項目 | 内容 |
---|---|
定義 | 社債やローン債権などの債務を担保資産として発行される証券 |
種類 | CBO、CLO、RMBS、ABSB、CCABSなど |
利点 | 資金調達の多様化、リスクの分散、流動性の向上 |
リスク | 金利リスク、信用リスク、流動性リスク |
取引市場 | OTC市場が中心、機関投資家中心 |
1. 債務担保証券とは
債務担保証券の定義
債務担保証券(Collateralized Debt Obligation、CDO)とは、社債やローン債権などの債務を一つに束ね、これを担保資産として発行される証券のことです。証券化商品の一つであり、資産担保証券(ABS: asset backed securities)の一種に分類されます。債務担保証券は、担保とする資産の組み合わせによって、シニア債(安全性は高いが、利回りは低い)、メザニン債(シニア債とジュニア債の中間ぐらい)、劣後債(安全性は低いが、利回りは高い)といった優先劣後構造を持つ商品を自由に組成することができます。
債務担保証券は、1980年代にアメリカで初めて発行され、その後、日本やヨーロッパでも市場が拡大しました。しかし、2007年にアメリカで始まったサブプライムローン問題により、債務担保証券に多くのサブプライムローンが担保として含まれていたため、高格付けの債務担保証券が相次いで債務不履行(デフォルト)に陥り、リーマン・ショックを皮切りとした世界的金融危機の一因となりました。
2009年以降は、発行は低調であったが、2012年ごろからふたたび、債務担保証券を発行する動きが出始めている。
分類 | 内容 |
---|---|
シニア債 | 安全性が高く、利回りが低い |
メザニン債 | シニア債とジュニア債の中間 |
ジュニア債 | 安全性は低いが、利回りが高い |
債務担保証券の例
債務担保証券の担保となる資産には、住宅や自動車などの各種ローン、社債、ソブリン債(中央政府が発行または保証する債券)、不動産投資信託(REIT)、クレジット・デリバティブなどがあります。
担保とする資産がローン債権の場合にはローン担保証券(CLO)、社債の場合には社債担保証券(CBO)と呼ばれます。
例えば、住宅ローンを担保とした資産担保証券の場合、住宅ローンを組んだ人が毎月返済するお金の一部が、資産担保証券を購入した投資家に分配されます。つまり、資産担保証券を購入することは、その裏付けとなっている資産が生み出す将来のキャッシュフローに投資していることになります。
種類 | 例 |
---|---|
ローン | 住宅ローン、自動車ローン |
社債 | 企業が発行する社債 |
ソブリン債 | 政府が発行する債券 |
REIT | 不動産投資信託 |
クレジット・デリバティブ | 信用リスクをヘッジする金融商品 |
債務担保証券の仕組み
債務担保証券は、複数の公社債、または貸付債権 (ローン) などの資産を保有するオリジネーター (原資産所有者) が、それらをSPVに譲渡し、それらの資産を裏付けとして発行した社債の売出、信託受益権の譲渡などを行うことで、投資家から資金調達をすることが可能になります。
また、それら資産のキャッシュフローのみを原資として、投資家への利払い、元本償還に充てるといったことが可能になるため、投資家への元利払いが当該資産より不能になった場合でも一般的にはオリジネーターの他の資産には影響を及ぼさない (ノンリコース)。
逆に言うと、当該SPVはオリジネーターからバンクラプシーリモート (倒産隔離) されているという事であり、オリジネーターのデフォルトリスクが直接的にも間接的にもSPVに対して影響を与えないようになっていると言うことである。
まとめ
債務担保証券は、様々な債務を担保として発行される証券化商品であり、投資家にとって多様なリスクとリターンの商品から選択し投資する機会を提供します。
しかし、サブプライムローン問題のように、債務者の信用力が低い資産を裏付けとした債務担保証券は、大きなリスクを孕んでいます。
投資家は、債務担保証券のリスクを正しく理解し、自身の投資目的に合った商品を選択する必要があります。
2. 債務担保証券の仕組み
債務担保証券の発行プロセス
債務担保証券の発行は、特定目的会社(SPC)という仕組みを通じて行われます。まず、企業は保有する資産をSPCに売却します。SPCは、その資産を担保に証券を発行し、投資家に販売します。この売却代金が企業の資金調達となります。
SPCは、特定の目的のために設立された会社であり、その資産はSPCの財産となります。そのため、企業が倒産した場合でも、SPCの資産は保護され、投資家は債務担保証券の利息や元本を受け取ることができます。
債務担保証券の発行には、アレンジャーと呼ばれる証券化の推進者、サーピサーと呼ばれる資産の管理・元利金回収業者、格付機関と呼ばれる証券の信用力を評価する機関などが関与します。
アレンジャーは、証券化のスキームを設計し、各専門家や金融仲介者の間を取り持つ役割を担います。サーピサーは、債務担保証券の裏付けとなる資産の管理を行い、元利金の回収を行います。格付機関は、債務担保証券の信用力を評価し、格付けを付与します。
主体 | 役割 |
---|---|
オリジネーター | 債権やローンなどの資産を保有する企業 |
SPC | 特定目的会社、資産を担保に証券を発行 |
アレンジャー | 証券化のスキーム設計、専門家との調整 |
サーピサー | 資産の管理、元利金の回収 |
格付機関 | 証券の信用力評価、格付け付与 |
債務担保証券の構造
債務担保証券は、証券化商品として、優先劣後構造を持っていることを特徴とする。CDO全体から、シニア債 (受益権)、メザニン債 (受益権)、劣後債 (受益権) と言った形でトランシェ (tranche) 毎に分かれた債券、受益権に分割し、売り出されるのが一般的である。
優先劣後構造は、CDOを構成するアセットにデフォルトやクレジットイベント等が発生した際に元本が優先的に確保される順位を設定しているものであり、シニアから順番に優先的に元本が確保される。
つまり劣後部分についてはかなりのリスク断崖リスクがあるため、利回りも高い。
シニア部分やメザニン部分には高格付けが付与されることが一般的であり、機関投資家の投資対象となっている。
トランシェ | 特徴 |
---|---|
シニア債 | 優先的に元本が確保される、利回りは低い |
メザニン債 | シニア債と劣後債の中間、リスクとリターンの中間 |
ジュニア債 | リスクが高く、利回りが高い |
債務担保証券の償還
債務担保証券は、株式などとは異なり、公社債や金銭債権などのキャッシュフローに期限のあるアセットを原資としているため、発行する債券にも当然償還期限を設ける。
償還には以下のような形態と方法がある。
まとめ
債務担保証券は、特定目的会社(SPC)という仕組みを通じて発行され、アレンジャー、サーピサー、格付機関などの専門家が関与します。
債務担保証券は、優先劣後構造を持つ証券化商品であり、投資家は自身のリスク許容度に応じてトランシェを選び、それによって得られるリターンを期待します。
債務担保証券は、償還期限が設定されており、償還方法は発行時に決められています。
3. 債務担保証券の利点
資金調達の多様化
債務担保証券は、企業が資金調達を行うための重要な手段の一つであり、投資家にとっては、多様なリスクとリターンの商品から選択し投資する機会を提供します。
企業は、債務担保証券を発行することで、債権の返済期限前の資金回収が可能となり、投資家は利息収入を得ることができます。
債務担保証券は、企業が保有する資産を証券化することで、資金調達を行うための重要な手段の一つです。
リスクの分散
債務担保証券は、投資家にとって、分散投資によるリスク軽減効果が期待できます。株式や債券は、景気や金利の影響を大きく受けますが、債務担保証券は、その裏付けとなる資産の状況によって価格が決まります。
そのため、株式や債券とは異なる値動きをする傾向があり、ポートフォリオに組み入れることで、特定の資産への集中によるリスクを分散することができます。
債務担保証券は、一般的に債券よりも高い利回りが期待できる点も魅力です。
流動性の向上
債務担保証券は、資産の流動性を高めるという役割も果たします。
元々流動性が低いとされる債券やローンをパッケージ化することで、これらを市場で取引可能な資産に変え、金融機関が新たな貸し出しを行い、利益を追求する機会を増やすことができます。
まとめ
債務担保証券は、企業にとって資金調達の多様化、投資家にとってリスクの分散と高い利回りの獲得、そして市場全体にとって流動性の向上という利点をもたらします。
しかし、債務担保証券は複雑な金融商品であり、そのリスクを理解した上で投資することが重要です。
4. 債務担保証券の種類
CBO(Collateralized Bond Obligation)
CBO(Collateralized Bond Obligation)は、債券を裏付け資産とする債務担保証券です。
債券は、一般的に返済期間が長く、金利も固定されているため、CBOは比較的安定した収益が見込めます。
しかし、景気後退などで債券の発行体が債務不履行に陥ると、CBOの価値も下落するリスクがあります。
CLO(Collateralized Loan Obligation)
CLO(Collateralized Loan Obligation)は、企業ローンを裏付け資産とする債務担保証券です。
企業ローンは、債券と比較して返済期間が短く、金利も高めに設定されているため、CLOはCBOよりも高い利回りが期待できます。
しかし、企業の業績が悪化すると、ローンが焦げ付きやすくなり、CLOの価値も下落するリスクがあります。
その他
債務担保証券は、CBOやCLO以外にも、様々な種類の債務担保証券が発行されています。
例えば、住宅ローンを担保とした住宅ローン担保証券(RMBS)、自動車ローンを担保とした自動車ローン担保証券(ABSB)、クレジットカード債権を担保としたクレジットカード債権担保証券(CCABS)などがあります。
これらの債務担保証券は、それぞれ裏付けとなる資産の種類やリスクによって、特徴が異なります。
まとめ
債務担保証券は、裏付けとなる資産の種類によって、CBO、CLO、RMBS、ABSB、CCABSなど、様々な種類に分類されます。
投資家は、自身の投資目的に合った債務担保証券を選択する必要があります。
5. 債務担保証券のリスク
金利リスク
金利リスクは、金利が上昇すると、債務担保証券の価値が下落する可能性があるリスクです。
これは、市場金利が上昇すると、新たに発行される債券の利回りが高くなるため、相対的に利回りの低い既存の債務担保証券の魅力が低下するためです。
金利リスクは、債務担保証券の価格に大きな影響を与える可能性があります。
信用リスク
信用リスクは、裏付けとなる資産の債務者が債務不履行を起こすと、債務担保証券の元本や利息の支払いが滞ってしまうリスクです。
例えば、住宅ローンを裏付けとした債務担保証券の場合、住宅価格の下落や景気後退の影響で、ローン債務者が返済不能に陥る可能性があります。
信用リスクは、債務担保証券の価値に大きな影響を与える可能性があります。
流動性リスク
流動性リスクは、債務担保証券は株式や債券と比較して市場規模が小さく、売却したい時に買い手が見つかりにくいというリスクです。
そのため、投資家がすぐに現金化したい場合でも、希望する価格で売却できなかったり、売却までに時間がかかったりする可能性があります。
流動性リスクは、債務担保証券の価格に大きな影響を与える可能性があります。
まとめ
債務担保証券は、金利リスク、信用リスク、流動性リスクなどのリスクが存在します。
投資家は、債務担保証券のリスクを正しく理解し、自身の投資目的に合った商品を選択する必要があります。
リスクとリターンのバランスを十分に理解した上で投資することが重要です。
6. 債務担保証券の取引市場
債務担保証券の取引市場の現状
債務担保証券は、主に機関投資家によって取引されています。
債務担保証券の取引市場は、OTC市場と呼ばれる店頭取引市場が中心です。
OTC市場では、証券会社などの仲介業者を通じて、投資家同士が直接取引を行います。
債務担保証券の取引市場の課題
債務担保証券の取引市場は、情報開示の不足や、投資家保護の不十分さなどの課題も存在します。
特に、私募発行やユーロ発行の占率が高い状況では、情報開示の不足が問題視されています。
また、基準気配の不足や時価評価の困難さも、市場の発展を阻害する要因となっています。
債務担保証券の取引市場の将来展望
日本の債務担保証券市場は、金融機関のバランスシートの健全化や公的金融改革などの影響を受けて、今後も成長を続けると予想されます。
特に、銀行の不良債権処理や公共セクターの資金調達において、債務担保証券が重要な役割を果たすと考えられます。
また、金融技術の進歩や投資家のニーズの変化によって、新たな債務担保証券商品が開発される可能性もあります。
まとめ
債務担保証券の取引市場は、機関投資家中心のOTC市場が中心であり、情報開示の不足や、投資家保護の不十分さなどの課題を抱えています。
しかし、金融機関のバランスシートの健全化や公的金融改革などの影響を受けて、今後も成長を続けると予想されます。
市場の発展には、情報開示の充実や時価評価の制度整備など、市場インフラの整備が不可欠です。
参考文献
・債務担保証券(CDO)とは|金融業務用語集|iFinance
・わかりやすい用語集 解説:債務担保証券(さいむたんぽしょう …
・Cdo(担保付き債務証券)とは?難解な金融商品の解体新書 …
・Cdo(コラテライズド・デット・オブリゲーション) | 投資信託 …
・債務担保証券 (サイムタンポショウケン)とは? 意味や使い方 …
・債務担保証券 – 概要 – わかりやすく解説 Weblio辞書
・資産担保証券とは?経済用語について説明 | sasa-dango
・Clo=ローン担保証券ってなに?仕組みやリスクについて解説 …
・債務担保証券とは?株式用語解説 – お客様サポート – Dmm 株
・Mbsの意味を3つのポイントで解説! 若手のうちに知っておきたい …