レドニツェ-ヴァルティツェの文化的景観とは？世界遺産についての解説

レドニツェ-ヴァルチツェの文化的景観の構成要素
項目	内容
歴史	リヒテンシュタイン家の歴史、ピクチャレスクとロマン主義の影響、リヒテンシュタイン家の没落
世界遺産登録	登録基準、登録の意義、登録後の取り組み
文化的景観	文化的景観の定義、文化的景観の重要性、文化的景観の保護
建築物	レドニツェ城、ヴァルチツェ城、その他の建築物
価値	文化的景観としての価値、芸術的価値、歴史的価値
保護活動	保護活動、今後の展望、観光客への呼びかけ

1. レドニツェ-ヴァルティツェの歴史

リヒテンシュタイン家の歴史

レドニツェ-ヴァルティツェの文化的景観は、チェコのモラヴィア地方南部に位置する、リヒテンシュタイン家によって築かれた文化的景観です。リヒテンシュタイン家は、現在のドイツ南部バイエルン州シュヴァーベンのドナウヴェルトの貴族で、13世紀頃からオーストリアのウィーンに進出してハプスブルク家に仕えました。各地の土地を購入して所領としていたリヒテンシュタイン家は、13世紀半ばにレドニツェ、14世紀にはヴァルティツェを購入し、それぞれにゴシック様式の城を建設しました。

1608年、ヴァルティツェ出身のカール１世・フォン・リヒテンシュタインが神聖ローマ皇帝マティアスから爵位を授かり、リヒテンシュタイン公としてシュレージエン（シレジア）やボヘミア、モラヴィアの所領を治めました。このとき居城としたのがヴァルティツェ城で、7kmほど北東に位置するレドニツェ城を夏の離宮としたのです。

カール１世・フォン・リヒテンシュタイン以降、一帯の美しい自然と城や教会堂といった建物を有機的に結び付けて庭園のように整備する壮大な計画が始動しました。まずはレドニツェとヴァルティツェ間に一直線の道を開通させ、さらにブルジェツラフといった周囲の町や城を結び、道の周りに木々を植えて並木道としたのです。レドニツェ城とヴァルティツェ城は16世紀にルネサンス様式で建て直され、さらに17～18世紀にバロック様式で再建されました。

他の建物も同様にオーストリアやイタリアから著名な建築家や芸術家を招集し、ルネサンス様式やバロック様式、19世紀以降は新古典主義様式（ギリシア・ローマのスタイルを復興したグリーク・リバイバル様式やローマン・リバイバル様式）や歴史主義様式（中世以降のスタイルを復興したゴシック・リバイバル様式やネオ・ルネサンス様式、ネオ・バロック様式等）で建設・再建が進められました。特にレドニツェではゴシック・リバイバル様式、ヴァルティツェではバロック様式が支配的です。

リヒテンシュタイン家の歴史
時期	出来事
13世紀半ば	レドニツェを購入
14世紀	ヴァルチツェを購入
1608年	カール１世がリヒテンシュタイン公に
17～18世紀	レドニツェ城とヴァルチツェ城を再建
19世紀以降	新古典主義様式や歴史主義様式で建築・再建
1945年	国有化

ピクチャレスクとロマン主義の影響

19世紀に大きな影響を受けた芸術のムーブメントがピクチャレスクとロマン主義です。ピクチャレスクは自然の美しさに回帰して絵画的な美を追究しようという運動で、17世紀にイタリアではじまって18世紀にイギリスで開花しました。たとえばイングランドのランドスケープ・アーキテクト（景観設計家）、ランスロット・ブラウンはブレナム宮殿（世界遺産）などで川や湖・滝・林・丘を利用あるいは建造して自然より自然な景観を生み出し、イギリス式庭園として完成させました。

幾何学的に区画を区切る整形庭園には見られない風景式庭園で、こうした運動は合理性よりも感覚や感情を重視するロマン主義と結び付きました。18～19世紀のリヒテンシュタイン公ヨハン１世・ヨーゼフはランスロット・ブラウンらを研究してピクチャレスクやロマン主義を持ち込み、イギリス式庭園を造園するのみならず、全体の風景そのものをコーディネートしました。

たとえば見晴らしのよい池の畔や高台にポイントとなる建物を建設して自然の景観をよりドラマティックに演出しました。また、森や牧草地についても木の高さや葉の色などを考慮して土地に最適な林や並木道を造営し、森の中に古代の神殿や教会堂を築いて神秘性を煽りました。

最たる例がレドニツェのザーメツカー公園（城の公園）で、ザーメツカー池（城の池）に島を造り、畔にミナレット（本来はモスクに隣接した礼拝を呼び掛けるための塔）を立てて景観を引き締めたのです。また、ディエ川（ドイツ語でターヤ川）の古い流れであるスタラ・ディエ（チェルナ・ディエ。旧ディエ／黒ディエ）を利用し、運河で新しい川を確保すると同時に自然の川を手付かずで残し、川岸にヤヌフ城（ヨハン城）を建設して味わい深い文化的景観を生み出しました。こうした土地改造は20世紀に入ってもヨハン２世らによって推し進められました。

ピクチャレスクとロマン主義の影響
ムーブメント	内容
ピクチャレスク	自然の美しさを絵画的に表現
ロマン主義	感覚や感情を重視
ヨハン１世・ヨーゼフ	イギリス式庭園を造園
ヨハン２世	土地改造を推進

リヒテンシュタイン家の没落

チェコスロバキアは第２次世界大戦でナチス＝ドイツの侵略を受け、差別的な支配を受けました。大戦の終盤、ソ連軍が進軍するとドイツ系住民の多くはドイツに退避し、大戦後はドイツ人の追放が行われて多くが姿を消しました。1945年、こうした流れの中で一帯はリヒテンシュタイン家の手を離れて国有化されました。

世界遺産の資産はレドニツェ、ヴァルティツェのみならず周辺のブルハリ、セドレツ、ブルジェツラフといった町の一部を含んでおり、南はオーストリア国境に接しています。おおよそ東西17km・南北15kmほどにもなり、一帯が地域で登録されています。

レドニツェ城は13世紀の創建とされ、15世紀にゴシック様式からルネサンス様式に建て替えられ、17世紀にバロック様式、19世紀にゴシック・リバイバル様式やアンピール様式（帝政様式。古代ローマやエジプトを模したナポレオン時代の新古典主義様式）で改築されました。

建築家ヨハン・ベルンハルト・フィッシャーによるバロック様式の乗馬学校（現・多目的センター）や、イジー・ウィンゲルミュラーによるゴシック・リバイバル様式の聖ヤコブ長老教会、鉄とガラスのモダニズム建築である全長92mの温室パーム・ハウスをはじめ、数多くの建物を有しています。城の南には整然と区画されたバロック様式の平面幾何学式庭園（フランス式庭園）であるザーメツカー庭園が広がり、城の北には自然をそのまま活かしたザーメツカー公園が展開しています。

リヒテンシュタイン家の没落
時期	出来事
第二次世界大戦	ナチス・ドイツの侵略
第二次世界大戦後	ドイツ系住民の追放
1945年	国有化

まとめ

レドニツェ-ヴァルティツェの文化的景観は、リヒテンシュタイン家の歴史と深く関わっています。彼らは、中世に城を築き、17世紀以降はバロック様式やイギリス式庭園を取り入れながら、壮大な景観を作り上げていきました。

しかし、第二次世界大戦後、リヒテンシュタイン家は所有していた土地を失い、この地域は国有化されました。現在、レドニツェ-ヴァルティツェの文化的景観は、チェコ政府によって管理され、世界遺産として保護されています。

この地域は、リヒテンシュタイン家の歴史だけでなく、ヨーロッパの芸術や文化の流れを反映した、貴重な文化的景観です。

レドニツェ-ヴァルティツェの文化的景観は、歴史と自然が調和した、美しい景観です。訪れる際には、歴史背景を理解した上で、じっくりと散策してみてください。

2. 世界遺産への登録経緯

登録基準

レドニツェ-ヴァルティツェの文化的景観は、1996年にユネスコの世界遺産に登録されました。登録基準は、以下の3つです。

(i) 人類の創造的才能の傑作である。レドニツェ-ヴァルティツェの文化的景観は、自然の景観の中で歴史的な建造物などが調和する、人類の傑出した創造的な芸術作品であるという点。

(ii) ある期間またはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの分野において、人類の価値観を表現する建築様式、技術的集成、または景観の顕著な例である。ここはバロック様式、古典主義様式、新古典主義様式などの建築物を組み合わせ、庭園は英国式のロマン主義の景観を入れたことで、東欧における景観モデルとしての役割があったということ。

(iv) 人類の歴史上重要な時代を代表する建築様式、建築物群、技術の集成、または景観の顕著な例である。レドニツェとヴァルチツェの文化的景観は、啓蒙主義とロマン派の時代を経て、一つの公爵家によって意図的に設計された文化的景観の優れた例であるという点。

登録基準
基準	内容
(i)	人類の創造的才能の傑作
(ii)	人類の価値観を表現する建築様式
(iv)	人類の歴史上重要な時代を代表する建築様式

登録の意義

レドニツェ-ヴァルティツェの文化的景観は、リヒテンシュタイン家の歴史と、ヨーロッパの芸術や文化の流れを反映した、貴重な文化的景観です。

この地域は、バロック様式、古典主義様式、新古典主義様式などの建築様式が融合し、イギリス式庭園を取り入れた、壮大な景観を作り上げています。

世界遺産に登録されたことで、この地域の文化的価値が国際的に認められ、保護と保存が促進されました。

レドニツェ-ヴァルティツェの文化的景観は、ヨーロッパの歴史と文化を学ぶ上で、重要な場所です。

登録後の取り組み

レドニツェ-ヴァルティツェの文化的景観は、世界遺産に登録された後も、保護と保存の取り組みが続けられています。

チェコ政府は、この地域の管理と保護のために、様々な対策を講じています。例えば、観光客の増加による環境への影響を抑制するため、観光客の動線を管理したり、環境保護のための教育活動を行ったりしています。

また、歴史的な建造物の修復や保存にも力を入れています。

レドニツェ-ヴァルティツェの文化的景観は、世界遺産として、未来の世代に引き継がれていくことが期待されています。

登録後の取り組み
項目	内容
観光客の増加	動線の管理、環境保護教育
建造物の修復	歴史的な建造物の修復や保存

まとめ

レドニツェ-ヴァルティツェの文化的景観は、その歴史的価値と文化的価値が認められ、1996年に世界遺産に登録されました。

登録後も、チェコ政府は、この地域の保護と保存に力を入れており、世界遺産としての価値を高めています。

レドニツェ-ヴァルティツェの文化的景観は、ヨーロッパの歴史と文化を学ぶ上で、重要な場所であり、今後も世界遺産として大切に保護されていくでしょう。

訪れる際には、世界遺産としての価値を理解した上で、歴史的な建造物や自然をじっくりと鑑賞してみてください。

3. 文化的景観とは何か？

文化的景観の定義

文化的景観とは、ユネスコの世界遺産条約で定義されているように、自然と人間の相互作用によって生まれた、文化的・歴史的な価値を持つ景観のことです。

文化的景観は、単に自然の風景だけでなく、そこに暮らす人々の生活や文化、歴史、伝統などが複雑に絡み合って形成されています。

例えば、田園風景、山岳地帯、都市、遺跡、宗教施設など、様々なものが文化的景観に含まれます。

文化的景観は、人類の文化や歴史を理解する上で、重要な役割を果たしています。

文化的景観の重要性

文化的景観は、人類の文化や歴史を理解する上で、重要な役割を果たしています。

文化的景観は、人々の生活や文化、歴史、伝統などを伝える貴重な資料です。

また、文化的景観は、人々の生活の質を高め、地域社会の活性化に貢献する役割も担っています。

文化的景観は、自然と人間の調和のとれた美しい景観であり、人々に癒しや感動を与える役割も果たしています。

文化的景観の保護

文化的景観は、自然と人間の相互作用によって生まれた、文化的・歴史的な価値を持つ景観であるため、保護が重要です。

文化的景観の保護には、様々な取り組みが必要です。例えば、開発による景観の破壊を防ぐこと、伝統的な文化や生活様式を継承すること、観光客による環境への影響を抑制することなどです。

文化的景観の保護は、私たち一人ひとりの意識と行動によって成り立ちます。

文化的景観を大切に守り、次世代に引き継いでいくことが重要です。

まとめ

文化的景観は、自然と人間の相互作用によって生まれた、文化的・歴史的な価値を持つ景観です。

文化的景観は、人類の文化や歴史を理解する上で、重要な役割を果たしており、保護が重要です。

文化的景観の保護には、開発による景観の破壊を防ぐこと、伝統的な文化や生活様式を継承すること、観光客による環境への影響を抑制することなど、様々な取り組みが必要です。

私たち一人ひとりが、文化的景観を大切に守り、次世代に引き継いでいくことが重要です。

4. レドニツェ-ヴァルティツェの建築物

レドニツェ城

レドニツェ城は、13世紀に創建され、15世紀にゴシック様式からルネサンス様式に建て替えられました。その後、17世紀にバロック様式、19世紀にゴシック・リバイバル様式やアンピール様式で改築され、現在の姿となりました。

レドニツェ城は、バロック様式の優雅な外観を持つ城です。城内には、豪華な装飾が施された部屋や、美術館、図書館などがあります。

城の南には、整然と区画されたバロック様式の平面幾何学式庭園（フランス式庭園）であるザーメツカー庭園が広がり、城の北には自然をそのまま活かしたザーメツカー公園が展開しています。

レドニツェ城は、リヒテンシュタイン家の夏の離宮として使用されていました。

レドニツェ城
様式	特徴
ゴシック様式	13世紀に創建
ルネサンス様式	15世紀に建て替え
バロック様式	17世紀に改築
ゴシック・リバイバル様式	19世紀に改築
アンピール様式	19世紀に改築

ヴァルチツェ城

ヴァルチツェ城は、12世紀に建てられた古城を基礎としています。

リヒテンシュタイン家は、ヴァルチツェ城を居城とし、レドニツェ城を夏の離宮として使用しました。

ヴァルチツェ城は、バロック様式の城で、城内には、豪華な装飾が施された部屋や、美術館、図書館などがあります。

ヴァルチツェ城の周辺には、バロック様式の庭園や、教会、噴水などがあります。

ヴァルチツェ城
様式	特徴
バロック様式	18世紀前半に改築
用途	リヒテンシュタイン家の居城

その他の建築物

レドニツェ-ヴァルティツェの文化的景観には、レドニツェ城とヴァルチツェ城以外にも、多くの建築物が存在します。

例えば、ザーメツカー公園内には、ミナレット、ヤヌフ城、狩猟館、聖フベルトゥス礼拝堂などがあります。

また、レドニツェ池群の周辺には、ハラニチニ城、トリ・グラツィエ、リブニーキー城、アポロ神殿などがあります。

これらの建築物は、様々な建築様式で建てられており、リヒテンシュタイン家の歴史と、ヨーロッパの芸術や文化の流れを反映しています。

その他の建築物
場所	建築物
ザーメツカー公園	ミナレット、ヤヌフ城、狩猟館、聖フベルトゥス礼拝堂
レドニツェ池群周辺	ハラニチニ城、トリ・グラツィエ、リブニーキー城、アポロ神殿