時価主義会計とは?経済用語について説明

時価主義会計の概要
項目	内容
定義	資産・負債を市場価格で評価する会計手法
原則	市場参加者間の秩序ある取引を想定した出口価格で評価
適用方法	マーケット・アプローチ、インカム・アプローチ、コスト・アプローチ
利点	企業の財務状況を正確に反映、投資家への情報提供
欠点	利益の変動が大きい、時価算定が困難、利益操作の温床になる可能性
国際基準	IFRSでは積極的に採用され、適用範囲が広い
国内基準	一部の資産にのみ適用され、IFRSに比べて適用範囲が狭い
将来展望	国際基準への整合性、時価算定基準の活用、課題克服が重要

1. 時価主義会計の定義とは
2. 時価主義会計の原則とは
3. 時価主義会計の適用方法
4. 時価主義会計の利点と欠点
5. 時価主義会計の国際基準と国内基準の比較
6. 時価主義会計の将来展望

1. 時価主義会計の定義とは

時価主義会計とは何か？

時価主義会計とは、企業が保有する資産や負債を、取得原価ではなく、決算日における市場価格で評価し、財務諸表に反映させる会計手法です。これは、企業が保有する金融商品の正確な価値を把握し、投資家や債権者に正確な情報を提供することを目的としています。

時価主義会計は、取得原価主義会計とは対照的な考え方です。取得原価主義会計では、資産は取得時に支払った金額で評価され、その後は減価償却などによって評価額が調整されます。しかし、時価主義会計では、市場価格の変動を反映して、資産の評価額が常に変化します。

時価主義会計は、近年、国際的な会計基準の導入や、金融商品の複雑化に伴い、注目を集めています。特に、金融商品を保有する企業にとって、時価主義会計は、企業の財務状況をより正確に把握するために重要な手法となっています。

ただし、時価主義会計は、すべての資産に適用されるわけではありません。時価評価が困難な資産や、時価評価によって企業の財務状況が大きく変動してしまう可能性のある資産には、取得原価主義が適用されることもあります。

時価主義会計と取得原価主義会計の比較
項目	時価主義会計	取得原価主義会計
評価基準	市場価格	取得原価
評価の変動	市場価格の変動を反映	取得原価からの減価償却などによる調整
情報提供	企業の実態を正確に反映	企業の実態と乖離する可能性あり
利益操作	困難	容易
適用範囲	時価が明確な資産	時価が不明確な資産
例	株式、債券、不動産	特許権、ノウハウ

時価主義会計の導入背景

時価主義会計が導入された背景には、企業の金融投資の増加があります。近年、企業は、事業の拡大や収益の安定化を目的として、金融商品への投資を積極的に行うようになりました。しかし、金融商品は、市場価格が常に変動するため、取得原価で評価すると、企業の財務状況が実際とは異なるように映ることがあります。

そのため、投資家や債権者に企業の財務状況をより正確に把握してもらうために、時価主義会計が導入されました。時価主義会計によって、企業は、金融商品の市場価格を反映した評価額を財務諸表に表示することができるようになり、投資家や債権者は、企業の財務状況をより正確に理解できるようになりました。

また、時価主義会計は、企業の利益操作を防ぐ効果も期待されています。取得原価主義会計では、企業は、含み益のある資産を売却することで、利益を操作することが可能でした。しかし、時価主義会計では、資産は常に市場価格で評価されるため、利益操作が困難になります。

このように、時価主義会計は、企業の財務状況をより正確に把握し、投資家や債権者に正確な情報を提供するために、近年、注目を集めている会計手法です。

時価主義会計の対象となる資産

時価主義会計の対象となる資産は、市場で取引されている資産、つまり時価が明確に把握できる資産です。具体的には、株式、債券、不動産、商品先物などがあります。

一方、時価が明確に把握できない資産、例えば、特許権やノウハウなどは、時価主義会計の対象とはなりません。これらの資産は、取得原価で評価され、減価償却によって評価額が調整されます。

時価主義会計の対象となる資産は、企業によって異なります。例えば、金融機関は、多くの金融商品を保有しているため、時価主義会計の適用範囲が広いですが、製造業などでは、時価主義会計の適用範囲が限定される場合があります。

時価主義会計の対象となる資産を判断する際には、市場の流動性、時価の測定可能性、企業の経営戦略などを考慮する必要があります。

まとめ

時価主義会計は、企業が保有する資産や負債を、取得原価ではなく、決算日における市場価格で評価する会計手法です。これは、企業の財務状況をより正確に把握し、投資家や債権者に正確な情報を提供することを目的としています。

時価主義会計は、近年、国際的な会計基準の導入や、金融商品の複雑化に伴い、注目を集めています。しかし、時価主義会計は、すべての資産に適用されるわけではなく、時価評価が困難な資産や、時価評価によって企業の財務状況が大きく変動してしまう可能性のある資産には、取得原価主義が適用されることもあります。

時価主義会計の対象となる資産を判断する際には、市場の流動性、時価の測定可能性、企業の経営戦略などを考慮する必要があります。

時価主義会計は、企業の財務状況をより正確に把握し、投資家や債権者に正確な情報を提供するために、今後も重要な会計手法として活用されていくと考えられます。

2. 時価主義会計の原則とは

時価算定の原則

時価算定基準では、時価を算定する際に、市場参加者間で秩序ある取引が行われると想定した場合の、当該取引における資産の売却によって受け取る価格又は負債の移転のために支払う価格と定義しています。

つまり、時価とは、市場で実際に取引が行われた場合に、その資産がいくらで売れるか、あるいは負債がいくらで買い取られるかを意味します。これは、出口価格とも呼ばれ、資産を取得するために支払った価格（入口価格）とは異なる概念です。

時価算定基準では、時価を算定する際に、直接観察可能であるかどうかにかかわらず、算定日における市場参加者間の秩序ある取引が行われると想定した場合の出口価格であることを明記しています。

また、時価算定基準では、時価を算定する際には、状況に応じて十分なデータが利用できる評価技法を用いる必要があるとされています。例えば、マーケット・アプローチやインカム・アプローチ、コスト・アプローチなどが挙げられます。

時価算定のレベル
レベル	説明
レベル1	活発な市場における同一の資産又は負債に関する相場価格
レベル2	直接又は間接的に観察可能なインプット
レベル3	資産又は負債について観察できないインプット

時価算定のレベル

時価算定基準では、時価を算定する際に用いるインプット（時価の算定に固有のリスクに関する仮定を含む。）を、レベル1からレベル3の3段階に分類しています。

レベル1は、活発な市場における同一の資産又は負債に関する相場価格であり、調整されていないものです。例えば、上場株式の市場価格などが該当します。

レベル2は、直接又は間接的に観察可能なインプットのうち、レベル1のインプット以外のインプットです。例えば、類似の資産の市場価格や、過去の取引データなどが該当します。

レベル3は、資産又は負債について観察できないインプットです。例えば、市場データが不足している場合や、類似の資産が存在しない場合などに用いられます。

時価算定の注意点

時価算定基準では、時価を算定する際に、関連性のある観察可能なインプットを最大限利用し、観察できないインプットの利用を最小限にすることが求められています。

また、時価算定基準では、時価の算定に用いるインプットは、レベル1から優先的に使用することとされています。

時価算定は、必ずしも容易ではありません。特に、市場データが不足している場合や、類似の資産が存在しない場合は、時価を算定することが困難になる場合があります。

そのため、時価算定を行う際には、専門知識や経験が必要となります。

まとめ

時価算定基準では、時価を算定する際に、市場参加者間で秩序ある取引が行われると想定した場合の、当該取引における資産の売却によって受け取る価格又は負債の移転のために支払う価格と定義しています。

時価算定基準では、時価を算定する際に用いるインプットを、レベル1からレベル3の3段階に分類しています。レベル1は、活発な市場における同一の資産又は負債に関する相場価格であり、レベル2は、直接又は間接的に観察可能なインプット、レベル3は、資産又は負債について観察できないインプットです。

時価算定を行う際には、関連性のある観察可能なインプットを最大限利用し、観察できないインプットの利用を最小限にすることが求められています。また、時価算定に用いるインプットは、レベル1から優先的に使用することとされています。

時価算定は、必ずしも容易ではありません。そのため、時価算定を行う際には、専門知識や経験が必要となります。

3. 時価主義会計の適用方法

時価算定の具体的な方法

時価算定基準では、時価を算定する具体的な方法として、マーケット・アプローチ、インカム・アプローチ、コスト・アプローチの3つのアプローチが示されています。

マーケット・アプローチは、同一または類似の資産や負債の市場取引による価格等のインプットを用いる評価技法です。例えば、上場株式の市場価格や、不動産の取引価格などが該当します。

インカム・アプローチは、利益やキャッシュフロー等の将来の金額に関する現在の市場の期待を割引現在価値で示す評価技法です。例えば、不動産の賃貸収入や、債券の利息収入などが該当します。

コスト・アプローチは、資産の用役能力を再調達するために現在必要な金額に基づく評価技法です。例えば、不動産の建設費用や、設備の購入費用などが該当します。

時価算定のアプローチ
アプローチ	説明
マーケット・アプローチ	同一または類似の資産や負債の市場取引による価格等のインプットを用いる
インカム・アプローチ	利益やキャッシュフロー等の将来の金額に関する現在の市場の期待を割引現在価値で示す
コスト・アプローチ	資産の用役能力を再調達するために現在必要な金額に基づく

時価算定の単位

時価算定基準では、時価を算定する単位は、それぞれの対象となる資産又は負債に適用される会計処理又は開示によるとされています。

しかし、特定の市場リスクや特定の取引相手先の信用リスクに関する正味の資産又は負債に基づき、金融資産及び金融負債のグループを管理している場合など、一定の要件を満たす場合には、金融資産及び金融負債を相殺した後の正味の資産又は負債を基礎として、当該金融資産及び金融負債のグループを単位とした時価を算定することができるとされています。

この容認規定は、あくまで時価の「算定単位」について定めたものであり、グループ内の金融資産、負債の純額「表示」を認める規定ではありませんのでご注意ください。

時価算定の単位は、企業の経営状況や会計処理の目的によって異なります。

時価算定の適用例

時価算定基準は、金融商品会計基準や棚卸資産会計基準など、様々な会計基準で適用されます。

例えば、金融商品会計基準では、売買目的有価証券や満期保有目的債券などの時価を算定する際に、時価算定基準が適用されます。

また、棚卸資産会計基準では、トレーディング目的で保有する棚卸資産の時価を算定する際に、時価算定基準が適用されます。

時価算定基準は、企業が財務諸表を作成する際に、資産や負債を適切に評価するために重要な役割を果たしています。

まとめ

時価算定基準では、時価を算定する具体的な方法として、マーケット・アプローチ、インカム・アプローチ、コスト・アプローチの3つのアプローチが示されています。

時価算定の単位は、それぞれの対象となる資産又は負債に適用される会計処理又は開示によるとされていますが、一定の要件を満たす場合には、金融資産及び金融負債を相殺した後の正味の資産又は負債を基礎として、当該金融資産及び金融負債のグループを単位とした時価を算定することができる。

時価算定基準は、金融商品会計基準や棚卸資産会計基準など、様々な会計基準で適用されます。

時価算定基準は、企業が財務諸表を作成する際に、資産や負債を適切に評価するために重要な役割を果たしています。

4. 時価主義会計の利点と欠点

時価主義会計の利点

時価主義会計の最大の利点は、企業の財務状況をより正確に反映できることです。

取得原価主義会計では、資産は取得時に支払った金額で評価されるため、市場価格の変動を反映することができません。そのため、企業の財務状況が実際とは異なるように映ることがあります。

しかし、時価主義会計では、資産は常に市場価格で評価されるため、企業の財務状況をより正確に反映することができます。

また、時価主義会計は、投資家や債権者に企業の財務状況をより正確に理解してもらうことができます。

時価主義会計の利点
利点	説明
企業の実態を正確に反映	市場価格を反映することで、企業の財務状況をより正確に把握できる
投資家への情報提供	投資家や債権者に企業の財務状況をより正確に理解してもらうことができる
利益操作の抑制	含み益を自在に顕在化させることが困難になるため、利益操作が抑制される

時価主義会計の欠点

時価主義会計の欠点は、時価の変動によって企業の利益が大きく変動してしまうことです。

市場価格が変動すると、資産の評価額も変動し、それに伴って企業の利益も変動します。そのため、時価主義会計を採用している企業は、利益の安定性に欠けるという問題を抱えています。

また、時価主義会計は、時価の算定が困難な場合があるという欠点もあります。特に、市場で取引されていない資産や、時価が頻繁に変動する資産などは、時価を算定することが困難です。

さらに、時価主義会計は、企業の利益操作の温床になる可能性も指摘されています。取得原価主義会計では、企業は、含み益のある資産を売却することで、利益を操作することが可能でした。しかし、時価主義会計では、資産は常に市場価格で評価されるため、利益操作が困難になります。

時価主義会計の欠点
欠点	説明
利益の変動が大きい	市場価格の変動によって、企業の利益が大きく変動してしまう
時価算定が困難	市場で取引されていない資産や、時価が頻繁に変動する資産などは、時価を算定することが困難
利益操作の可能性	時価算定の基準が曖昧な場合、利益操作の温床になる可能性がある

時価主義会計の適用範囲

時価主義会計は、すべての資産に適用されるわけではありません。

時価が明確に把握できない資産や、時価評価によって企業の財務状況が大きく変動してしまう可能性のある資産には、取得原価主義が適用されることもあります。

時価主義会計の適用範囲は、企業によって異なります。例えば、金融機関は、多くの金融商品を保有しているため、時価主義会計の適用範囲が広いですが、製造業などでは、時価主義会計の適用範囲が限定される場合があります。

時価主義会計の適用範囲を判断する際には、市場の流動性、時価の測定可能性、企業の経営戦略などを考慮する必要があります。

まとめ

時価主義会計は、企業の財務状況をより正確に反映できるという利点がありますが、時価の変動によって企業の利益が大きく変動してしまうという欠点もあります。

また、時価主義会計は、時価の算定が困難な場合があるという欠点もあります。さらに、時価主義会計は、企業の利益操作の温床になる可能性も指摘されています。

時価主義会計は、すべての資産に適用されるわけではなく、時価が明確に把握できない資産や、時価評価によって企業の財務状況が大きく変動してしまう可能性のある資産には、取得原価主義が適用されることもあります。

時価主義会計の適用範囲を判断する際には、市場の流動性、時価の測定可能性、企業の経営戦略などを考慮する必要があります。

5. 時価主義会計の国際基準と国内基準の比較

国際会計基準（IFRS）における時価主義会計

国際会計基準（IFRS）では、時価主義会計が積極的に採用されています。IFRSでは、企業は、市場で取引されている資産や負債を、原則として時価で評価することが求められています。

IFRSでは、時価を算定する際に、マーケット・アプローチ、インカム・アプローチ、コスト・アプローチの3つのアプローチが用いられます。

また、IFRSでは、時価を算定する際に、レベル1からレベル3の3段階に分類されたインプットが用いられます。

IFRSでは、時価主義会計の適用範囲が広く、企業は、より多くの資産や負債を時価で評価することが求められています。

日本基準における時価主義会計

日本の会計基準では、時価主義会計は、一部の資産や負債にのみ適用されています。

例えば、金融商品会計基準では、売買目的有価証券や満期保有目的債券などの時価を算定する際に、時価主義会計が適用されます。

しかし、日本の会計基準では、時価主義会計の適用範囲は、IFRSに比べて狭く、企業は、より多くの資産や負債を取得原価で評価することが求められています。

日本の会計基準では、時価主義会計の導入が遅れているため、IFRSとの整合性を図るために、時価算定基準が制定されました。

国際基準と国内基準の比較

国際会計基準（IFRS）と日本の会計基準では、時価主義会計の適用範囲や算定方法に違いがあります。

IFRSでは、時価主義会計が積極的に採用されており、企業は、より多くの資産や負債を時価で評価することが求められています。

一方、日本の会計基準では、時価主義会計の適用範囲が狭く、企業は、より多くの資産や負債を取得原価で評価することが求められています。

しかし、日本の会計基準では、時価主義会計の導入が遅れているため、IFRSとの整合性を図るために、時価算定基準が制定されました。

国際基準と国内基準の比較
項目	IFRS	日本基準
適用範囲	広範囲	一部の資産に限定
時価算定基準	詳細な基準が整備されている	時価算定基準が制定された
導入状況	積極的に導入されている	導入が遅れている
将来展望	IFRSとの整合性	IFRSとの整合性