項目 | 説明 |
---|---|
定義 | 商業用不動産ローンを担保とした証券化商品 |
対象となる不動産 | オフィスビル、ショッピングモール、ホテル、アパートなど |
仕組み | 複数の商業用不動産ローンをプール化し、そのプールを担保として証券を発行 |
利点 | 不動産市場への投資を容易にする、金融機関の資金調達手段となる |
リスク | 信用リスク、金利リスク、流動性リスク |
市場動向 | 不動産市場の動向や金利動向に大きく左右される |
投資の考え方 | 高い利回りが期待できる一方、リスクも伴うため、市場の動向やリスク要因を十分に理解し、適切なリスク管理を行う必要がある |
1. CMBSとは何か
CMBSの概要
CMBSとは、Commercial Mortgage Backed Securitiesの略で、商業用不動産ローンを担保とした証券化商品のことです。オフィスビル、ショッピングモール、ホテル、アパートなどの商業用不動産に関連するローンをまとめて証券化することで、投資家は商業不動産市場への投資を容易に行えるようになります。
CMBSは、多数の商業用不動産ローンを一つのプールに集め、そのプールからの返済収益を基に証券を発行します。これにより、投資家は商業不動産市場への投資を容易に行えるようになります。一方、ローンを提供した金融機関は、ローンを証券化することで資金を調達することができます。
CMBSは、不動産市場の変動に影響を受けやすく、その複雑な構造からリスクも伴うため、投資する際には十分な理解が必要です。
特徴 | 説明 |
---|---|
流動性 | 従来の不動産投資に比べて流動性が高い |
リスク | 信用リスク、金利リスク、流動性リスクなどがある |
投資対象 | オフィスビル、ショッピングモール、ホテル、アパートなど |
発行主体 | 金融機関、証券会社など |
投資家 | 機関投資家、個人投資家など |
CMBSの誕生
CMBSは、1983年にオリンピア&ヨーク社がニューヨークのオフィスを担保に債券を発行したのが最初と言われています。日本では、1999年にモルガン・スタンレーが大京からマンション1
種類 | 説明 |
---|---|
コンデュイット型 | 複数の借り手やローンを裏付けとしたもの |
シングルアセット・シングルボロワー(SASB)型 | 単独不動産に対する1本のローン、または複数不動産を共同担保とした1本のローンを裏付けとしたもの |
CMBSの仕組み
CMBSの仕組みは、まず、オリジネーターと呼ばれる金融機関が商業用不動産ローンを組成します。その後、アレンジャーと呼ばれる証券会社などが、これらのローンをプール化し、SPC(特別目的会社)と呼ばれるペーパーカンパニーに売却します。
SPCは、これらのローンを担保としてCMBSを発行し、投資家に販売します。CMBSの投資家は、SPCから返済される元利金を受け取ることになります。
CMBSの発行には、サービサーと呼ばれる会社が重要な役割を果たします。サービサーは、ローン債権の回収管理、延滞債権の回収管理、オリジネーターが倒産した場合の資金回収などを行います。
まとめ
CMBSは、商業用不動産ローンを証券化することで、投資家にとって不動産市場への投資を容易にする一方、金融機関にとっては資金調達手段となります。しかし、CMBSは不動産市場の変動に影響を受けやすく、複雑な構造からリスクも伴うため、投資する際には十分な理解が必要です。
2. CMBSの仕組み
CMBSの構造
CMBSは、複数の商業用不動産ローンを束ねて、モーゲージプールを組成し、このモーゲージプールを裏付けに発行される証券のことです。CMBSは不動産ローン市場に流動性を提供し、投資家に多様なリスク・リターンプロファイルを選択できる機会を与えます。
CMBSは、複数の借り手やローンを裏付けとしたコンデュイット型だけでなく、単独不動産に対する1本のローン、または複数不動産を共同担保として組成された1本のローンを裏付けとしたものがあり、いずれも借入人は単独である。これをシングルアセット・シングルボロワー(SASB)型のCMBSと呼び、コンデュイット型同様に信用リスクに応じてトランシェ分けされて格付けが付与される。
要素 | 説明 |
---|---|
オリジネーター | 商業用不動産ローンを組成する金融機関 |
アレンジャー | ローンをプール化し証券化する証券会社など |
SPC | ローンを保有するペーパーカンパニー |
サービサー | ローン債権の回収管理などを行う会社 |
トランシェ
CMBSは、リスク、償還期間、利回りの違いに応じて、いくつかのトランシェに分割されます。これによって投資家は、個々のニーズにあったリスク/リターン特性の判断が可能となります。
リスク分散の観点で言うと、各トランシェは、ウォーターフォール構造の中で支払い優先度の違いによって特徴づけられています。元金支払いが投資家に流れる過程で、まず最も優先度の高いシニアトランシェの投資家に対する支払いが行われます。これが完全に終了してはじめて、次のトランシェへの元金支払いに移るのです。
この構造は、「最初に支払われるべき」上位トランシェの投資家を損失から保護する役割を果たしており、債務不履行発生時にはまず下位トランシェに損失が割り当てられます。下位トランシェで損失が一掃されない限り、その上のトランシェに損失が及ぶことはありません。
トランシェ | 説明 |
---|---|
シニアトランシェ | 最も優先度の高いトランシェ。債務不履行発生時には最後に損失を被る |
ジュニアトランシェ | 最も優先度の低いトランシェ。債務不履行発生時には最初に損失を被る |
メザニン | シニアとジュニアの中間に位置するトランシェ |
信用補完
CMBSは、複数の借り手やローンを裏付けとしたコンデュイット型だけでなく、単独不動産に対する1本のローン、または複数不動産を共同担保として組成された1本のローンを裏付けとしたものがあり、いずれも借入人は単独である。これをシングルアセット・シングルボロワー(SASB)型のCMBSと呼び、コンデュイット型同様に信用リスクに応じてトランシェ分けされて格付けが付与される。
信用補完とは、CMBSの投資家を債務不履行のリスクから保護するための仕組みです。CMBSは、複数の借り手やローンを裏付けとしたコンデュイット型だけでなく、単独不動産に対する1本のローン、または複数不動産を共同担保として組成された1本のローンを裏付けとしたものがあり、いずれも借入人は単独である。これをシングルアセット・シングルボロワー(SASB)型のCMBSと呼び、コンデュイット型同様に信用リスクに応じてトランシェ分けされて格付けが付与される。
仕組み | 説明 |
---|---|
劣後性 | 上位トランシェが損失を被る前に、下位トランシェが損失を吸収する |
担保価値 | 不動産価値が下落した場合、その損失を吸収する |
保険 | 債務不履行のリスクを保険でカバーする |
まとめ
CMBSは、複数の商業用不動産ローンをプール化し、そのプールを担保として証券を発行する仕組みです。CMBSは、リスク、償還期間、利回りの違いに応じて、いくつかのトランシェに分割され、各トランシェには信用補完が設定されています。
3. CMBSの利点
流動性の向上
CMBSは、商業用不動産ローンを証券化することで、不動産市場の流動性を向上させます。従来、商業用不動産は、その固定性から売買が難しく、リスクの分散が難しいという課題がありました。
しかし、CMBSの存在によって、その課題が大きく軽減されます。具体的には、商業不動産の所有者はCMBSを発行することで、その資産を現金化することが可能となります。つまり、将来生じる賃料収入を事前に証券化し、それを売却することで、手元に現金を得ることができるのです。
メリット | 説明 |
---|---|
不動産所有者 | 資産を現金化し、新たな投資に資金を回せる |
投資家 | 小口で不動産投資が可能になり、リスク分散がしやすくなる |
投資機会の拡大
CMBSは、投資家にとって、新たな投資機会を提供します。従来、不動産投資は、大規模な資金が必要で、流動性も低いため、個人投資家にとってハードルが高いものでした。
しかし、CMBSは、小口で投資できるため、個人投資家でも不動産市場への投資を容易に行うことができます。また、CMBSは、様々なリスク・リターンプロファイルのトランシェが発行されるため、投資家は自分の投資目標やリスク許容度に合わせて投資を選択することができます。
メリット | 説明 |
---|---|
投資家 | 様々なリスク・リターンプロファイルのトランシェから選択できる |
金融機関 | 新たな融資を行うための資金を確保できる |
資金調達の促進
CMBSは、金融機関にとって、資金調達手段となります。従来、金融機関は、商業用不動産ローンを組成すると、そのローンを自社のバランスシートに載せる必要がありました。
しかし、CMBSを発行することで、金融機関は、ローンを証券化し、バランスシートから外すことができます。これにより、金融機関は、新たな融資を行うための資金を確保することができます。
まとめ
CMBSは、不動産市場の流動性を向上させ、投資家にとって新たな投資機会を提供し、金融機関にとって資金調達手段となります。
4. CMBSのリスク要因
信用リスク
CMBSは、商業用不動産ローンを担保としているため、借り手がローンを返済できなくなるリスクがあります。これは、信用リスクと呼ばれます。
信用リスクは、不動産市場の動向や経済状況によって大きく影響されます。例えば、景気後退時には、企業の業績が悪化し、賃料収入が減少する可能性があります。その結果、借り手がローンを返済できなくなり、CMBSの価値が下がる可能性があります。
要因 | 説明 |
---|---|
経済状況 | 景気後退時には、企業の業績が悪化し、賃料収入が減少する可能性がある |
不動産市場の動向 | 不動産価格が下落すると、借り手の返済能力が低下する可能性がある |
借り手の経営状況 | 借り手の経営が悪化すると、ローンを返済できなくなる可能性がある |
金利リスク
CMBSは、金利変動の影響を受けやすいというリスクがあります。これは、金利リスクと呼ばれます。
金利が上昇すると、CMBSの価格が下落する可能性があります。これは、金利上昇によって、CMBSの利回りが低下するためです。また、金利上昇によって、借り手の借り換えコストが増加し、ローンを返済できなくなる可能性もあります。
要因 | 説明 |
---|---|
金利上昇 | 金利上昇によって、CMBSの利回りが低下し、価格が下落する可能性がある |
借り換えコスト | 金利上昇によって、借り手の借り換えコストが増加し、ローンを返済できなくなる可能性がある |
流動性リスク
CMBSは、流動性が低いというリスクがあります。これは、流動性リスクと呼ばれます。
CMBSは、株式や債券と比べて、売買される量が少なく、売却したいときにすぐに売却できない可能性があります。特に、格付けが低いCMBSや、発行規模が小さいCMBSは、流動性が低くなる傾向があります。
要因 | 説明 |
---|---|
売買量 | 株式や債券と比べて、売買される量が少なく、売却したいときにすぐに売却できない可能性がある |
格付け | 格付けが低いCMBSは、流動性が低くなる傾向がある |
発行規模 | 発行規模が小さいCMBSは、流動性が低くなる傾向がある |
まとめ
CMBSは、信用リスク、金利リスク、流動性リスクなど、様々なリスクを伴います。投資する際には、これらのリスクを十分に理解し、リスク管理を行う必要があります。
5. CMBS市場の動向
CMBS市場の現状
CMBS市場は、商業用不動産市場の健全性に大きく依存しており、景気循環の影響を受けやすいという特徴があります。景気後退期にはローンのデフォルト率が上昇し、CMBS市場に影響を及ぼす可能性があります。
一方で景気回復期には市場が活性化し、新規のCMBS発行が増加する傾向があります。
時期 | 状況 |
---|---|
景気後退期 | ローンのデフォルト率が上昇し、市場は低迷する |
景気回復期 | 市場が活性化し、新規のCMBS発行が増加する |
コロナ禍の影響
コロナ禍は、CMBS市場に大きな影響を与えました。コロナ禍により、オフィスやショッピング・センターなどの商業用不動産の需要が減少し、空室率や賃料が低下しました。
これにより、不動産所有者の収入が減少し、CMBSに担保されたローンの返済能力が低下しました。また、金利上昇により、CMBSの価格が下落し、発行市場が低迷しました。
影響 | 説明 |
---|---|
不動産需要の減少 | オフィスやショッピング・センターなどの需要が減少し、空室率や賃料が低下 |
金利上昇 | CMBSの価格が下落し、発行市場が低迷 |
借り換えリスク | 不動産所有者がローン満期時に新たな資金調達ができないリスクが高まる |
今後の展望
CMBS市場は、今後、不動産市場の動向や金利動向によって大きく左右されるでしょう。不動産市場が回復すれば、CMBS市場も活性化する可能性があります。
しかし、金利が上昇し続けると、CMBSの価格が下落し、発行市場が低迷する可能性があります。
状況 | 可能性 |
---|---|
不動産市場の回復 | CMBS市場も活性化する |
金利上昇の継続 | CMBSの価格が下落し、発行市場が低迷する |
まとめ
CMBS市場は、不動産市場の動向や金利動向によって大きく左右されます。コロナ禍の影響で、CMBS市場は低迷していますが、今後の市場動向は不透明です。
6. CMBS投資の考え方
CMBS投資の魅力
CMBS投資の魅力は、比較的高い利回りが見込めることです。また、不動産市場や金利の変動に対するヘッジ効果を期待できる点も魅力の一つと言えます。
CMBSは、不動産市場に連動しないため、ポートフォリオのダイバーシフィケーションにも役立ちます。
魅力 | 説明 |
---|---|
高い利回り | 比較的高い利回りが期待できる |
ヘッジ効果 | 不動産市場や金利の変動に対するヘッジ効果を期待できる |
ダイバーシフィケーション | 不動産市場に連動しないため、ポートフォリオのダイバーシフィケーションに役立つ |
CMBS投資のリスク
CMBS投資には、信用リスク、金利リスク、流動性リスクなど、様々なリスクが伴います。
信用リスクは、借り手がローンを返済できなくなるリスクです。金利リスクは、金利変動によってCMBSの価格が下落するリスクです。流動性リスクは、CMBSを売却したいときにすぐに売却できないリスクです。
リスク | 説明 |
---|---|
信用リスク | 借り手がローンを返済できなくなるリスク |
金利リスク | 金利変動によってCMBSの価格が下落するリスク |
流動性リスク | CMBSを売却したいときにすぐに売却できないリスク |
CMBS投資の注意点
CMBS投資を行う際には、市場の動向やリスク要因を十分に理解し、適切なリスク管理を行う必要があります。
また、投資対象のCMBSについて、発行体、担保不動産、格付け、償還期間などをよく調べて、自分の投資目標やリスク許容度に合ったCMBSを選ぶことが重要です。
注意点 | 説明 |
---|---|
市場の動向 | 市場の動向を常に把握し、リスクを評価する |
リスク要因 | 信用リスク、金利リスク、流動性リスクなどを理解する |
リスク管理 | 適切なリスク管理を行う |
投資対象 | 発行体、担保不動産、格付け、償還期間などをよく調べる |
投資目標 | 自分の投資目標やリスク許容度に合わせてCMBSを選ぶ |
まとめ
CMBS投資は、高い利回りが期待できる一方、リスクも伴います。投資する際には、市場の動向やリスク要因を十分に理解し、適切なリスク管理を行う必要があります。
参考文献
・商業不動産担保証券(CMBS)とは|金融業務用語集|iFinance
・CMBSとは?債権・金利の分野で注目を集める投資手法 | sasa-dango
・Cmbsの仕組みとポイントを分かりやすく説明 – ファイナンシャルスター
・商業用不動産担保証券(Cmbs)とは何か? | ゴールドオンライン
・Cmbs(商業用不動産担保証券)とは?その魅力とその影響力を解説 – アルファインド
・Cmbs(しーえむびーえす) | 証券用語集 | 東海東京証券株式会社
・032716商業用不動産担保証券(CMBS) – Lord Abbett
・米商業不動産の苦境、最高格付けでもCMBSに損失-金融危機後で初 – Bloomberg
・米国商業用不動産市場の見通し:Cmbsでは高いクオリティの投資機会を追求 | アライアンス・バーンスタイン株式会社