリア・テレジアやフランツ・ヨーゼフ1世など、多くの歴史上の人物がこの宮殿で生活し、政治を行っていました。

世界遺産登録の影響

シェーンブルン宮殿の世界遺産登録は、オーストリアにとって大きな喜びであり、観光客の増加にもつながりました。

世界遺産登録によって、シェーンブルン宮殿は、世界中の人々に知られるようになり、オーストリアの文化や歴史を伝える重要な役割を果たしています。

まとめ

シェーンブルン宮殿は、ハプスブルク家の歴史と文化を伝える貴重な遺産であり、世界遺産に登録されるにふさわしい価値を持っています。

世界遺産登録によって、シェーンブルン宮殿は、世界中の人々に知られるようになり、オーストリアの文化や歴史を伝える重要な役割を果たしています。

5. シェーンブルン宮殿の観光情報

要約

シェーンブルン宮殿へのアクセス

シェーンブルン宮殿へは、ウィーンの中心部から、地下鉄4号線に乗り、シェーンブルン駅で下車します。駅から徒歩で約5分です。

また、トラムやバスを利用することもできます。

シェーンブルン宮殿の開館時間と料金

シェーンブルン宮殿の開館時間は、季節によって異なります。

開館時間や料金については、公式ウェブサイトで確認することをおすすめします。

シェーンブルン宮殿の見学ツアー

シェーンブルン宮殿の見学は、インペリアルツアーとグランドツアーの2つのツアーがあります。

インペリアルツアーは、30~40分ほどの短いツアーで、ハプスブルク家代々の皇帝が各国の大使を出迎えた「謁見の間」や饗宴に用いられた「大広間」、神童モーツァルトが若干6歳で演奏した「鏡の間」、さらに(実質上)最後の皇帝フランツ・ヨーゼフ1世と皇后エリザベートが暮らしたプライベートな空間などを見学することができます。

グランドツアーは、50~60分ほどのツアーで、インペリアルツアーの22室に加え、北京から取り寄せられた漆の壁面が見事な「漆の間」や青と白で統一された「磁器の間」など18世紀の女帝マリア・テレジアの時代に設えられた格調高い部屋の数々を見学することができます。

まとめ

シェーンブルン宮殿は、ウィーンの主要な観光スポットの一つです。宮殿内部の見学は、インペリアルツアーとグランドツアーの2つのツアーがあります。

どちらのツアーも、日本語のオーディオガイドがあるので、安心して見学することができます。

6. シェーンブルン宮殿周辺の名所観光スポット

要約

シェーンブルン動物園

シェーンブルン宮殿の敷地内には、世界最古の動物園があります。1752年にフランツ1世によって創設された動物園で、ジャイアントパンダやコアラといった人気の動物たちに加え、アルプス地方ならではの珍しい動物が多いのが特徴です。

丘の上にあるティローラーホフ(チロルの農家屋敷)では、動物と触れ合ったり、実際の農家の様子を体験することもできます。

パルメンハウス

シェーンブルン宮殿の敷地内には、ガラス張りの温室「パルメンハウス」があります。1880年に建てられた3つのパビリオンからなるヨーロッパ最大の温室で、冷帯、温帯、熱帯・亜熱帯と温度毎に分けられており、世界中から収集された珍しい植物を鑑賞することができます。

向かいにあるヴュステンハウス(砂漠館)では、砂漠の植物が展示されています。

グロリエッテ

シェーンブルン宮殿の庭園にある小高い丘の上に建つのが「グロリエッテ」です。1775年に建てられたグロリエッテは、対プロイセン戦勝記念碑です。

屋上が展望テラス、屋内は静謐なカフェとなっています。ここからはシュテファン大聖堂からドナウ川、ウィーンの森に至るまで、上品に佇むウィーンの町を一望することができます。

まとめ

シェーンブルン宮殿周辺には、動物園や温室、記念碑など、さまざまな見どころがあります。

シェーンブルン宮殿を訪れた際には、これらのスポットも合わせて見学することをおすすめします。

参考文献

シェーンブルン宮殿 – Wikipedia

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